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まとめ

まとめ 挿絵

本は子どものことばの発達を(うなが)し、教育効果を高めます。子どもに本が必要だということは、研究からも実践からもわかっています。子守歌のメロディーと詩のリズムは子どものリズム感を刺激して、自分の身体を意識(ボディ・イメージ*33)させます。子どもたち、とくに障害をもった子どもたちは、絵本、わらべ歌、物語、やさしく読める本などを求めています。本は子どもたちの自由な時間を、有意義にすごさせてくれます。子どもたちを幼少の頃から本に親しませてあげたいものです。

本にふれる機会をすべての子どもに与えるためには、障害をもつ子どもたちの、それぞれの障害に十分に配慮した本が必要です。

たとえば次のような本です。

  • ―点字の本、音の出る本、さわる絵本を目の不自由な子どものために。
  • ―大活字本を弱視の子どものために。
  • ―手話のイラスト入りの本を、耳の聞こえない子どものために。
  • ―非常に単純でわかりやすい絵本を、ことばのおくれている子どものために。
  • ―やさしく読める本を、読む力のおくれている大勢の子どもに。

ふつうの絵本の中にも、障害をもつ子どもが楽しめるものはたくさんあります。わらべ歌を集めた本は、その一例です。問題は、親や先生、施設の職員が、そういう本の存在になかなか気づかないことです。

障害児の教育にたずさわる先生や施設の職員や親は、子どもの本についてもっと広く知っていなければなりません。図書館の司書の養成課程(ようせいかてい)で、障害児や障害児の読書について学ぶことを義務づける必要があります。

作家、画家、編集者は、さまざまな障害の子どもたちに接して経験をつんでいる先生や施設職員や親の考えていることを、知る必要があります。障害をもつ子どもたちとつきあって、子どもたちに必要なものは何かを知り、理解して本をつくることが大切な場合も少なくないでしょう。

子どもたちが求めているものを画家、作家、編集者に知らせるのは、教育にたずさわる人たちの課題です。それを受けて何よりもまず、やさしく読めてしかも意味の深い文章を書くことが、作家の仕事です。画家は、文章を理解する手助けとなるような絵を、読む力のおくれている子どもや弱視の子どもの特別な要求に応じて措くことに挑戦します。適切な印刷技術(活字の大きさ、書体、組みなど)を用いて本をつくるのは、編集者やデザイナーの課題です。このようにしてできた本を、求めている人に紹介し、手わたすのは、図書館員の仕事です。

本にかかわる専門職の人々は、″適切な″図書を調査した結果やそのリストを紹介するとともに、障害児が使う本についての情報や、実践活動の報告が、社会に広く知られるようにしなければなりません。「適切な」という一語は、大切な意味をもっています。なぜなら、作者が、障害をもつ子どもを自分の本の中に登場させておきながら、その障害について十分な知識をもっていないことがあり、そういう本は避けなければならないからです。また、作者が子どもよりも障害そのものに目を奪われ、あたかも障害が子どもの全人格を左右してしまうように描く場合にも、特別な注意が必要です。図書館員など専門職の人々の仕事の中で、何よりもまず大切なのは、よい本があることを一般の人に知って もらい、そういう本が大いに利用されるように、働きかけていくことです。

本は私たちに影響を与えます。私たちは、おたがいが人間どうしとして出会えるような本を求めています。私たちの中には、障害をもっている人も、そうでない人もいます。本の中でも実際の生活の中でも、おたがいどうし、知りあうことが大切です。

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