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年報こどもの図書館 2007-2011 2012年版 児童サービス活動(2) d 障害児サービス

山内 薫
(墨田区立あずま図書館)

1 著作権法の改正

 2010年1月に改正著作権法が施行された。それまでは、音声などに資料を変換して貸し出すことができるのは、点字図書館等の福祉施設に限られており、利用対象も視覚障害者に限定されていた。そのため公立図書館では録音図書や拡大写本などを作成する場合には著作権者の許諾を得て作成していたが、今回の改正でその必要がなくなった。また、対象を視覚障害者に限定せず、「視覚による表現の認識に障害のある者」としたことで、今までは点字図書館の録音資料が利用できなかった高齢者や学習障害者なども利用可能になった。さらに聴覚障害関係でも映像資料に字幕や手話等が自由に付与できるようになるなど、今まで課題となっていたことが大きく前進した。作成が可能になった施設も公共図書館のほか、大学図書館、学校図書館が含まれることになったので、小学校から大学にいたるまで、すべての学ぶ機関の図書館が、一人一人の障害に合った資料を自由に作成し提供できるようになったのである。今回の著作権法改正は、それぞれの図書館に、表現の認識に障害のある利用者がいれば、その人の認識できる方式で資料を提供しなければならないという責務を課したものと理解しなければならないだろう1)
 また同法第43条(翻訳、翻案等による利用)では第37条第3項(視覚関係)で「翻訳、変形又は翻案」、第37条の2(聴覚関係)で「翻訳又は翻案」して利用できるとしている。ここで言っている「翻訳」とは、外国語だけではなく「手話翻訳」を想定していると考えられる。「変形」は、音声やテキスト表示や画像なども含めてマルチメディア化することを指している。そして「翻案」は、手話への翻案、字幕の翻案(映像などで会話を逐一字幕にするのではなく、わかりやすく翻案して字幕を作ることなど)のほかに、例えば知的障害の利用者のために「わかりやすく読みやすく」することを含んでいる。手話翻訳なども含めて、今後利用者が理解できるようにわかりやすい表現に資料を翻案して提供することも課題として取り組む必要があるだろう。

2 マルチメディアDAISY図書(教科書)

 目で見た文字を音に変換することが困難であったり、文字がゆがんで見えたりするために一般の本や教科書を読むことのできないディスレクシアの子どもが、小学校4年生のときにマルチメディアDAISY図書に出会って読書の楽しみを知り、「ハリーポッター」も読みたいと、当時点字図書館にある音声だけのDAISY図書を借りようとしたけれど、当時は点字図書館を利用できるのが視覚障害者に限られていたために借りることができず、2年後の2010年に著作権法が改正されて、やっと借りて読むことができた。彼は近くの公共図書館から原本を借り、DAISYの音源を流しながら読んだという。先の著作権法の改正の効果がこんなところにも現れている。このマルチメディアDAISY図書は、ディスレクシアに止まらず次のような発達障害の子どもにも有効であることが報告されている。
 「漢字は知っていて読めるのに、読む(音声化する)だけで内容はわかりません。他人が読み聞かせをするとどうしても周りのいらないノイズが集中の邪魔になり本の内容がわからなくなってしまいます。でもデイジーならヘッドフォンをして集中することもできるし、毎回同じ声で同じ調子で読んでくれるので理解しやすいようです。」(高機能自閉症の中学2年生男子)
 「普通の本を読むときは落ち着いて読めません。ざーっと読み飛ばしてしまうのに本人は読んだと言います。挿絵などを見て内容を推測しているようです。マルチメディア・デイジー図書は比較的落ち着いて読むことができているようです。視覚、聴覚両方からの刺激のせいかもしれません。」(AD/HDで軽度知的障害の小学5年生)2)また同じく山中香奈氏は講演会「読みの困難な児童・生徒に向けたDAISYによる支援」(2010年1月9日)で、「兵庫県LD親の会『たつの子』での事例」というレポートの中でさまざまな発達障害の子どものマルチメディアDAISY教科書を使った事例を報告している。そこで取り上げられている子どもたちの障害は、学習障害・ディスレクシアをはじめ自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー障害などさまざまで、そうした多くの読書障害の子どもたちにマルチメディアDAISY教科書が有効であったという。3)
 マルチメディアDAISY教科書を提供している日本障害者リハビリテーション協会によれば、2011年度に提供されたマルチメディアDAISY教科書は128種に及び、延べ1,105人の児童生徒が利用したという(前年度は12月までで635人)。マルチメディアDAISY教科書はまだまだその存在が知られておらず、教育現場に情報が行きわたっている情況にないので、今後相当数の学習障害児等に利用されるだろうことが予測される4)
 また、知的障害者とマルチメディアDAISYについては『LLブックを届ける-やさしく読める本を知的障害・自閉症のある読者へ』(藤澤和子・服部敦司編著,読書工房,2009)所収の「読みやすい・わかりやすい図書をマルチメディアDAISYに」(野村美佐子),「知的障害者とマルチメディアDAISY」(藤澤和子),「マルチメディアDAISYの制作の現場から」(久保田文・濱田滋子)が、この資料のさらに広がる今後の可能性を示している。
 なお、2008年に「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進に関する法律」(教科書バリアフリー法)が施行され、拡大教科書等を作成するボランティア団体などに対して原稿のデジタルデータを提供するよう教科書会社に義務づけることとなった。従来は弱視の児童生徒のための拡大教科書による複製が想定されていたが、同時に改正された著作権法第33条の2では「教科用図書に掲載された著作物は、視覚障害、発達障害その他の障害により教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童又は生徒の学習用に供するため、当該著作物を使用するために必要な方式により複製することができる」としてマルチメディアDAISYなどデジタル方式による複製も可能になった。こうした流れの中で、単に教科書に限らずあらゆる読書教材が個々の児童生徒に必要な方式で提供されなければならないことを考えれば、学校図書館、公共図書館等の役割は今後とも非常に大きいといわざるを得ない。
 マルチメディアDAISY図書は、いまだにその数が非常に少ないが、近畿視覚障害者情報サービス研究協議会LLブック特別研究グループが作成した『LLブック・マルチメディアDAISY資料リスト』5)には現在入手可能な144タイトルが掲載されている。また財団法人伊藤忠記念財団が2010年度に作成し、特別支援学校や公立図書館(全国187館)に配布したマルチメディアDAISY図書が15タイトルあり、同記念財団では今後も作成を予定している6)
 2010年の障害者サービス全国調査(「平成22年度公共図書館における障害者サービスに関する調査研究」国立国会図書館)7)で、マルチメディアDAISY図書を所蔵していると回答した図書館は20館あったが、製作していると回答した図書館は1館もなかた。今後さまざまな資料利用障害者にとって有効なマルチメディアDAISY図書の作成が大きな課題となっている。

3 「手話の本」の要望

 今回の著作権法改正に大きく影響を与えた「障害のある人の権利に関する条約」(2006年12月13日に国連総会で採択)で、手話が言語であることが認められた。したがって、音声言語である日本語あるいは書記日本語を日本手話に翻訳した「手話の本」が求められるようになる。日本語で書かれた本の内容を手話という動画に翻訳した本はほとんど作成されていないが、わずかな例として熊本県聴覚障害者情報提供センターが制作した『手話ごんぎつね』(企画:熊本手話教材開発プロジェクト,制作:(株)エヌ・アイ・ケイ)がある。このマルチメディア読書教材は、手話と日本語の単語・文をリンクさせ、文章を音声で読み上げ、手話の動画を再生するもので、日本国際児童図書評議会(JBBY)の推薦図書に選ばれ、国際児童図書評議会(IBBY)障害児図書資料センターの2009年推薦図書(世界21か国50タイトル)の1冊に選ばれた。
 また、日本手話と書記日本語によるバイリンガル教育を行っている私立明晴学園が制作している『しゅわ絵ほん』(DVD,収録時間31分,ダブル・ピー株式会社発売,2010)は、志茂田景樹の3つの作品『まんねんくじら』、『でたがりもぐら』、『ひかりの二じゅうまる』(いずれも Kiba Book 刊)を明晴学園の先生が日本手話で語っている。
 さらにオリジナルな手話の本として、特定非営利活動法人バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センターが制作した、初めての聞こえない赤ちゃんのための『日本手話CL絵本 ボール』(DVD付絵本、同センター、2010)があり、聞こえない子どもの家庭に無料配布している。同センターでは『のっと君と絵本を楽しもう』(日本手話DVD,VOL.1~6,筆者未見)という手話による絵本の読み聞かせDVDも制作しており、聞こえない0歳から6歳児を対象に貸出している。
 ろう児に対する手話のおはなし会はいくつかの図書館で行われており、八王子市中央図書館(「耳の聞こえない子どもにも本の楽しさを-手話によるおはなし会」綾久美子『みんなの図書館』2010年11月号)、白山市立松任図書館(「すべての子どもが絵本と接する環境を」西野和弘『NORMALIZATION』2007年2月号)、枚方市立中央図書館(『手話でたのしむおはなし会』山口俊裕『こどもの図書館』2010年11月号、「枚方市立図書館『手話でたのしむおはなし会』を見学して」椎原綾子『みんなの図書館』2007年6月号)などの実践例がレポートされている。
 有限会社手話文化村の米内山明宏氏は、2008年の全国図書館大会の席上「ろう者の図書館利用に関するご提案」という文書を配布した。その中で「私たちの願いはろう者の仲間にも小説のすばらしさを味わってもらいたい、ろう者の仲間にも家庭の医学や冠婚葬祭の手引き本などの知識情報を共有してもらいたい、という単純なことなのです。そのためには手話という言語で提供しなければなりません。当然動画での提供となります。(中略)新旧図書を必要に応じて手話に翻訳し提供して頂ける環境を作って頂きたくここにご提案させて頂きお願いといたします」と訴えた。さまざまな子どもの本を手話に翻訳した動画資料=手話の本を、ろうの子どもたちに提供することを検討しなければならないのではなかろうか。

4 「NPO法人弱視の子どもたちに絵本を」が発足、『点訳絵本の手引』を刊行

 2010年、「NPO法人弱視の子どもたちに絵本を」が発足した。同会のホームページには次のように設立趣旨が述べられている。
 「1981年に誕生した『視覚障害児のためのわんぱく文庫』は、視覚障害の子どもたちと本を結ぶ活動をしてきました。しかし、点字絵本、点字本、音訳本を作ることは出来ましたが弱視の子どもたちが楽しめる絵本、美しい絵本を手渡すことができませんでした。つぎつぎに生まれる本や絵本は、読むことが困難である子どもたちの存在を置き去りにしたままです。『本と出会う』『本を読む』そこへ届かない子どもたちがいます。子どもの時、たのしく読んだ絵本は、心の灯りとなってともり続けるでしょう。わたしたちのまわりに、どのような子どもたちがいるか、そっと見まわしてください。どの子にも、本の楽しさに出会ってほしい、その願いの輪を広げていくためのNPO法人を作りました。」8)
 弱視の人は百人いれば百通りの見え方をしているといわれており、一人一人見えにくさ見やすさが異なるため、個々の見え方に合わせて字や絵の大きさや色、文字のフォントや字間・行間などを調整する必要がある。
 「弱視の子どもの読書を保障するには、一つは既存の本を一人一人が一番読みやすい形にする。もう一つは弱視の子どもに見えやすいオリジナルな絵本や本をマルチモーダル出版することです。それらが十分な質と量を備え、子どもの身近にあり、将来にわたってよりどころとなる公立図書館が、その子に合うように調節して手渡される。そういうヴィジョンを描いています。」9)
 同会では弱視の小学生の要望に応え、奈良デイジーの会の協力を得て『あいうえおうさま』(寺村輝夫・和歌山静子,理論社)と『カタカナアイウエオ』(下村昇・作,あおきひろえ・絵,文溪堂)のマルチメディアDAISY版を作成した。
 また同法人は『目の不自由な子どもが読む 点訳絵本の手引 わんぱく文庫の実践から』(「NPO法人弱視の子どもたちに絵本を」編集,大阪北ロータリーグラブ発行,2010)を刊行した。この本は「わんぱく文庫」の経験に基づいて、点訳絵本の制作について細かく解説している。点訳絵本の制作に関して、すでに『点訳絵本のつくり方 増補改訂第3版』(せせらぎ出版,2005)を出版している岩田美津子氏の「てんやく絵本ふれあい文庫」10)をはじめ、点訳絵本を制作している3つの公共図書館、二つの点字図書館、その他1団体に点訳絵本制作に関するアンケート調査を行っていて興味深い。

5 福島県立図書館の特別支援学校への読書支援活動

 2011年10月に福島県立図書館で開催された第9回「福島県図書館研究集会」で、福島県立西郷養護学校の橋本町子教諭が「特別支援学校における公立図書館受入と子どもたちの読書意識の変化」という題で報告している。福島県立図書館では「『県民を支える図書館』アクションプラン」の5つの柱の一つ「学ぶすべての人を応援します」の一環として、特別支援学校読書活動支援事業を2008年から実施している。県内にある3つの養護学校を対象に、①「おはなし会」の開催、②「読書活動推進セット本」の貸出、③移動図書館「あづま号」巡回貸出、の3つの支援を行っている。そのうちの一つが西郷養護学校で、福島市から100kmと栃木県境にある学校へ年2回のBM「あづま号」の巡回が行われた(3校のうちの1校である富岡養護学校への支援は、東京電力福島原子力発電所の事故のために休止)。
 当初は経験の少ない児童生徒が「あづま号」の巡回貸出で本を選ぶことができるかどうか、心配したという。しかし小・中・高等部の担任へのアンケートでは、児童・生徒が「あづま号」の巡回を楽しみにしているかという設問に19人が「はい」と答え、「いいえ」と答えた担任は1人だった。具体的には「本を見るより折ったり破いたりという行動になってしまう児童がいるため、まずは教室の本を丁寧に扱うことに取り組んでいる。そのためあづま号を利用したことはないため来校を楽しみにしているとは言えない」という教師側の自己規制で、「いいえ」と回答したようである。「あづま号は児童生徒にとってよい経験となっているか」という設問には全校教師の過半数が回答し、「はい」37人、「いいえ」0人、「どちらともいえない」1人という回答が寄せられ、具体的には「それぞれ興味のある本を見つけ出せるようになった」、「普段は見ることのできない本がある」、「図書館を利用しているような学習ができてよい」、「自分で選んだ本を読む経験を喜んでいる」などの感想が寄せられている。報告者も社会性が身につくという点を強調しておられた。
 「おはなし会」についても高等部の生徒が受け入れるだろうかと心配したそうだが、希望参加にもかかわらず、予想に反して多くの高等部の生徒が参加した。しかし、話の内容が高等部には向かないものもあり、2回目以降は小学生向きと中・高校生向きに分けて設定してもらった。「読み聞かせなんて」と遠慮がちだった生徒が、だんだんと「おはなしの世界」に吸い込まれて真剣に聞き入る姿がとても印象的であり、自分でも上手に読みたいという生徒たちの気持ちを感じたという。「おはなし会」を経験した高等部の生徒たちは、図書委員会の活動の中で、小・中学部の児童生徒に集会活動で絵本の読み聞かせを行ったり、「あづま号」の本が置いてある書架の整理を担当して、自分たちで「おすすめの本」を選んで展示しているそうだ。中学部においても毎年3学期に「本と友達になろう」という時間を設定して、「好きな本の紹介カード作成」や「下級生に本を読んであげる」などを目標に取り組んでいるという。
 さらに、本の読み聞かせ活動の実践では、中学部で絵本を題材に大きな画像で場面を映し、ピアノやバイオリンでその情景を表現しつつ読み聞かせをしたり、小学2年生では大型絵本の読み聞かせから、絵本作りの取組に発展し、できあがったその大型絵本を使ってまた読み聞かせを行った。
 終わりにかえてという文章で、報告者は「読み聞かせをとおして、本への興味の芽生えの段階の児童は『ことば』に気持ちを向けるようになったり、『楽しい』『きれい』など情感の共有が見られ、落ち着いた気持ちで過ごせるようになった。また、『読んでもらう』活動から自分たちで本を作り読む、友達と共有することを学んだ。(中略)たどたどしくも自分で読みたい、友達に紹介したいなど、それまで自信をもって生活することが苦手な生徒たちは外への発信の手だてを『本を読む』事から始めている生徒も見られた。小さな一歩ではあるが、県立図書館の読書活動支援は、本校の児童生徒に心情の育ちへの支援や社会性の育ちの支援など多くの学びの素材を提供すると共に、『ことば』の楽しさや温かさから本への素直な気持ちでの向かい合いを感じさせてくれる。最後にこの読書支援活動に改めて感謝すると共に今後も続けて支援をお願いしたい」と結んでいる。
 県立図書館の支援もさることながら、特別支援学校の現場で子どもと子どもの本を信じ、活動を展開する優れた教師たちの存在がいかに重要であるかを感じさせられた11)

6 特別支援学校の学校図書館への県立図書館の支援

 特別支援学校に対する県立図書館の支援は、2007年度から本格的な支援を開始した鳥取県立図書館の先駆的な例があり、その支援メニューは①協力貸出(必要な資料を必要なだけ)、②学校図書館関係者に対する研修の実施、③年2回の学校図書館の巡回相談、④「教職員のための図書館活用セミナー」の実施、という12)
 2007年、それまで盲学校、聾学校、養護学校と3つに分かれていたものが、特別支援学校に制度上統一され、2009年3月には特別支援学校の新しい学習指導要領が告示された。「特別支援学校において学校図書館が果たす役割(学習・情報センター、読書センター)は、小学校、中学校、高等学校のそれと変わらず重要なものである。いや、むしろ、情報保障という観点からするとその果たすべき役割はもっと大きなものがあると言って過言ではあるまい」13)といわれるように、今後特別支援学校の学校図書館と公共図書館が連携して、読むことや学習することに障害のある子どもたちに適切な資料を提供していく必要があるだろう。
 『学校図書館』第707号(2009年9月号、全国学校図書館協議会)は、「特別支援教育と学校図書館」を特集しており、まず野口武悟「特別支援学校における学校図書館の概観と展望」では、特別なメディアや図書館活動について、①視覚障害、②聴覚障害、③肢体障害、④病弱、⑤知的障害、⑥重複障害、⑦学習障害のそれぞれについて、どんな支援が必要かを簡潔に紹介している。合わせて同号には、盲、聾、養護(肢体不自由、病弱、知的障害)それぞれの学校図書館のレポートが掲載されている。さらに、『一人ひとりの読書を支える学校図書館-特別支援教育から見えているニーズとサポート』(野口武悟編著,読書工房,2010)では、「視覚障害特別支援学校(盲学校)」、「聴覚障害特別支援学校(ろう学校)」、「肢体不自由特別支援学校(養護学校)」、「知的障害特別支援学校(養護学校)」それぞれの学校図書館の担当者が活動を報告した上で、「読者特性とサポート方法・メディア活用の例」が詳しく記されており、学校図書館のみならず、公共図書館等でそうした子どもたちにどのような支援が可能なのか、資料が必要なのかの参考となる。

7 読書に障害のある子どもたちに関する特集や集会の記録

 この間『みんなの図書館』2009年3月号(図書館問題研究会編,教育史料出版会発行)が「みんなに本を-読書に障害のある子どもたちへ」という特集を組み、ディスレクシアや発達障害者、学習障害者、特別支援学校、入院している子どもなど広い対象を取り上げている。また『こどもの図書館』2010年11月号(児童図書館研究会)が「読書に障がいのある子どもたち」を特集し、ろう学校、特別支援学級の読書活動のほか、先に紹介した枚方市立図書館の「手話でたのしむおはなし会」、白岡町立図書館での特別支援学級でのおはなし会が紹介されている。
 また『ここに、こんな子がいます-公共図書館の児童サービスを考える 2009 記録集』(図書館問題研究会兵庫支部こども委員会編・発行)は、2009年2月に行われた学習会の記録で、「ディスレクシアの子どもたち」(先に紹介した山中香奈・NPO法人奈良デイジー代表 濱田滋子)、「少年院の子どもたち」(大阪府立中央図書館、日置將之)、「病院の子どもたち(神戸大学附属病院小児科病棟ボランティア、泉原由美子)の3人が報告している。

<注>

1) http://www.bunka.go.jp/chosakuken/21_houkaisei.html

2) 山中香奈「ディスレクシアが望む図書館を考える」『みんなの図書館2011年8月号
 山中香奈「公共図書館・学校図書館に期待すること-発達障害の子どもたちとマルチメディアデイジー図書」(連載「著作権法改正と障害者サービス」)『図書館雑誌』2011年11月

3)http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/daisy/seminar20100109/index.html
 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/daisy/seminar101223/report.html

4) http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/book/daisytext.html

5) http://homepage2.nifty.com/at-htri/LL&DAISYList090113.pdf

6)http://www.itc-zaidan.or.jp/itc_zaidan_cds_2010cd.htm
*掲載者注:原本で紹介されている上記リンクは現在ではつながらなくなっている。同じサイト内の関連する別のコンテンツへのリンクを置いた。
 http://www.itc-zaidan.or.jp/ebook.html

7) http://current.ndl.go.jp/files/research/2010/2010research_report.pdf

8) http://www.wanpakubunko.com/npo/index.html

9) 田中加津代「弱視の子どもたちに絵本を-著作権法改正を追い風にして」『図書館雑誌』2011年7月号

10) http://homepage1.nifty.com/fbunko/index.htm

11) 2011年10月26日に福島県立図書館で開催された第9回福島県図書館研究集会の席上配布された資料による。

12) 小林隆志「鳥取県立図書館の特別支援学校図書館への支援」(『一人ひとりの読書を支える学校図書館-特別支援教育から見えてくるニーズとサポート』野口武悟編著,読書工房,2010) なお同書には、松井進「千葉県立中央図書館の特別支援学校への支援」も収載されている。

13) 野口武悟「特別支援学校の新しい学習指導要領から学校図書館の活用を考える」(『学校図書館』第705号,2009年7月号 全国学校図書館協議会)

(URLの確認日:2012年8月18日)

(やまうち かおる)


この記事は、著者と日本図書館協会に許諾を取り、山内薫「児童サービス活動(2) d 障害児サービス」児童図書館研究会編『年報こどもの図書館 2007-2011 2012年版』日本図書館協会,2012.10.20,p.303-308より転載させていただきました。