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意見発表(高岡正)

高岡●
社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の高岡です。よろしくお願いします。資料でいうと12ページの真ん中から。
聴覚障害者の情報バリアフリーです。著作権法第第37条の2の1項、2項で、聴覚により利用する著作物を聴覚著作物としています。
毎日テレビやラジオで放送されるキー局、ローカル局、あるいはミニ放送局の番組まであります。それからインターネットで流れるニュースサイトの動画、販売やレンタルされるDVDやCD、また上演される演劇、舞台など、聴覚によって利用するコンテンツは枚挙にいとまありません。しかし、これらの字幕や手話がつくのは少ないです。

市販されているCD、DVDなどに日本語の字幕がついているものはわずか数パーセント、たかだか7%くらいしかないという数字もあります。災害時のテレビ情報に字幕も手話もつきません。それは先日の台風18号、20号の例を見ても明らかだと思います。

二つ目には著作権法の改正です。
改正される著作権法は視聴覚障害者を、視覚または聴覚により著作物の利用が困難な人として、初めて視覚または聴覚障害者の情報アクセスに道を開いたという大きな意義があります。中途失聴者・難聴者にとっても身体障害者手帳の有無を問わず、聴力デシベルの程度、利用の程度によらない広く難聴者の情報アクセスに道を開いたという点で大きな意義があると考えています。聴覚著作物に字幕や手話を付加して貸し出すこと、字幕と手話の公衆送信に著作権制限が認められたことは、大きな前進と考えます。
しかし改正された著作権法は、障害者が障害を持たない人と同じ権利を有すること、その是正に国が措置することを求めた障害者権利条約から見ると極めて不十分なものであるというのが聴覚障害者関係団体の一致したところです。これらを聴覚障害者がアクセスできるように著作権が制限されるのは、二つの場合のみです。

一つが自動公衆送信。もう一つが複製の貸し出しです。
聴覚著作物の音声の文字化と「聴覚障害者等が利用するために必要な方式」による複製を自動公衆送信できるとありますけれども、この「聴覚障害者等が利用するために必要な方式」というのが手話のことだと文化庁は説明されています。音声の字幕データ(文字による複製)と手話の映像データ(手話の複製)がインターネットで送信できるようになったけれど、テレビ番組に手話と字幕を付けてインターネットで配信しようとすると映像は送信できないというのが著作権課の説明です。しかし、手話は元の映像なしにはあり得ないコミュニケーション方法です。話者が自ら手話を使うか、音声で話す話者と手話通訳両方を同時に見るかのどちらかありません。手話通訳は話者の表情から話し方、指さし動作、服装までの情報を生かして通訳するコミュニケーション支援技術だからです。
聴覚障害者は手話通訳だけでは聴覚著作物は利用できないのです。「聴覚障害者等が利用するために必要な方式」というのは、手話通訳と音声を含む映像との一体的複製しかあり得ないのです。元の映像と一体でなければ、手話通訳の映像と同期させるための技術が必要となり、新たな障壁となってしまいます。

したがって37条の2の1項、2項の「自動公衆送信」とは、手話を付加した映像の自動公衆送信が送信可能化権とともに認められていると理解すべきだと考えています。
二つ目の問題として、著作物に字幕と手話を付加する場合、原板の入手方法が問題になります。放送事業者や制作メーカーなどに提供を受けて字幕等を制作するとなると、特に災害時等の放送は時機を逸してしまいます。社会の中で情報を等しく得る機会が保障されないことになってしまいます。私たちは放送の録画、あるいは市販されているDVDを原板とするという便宜的な方法を求めています。

三つ目の問題は、複製物の貸し出しに当たって著作権者に相当の金額を払うことになっていますが、私たちはもともと利益を得るどころか著作物にアクセスできていないために字幕等を入れた著作物が必要なのです。本来は著作権者が負担しなければいけないのではないかと考えます。字幕や手話を挿入するのは全国に無数のボランティアのグループが行っています。これらの方々に補償金を求めるならば制作が止まってしまうでしょう。
まだまだ多くの問題がありますが、著作権者の皆様と当事者を交えた協議で解決することを強く望んでいます。よろしくお願いします。

井上●
高岡様、どうもありがとうございます。引き続きまして、資料13ページになります。高田様、補足の説明ということでよろしくお願いいたします。

高田●
高田です。本日は機会を与えていただきありがとうございます。
私たちは聴覚障害があるためにテレビ放送などについて容易に理解、視聴することができません。ですから手話を入れる、字幕を入れることによって普通の人と同じ条件で見られることを望んでいるわけです。

例えば改正された著作権法の37条の2の1項を見ますと、「当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他 当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む)を行う」と書かれています。これはどういうことかと言いますと、映像と手話・字幕を別々に送信するということです。テレビで放送したものは皆さんご存じのように画面と音声が一緒になっています。画面と音声が一緒になって初めてテレビを楽しむことができるわけです。この規定は何かというと、映像と字幕を別に送信するということです。そして自宅のインターネット等を使って、合成するということです。皆さんも別々に送信して映像と音声を自宅のインターネットを使って合成して見るという方法を皆さんは考えられるでしょうか。

なぜ聴覚障害者にはこういう複雑な方法が必要なのか。障害者には、高齢者あるいはパソコンの技術に特に困難を感じる方々が多いです。そういう人にインターネットを使えというような規定になぜなっているのか。理解に苦しむ次第です。
また、コピーガードの問題があります。私たちは聴覚障害者情報提供施設などにおいて、一般のテレビ番組、またはDVDなどに字幕あるいは手話をつけた複製物を無料で貸し出しています。それにコピーガードを入れる必要がある、そのようなことが政令で考えられているようです。コピーガードを入れる手間、それによって貸し出しが可能となる、なぜこういう手間をかけて見なければいけないのでしょうか。
制作料は国からの助成はありますが、本当はそれでは足りません。しかもさらに時間がかかるというやり方は問題があると考えています。

それからもう一つの問題は、補完放送の問題です。
テレビの字幕が普及してまいりましたが、なぜ普及したかと言いますと、字幕をテレビ画面上で出したり消したりできる、つまりオン・オフができる技術があったからできるわけです。字幕は我々には便利です。でも聞こえる人には邪魔になる場合もあります。ですから、オン・オフができることが大事なのです。それは厚生労働省が無料で支給するアイ・ドラゴンといったチューナーによって見ることができます。
でもデジタル化になると、手話の映像が規格などによってオン・オフで放送することができなくなります。デジタル放送は我々にとってプラスになるかと思ったら、いろんな制限が出てきています。

手話のオン・オフができなかったら実用的な手話放送はできないということです。ですから、「目で聴くテレビ」において厚生労働省のアイ・ドラゴンを無料支給して、それを使って、初めて見ることができます。
問題は手話・字幕を入れる費用は誰が負担するのか。放送するための費用を誰が負担するか。結局、我々聴覚障害者が自己負担するという形、受信料を払う形で負担して、初めて見ることができるわけです。
このような補完的な放送、聴覚障害者の情報を得る自由、表現の自由を確保するための方法を、有料でしか見ることができないという問題があります。ぜひこの補完放送の方式を制度的に認め、それについての負担料費用を国が負担してくださるようお願いしたいと思います。

井上●
ありがとうございました。ただいま、本日の会場手配等で大変お世話になりました衆議院・民主党の小宮山泰子議員がお見えですので、ご紹介させていただきます。

小宮山●
皆さん、こんにちは。民主党衆議院議員、小宮山泰子でございます。本日、この会場、10年ぶりということでシンポジウムのお手伝いをさせていただきました。民主党の障がい者政策推進議員連盟事務局長をさせていただいております。この会自体は、もう4年前になりますが、障害者自立支援法が強行採決されたのを機にしっかりとこれを変えていかなければならない、そのために民主党の中の有志を正式に集めまして活動を続け、いろんな団体からのヒアリングも続けさせていただいています。

今、国際条約の批准の問題も含めまして、障害者施策、日本は遅れていると思っております。この点に関しましては、やはりきちんと多くの方々の意見を聞いて、そして本当の意味で、多くの人たちが障害のある方もない方も一緒に生きられる、そして安心して暮らせる日本をつくっていけるよう頑張っていきたいと思っております。

これを機会に、なかなかご縁のなかった団体さん、特に政権党とお付き合いをするという趣旨でお付き合いされていたというのが、民主党が野党のときにこの議員連盟を立ち上げたところもございますので、きちんとその点は広く皆様と手をつなぎ、気持ちを合わせ、頑張っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

ちなみにこの議員連盟、現在140名を超す民主党での一番大きいといわれる議員連盟になっております。そのこともお伝えをさせていただき、多くの皆様と一緒に歩んでまいりたいという議員が民主党にいることもお伝えをさせていただき、本日の盛会を祈りましてご挨拶といたします。今後ともよろしくお願いいたします。

井上●
どうもありがとうございました。
次に兵庫県LD親の会代表、山中香奈様。LDというのは学習障害と日本語では言っています。それでは山中様、お願いいたします。