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意見発表(山中香奈)

山中●
皆さん、こんにちは。風邪をひきましてとてもお聞き苦しい声になってしまいまして申し訳ありません。兵庫県LD親の会から参りました山中と申します。
先ほどLDというお話がありましたが、私たちの会は学習障害にかかわらず発達障害という、学習障害より大きな枠組みになります。自閉症、ADHD、それとLD、軽度知的障害などの親の会です。うちの会は現在約300名の会員がおります。関西でも一番大きな親の会となっています。
私たちが発達障害児の著作物利用について今後の著作権法改正で期待できることをまとめてみました。

まず、発達障害児の中には目が見えていても文字が読めない、文章が読めない、内容を理解できない、字が書けないというお子さんたちがいます。なぜかというのは全くわからないです。文字は、一個一個は読めるのです。文章になったら内容理解ができていない。先生が読んで、聞いているかなと思っても、聞こえているのに内容がついてこない。「どんなお話だったの?」と後で聞いても、「わからへん」となってしまう子どもがいます。
そういう子どもたちが普通に教科書を手にして、家で一生懸命宿題をやっても、学校に行ったときに授業についていけないのです。先生の質問がわからない。何を言っているのだろう。先生が質問します。子どもが回答します。全くちぐはぐな答えだったりするのです。でも、一個一個ちゃんと説明して順を追っていけばわかってくれる。知的にはまったく問題のないお子さんたちが、文章をぱっと聞いただけ、見ただけ、音読しただけでは、理解がついていかないのです。

そういう子に普通に教科書を渡されても、家で一生懸命音読をしても、授業についていけない。その場にいても全くお客さんになってしまう。授業がおもしろくない、学校がおもしろくない、行っても分からへん。とてもつらいのです。そういう子どもが本当に多くいます。
去年うちのLD親の会は、DAISY教科書、ほとんど国語のみなのですが、これを使ってみませんかというお話をしました。そうしたところ、小中学校の子どもが150名ほどいるのですけれども、その中の30名ほどが集まりました。読み書きに困難がある子の親が、こういうのがあるのだったらやってみたいということで、すぐに申し込みをされました。その子どもたちが、DAISY教科書を使って、学校に持っていくことはできませんでしたので、家での音読の宿題に使いました。

その30名のうちにうちの2人の息子も入っています。小学校6年生と3年生の息子です。発達障害と言われていますが、ちょっとタイプが違います。長男は6年生でLD傾向が強いんです。読み書き計算、ほとんどついていけません。2学年くらい下です。今、6年生ですが4年生くらいの漢字を読むことができません。全部ルビを振らなければならない状態です。
その長男が、一生懸命読むのです。ものすごくまじめな子なので。発達障害児をお持ちの親御さんはわかると思いますが、とってもまじめなのです。サボったりしないのです。一生懸命に家でも勉強をします。

その子がDAISY教科書を使ったら、「ママ、先生の質問がわかるようになった、文章がわかるようになった、何を言っているのか分かるようになった、国語が楽しくなった、好きになった、おもしろくなった、学校に行くのが楽しい」と言うように変わってきたのです。今まで一生懸命やってもテストが0点。それが今年、毎日やるような漢字の簡単なテスト、100点とってきました。もちろん先生の、「ここ出るで」とか、「明日やるから勉強しておいで」というような支援はあります。なので全くの0からの100点ではないかもしれない。しかしテスト時間はみんなと同じように、答えを書き写すことなく、自分の覚えた漢字で書いて先生に○をもらって、100点で返ってきました。これ、自尊心をすごく上げるんです。「僕、やったらできるんやん」。「今まではやってもできへん、一生懸命やっても友達からバカにされていた」。その子どもが変わります。

今までの教科書は何だったのか。私はすごいびっくりしました。子どもが、授業の中でついていける。45分間、いすに座って先生の言うことを聞ける。
特にADHDのお子さんは座って集中することはとても苦手です。「集中する」、皆さん、目の前で私がしゃべっていれば、それを聞こうとこちらを向いていただいたり、耳を傾けてくれたりするんですが、そういうお子さんはちょっと廊下で物音がしたりすると、気がぱっと振れてしまうんです。そこで集中が途切れて、先生の言っていることがつながらない。それが、「この先生が言っていること、僕わかる」。たったそれだけの刺激で集中してついていけたりするのです。その助けになっているのがDAISY図書だと私は思います。
私の息子が本当にガラッと変わったので、これだけお話ししているのですけれども、すべてのお子さんにDAISY図書というわけでもないと思います。先ほど話があったように、点字図書のほうがわかりやすいお子さんもいらっしゃると思います。拡大図書、字を大きく印刷したものの方がいいというお子さんもいるかもしれません。

でもDAISY図書というのは点字にも変えられますし、拡大して印刷も可能です。その子に合った、その子の求める形での教科書制作、図書制作ができるのです。
例えば、今あそこに黒い画面に白字で打っています。これが白地に黒のほうが読みやすい人もいれば、後ろはブルーの方がいい、白地の方がいい、ちょっと暗めな方がいい、いろいろなニーズがあるんです。そのニーズというのは印刷物ではその子に応じて変えることはできません。しかし、DAISY図書というのは、フォントも変えられるし、その子に合った字の大きさも変えられます。それはいろいろなニーズをもった子どもたちに必要なものではないかと思っています。

今日配布させていただいた資料の一番後ろの方に、「DAISYって何だろう」というのがあります。今、DAISYと言っていますが、何かよくわからないという方、いらっしゃると思いますが、これはパソコンで読むデジタル図書です。
今、真ん中に画像があると思うのですけれども、挿絵の横に「そこで子ブタが言いました」のところ、ハイライト表示になっています。これ、画面では黄色い帯で黒字になっていて音声と同期しているんですね。音声が読んでいると、そこの部分がハイライト表示になります。例えば先生が教科書を読んでいて子ども達は教科書を開いていても、先生が読んでいるところがわからなくなるのですが、このDAISYはハイライト表示してくれるので、あ、ここを読んでるんやと目線が外れても戻ってこられるのですね。ちょっと目線を外したらどこを読んでいるかわからなくなる子にとっては、この支援というのはとてもありがたいものです。

このDAISY教科書は、今、文部科学省さんは配っていません。すべてボランティアベースです。私たちの子どもを含めた会が日本障害者リハビリテーション協会さんのボランティアに提供していただいていますが、すべてを網羅しているわけではありません。残念ながらすべての教科書ではありません。国語とか社会など限られたものです。
子どもたちが、よりよい環境になるため、来年以降どうしたらいいのかという提案を、印刷物の中のパワーポイントの一番下のところに書かせていただきました。マルチメディアDAISY化して無償提供していただきたい。私たちの子どもにとってマルチメディアDAISYの教科書というのは印刷物の教科書と全く同じだと思っています。だから無償提供していただきたい。
ほかにも下に三点ほど書いてありますので、時間もないことですのでお読みいただけたらありがたいと思っております。お聞き苦しい声で失礼いたしました。

井上●
どうもありがとうございました。引き続きまして日本ALS協会副会長の橋本操様からご発表いただきます。よろしくお願いいたします。