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歓迎の辞

知的所有権―我々の未来を鼓舞するもの

フランシス・ガリ(Francis Gurry)
世界知的所有権機関(WIPO)事務局長

人類という種としての私たちを特徴づけるのは、その知恵です。この特性を重んじ、私たちは自らに、ホモ・サピエンス(賢い人間)という名を与えることさえしました。また、この特性により、私たちは繁栄を許されてきたのです。

フランシス・ベーコン(Francis Bacon)は、「知は力なり」と言いましたが、まさに、知識は私たちをこの惑星で最も有力な動物にしました。それは私たちを、1万年前の孤立した狩猟採集民の小集団から、今日の相互に結ばれた国際的な情報収集者の集団へと発展することを可能にしてきました。今では、30億人を超える人々が携帯電話で結ばれ、約15億人がインターネットでつながっています。

私たちが身を守り、気晴らしをし、自らを養い、自立するために、ますます技術に依存するようになるにつれて、その背景にある革新性と創造性の価値も、これに呼応して高まってきました。

さらに、社会の相互依存が進み、革新性と創造性に、国境を越えた世界的に認められる価値が付与され、共通通貨のように広く受け入れられるようになりました。それは、それ自体(医学画像あるいは素晴らしい音楽)に多くの利点があるだけでなく、それによって経済的な利益をも生み出すことができる通貨です。したがって、そのような通貨の創造を促進し、それを管理し保護するための、国家内および国家間の知的所有権制度の構築は、ほぼ避けられないことなのです。

技術進化の速度が増すとともに、また、それが経済的・社会的福祉においてますます中心的な役割を果たすようになる中で、知的所有権制度に焦点が集まり、その存在が際立っています。世界知的所有権機関(WIPO)は、長年比較的目立たない存在でありましたが、知的所有権の問題を扱う主導的な政府間フォーラムとして、このように注目されるようになってきました。

WIPOは以下について先導的な役割を担っています。

  • 国内および国際レベルでの公共政策目標を達成するために使用可能な、バランスが取れた、アクセシブルで国際的な知的所有権制度の継続的な構築と開発
  • 革新性と創造性を刺激し、普及し、経済発展のために活用するだけでなく、市場の秩序を確立し、混乱や不正行為に対抗するための、知的所有権制度使用の促進と奨励
  • 気候変動、食の安全、健康管理、および広がりつつある国家間の知識格差に関連した問題など、国際的な課題への取り組みに役立てられる知的所有権に基づく解決策の確認
  • 知的所有権に関する情報の主な情報源かつレポジトリとして、世界的なデータベースの開発、経済分析および統計の提供、専門用語と翻訳能力の強化

技術開発のスピードには、1895年の英国王立協会会長ケルヴィン卿(Lord Kelvin)(「空気より重い空飛ぶ機械など不可能である」)から、1943年のIBM会長(「コンピューターの世界市場はたぶん5台くらいだと思う」)、そして1981年のビル・ゲイツ(Bill Gates)(「誰だって640Kで十分なはずだ」)に至るまで、専門家でさえも常に驚かされています。

この絶えず拡大し続けている技術的知識は、特許制度によって記録・保護され、膨大な実質的(かつ潜在的)価値を持つ資産が形成されるのです。