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「DAISYによる教科書づくりを考える」 -欧米から学ぶ-

セッション1:各国のDAISY版教科書提供の現状

未来に向けたDAISY教科書

エドマー・シュット
デディコン

皆さん、こんにちは。オランダのデディコンで仕事をしておりますエドマー・シュットと申します。本日はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。今日お話をしたいと思っているのは、ハイブリッド図書についてです。オランダの教育界で使っているものであります。

スライド1

(スライド1の内容)

デディコンというのがどういう組織かということ、それからハイブリッド図書とはどんなもので、どのように使われているのかというお話をさせていただきます。さらに、学習用のハイブリッド図書、それから実演して製作についてのお話もさせていただきたいと思います。

スライド2

(スライド2の内容)

デディコンはオランダにおいて最大のアクセシブルコンテンツ製作社です。3万人以上の利用者にサービスを提供しております。視覚障害者それからディスレクシアの人々で、6歳以上の方から、どのような年齢層の方にも使われています。製品の中身ですが、娯楽用の図書、それから新聞や雑誌そして教材を扱っています。それから点字、音声。音声はDAISYフォーマットです。5年ぐらい前から使っております。それから電子テキストとハイブリッド図書も作っております。CDで本を配布しております。来月にはストリーミングサービスを始めることになっています。1年間に160万CDを作っておりまして、かなり多いですね。

スライド3

(スライド3の内容)

私どもとしては新しい流通システム、すなわちストリーミングというのが新しいものとして将来的に使われるようになるということを期待しています。

スライド4

(スライド4の内容)

ハイブリッド図書とは何かについて皆さんご存じだと思います。簡単にご説明します。まずフルテキストの図書、つまりテキストのみの図書があります。多少挿絵があります。それからもう1つがフル音声の図書。音声のみの図書があります。ハイブリッド図書というのは、その2つを組み合わせたもので、マルチメディアとしてこのテキスト・音声を組み合わせることができます。そしてこの2つが同期化されております。また後でデモを通じてご説明したいと思います。

スライド5

(スライド5の内容)

音声を聞くと同時にテキストがその部分ハイライトされます。したがってどこを読んでいるかが分かります。画面上で見ながら耳から聞こえてくるという仕組みです。ナビゲーションも簡単にできます。本の構造は非常に分かりやすくなっています。見出し、ページ、文または、単語レベルでナビゲーションすることができます。それからまたハイブリッド図書というのはどこでもテキスト検索することができます。見つかると同時に、また音声・テキスト両方を見たり聞いたりすることができます。また画像を提供することができます。

スライド6

(スライド6の内容)

1つ我々にとって重要なのは、もともとの活字のレイアウト、これを維持することができます。子どもたちは他の生徒、クラスメートと違う本があるというのは嫌です。オランダの状況というのはイギリスと似ていると思います。ですからほとんどの生徒は、普通の学校に通っています。特別な存在になりたくなくて、他の子どもたちと同じということを望みます。したがって他のクラスメートと同じ本、教科書を手にして勉強したいという、そういった気持ちが非常に強いと思います。

先ほど説明しましたけれども、1つのメリットは、目で見るものと聞こえるものがまったく同じであります。したがって何を読んでいるかがよく分かります。特にこれはディスレクシアの人たちにとっては重要です。そしてこれはディスレクシアの人たちだけではなく、例えば新しい言語を学ぶような人たちにとっては重要です。外国語などを学ぶ場合、これは有効です。これを通じて何を読んでいるかを理解し覚えるのが容易になります。

もう1つハイブリッド図書の長所は、レイアウト、またいわゆる視覚的表示を調整することができます。フォントサイズ・色などです。これは簡単にできます。例えばフォントサイズを何にしたいのか。ないしは行間・スペースをどうするかと自由に決めることができます。こういったハイブリッド図書というのは、弱視の人たち、ディスレクシアあるいは学習障害がある生徒、ないしはネイティブスピーカーでない人たちにとっては非常に有効です。

スライド7

(スライド7の内容)

私たちは他の主な出版社、特に子どもたちのための本を作っている、ないしは学習教材等を出版している会社と一緒になってやっています。また、私たちはこういった出版社と緊密な連携を図りながらいろいろな活動をしていますし、このようなハイブリッド図書を自分たちのために作ってくれないかという働きかけは比較的多くあります。

皆さんご存じかと思いますが、DAISYのソフト、読むためのソフトがあります。しかしどれも私たちが作っているこの図書には合っておりません。ですから私たちデディコンにおいては独自の読むためのモジュールをつくりました。これはハイブリッド図書をサポートすると同時に、またダブルハイライトをサポートしている。ダブルハイライトは後でご説明します。軽量のプレイヤーです。インストールも不要です。ですからCDに載せて、そこからスタートすることができます。何かを新しくインストールするというようなことは必要ありません。ただ、今現在Windowsでしか見ることができません。

そして同じモジュールを使って、オンライン、オフラインの両方を見ることができます。オンライン、オフラインのバージョン、また後でデモンストレーションを通じご紹介したいと思います。

それからまた、ごく簡単に他のソフトウェア・パッケージへの組み込みができます。オランダの1つの出版社、このハイブリッド図書を作っている会社ですけれども、ここはもっと大きなソフトウェアのパッケージの一部として作っております。そこがリーディングモジュールが欲しいということで、私たちのリーディングモジュールは、このソフトウェア・パッケージの中に組み込まれておりますので、独立した、孤立したものではありません。私たちは音声のスピード調節ができるだけでなく、巻き戻し、いわゆる戻すことができますし、またもっとゆっくり速度を落として聞くこともできます。特に読むのが困難な人たちにとってはこれは非常に便利であります。

スライド8

(スライド8の内容)

それに加えてもう1つ、このリーディングモジュールにおいては、いくつかポップアップ画面を通じて単語の説明を提供するという、そういった機能もあります。小さなプレイヤーですけれども非常に速いプレイヤーであります。後でまたお見せしますけれども、かなり速く本をナビゲーションすることも可能な、そういったモジュールになっております。

私たちが今現在出版している3つの製品をご紹介したいと思います。まず最初は、子どものためのリーディングメソッドというものであります。2つ目はコーランのオランダ語訳です。3つ目ですけれども、これはまた別のリーディングメソッドですけれども、ディスレクシアの子どもたちのためのものです。その違いはと言いますと、まず最初のもの、これはいわゆるソフトウェア・パッケージに組み込まれたリーディングモジュールとなっております。そして2番目、これは独立したリーダーで、3つ目はオンラインのものです。ですからちゃんとオンラインでつながることを祈っておりますが、ぜひ見ていただきたいと思います。

今、ここにオランダの出版社が出版したオランダ語の本で…私、日本語のものはもらっても分からないのでオランダ語のものをお見せしたいと思いますけれども、こういった小さな本には、非常に簡単なレイアウト、そして絵が少しあり、簡単なテキストが含まれています。ただテキストの中でいくつか説明が必要な単語があります。私たちはこの本と同じレイアウトをここで再現しようとしています。子どもたちは同じものが欲しい。クラスメートと同じものが欲しいという気持ちが強いので、まったく同じレイアウトを採用しております。

スライド9

(スライド9の内容)

画面上を見ていただきたいんですけれども、これが左側のページをコピーしたものでありまして、まったく同じレイアウト・色。唯一フォントを多少調整しています。と言うのは、私たちは同じものを作れませんのでフォントだけ違います。一番下のところにコントロール機能があります。非常に簡単なリーダーです。再生、一時停止、停止ボタンしかありません。フォントを拡大することができますし、またスピードを調整することができます。これはハイブリッド図書です。したがってオーディオが聞こえる限り、テキストがその部分ハイライトされます。音声が流れるといいんですけれども。

(オランダ語音声)

今音声が聞こえました。音声に合わせてどこを読んでいるかがハイライトされます。色がついた形でハイライトされました。したがって、どこの部分が今読まれているかがよく分かります。いくつかの言葉は下線がついています。画面上見ていただきたいんですけれども、下線が引かれていれば、これをクリックしますとポップアップ画面が出ます。

(オランダ語音声)

このポップアップを通じて、その言葉の解説が提供されます。これもまた音声で流れます。それからもう1つ、拡大することができます。このレイアウトを拡大することができます。拡大ボタンを押しますと、いくつかの段階で大きくしていくことができます。ですから例えば弱視であった場合、他に何もツールを使わずして大きくすることができます。ハイライトされているテキスト、これは常に画面の中央に位置しております。したがってスクリーンがどんどん移動していきます。

(オランダ語音声)

常にスクリーンの真ん中を見ていれば分かります。拡大からまた元のサイズに戻すことができますし、次のページないしは前のページを見ることもできます。それからまた再生のスピード。例えばどこでもクリックすればそこからスタートします。少しスピードを上げます。

(オランダ語音声)

では速度を落とします。

(オランダ語音声)

私どもが出版社のために作ったハイブリッド図書のデモンストレーションでした。これは通常のテキストだけではありませんで、ここには漫画も出てきます。日本では漫画が非常に人気があると伺ったので、これをお見せしたいと思いました。皆さんご存じかもしれませんけれども、これは西ヨーロッパで非常に人気のある漫画です。ここでもクリックすればどこからでもスタートすることができます。

(オランダ語音声)

皆さん、イメージはつかめたと思います。出版社はDAISYを使ってやっているということを知らないんです。私たちはDAISYを使っているかどうかはまったく気にしていません。もちろん我々としてはアクセシビリティの上で重要であると思いますけれども、相手は知りません。この出版社は私たちのこのデモンストレーションを見て、とても気に入っております。他の出版社もそれを見て、自分たちも欲しいと言ってきております。

それでは次にコーランのオランダ語訳のデモンストレーションをしたいと思います。ごく簡単にお見せします。

これは1,600ページに及ぶ本ですけれども、このオーディオは文章レベルで同期化されております。1,600ページもありますので、ちょっと時間がかかるんですけれども。前回どこまで読んだかが分かります。だいたい真ん中ぐらいだと思いますけれども、ここでもどこからでもスタートすることができます。クリックさえすればそこからスタートできます。このような本の場合、ページの番号ですとか、そしてまたフレーズ、どこからというようなことを指定し、そしてナビゲーションができます。ここでもまた拡大することもできますし、また、違うスタイルシートを選択することができて、テキストの表示の仕方、例えば色を変える、背景の色・文字の色を変えるということも簡単ですし、そしてまた文字の間隔ですとか行間などを変えることも可能です。

ここでもナビゲーションのオプションがありますので、ごく簡単にナビゲーションができますし検索のオプションもあります。どんな用語でも検索できます。そこで検索の結果が出ます。今検索中。1つしか見つかりませんでしたね。クリックをしますと、そこから読み始めます。

(オランダ語音声)

これもまたハイブリッド図書の例です。

そして最後、これはオンラインのハイブリッド図書です。これもまた子どもたちのための話です。オランダ語ですけれども。ハイブリッド図書はオンラインでもオフラインでも同じモジュールで見ること・読むことができることを見ていただければと思います。

画面上には本のカタログのようなものが出てきます。いろんなレベルがあるんですけれども、私がよく知っている本の例をここでお見せしたいと思います。出てきましたね。これを再生しますけれども、先ほどの本と違って、こちらはワードレベルでハイライトされます。先ほどのは文章レベルでありました。ここでダブルハイライトを見ていただきたいんですけれども、読んでいる文章がハイライトされると、そこの文章の中でどの単語を読んでいるかというのが、また別のハイライトで表示されます。すみません、すごく短かったんですけれども。もう少しお見せしますね。

(オランダ語音声)

これはちょっとデモンストレーションには向かないので閉じたいと思います。これもまた印刷した本とまったく同じレイアウトであります。右側に挿絵、左側にテキストがあります。テキストをどこからでもクリックして始めることができますけれども、ただここでは文章ではなく単語でハイライトされます。

(オランダ語音声)

これが単語でハイライトされている本の例でした。こういったものをとても気に入っている人たちがいます。自分たちがどこの箇所を読んでいるかが分かっていいと言う人たちがいます。どういった文脈の中の、どういった部分を読んでいるかがよく分かるという感想が寄せられております。

では先ほどのパワーポイントに戻りたいと思います。

こういった本がどのように製作されているかの簡単なご説明です。私たち、元の出版社からはPDFファイルしかありませんので、PDFファイルをもとに作ります。そして変換ツールを使ってHTMLに変換します。そしてそれによって言葉がどういった位置にあるのか、本のレイアウトがどうなっているかが分かります。それに基づいて、その結果いろいろと変えてDAISY2.02の本に作り替えます。私たちはEase Publisherを使っております。ドルフィン社のEase Publisherを使ってナレーションを入れて、テキストとオーディオの同期化を図ります。その後になりますけれども、Dreamweaverというものでありますけれども、これを使ってレイアウトの問題を修正します。まだロード集約型の作業であると言っていいと思います。

スライド10

(スライド10の内容)

そしてさらにここで単語レベルの同期化を図りますと作業は複雑になりますけれども、同じ方法を使っています。PDFをHTMLに変換します。そしてこれをDAISY2.02に変換します。一方で別に オーディオを製作します。ですから1つの製作ツールではなく、別なツールで、テキストとオーディオをそれぞれつくります。オーディオとテキストをオランダのフィリップスの変換ツールを使って、自動的に単語レベルで同期化させます。結果的に、単語ごとの時間情報が記入されたXMLファイルができます。それをまたDAISYの構造へと変換し直します。そして最後にレイアウトの調整を図ります。最終的には文章よりも単語レベルの同期化のほうが簡単です。と言うのは他のツールを使って同期化が図れるからです。

スライド11

(スライド11の内容)

以上がプレゼンテーションでした。皆さん、何か関心を持っていただければ幸いです。私たちがいかにこのようなハイブリッド図書を作っているかご理解いただければ幸いです。ご清聴ありがとうございました。

スライド12

(スライド12の内容)