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デイジー活用事例集 小学校高学年

読み飛ばし、勝手読みがほとんどなくなった。口を開いて平素の想いを低学年の時のようにしゃべるようになったことが一番の変化

島根県浜田市立松原小学校教諭 大山 英子

1.本人の現況

小学校5年生(11歳)、女子。診断はなし。軽度の知的遅れと眼球運動の苦手さがある。読みの特徴としては、読み飛ばし、部分的な逐次読み、文末の勝手読み、文意がなかなかとれない等がある。

デイジーを使用する前に受けていた読みに関する支援は次の通りである。この支援は現在も続けている。

○国語の時間(1時間/総時数中)の取り出しによる授業

音読及び読み取りを中心にして、本児のペースに合わせた個別の指導を、小2後半より実施。

○教科書へのルビふり

デイジー以外の読みの支援を受けている。

○ビジョントレーニング

「しっかり見よう」理学館 などのソフトを活用

○見て写す力

「マスコピー」大阪医科大学LDセンターなどの活用

「5分間視写」(担任による一斉活動として)

2.デイジーの活用による支援

デイジーは小学校3年生より使用を始めた。2年生から3年生へと学年が上がり、急に教科書が分かち書きではなくなったこと、量的増加、内容の抽象性、字のポイントが小さくなったことなどのため、音読・読み取りが極端にできにくくなった。これまで、耳で聞いて覚えて、音読などの場面に対応していた本児にとっては限界であったようだ。また、たどたどしい読みを強く自覚するようにもなり、学習全体への拒否反応が出始めた。

学習の定着がなかなか図れないこと、視機能の未熟さが見られたので、通級による指導を開始。その指導の中で、上記のような本人からのサインもありデイジーを取り入れはじめた。

デイジーの使用期間は、小学校3年生から4年生までである。

複式教育により、3年時に同一教室内で4年生の教科も耳にするため、国語に関しては興味を持つ単元はデイジーにて先取りして聞かせていた。社会、理科に関しては、2年間かけて3、4年の授業を受けるため、3年時に4年の内容が半分入ってくる。単元により、教科書に入りやすいように、デイジーを提示した。

デイジー図書は、『ねずみのよめいり』(日本障害者リハビリテーション協会)、『シロクマくんのひみつ』(同)、『フランダースの犬』(同)を利用した。

デイジーは、パソコンを使ってAMISで再生している。

個別学習の教室で、通級指導教室担当者と使用している。週1回の巡回による指導の時間を使い、国語を中心にして授業単元に即して(できるだけ先行するようにして)、音読、読み取り及び漢字学習を中心に、デイジーを使って学習した。担任が随時、課外の個別指導の時間においてデイジーを使って指導している。家庭での使用環境は叶わなかったので、学校にソフトを置いて本児が希望すれば、自分でパソコンを操作して使用できるように理解協力してもらっていた。

デイジーを使用するようになり、読み飛ばし、勝手読みがほとんどなくなった。声に出して読むことに抵抗がなくなり、自分の目と声で確認しながら教材を読みすすめていけるようになりつつある。

何より、口を開いて平素の想いを低学年の時のようにしゃべるようになったことが一番の変化だと思う。また、敬遠していた図書館の本にも、自分から手を伸ばすようになりつつある。

情報の届きにくい物的環境、人との違いを認めにくい地域の特性、異学年と同じ教室で学習していかなくてはならない学習環境など、中山間地ならではの課題満載の中でのデイジーとの出会いは画期的なものであった。

教職員はもとより、保護者や共に学ぶ仲間たちに理解してもらえたことは、本児にとって何よりも大きな支援に繋がった。更には、本児自身が読みに関しての課題解決に留まらず、自分の中の良さをも認める機会となった。これにより前向きに毎日を過ごそうとしだしたことは、本児の明日に繋がっていくことと考える。

今後は、学習に限らず、自分自身で上手く支援を取り入れて生活に生かせるような力をつけていってほしいと願っている。