「生涯、情報にアクセスできる社会を目指して」

ICT CONNECT 21 イベント

2017年2月17日(金)
場所:インプレスグループセミナールーム
主催:ICT CONNECT 21
講演会告知:https://ictconnect21.jp/recruit-and-events/event2017_01/

司会
我々ICTコネクトというのは、様々なICTの団体企業及び省庁をつなげることを目的とした団体です。 

今回の企画、情報のアクセシビリティをテーマにしたのは今日、いらっしゃっている皆さまの所属が多岐にわたっていること、河村先生が図書館関係に詳しい方ですし、アクセシビリティの活動でも多岐にわたっているということで、いらしている方同士、名刺交換などしていただければつながりも増えると思っています。
今日は当会の赤堀会長がいらしているので挨拶を。1分お時間いただければ。

赤堀
今日は日本DAISYコンソーシアムの河村先生をお招きしてということで、楽しみにしております。私どものICTコネクト21は名前のとおり、コネクトする。
今回は日本DAISYコンソーシアムとのコネクションによって、このような会が持てることをうれしく思っています。
小中学校で発達障害の子どもたちが約3.9とか8%とか聞いています。

40人クラスだと3人ぐらいいる。
それは本当に障害なのかと考えると、人はそれぞれ長所も欠点もある。
それが人間の本質だと思います。

そう考えるとみんな同じ、アクセスの権利を持ち、また、表現する力を持ち、それを認め合い、お互いに評価し合う時代だろうと。そのとき、ICTが役立つことはご存じのとおり。
その点で、今日の河村先生の講演を楽しみにして勉強させていただきたいし、皆さん、活発な議論をいただき、今後の日本の教育のためにご尽力いただきたいと思います。
この企画は寺西、石坂等の協力によって、今日の会ができました。
聞くところによると、インプレスの立派な会議室は安田編集長の協力を得たということで、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。以上でございます。

司会
さっそく、ご講演をいただきます。

河村
こんにちは。
ご紹介いただいた河村です。
今日は、理論的な話より、よりというか、理論的な話はあまり得意ではなくて、私の体験的な話が中心になります。
又聞きの話はできるだけしませんので、いろいろ足りないところがあるかと思います。
それは後半で30分ほど、皆さんで意見交換できる時間を取るので、そこでそれぞれ、ここにはいろいろな専門の方がいらしているので、それぞれのお立場から補っていただければありがたいと思います。

私の今日のテーマは、技術的なキーワードが3つ。
EPUB、DAISY、そしてW3Cです。
EPUBは電子出版の国際標準規格になっています。
既に大手のIT企業のすべて、Amazonまで含めてEPUBを受け入れる。
Amazonの場合はEPUBにラップをかけて、自分たちの独自規格のラッピングをして出荷していますが、Amazonも出版社、あるいは著者から出版物を受けるときはEPUBで受け入れています。
その意味ではAmazon含め、EPUBは国際標準になっていると申し上げていいと思います。特にIBMの場合、かなり早い段階でEPUBにすることを推奨すると。とくに社内ドキュメントですね。
社内におけるドキュメンテーションのアクセシビリティを確保するうえでは、大変重要な取り組みで、私は高度に先端的なIT企業と呼ばれている多くの企業、GoogleもAppleもIBMもマイクロソフトも、みんなこぞってEPUBを推奨していることに特に注目しています。
私自身は、自己紹介という形で、字が小さくで恐縮ですが。

私のもともとの背景は、長いこと東京大学の総合図書館にいて、図書館の仕事をしておりました。
そのとき、1977年ですが、全盲の、初めて点字で合格した学生、石川准さん、著明な方ですが、当時は19歳の青年でした。
全盲で初めて点字受験で入った学生でした。
石川さんが入ってくるということで、私のいた図書館は本郷にありました。
東大の学生は最初、駒場に2年間います。本郷に来るまでには2年あるので、駒場の方たちは大変だったと思いますが、私のほうは、その2年の間にどう準備をして、本郷の東大の総合図書館をどう活用していただけるようにするかの準備に入りました。
そうこうするうち、当時、全国の大学にいる学生さんはどうやってるんだろうということが疑問になってきました。
それまで、大学の図書館同士の話し合い、あるいは交流の中で、全盲の学生さんがいるはずだが、それぞれの大学でどう支えているかという話は一向に聞こえてきませんでした。
たまたま私が聞き漏らしたのか、実際何もやってないのか。

面接しようとなり、あちこち、当時在籍していた大学生の、主に全盲の方、弱視の方も1~2名いましたが、面談をしていただきました。
それでわかったことは、1977年、もう随分昔ですが、何も世話をかけないということで、やっと受験をさせてもらえるという時代でした。
大学には一切お世話をかけない。
入試問題の点訳も、解答の点訳も、全部、学生を送り出す盲学校の先生たちが頑張ってやりますから、何とか試験を受けさせてください、という時代でした。
それでも受験を拒否される。
受験を認めてくれるだけでもありがたいという時代でしたね。ことほどさようなように、それぞれの大学で、面談すればするほど、大学は何もやってないということがよくわかりました。
そういう状況ではよくないということを、私どもの図書館の中で話し合いました。
その頃、学内の卓球大会で優勝した選手が、突然足を骨折するという事態になりました。
骨折したのに、本人が言うには、胸のレントゲンを撮っているんだと。
足の骨折なのに変な話だと私は思いました。

ちょうど私の親族がガンを患った直後だったので、何となく胸騒ぎがして、これはもしかしたら長引くかもしれない。
最初は膝下の骨折だったけれども、もしかしたら、もっと進むかもしれないと思いました。
まずは、車いすや松葉杖でも使える図書館にしないとねと、職場では話し合っていました。
ちょうどそのときに、石川准*1さんという全盲の学生さんの入学がありました。
ですから、職場の雰囲気としては、職員が働き続けられるように整備しようということと、いろんな障害を持った学生さんがキャンパスにいておかしくない。 だから、その学生さんたちをどう支えるかの業務を検討しようと。
それがうまく合体しまして1年間、そのための業務のための委員会を設けて、私がその委員になって。その委員の活動として、あちこちの学生さんに面談をしました。 本当に何も、大学としてはやっていないことがよくわかりました。
ボランティアが支えている。
それも自分の家族あるいは友人、特に学友がボランティアをして点訳をしたり、当時、カセットテープに吹き込んだりして支えてくれているけれども、実際にどれぐらい本を読めているかというと、ほとんど読めてないという状態でした。
学生さんがほとんど本を読めない状態で、どうやって学業を続けるのかというのは、当時これは何とかしなければという思いにかられたわけです。
その中で、当時、ICUにいた全盲の学生さんから、東大に石川さん以外に視覚障害の学生さんがいて苦労していますという話を聞きました。
全然知りませんでした。

それで連絡先を教えてくださいといって、野村茂樹*2さんという強度の弱視の学生さんと会うことができました。
学内にいるにもかかわらず私どもは知りませんでした。
野村さんから、自分は使えないんだと思いながら図書館の横をいつも歩いていましたという話を後で聞いたわけです。
この2人の学生さんが私の障害と関わる最初の出会いですが、そのほかにも当時、早稲田に車いすの学生さんがいらしたり。
あるいは、これは医科歯科大学ですが、医師免許を取ろうと思って学習していた学生さんが失明をした。当時の医師法は失明すると医師の資格は取れなかったんです。
もう医師としての道はあきらめるんだけど、どうしたらいいんだろうかという相談に見えたり。いろんな方と出会うことができました。
私自身、図書館として何ができるかという解決は、レファレンスサービスがすぐにできることだなと思いました。
これは、参考調査と言います。
国会議員の方が国立図書館の参考調査を非常に活用しておられるんですね。
各国の法律の比較をこのテーマについて出してくださいと言うと、国立国会図書館には参考調査専任の司書の方がいて、調査をしてレポートをする。
アメリカの議会図書館をまねて日本もそうしているので、国会議員の方たちは非常によくご存じだと思います。
かなりのまとまった調査を依頼しても、参考調査はしてもらえます。
この問題に関する文献リストと言うと、図書館員というのは大の得意なので、ものすごいリストが出てきます。
少なくとも自分が読みたい本をピンポイントで見つけることは、すごく難しいだろうと。本、あるいは論文ですね。
そこに参考調査を入れることによって、できるだけ自分は手間をかけないで、ある程度、精選されたものの中からこれだけは点訳してもらおうとか、これだけはカセットに入れようと。

そこから先は、図書館にはリソースはないけれども、そこまではできるなということで、参考調査は一生懸命取り組むようにしました。
野村さんの場合は強度の弱視で、お医者さんから、いくら読んでもこれ以上悪くならないというお墨付きをもらったそうです。
確かに今でも拡大読書器を使って弁護士活動をされてます。その野村さんは、最終的には卒業時、拡大読書器を使って初めて司法試験を突破した方になりました。
今も弁護士をして、大活躍をされている方です。
もうこれは一発で決まりだと。
つまり当時70万円もする機械でしたけれども何とか予算を獲得して、拡大読書器を提供することで何とか読めるようになる。もとの活字の20倍にします。
六法全書は段組してあるんですが、その1段がこんな大きなスクリーンにも入らない。
1段を読むにも縦に上下して読むという大変な苦労をされるんですが、それでも読めるということで非常に集中して勉強されまして、見事、司法試験を拡大読書器を使って突破した第一号になりました。
石川さんは全盲ですから、できるだけ点字か音声で情報を得たい。
専攻が社会学でした。当然、大学院にも行く。
最終的には大学教授になられたので、たくさん本を読まなければならない。
特に外国の本を、社会学の場合は読まなければならないということで、外国からどうやって読めるフォーマットの本を取り寄せるかということで、かなり精力を集中しました。
結論として、主にアメリカに、いいリソースがあったということです。レコーディング・フォー・ザ・ブラインドという団体から、カセットテープになっているものを借りる。

100冊ぐらい借りましたかね、かなりの量を借りています。
1冊、録音時間は20時間です。
当時、特別なカセットテープでした。
スピードが半分、トラックがステレオ2つに分けて片面ずつ使う。しかも、もっと凝ってるのが片面ずつが入れ違いになってます。
つまりステレオのプレーヤーで再生しようとすると、反面は聞けるのですが、もう片面は逆回転になっていて、両方聞くと何が何だかわからない。
なぜかというと、まずはカセットテープを4倍に使いたい。
カセットのボリュームを減らしたい。
これはアメリカが独自に考えて作った規格です。
アメリカとしては、この規格を何とか世界中に広げたいと国際活動をやっていました。
それに対して、イギリスは、普通の標準カセットではなくて、カセットを大きくすればいいということで、大きい8トラックカセットを独自に作っていました。
そちらのほうが音質もいいし、ハンドリングもしやすいと言ってました。
この両方がガチッとぶつかりあって、何とも妥協がなくて。
私どもは結局、イギリスからは借りなかったので、標準速とアメリカの4トラック用のプレーヤーは入手しました。
オーストラリアやカナダは大変な目にあいました。
イギリスのものを入れる団体と、アメリカのものを入れる団体。
ある団体は両方借りたり。
それぞれに専用のプレーヤーが必要なんです。
普通のカセットプレーヤーは、見た目は同じですが、中のフォーマットが違うので、普通のカセットプレーヤーではアメリカの長時間、4倍入るものは使えなかったんです。

アメリカのほうはあまりはっきり言ってませんでしたが、実は著作権対策の意味もあると、ボソッと、そのフォーマットを提唱したアメリカの議会図書館の担当部門の長が言っていました。
つまり普通のカセットでは聞けない。だから著作権者が文句を言わない。
そういうメリットもあると言ってました。いろんな理由でカセットが統一されてない、録音図書も国際的に貸借するのは大変な時代でした。
もう1つ、石川さんがどうしても必要なのは文献検索でした。
社会学では広い文献検索をして、その中から自分のテーマを絞り込んで研究する。
そのリファレンス、人にやってもらってもしっくりこないので、何とかオンラインのデータベースにアクセスできないかと。
当時は全文データベースなんて、しゃれたものはまだなかった。
でも、書誌データベースですね。メタデータのデータベスのようなものがあって、自分で検索できるようにする、それを私の課題として取り組みました。
最終的には図書館として、研究費を文部科学省に申請して、300万ほどいただきました。
当時の点字ディスプレイって300万ほどしました。
それをイギリスから輸入して、最初は300bps(ビット・パー・セカンド)。
そのあとすごくよくなったといっても、1200bps。
そのカプラー、モデムにつなぎ、大型計算機センターとつなぎました。そこのメインフレームから当時、今でいうインターネット、バックスというシステムに入ると、ログイン、ログインを繰り返してインターネットに入れる道がありました。
それでインターネット上の文献検索をする。
石川さんは、たぶん世界で10番目ぐらいに、オンライン検索が点字ディスプレイでできる、図書館のサービスを受けたことになると思います。
そのときの私どもの一番の苦労は、ケーブルを作ることでした。
モデムと、イギリスで買った端末をつなぐケーブルを作るために、25本と25本の線のハンダ付けをしなければなりません。
これがまたトライアンドエラーで。ヤケドもしながら、ハンダ付けはうまくなりました。
もう1つはせっかくピンディスプレイを買ったんだから、自分で文章を点字で書いて、点字で確認する。
点字は原則かなだけです。
レポートを出すには、かな漢字変換をしなければならない。
まず点字でのかなの文章を完成させる。そのときにどうしても、外国語の引用が多いのでカタカナを使いたい。
そのため専用のコードを作りました。
そのコードを変換すると全部、ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字の日本語のテキストファイルになるというプログラムを作って、それを提供することをしていました。

そこら辺が私のバックグラウンドです。
なんで規格が大事なのか。
それと、IT、レファレンスを誰かに頼むのも便利だけど、自分でやらなきゃいけないところは自分でやりたい。
データや紙に書かれた文字を処理するにはITが必要。
この2つの大きな教訓を得ました。
とにかく外国にあるもので手に入るものは、片っ端から借りようというスタンスでした。
できるだけ、外国の、貸してくれそうな図書館と仲よくすることをやりました。それで国際図書館連盟の役員になり、情報収集をしました。
そこで得た情報は日本全国の図書館とも共有して、図書館全体として障害者への対応をよくする活動に入ったわけです。
当時、私は英語も下手くそでした。
みんなが言ってることも、あまりよくわかりませんでしたが。国際団体というのは面白いもので、ネイティブ同士がジョークを言い合っていると、非ネイティブの人は疎外された感じになって、ネイティブに対して反感が強まります。
国際図書館連盟の視覚障害者のための図書館の専門委員会に私はいたのですが、あるとき突然、ノルウェーの議長が辞めなければならなくなった。
選挙で議長を選ぶというときに、みんながなぜか私のほうを一斉に見て、私が投票で議長に選ばれてしまいました。
不思議だなと思って聞いたら、あいつは英語が下手だから、あいつに議長をさせれば何が話されたか完ぺきにわかる。
それで、非ネイティブの連中が衆議一決して私にしたそうです。
皆さんも国際的場面にどんどん出ていき、非ネイティブの悲哀を共有する。

日本は縦書きルビがあるし、そこから派生して組み版の問題とかありますね。
そういうのは、実はアラビア語圏とかインドの人たちと多分共有してるはずなんですよね。
ローマンアルファベットだけですむ国はそんなこと考えません。なんで?ってもんですよね。
ピンチがチャンスのいい例です。
苦労してる、苦労させられてる。
その苦労が、ほかの人の苦労と一致していると仲間づくりができます。
それをきちんとやっていくと、規格でいうとインターナショナライゼーション、国際化ができる。
チャンスに恵まれる。

ネイティブで英語だけしゃべってれば用が足りる人には、想像がつかないことがいっぱいあるはずで、その土俵に引っ張り込めは、こっちのものです。
ある意味、ただ縮こまってるのではなくて、困ってるのは困ってるけれども、それを生かす糧にできることを、ぜひここで申し上げておきたいと思います。
その結果、いろんなことをやっていて、1995年、もう待ったなしというときが来ました。
それは何が待ったなしかというと、いくつかの国の国立図書館で障害者へ情報提供してるところで、録音図書のデジタル化の予算が付き始めました。
特にデンマークが早かったです。
95年に執行できる状態になっていました。
ちょっと待ってくださいと言ったんですね。
それぞれの国でIT企業に委託して作るんです。企業に委託して作ったら、絶対にパテントを取ります。
デンマークでパテント取る、やがてドイツはドイツ、アメリカはアメリカで、イギリスはイギリスでやったらどうなるか。
互換性は誰も保証できません。

今まで3種類ぐらいで国際的に交換できていたものが、今度は国ごとに、下手すれば違ってくる。
しかももしかするとプロテクトをかけられるかもしれない。
そういういろんな検討しなくてはならないことが、一気にワッと出てきました。
私が当時、議長だった地位を利用して、2年間、待ってくれとそこで宣言しました。
2年の間に、とにかく国際標準規格を提案するから、その間、待ってください。誰もその間は、それぞれの国のものをインプリメントしないようにという要請をして、幸い役員一同、受け入れてくれました。それからが大変です。
規格を2年間で作らなければいけない。
今、申し上げたのは国際図書館連盟です。
みんな図書館員が集まっています。
図書館員は規格の開発なんて、やったことがないんです。
特に先端のITとはまったく無縁。使うのは使うけれども、私も含めて開発は思いも寄らないメンバーでした。そこから格闘、苦闘が始まりました。
2年間の間に結論を出さないと国際標準ができない。
それぞれの国がそれぞれスタートしたら終わり。10~20年後に私たちは何と言われるか。
お前たち何をやってたのかと。ここでバベルの塔みたいになったら、これまでせっかく世界中で点字図書・録音図書を交換しようとやってきて、国際郵便連合とも視覚障害者のための録音図書は無料にするというところまでいってたんです。
日本では、速達、航空便まで無料にするというところまでいっていた。
世界中で合意して、そういう情報アクセスを支えることは大事だと合意してきて、その上で図書館で交換してきたものが、我々がうかうかして、それぞれてんでばらばらに開発を進めてきたゆえに国際交換ができなくなるとしたら、後世の人から恨まれるよねと、あちこち脅かしました。とにかくみんな待ってくれました。
それはいいけど、開発しなければいけない。
そのためには2つ候補がありました。1つは、スウェーデンの当時、DAISYという名をつけて、パソコンで作り、パソコンで再生するデジタル録音図書。
特に今で言うナビゲーションですが、あるページにパッと飛べる。
カセットでは、これはできません。
それからある見出し、目次にパッと飛べる。
これができないと、デジタル録音図書とは言えないという、いいものを作っていました。ただし全部、マイクロソフトが提案しているWindows上の範囲の仕様になってますので、当時、Windowsでしか動きませんでした。
もう一方にあったのが、日本のシナノケンシという会社。
プレクスターブランドという非常に信頼性の高いCD-ROMのメーカーでした。
これはほかのものより高価で、信頼性が高かった。
その会社がCD-ROMドライブの技術と、もう1つ、音声の圧縮の技術を持っていました。
それを生かして盲人用録音図書を開発できないだろうかという相談に、当時の厚生省を訪れました。
厚生省から私に回されてきまして、国際標準規格にしないと売れませんよと、私から申し上げました。
せっかく作るなら、国際的なマーケットを展望して、長い仕事にしてみたらどうでしょうと申し上げました。
だいたい基本的に合意をいただいていたので、シナノケンシ社とスウェーデンのDAISYのグループとを、よく見ると、シナノケンシ社はどうやって作るかは二の次なんです。

プレーヤーメーカーなので、プレーヤーを作って普及させたい。
もう片方は作る、でも自分たちはプレーヤーを作れないから、DAISYは、作ったパソコンの上で見る。
パソコンを使えないと読めないというものだった。
これを両方とも合わせれば、いいものになるのではないか、競合もしないし。
両方に求められる検索性、ナビゲーションは同じものなので、両者に話をして、これから国際標準規格を作るんだけれども、協力してくれないか。
ついては、パテントによる独占というのは、ほかのパテントが出てきちゃうんで、実質的にパブリックドメインにするほうがいいと思うけど、どうなのかという話をしました。
両方ともしばらく考えた後、結構ですと言ってくれました。特にシナノケンシは、CSRとして取り組むのでそういうことでいいですと。
スウェーデンのほうは、開発元が国立図書館だったので、パブリックドメイン大いに結構ということだった。
それから本格的な開発が始まりました。
もう1つは仲間を増やすということがあって、最初は7カ国で始まりました。これだけでは足りないなということで、あちこち回って、少なくともアメリカとオーストラリアには入ってもらわなければいけないと、外交もやりました。
結果として、幸いに期限を守れました。
2年間で何とかこぎつけて、仕様を提案して、これでいいんじゃないかということに国際図書館連盟でなりました。
なってからが大変です。それを実際にものにする、物にしていくということです。
仕様だけなら簡単ですが、物にしなければなりません。
しかも、それにはコンテンツを作るのと、物流と、それから今まであったものを入れ替えていくという移行、それらを全部やらないとできないわけです。
そのときにまず、非常に抵抗を示したのは、高度に熟練したオーディオの専門技術者。
非常に抵抗しました。
もうあらゆる細かい測定をして、これじゃダメだということを言い張る人があちこちにいました。
オーストラリアに行っても、イギリスに行ってもいじめられたし。
何かというと、録音時間が再生するたびに違うと言うんです。
再生環境によって、確かに微妙に違うんです。
1秒とか。
そんなのいいじゃないと、私は思うんですけれども。
いや、マスターはそれはダメだと言われる。
それからビットレートとか、いろいろなスペックを高くすると、重くて大変なので、ビットレートはFM放送クオリティに抑えました。
FM放送クオリティに抑えたものでやったら、これじゃ話にならない、マスターにとてもできないと、どこでも技術者は言ってました。
でも、私からよく見ると、マスターは放送局顔負けぐらいの立派なレコーディングスタジオで、ものすごく高品質のものをすごい技術者が作ってるんですが、それをカセットテープにダビングして貸し出されている、聞いてるユーザーのほうはどうかというと、すり切れたようなカセットテープまで来ます。 かなり音質が悪かったりします。
ユーザーのカセットテープ品質は相当悪いんですね。FMクオリティどころか、AMにも及ばないほど、雑音がひどいものも結構ありました。
私の抗弁は、マスターの違いで比較してもらっても困る。
エンドユーザーまでデジタルコピーは同じ品質でいく、エンドユーザー品質で議論してくださいと申し上げました。
ユーザーはそれを理解しました。

ユーザーはサンプルを聞くと、なんといい音だと、言ってくれました。
それは非常に痛快でしたね。あちこちで技術者からの抵抗がありましたが、ユーザーからは非常に好反応が得られた。
極めつけは、日本の当時の厚生省と言ってましたが、その傘下にテクノエイド協会という団体があり、福祉機器の開発費用を出しているところです。
そこにシナノケンシから応募してもらって、プロトタイプのプレーヤーを500台作る。
それを世界中に、DAISYの規格を作ることに賛同した団体に10タイトルずつコンテンツを作ってもらって、世界中の1000人に聞いてもらって評価するということをしました。
大急ぎでやりましたが、本当に1000人に評価してもらいました。
結論は、音がいいというのが意外と思いました。
ユーザーの誰からも音がいいと。
それから機能、これもいい。今まで大変だったけど、これはいい。
当時、メディアでCDを使いました。
CD1枚に大体1タイトル入りました。
これは便利だと。今までカセットで何度も面をひっくり返したりしていたと。
それをテコに、流れはこっちだ、ということで、抵抗はいろいろありましたが、これは何かの製品ではなく規格として、世界中のどんなメーカーも仕事ができるように、幅広い仲間を作っていく。それによって読書環境を変えていくんだということで立ち上げたのが、DAISYコンソーシアムです。
現在、DAISYコンソーシアムはスイスに法人格を持っています。
日本からは、日本DAISYコンソーシアムといい、国内の数団体でメンバーをつくり、そこの高い会費を毎年納めています。
なぜ会費が高いか。
DAISYコンソーシアムは一級の、世界中どこに行っても一流で通る技術者を雇用しています。その技術者たちに、これを開発してくれという明確な課題を与えて開発をやってもらっています。
その開発の成果の1つが、ごく最近のEPUBアクセシビリティ1.0。
これは、主にDAISYコンソーシアムの技術者が中心に開発した成果物です。
その前からEPUBとDAISYを統合していくことを、DAISYコンソーシアムで方針として決めていました。DAISYで完成しているアクセシビリティをEPUBで実現するということです。
EPUBという共通のプラットフォームの上に、アクセシブルであるものも、ないものもあるんですが、アクセシブルなものが同じ共通プラットフォームの上でできるようにする。
そのための技術開発をすることを、ずっとDAISYコンソーシアムはやっていました。
現在は、DAISYでできることの全てがEPUBでできるようになりました。 移植は完了しています。

DAISYから見ると、EPUBを開発してきたIDPFという団体、もう一方、アクセシビリティの基盤をDAISYの場合はW3Cのアクセシビリティの勧告、そしてW3Cの勧告になっている技術を中心に、必ず標準になっているものを組み立てて、新しい標準技術を作るという戦略をとってきました。自分たちだけのユニークな新しいものは作らないということです。
なぜかというと、規格というものは普及までにすごく時間がかかります。
10年は簡単にかかります。その間、技術はどんどん進化します。あまり普及してなくても、規格はメンテナンスが必要です。
メンテのない規格は誰も使いません。先ほど言った高い会費。
会費を払って技術者をプロの仕事として、息の長いアクセシビリティの国際標準規格をちゃんと作ってくださいねというのを保証しているということです。 その結果が、じわじわとあちこちで認められました。
後で実演しますが、プレーヤーが、EPUBでいいものが出てこないと、DAISYで完成しているすべてのアクセシビリティの技術がEPUBで実現することにはまだならないんです。

DAISYのほうが歴史が長いので、いろいろな細かいところが、利用者のニーズから学んでたくさん作り込まれています。
ある意味、枯れた規格製品のよさがあります。
様々なニーズに対応できるツールが、DAISYには既にあるんです。
これからお見せするデモのサンプルは全部DAISYです。
基本的にはEPUBでも、それはできる。
あとはプレーヤーがもうちょっと頑張る、ということになります。
IDPFが実は、この画面のものは、ウェブの標準団体であるW3Cのホームページのトップページです。
そこに2月1日付で、W3CはIDPFと一緒になったという掲示が載っています。まさにホットニュースです。
EPUBを開発してきたIDPFと、ウェブを開発してきたW3Cは、とくに合体したということで、IDPFが吸収されたってことですね。
具体的には、ウェブの技術の中に電子出版技術の標準が、これからは位置づけられるようになるとお考えいただくといいと思います。
今までは、どちらかというと紙の出版がベースでした。
紙の出版とは別のところに電子出版があったと思います。
電子出版をよく見ると、電子出版のエコロジー、循環するサイクルは、ウェブから配信するのが基本になっていると思います。
インターネットを使わずに電子出版物を、パッケージだけで売ることは、あまり主流ではなくなるだろうと思います。
つまり、ウェブのサービスに組み込まれていくことが、これで決まったと私からは見えます。
何がよくなるかというと、少なくともDAISYの立場からだと、電子出版とウェブのアクセシビリティが統合されることが期待できると思います。
もう1つが、ウェブのサービスの調達は、世界中で、ほとんど公共調達としてアクセシビリティを達成しないといけないという規制のもとに置かれているものが多いと思います。
EUもアメリカもそうですが、公共調達、いわゆるお役所や公共機関、あるいは政府と契約している団体のウェブサイトは、アクセシビリティをちゃんとクリアしないとお金を出しませんよというのが、公共調達における規制です。
EUもアメリカも、そうやってアクセシビリティを普及しているわけです。
ウェブについては、アクセシビリティは、ほぼどこも確立しています。その中にアクセシブルでないPDFが置かれていたところに、アクセシブルなEPUBが入っていくということです。

PDFもEUの基準では、PDF/UA、ユニバーサルアクセスと言われているところ、2014年版はアクセシブルなコンテンツと認めてもいいのではないかというのがあります。
まだPDFの2014を達成しているコンテンツは、ほとんどないと思います。
そういう意味では新しく出たEPUB3.1、PDF/UAは、今の時点では横一線で、これはお互いに切磋琢磨してよくなるのはいいことだと思います。PDFはそのままプリントできるよさもあります。両方がよくなってウェブのアクセシビリティが向上し、その中にEPUB3.1のアクセシビリティのガイドラインができて、AからAAAまで松竹梅のランクができたので、AAがとれればいい。ウェブと同じようなランクづけなので、わかりやすくなったと思います。
日本ではどうなのか。皆さんがよくご存じだと思いますが、日本ではうまく前に進んでいるように見えない部分があります。
だけども、DAISYの録音図書の導入は、日本は世界で一番早かったです。先ほどテクノエイドの基金でと言いました。
厚生労働省に報告書が行って、実は私が日本障害者リハビリテーション協会に東大から移ってすぐこの事業をやらせていただきましたが、約13億円、当時の補正予算でつけていただいて、全国の点字図書館100ちょっとあり、一斉に録音図書をDAISYに切り替える事業をやりました。
非常に短期間です。
そのおかけで、全国の点字図書館は、DAISY図書のオンラインネットワークも使えていますが、当時乗り遅れた公共図書館は今、苦労しているところです。
当時も学習障害や知的障害の人たちにもこのDAISY図書が有効だということは、よくわかっていました。
ただ著作権法が許さなかった。
ですから著作権法を改正する運動を、平成12年頃から始めています。
平成21年になりまして、文化審議会の著作権分科会報告書でDAISY図書という名指しで、これが有効なので、製作ができるように著作権法を変えるべきという答申がでました。平成21年1月です。
これが実施されたのが、2010年(平成22年)1月の改正著作権法です。
現在は全国の図書館で著者の許諾なく、障害者のためにDAISY図書を作って提供し、オンラインネットワークで共有することができるようになっています。
あとはそのリソースを、どう確保するかという問題になっています。
教科書なども今ボランティアがDAISYのマルチメディアを作り、現在5000人ぐらいですか、全国のディスレクシアを中心とした生徒のために提供をしています。

このように日本でも、それなりの活動がされています。
ほかに日本からは非常に多くの国際貢献をしています。
出だしの国際規格化も貢献です。

On-site international study on Disaster Preparedness in Urakawa, May 2005

DAISYがスタートするときに、この評価活動がなければ今のDAISYはありません。
そういう意味では、出だしからDAISYは国際的に貢献をしています。
それらの端々の流れを資料に一応入れてあります。
かいつまんで言いますと、先ほど第一線の技術者を雇っていると言いました。2005年にほぼ全員、浦河という北海道の、日本で一番地震が多いところに来てもらい、その地域の住民すべてを、目の前が海なので、津波が来たときにどうしたらいいかをみんなが理解して、それに備えることにDAISYを活用するんだけれど、今のDAISYでは足りないところがいっぱいあるはず。
それをどうよくしたらいいかというテーマで研究集会を行いました。
このときは2005年なので、もう10年以上前なんですが、そのとき来てくれた技術者が今も、EPUB Accessibilityガイドラインの開発を続けています。
この前会ったときに、浦河に行ったことは絶対に忘れない、非常に重要な経験をしたと言っていました。
特に精神障害の人たちとそこで交流してるので、いろんな思いで開発してると確信しています。
あとITUの一番上のランクの表彰を、DAISYコンソーシアムがもらっています。
左下の写真は表彰式のときです。

表彰式の写真

私はたまたま会長だったのでもらっていますが、私がもらったわけではありません。
あとは東南アジアでの災害準備の国際会議を盛り上げたり、国連の会議で障害者権利条約の締約国会議のパネルセッションでDAISYの紹介をしろと、外交官たちにDAISYの紹介をしたこともあります。
2015年に仙台で行われた国連の防災世界会議では、2005年以来浦河で積み重ねてきたDAISYを活用した防災への取り組みを紹介しました。

防災世界会議の写真

障害がある人たちが自分の身を守ると同時に率先避難者になることによって、地域の住民がその後みんなついて避難して、津波は来たけれども人的被害はゼロだった。
それを好事例として取り上げ、みんなで登壇したことも国際貢献の1つだと思います。
あと、つい数日前、アレキサンドリア図書館、エジプトですが。これはDAISY図書の再生ツール画面です。

アレキサンドリア図書館(エジプト)のAMIS

左から3番目のAMISっていう、日本で開発したプレーヤーです。それが今、多言語化されており、アレキサンドリア図書館でもメインとして使われていて、うれしく思いました。
ここで5分間休憩をいただき、そのあと、実際にDAISY図書がどういう機能を持っているかを中心に、デモをさせていただきます。

(休憩 2時10分再開)

河村
これから実演に入ります。
先ほど申し上げた、地震が日本で一番多い浦河町という所で、開発者を集めて会議をしたと申しました。
そのとき、開発技術会議と同時に、地元の方たちと災害について話をしました。
町長さんにも出てきていただき、住民の方、自治会長さん、そしてこの方は統合失調の当事者、この方はアイヌ民族の方。いろいろな方が地域におられて、それぞれ困難さを抱えています。
津波が来たときはどうしたらいいか。
当時、2005年なので、インドネシアの津波がありましたね。
2004年12月でした。
実は私ども、その前2003年から入っていたのですが、目の前が海で、今までは幸い津波はなかったけどこんなに地震があったのに津波がなかったのは不思議なぐらい、いつ来てもおかしくないという話をしていました。
いよいよ本格的にしなければ、ということになって、こういう催しも一緒にやりました。
そのときに、技術者と一緒にアメリカ自閉症協会の研究者、特に自閉症協会のご本人理事、ご本人が自閉症で、当時、大学院で自閉症教育を勉強している博士課程の学生さんにも来ていただき、みんなでいろいろな角度から、どうすれば津波についての理解を誰もが持って、誰一人取り残されず全住民が避難できるところまでこぎつけるのか。
技術は、そこで何ができるのか。
特にマルチメディア技術は、人のセンサー、五感。
擬似的なものも含めて、実際には味覚は何も相手には渡していませんが、おいしそうに見える写真を見るとゴクっとツバを呑み込んだり。いかにも汚い感じってなると、見せられると、におってきそうなとか。
そのような人間のいろいろな感覚をフルに動員できるツールとしてマルチメディアをとらえたときに、それをDAISYからスタートする。
DAISYは当時、視覚的情報、聴覚情報、点字ディスプレイを使えば、ピンディスプレイを通じて触覚でも読める。
その3つのチャンネルを獲得していましたが、もっとそれを発展させて、誰でも津波が来たとき、こうすれば助かるということについて理解できるようにするには、あとは何が足りないか、という研究をしました。
それがこのときの研究テーマでした。
国から振興調整費という大型の予算をいただいて、3年間、かなり突っ込んだ調査研究をしました。
予算はそれで終わってしまいましたが、私どものテーマとして最終的に地元住民の方たち、障害のある方も含めて、一緒に研究していただくことで、必ず返ってくる。 我々、論文を書いて終わりではなくて、必ず返ってくる。
制度的には約束できないのですが、関わった者がそれぞれ個人の倫理として、そういう形でやろうということで、今でも交流が続いています。
そこでの開発者は、EPUBのアクセシビリティを作るときの、ユースケースと私どもは言いますが、こういう技術はどういう時に必要になるか、という具体的なイメージを得るのに随分役立っているのではないかと思います。

能書きはこのへんにして、どんなものかをお見せします。
これから画面にテキストをハイライト表示しながら、音声も出ます。
この会議をリモートで、遠隔パソコン文字通訳のグループの方々が、聴覚障害者の方のために、そこのスクリーンに出るようにしてくれています。
ただ、ハイライトしているものを再生しているときは、それについて必ずしもそこに出さなくてもいいのではないかという打ち合わせをしました。
ハイライトしているときは、メインのハイライト画面をご覧ください。
浦河町で実際に使ったマニュアルをご覧に入れます。

(DAISY実演中)
(スクリーン参照)

こんな感じでずっとやって全部で7分です。
この7分は当時、私どもがメインターゲットにしてた、町で暮らしてる重度の精神障害者が集中できる限界と言われていました。あまり長いと終わりまでいく前に集中が難しくなると。
私どもが行って作業所で拝見してると、多い人は3分に1回ぐらいパッと立って、たばこを吸いに行っていました。
じっと集中するのは難しい。
特に精神障害の方で薬を飲んでおられる方は集中が難しいと聞いています。
全体の長さをあまり長くしない。それから構成について。
全体として、「こうやっちゃダメ」じゃなくて、「こうしましょう」と短い文にすることを心がけています。
そのときに、聞いた文章とピタッとイメージが合うような絵を添える。
この絵は、実は、やなせたかしさんの絵です。
やなせさんが南海地震に備えるために、高知県の防災のために絵をいっぱい作ってくださいました。
これは、つなみマンという絵です。
ちょっと滑稽な津波なんですけれども。これ正確なんですね。
波頭が高くなって、後ろの波が高くなってますよね。
ようかんのようにドーンと来る波になっています。
非常に正確に描かれてるということで使わせていただきました。
ちゃんと高知県の許可をとって使っています。
ちなみに、これは防災のためであれば、この絵は高知県に言えば、使えます。
世界中で見せたときに使いたいと言われていますから。
適切な絵と端的な文章、それに声があって、耳からも目からも理解できるようにするのが重要だと、私どもは結論づけました。
もう1つは、画面の左側をご覧ください。
目次です。
これがDAISYのナビゲーションの特徴で、目次でポンと飛べます。
目次は、上下矢印キーで飛んだり、マウスで飛んでもいいです。
次の章に飛んでみます。
自由自在に飛べます。

字の大きさは、自由に、大きくも小さくもできます。
大きくすると画面が逃げていってしまいます。
字はちゃんとこの中で、どんどん自動的にリフローして大きくなります。
このプレーヤーだと10倍までですが、それはプレーヤーによります。
一般論として字の大きさを変えることができます。それから行間も変えることができます。
さらに再生スピードを変えることもできます。
スピードを上げてみます。

視覚障害の方は、ふだん、このくらいで聞いておられる方が多いと聞いています。
この会場に視覚障害の方、何人かおられますけれども、そうですよね?
今ぐらいの3倍速は、当たり前ですよね?
「うん」とおっしゃっておられました。
ただ、遅い方がいい方もいらっしゃいます。
外国語を学ぶときなどは、CNNが普通にばーっとやっているときは、ついていけない。
遅くしたいと、当然思いますよね。
遅くすることもできます。

ちょっと眠くなるぐらいですが。
大体どのプレーヤーも、遅くも早くも、そのときのニーズに合わせることができます。
今、肉声で再生しています。これを肉声にするのか、TTSにするかも選べます。
パソコン、あるいはiPhone、iPad、Androidでもいいですが、それにTTSが使えるものがある場合は、テキストを読ませることができます。
いくつかのプレーヤーでは、ほとんどのテキストに音がなくて、あるところだけ音があると、音声が入ってる場合は音声優先で、なければテキストと、自動的に切り替えるものもあります。
TTSでは間違えて読むとき、ルビをつけて読む方法もありますが、もう1つは正確に読むためにそこだけ音を入れることもできます。
毎日の新聞をDAISYにするとします。
製作方法で、TTSを使って読ませるときに、新聞のようなボリュームのものになると、人間が読み上げていては手がかかってしょうがないです。でも初めて出てくる固有名詞をTTSに読ませるのは無理。
TTSが間違えるだろうというところだけ抜き出して、肉声で入れる方法もあります。
TTS側に何か作り込みができれば、補助辞書など、いろんな方法もあると思います。一番コストセーブになるのは、間違えそうなところだけ人間が読むのが直感的にも作りやすいと思います。
あとはカラーコントラストです。いろんな要望があります。
カラーコントラストの変更は、背景色にちょっと色がついてるほうがいいね、という人は結構います。
こんな感じで変えることもできます。
全部、1600万色から選べるので、下手をすると白地に白になって、読めなくなっちゃってはいけないので、慣れてから使うようにしたほうがいいと思います。
DAISYは基本的に、ずっと読み上げるものです。
ですが自分で送りたい、そこで止めておいてまた送るということも、このプレーヤーの場合は可能です。
ポーズ時間を調整し、これを無限大まで設定できます。
今、読み上げの調整画面を開いています。操作しているときに何をしたかを読み上げるモードになっていませんが、例えば視覚障害の方で今、何を操作したか把握したいときは、それを読み上げることもできます。

このように、何をしたかを読み上げられるモードを持っています。
なんだか訳がわからなくなることは防止できます。

今は説明がややこしくなるので、読み上げをオフにします。
またTTSの選び方。
私のパソコンにはいろいろ入っていますが、今、プルダウンメニューで、どれを選ぶか出しました。
どれでも選べます。
先ほどは女性の声でしたが、男性の声にしてみます。

Easy Readerというのがこのプレーヤーの名前ですが、その側から発する声が選択できます。もちろん本文の声も選択できます。
あと、読み上げ図書の声、と訳してますが、オリジナルで音が入っている場合、オリジナルの音声にするか、TTSかの選択ができます。
先ほどのところをTTSにしてみます。

このようにTTSにもなるわけです。
検索機能など、普通使われるものは、みんな入っています。
ほかに書棚機能といって、今まで使ったものが一覧表で出ます。
この中から選ぶ。
視覚障害の方も、これが選べるようになっています。
先ほどのTTSをオフにしたので。
「読み上げメニュー」をオンにします。

矢印キー等で、今まで何を読んだか、読書記録を出しています。
このように一つ一つ。
英語になると、…

それなりに英語でちゃんと読んでますね。
全盲の方が使うときは対話モードにして、ちょっと煩わしいときは音を消して使うことができるのをお見せしました。

私どもがフィリピンに技術移転の講習をしましたが、対象がフィリピンの自閉症協会でした。
そのときに作ったもの、オリジナル音声でやってみます。

絵は自閉症の方自身が描きました。

(DAISY実演中)

絵がすごくうまいと私は思ったんです。
自閉症協会の人たちが、自分たち、特に子どもにこういう権利があるんだよって教えるために、描き下ろしでつくったものです。
いろんな障害のある方たちが、自分たちの声をほかの人に伝える目的でも使われています。
最後に、コントロールのところをお見せします。
これは障害者白書のある部分です。
白書には、いろいろと表が出てきます。テーブルです。
左から右へいって次の行というふうに読むだけなら、すごく読みにくいですね。
縦に上下したり、横に移動したりしたいですね。
このプレーヤーはそれができますのでお見せします。

左へ動きます。
上へ動きます。
もう1つ上へ。
次は右へいきます。
このように表に入ると、自由自在に動けるように作れます。
でも、これはプレーヤーのほうで対応しないと。
DAISY規格ではできるんですが、プレーヤー側でいうとこれはAAAぐらいだと思いますが、実際こういうものが存在します。
日本のプレーヤーメーカーさんにも頑張って作るように言っています。
このように、ナビゲーション。
本を読むとき、特に専門書の場合は、それぞれの読み方をして、肝心なところをどうやってつかむか、スキルを磨いていくわけですね。
今のようなタテ・ヨコ自由自在に動けるのは最低限必要なスキルです。これが今のウェブサイトでできますか?
PDFのコンテンツでできますか?
できないとどうなるか。
左から右に読み上げて、ずーっといくだけで、大変ですよね。
ラベルを読みたいとなると、上に戻ってくるのは大変です。
こういうナビゲーションが、特に学習や研究のためには必須です。
ここでデモは終わって、まとめに入ります。

DAISYはEPUBに統合されたので、これからEPUB3.1の普及に向けての取り組みを、皆さんと一緒にさせていただきたいと思っています。
そのためには、アクセシブルでわかりやすいコンテンツの製作が必要ですし、アクセシビリティの認証の仕組みをちゃんと作ることも必要です。
それからDRMです。
Digital Rights Management、あるいはProtection、いろいろ言われています。
これは音楽業界では、DRMを外したことによって売れ行きが伸びて、それにより利用者もメーカーもアーティストもよくなる実績があります。
なぜか書籍の場合には、みんな呪縛にとらわれたようにDRMをかけなきゃいけないと思い込んでると思います。
そこを見直していただきたいと思います。日本は法治国家です。
海賊版の罰金は最高1億円です。
海賊版で1億円の罰金を覚悟して稼ぐって、どういう人たちですかね。
DRMをかけるというのは、暗号化なので、アクセシビリティも何もなくなります。
せっかく中がアクセシブルでも。
それでアクセシビリティをいくら開発したって何の意味もないです。
ですから、私は公共サイトからはDRMは排除すべきだと思います。
ウォーターマーキングというものがあります。
トラッキングできるものです。
読めるということは最低限確保しなければいけない。
日本は法治国家だから、少なくとも国内で著作権違反については、ちゃんと法律で処罰することも想定されています。
安心してDRMを外した、あるいはウォーターマーキングのトラッキングによって、アクセシビリティを阻害しない電子出版を大きく開化させる。
そのことにより、いろんな共通利用で、電子書籍の魅力が上がると思います。
ぜひこれを一緒に実現したいと思っています。
日本デイジーコンソーシアムとして皆さんにも積極的に加入いただきたいと思いますが、このアクセシビリティに関して公益的な立場で、ちゃんとアクセシビリティを日本語の文脈内で開発し、維持していくことが役割になります。
そのためには認証の制度も発足させて、広く皆さんと一緒に、EPUBのアクセシビリティの認証制度として進めていきたいと考えています。
以上で、私のプレゼンは終わります。
特にずっとかげでこれを支えていただいた遠隔パソコン文字通訳の皆さんに、お礼を申し上げたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

司会
河村さん、ありがとうございました。
アクセシビリティ確保によって様々な方に情報を届けたいということだと思います。
ご質問、ご意見、ご感想ございましたら、挙手の上、お願いしても大丈夫でしょうか。
できれば、今回だけではなく、ブログを書いている方は、ぜひDAISYコンソーシアムをご紹介していただければと。
我々ICTコネクトのことを紹介していただきたいこともありますが、我々はコネクトすることでいろんな団体を紹介していくということなので、DAISY様のアクセシビリティの活動が広まることを願っています。
ご質問は?

/三崎と言います。
聴覚障害者等に関わってきた教育者です。
現在、手話を使ってる人たちのために手話動画入りのDAISYのサンプルを作り始めています。
フォーカスしてるのは医療情報です。
それも、聴覚障害のある医療関係者、医師等と協議した結果、聴覚障害を持った人が糖尿病になって、失明して、非常に深刻な事態が発生している。
医者が説明するんだけど、なかなか言葉では、うまく伝わらない。
伝わるような内容の電子書籍があれば、すごくありがたい。医師とろう当事者と、我々、教育者関係とそこにフォーカスしている。
今一番困ってるのは、動画の入ったDAISYは技術的にはできても、簡単に編集や再生するアプリがないということなんです。
その辺について情報をお持ちの方や関心のある方に、お話を伺いたい。

河村
私もそれについては関心があり、10年ぐらい前から。
スウェーデンの文部省は、手話の教科書を提供する義務があるので、今、画面に出しているのは、1つのモデルなんですが、手話とテキストが同期し、そこに音声も同期してる。
今は画像は手話画面だけです。
当然テキストにはHTMLで書いているので画像が入っています。
そうすることで、手話と、文章単位で同期したものを出す。
技術的にはそれは十分可能と考えていますが、なかなか標準に合意されない。
EPUBのときに、実は、DAISYコンソーシアムで、日本とスウェーデンから要望を出しました。
私が聞いている範囲では、採択されなかった最大の理由は、コーデックをめぐる、ある大手ITグループの異論と聞いています。
ほとんどのグループは、h.264でいいということでしたが、ある大手企業が訴訟の不安があると。
結局、コーデックが決まらなかったので、そこから先に進みようがなかったと、私は説明を受けています。
コーデックの問題に決着がつけば、改めて企業に聞いてみて、大丈夫そうだということなら、また前へ進むワーキンググループを作ってもいいと思っています。
これのサンプルだけ。
手話、音声、テキストを同期すると、こうなりますよというサンプルで、国連ドキュメントが置いてあります。
(サンプル再生中)

まだ手話が続いています。
今、手話が終わりました。
セクション2に移動します。

ナビゲーションもできるんですね。
つまり手話がただの動画だとナビゲーションは難しい。
これはHTML5なので普通、ウェブブラウザでキーワード検索ができます。
ピンポイントで再生すると、そのセンテンスを含む手話がすぐに再生できます。
手話に限らず、動画とシンクロナイズドしたテキストをつけておく、また、これに活字のメタデータを入れておくと、動画の検索性が上がります。今まで、動画には全部入っているけど、ピンポイントである箇所だけ引用したいとき、せっかく引用しても再現が難しかった。
この技術は、すごく広いところに使えますよね。これがあればビデオを生かせる。
教育の中でも、ピンポイントで先生たちがここっていうふうに出して再生できます。
これは手話のために開発したプロトタイプに見えますが、手話だけではなく、もっと広い用途で、EPUBの新しいアクセシビリティを活用した活用方法が開けてくると思います。

司会
ほかは、いらっしゃいますか?

河村
三崎さんの今のご提案ですが、早速ワーキンググループを三崎さんはお持ちなんですよね?
あとで、この会議の事務局、私どもの団体でもいいので、参加者の皆さんにお知らせするということで、せっかくのご提案を生かしたいと思います。

司会
では私から。河村先生が最初、英語がわからなくて、飛び込んだらわからない人たちの共感を得てという点で。
私、今ICTコネクトにいますが、私はICTが得意ではなくて。ウェブは得意ですけど。
すると現場の先生の共感を得るというのがあります。
今、河村さんが見えている世界で、みんなここわからないんだけど、そこが一緒になると分からない人が手をつなげるよという、何か思いつくことってありますか。

河村
今の話を伺って何よりも思うのは、障害を持った人たち本人が、こういうことができたらいいんだけどと、いっぱい考えてらっしゃるんですよね。
それは実は、発想の宝庫ですね。
逆に、障害をお持ちの方が工夫している部分があります。
普通ならそんなことしないんだけど、工夫してやれてること。
そんなことできるの?というのがたくさんあります。
今、例えばリソースはあるけれど何をしようか、という人は世の中にはいると思うんです。私がなぜ浦河のことを申し上げたかというと、現実にニーズのある人がいて、その人たちは津波が来て逃げ遅れたら死んでしまう所に住んでいる。

その人たちは、津波がどういうときに起こり、それからどうすれば自分の安全が保てるか、本当は知りたいわけです。でも、そもそも津波が地球の裏側から来るなんて理解できてない。噂には聞いてる、その程度のものを科学的に理解する。
そしてそれに基づいて自分の安全確保のためにリスクをどう減らすか、知識やスキルとして身につける。
1つ1つのニーズは、飛び込んでみると、簡単には解は出てこないが、でも一緒に研究してみると発見の宝庫だということじゃないでしょうか。
障害のある人のニーズは、一緒に同じ視線まで行って、どうすれば解決できるか。
研究開発もペーパーを書いて終わりじゃなくて。もちろん研究費は終わっても、その後でも研究開発者の倫理、エシックとしてつないでいくと、大きな開発や発見につながるんだと思います。
それがWin-Winなんだと思います。

司会
ほか? せっかくの機会です。

会場
図書館総合研究所の植村要と言います。貴重なお話をありがとうございました。
2点ほど質問です。
1つめは、今日の河村さんのお話の最後のほう、今後の課題についてとしてお話しがあった、EPUB3.1の認証の仕組みを作っていくということについてです。認証の仕組みですが、これは何のことでしょうか。
例えばEPUBアクセシビリティ1.0とか、ディスカバリーとか、流通している電子書籍にそういった区分をしていくことなのか。
あるいはその仕組みとして、どういうものを目指しておられるか、河村さんに少し伺いたいと思います。
2点目。
電子書籍のうち、教科書はとりあえずのけて、市場に流通している電子書籍に限って伺います。
EPUB3.1のような形で、電子書籍出版の上では、アクセシブルに作るのがいいと出版社、印刷会社でわかっていても、コスト等の問題で、ちょっとねという話があると思うんです。
そうしたとき、どういう形でアクセシブルな電子書籍の実現を目指すというか、誘導するというか、何かアイデア、お考えがあればお伺いしたいです。

河村
後半の質問から答えると、前半に移ると思います。
後半から。
今、出版されている方が電子出版、しかもアクセシビリティをそこでちゃんと確保していこうという動機づけには、少なくとも2つの場合があると思います。
1つは、儲かる場合ですね。
商業出版なら、そのほうが儲かるなら、これ、絶対OKですね。
2つめは、そうせざるを得ないということ。
EUとアメリカの公共調達の話をしました。
公共調達、税金を使う調達に関しては、一定以上の規模のものは、必ずアクセシビリティを満たさなければいけないというふうに網をかけている。
そうでないと、入札に応じられなくなっています。
そのどちらかは有効だと思います。
私は、その両方を追求したいと思います。
そのほうが儲かるよ、という話について。
今少なくとも日本の総人口の10~20%の人は、読みたくても読めない人たちだと思います。
出版社から見ると大きなマーケットですね。その人たちが買ってくれるなら、どのくらい売れるの、という話になると思います。
ちなみに、サピエ図書館のオンラインの主に視覚障害者が使っておられる、最もよく読まれた小説のトップのダウンロード数は、1年で8000を超えていたと思います。
8000部売れるとすれば、立派に出版が成り立つんだと思います。
音声出版もペイする。
高齢になられて、字が大きくないと読めないとき、簡単にEPUBでリフローすれば字は大きくできます。今まで読めなかった人が購買対象になります。
そこら辺はもう1つの、売れる、儲かるから出版していこうと。
では、認証と、どう結びつくかです。
規制と購買の両方に結びつきますが、認証でAだからちょっとやめておこうかな。AAなら買っていいかな。
AAA、絶対買おうという購買層がいるはずです。
それと同様に公共調達の入札です。
AAがスタンダードになります。AAで入札資格になり、AAAで加点が入る。
そうなると、入札する側としてはAAは絶対で、AAAを目指そうとなると思います。
AAAを達成すれば、そういう技術を持っているところは、よりたやすく新しいマーケットを獲得できるサイクルになっていくのではないか。
私が今思うのは、アクセシビリティのためとなると過重に、過大にいろんな手当てをしてないだろうか。
例えば全部SVGでつくるのは結構、手がかかります。
もう1つは、フォーマッティングを凝ったものにするには、画面を見ながら微調整をする。
インデザインなどが必要になりますが、自動フォーマッティングでもできる場合も多い。
例えば、オンデマンド出版で、14や16ポイントに指定され、PDFに自動出力でき、それでオンデマンドで紙に落とせば、自分の好きなフォントサイズで買える。
そうすれば、オンデマンドの意味も変わってきます。
そうなら自動フォーマッティングのほうが有利です。
そこら辺、1ページ1ページ手をかけて芸術的に仕上げるのも重要な付加価値作りですが、一方、アクセシビリティとなると、それとは別の配慮というか、どうやってアクセシブルであり、ちゃんと儲かるものを出す。アクセシビリティの見直しの観点となります。
お答えになりましたでしょうか。

司会
お時間になりました。インプレスのこのホールは15時30分まで使えます。
いろいろな方が来ておられます。
事務局の方々も後ろにいらっしゃいます。
ぜひ、お話を聞いてみてはいかがでしょうか。
盛大な拍手をお願いします。
以上で、本日のセミナーを終わります。

*1石川 准(いしかわ じゅん、1956年 - )は、日本の社会学者(アイデンティティ論・障害学・感情社会学)。学位は博士(社会学)(東京大学・1995年)。静岡県立大学国際関係学部教授・大学院国際関係学研究科教授。(引用:wikipedia)
*2野村茂樹(のむら しげき)
視神経萎縮により、
1974年 左眼0.03、
1975年 右眼失明(障害等級二級)
テレビ式拡大読書器を使用して読み書き、日本で初めての視覚障害者の司法試験合格者(引用:奥野総合法律事務所HP)

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