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荒川氏配布資料

学校でのDAISY教科書の活用 ― DAISY教科書を活用した読字指導の有効性 ―

鹿沼市立みなみ小学校 荒川 一志

〒322-0531 栃木県鹿沼市南上野503

e-minami@school.kanuma.ed.jp

(1)学校教育におけるDAISYの活用

マルチメディアDAISY図書は音声にテキスト、画像をシンクロ(同期)させています。そのため自分のペースで何度でも読みたい文章や節、任意のページに飛ぶことができます。また、DAISYは視覚障害者のほかに学習障害の子どもにとっても有効であることが広く認められてきています。

現在、本校では読み書きが困難である子どもに対してDAISYを活用した学習指導法の有効性について実践研究しています。特に、衝動性が強く集団での学習が困難で、教科書では読みに困難を抱える数名を中心に指導しています。

(2)DAISYを使うまでの準備

① DAlSY教科書を用意

DAISY教科書は(財)日本障害者リハビリテーション協会情報センターへの申請が必要です。本校では申請に当たり、保護者の承諾を得ています。

② DAlSY図書再生ソフトウェアの準備

DAISY図書を再生するためには専用のソフトウェアAMIS2.6が必要になります。ENJOY DAISY(http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/)からダウンロードできます。(財)日本障害者リハビリテーション協会のホームページにもENJOY DAISYがリンクされています。詳しいインストールの方法についても記載されています。

(3)再生ソフトの設定について

再生ソフドでは各種設定ができるようになっています。主に再生速度、フォントサイズ、色の設定ができます。また、使用するに当たっては、簡易表示があり子どもでも操作しやすい機能が用意されています。

本校の子どもが使月するに当たり、各々に再生速度やフォントサイズ、色など使用しやすい条件を確認したところ、ほぼ同一のものになりました。以下に設定内容を紹介します。

① フォントサイズ

フォントサイズは5段階用意されています。単元により変えるときもありますが、概ね中間の3つの大きさを使用しています。

使用開始時は大きいフォントを好みますが、徐々に小さくなっていきます。

② 再生速度

再生速度に関しては、ゆっくり読まれた基本の速さから始めます。子どもは速く読みたがりますが、本校では通常一番遅いものを使用しています。現段階のソフトでは、速くすると声の質が変化するので、子どもによっては学習に集中できなくなる場合があります。

③ ハイコントラスト

AMISを起動し【ファイル → 設定 → 色の設定】で設定します。色々な組み合わせを子どもに試した結果、フレーズのハイライトでテキストを黒、背景を黄色に設定し、ハイコントラスト設定で文字を白、背景を紺に設定して使用しています。

(4)DAISY活用の事例

子どもの実態や学習段階に応じて、いくつかの手順に従って活用しています。

一人当たりの学習時間については、当初1回5~6分から始め、現在では10~20分程度にまで伸ばしています。以下の①~③は教師の操作で行います。

① 音声と文字のマッチング

音声ガイダンスを聞かせ、それに合わせて画面上の文字を指で追わせます。まずは、ハイライトで表示された部分に着目させることから始めます。

② 音声とフレーズのマッチング

フレーズごとに音声ガイダンスを聞かせた後一時停止をします。そして、聞いた部分を子どもに繰り返し読ませます。逐字読みであった子どもも次第にフレーズで読めるようになっていきます。

③ フレーズ読みの練習(音声なし)

音声ガイダンスは使用せず、フレーズごとに一時停止して、その部分を読ませます。初めの段階では画面をなぞり読みをさせます。

④ 子ども自身の操作による学習

①~③のステップを習得できたら操作は子ども自身に行わせます。要領は②のパターンで実施し、スムーズに読めたら③のパターンに進ませます。

子どもは、自分のペースで学習できることに喜びを感じます。たとえ、読みに失敗してもパソコンの操作で何度でも読みの修正をすることができます。

(5)DAISY活用に当たっての留意点

DAISYを活用する前に、担任とも相談しながら読み書き検査等を含めたアセスメントを行った上で実施することが大切です。子どもの認知特性を把握することで、より効果のあるDAISYを活用した読字指導ができます。

今回は担任と連携しながら、教室ではDAISYの他にも単元に合わせたひらがなや漢字の書字指導も同時に実施しました。

また、学年の単元にこだわらず、子どものニーズや興味に応じた本に馴染ませ、読書の経験を広げるよう配慮しています。

(6)DAISYの有効性

ひらがなの一文字の読みができても文章が読めるとは限りません。ある程度の速さでスムーズに文章が読めて初めて「読むことへの喜び」が満たされます。そして「文章内容の理解」が可能になります。教科書を読むことが苦手な子どもたちも、DAISYを活用することで音声と文字が一致するようになり、読字がスムーズになる事例が増えています。さらに、読むことができるようになったことで他の教科の学習にも良い影響が出始め、セルフエスティームが向上し、学習への自信を回復しつつある子どもも増加しています。