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矢田氏配布資料

平成22年1月9日 矢田報告資料

*目次とそれぞれの資料の意図

2、3頁
教育開発研究所発行「教職研修総合特集 小・中特別支援教育コーディネーターのための実践・新学習指導要領」編集 柘植雅義兵庫教育大学教授 2009年12月1日発行 170,171頁所収の拙稿論文
「第6章 特別支援学校新学習指導要領(新「自立活動」)の活用 <通級による指導における特別の教育課程の編成> ICFの観点による本人・在籍学級の実態把握と特性にあった自立活動の実践[中学校]」
上記論文の表は別紙(Aさんの本人と在籍学級での自立活動の実態把握と指導計画案)で。
*DAISYの活用は、LD生徒の自立活動に不可欠。
*本人のバリアフリースキルの向上と、本人を取り巻く社会のユニバーサルデザインスキルの両面での指導が不可欠。
4、5頁
リハ協への要望、意見(平成21年12月)
*保護者・本人・通級担当からの要望等
6、7頁
開隆堂中学2年英語教科書デイジー版への補助プリント
英文と日本文
*ロールプレーがやりやすい補助プリント。
8頁
東京書籍社会歴史教科書デイジー版への補助プリント
穴埋め問題、記述・論述問題
*耳と目からの短期記憶を高め、本時の目標の核心に迫ることができる補助プリント。
*別紙
Aさんの本人と在籍学級での自立活動の実態把握と指導計画案

教育開発研究所発行

「教職研修総合特集小・中特別支援教育コーディネーターのための実践・新学習指導要領」

編集 柘植雅義 兵庫教育大学教授 2009年12月1日発行 170,171頁所収 拙稿論文

(文科省『特別支援学校学習指導要領解説自立活動編(幼稚部・小学部・中学部・高等部)』 海文堂出版、2009年についての活用実践)

第6章 特別支援学校新学習指導要領(新「自立活動)の活用
<通級による指導における特別の教育課程の編成>
ICFの観点による本人・在籍学級の実態把握と特性にあった自立活動の実践[中学校]

静岡県浜松市立神久呂中学校教諭 矢田勝

中学校の通級指導教室の目的から、「自立活動」と「教科の補充指導」を考える

『改訂版通級による指導の手引』は「通級による指導は、障害の状態を改善・克服することが主たる目的であり、教科の指導は、特に必要がある場合に、あくまでも補充的に行うにすぎない」としている。また『特別支援学校学習指導要領解説自立活動編』(以下「解説」)では、自立活動とは「個々の障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するための指導」とされている。

表のAさんのように実態把握の結果、本人の主な課題が読み障害とその背景としての情緒不安定である場合には、情緒安定のためのSST(ソーシャルスキルトレーニング)とともに各教科の電子教科書を活用して音読訓練を繰り返し行うこと等により、学習上の困難を改善・克服することが求められている(「解説」73頁参照)。この指導は、自立活動のコミュニケーション区分の「言語の形成と活用に関すること」という項目に属することになる。同時に、各「教科の補充指導」という形もとることになるが、あくまでも、主眼は本人の「学習上の困難の改善・克服」のための指導である。

自立活動で、特性にあう学習スキルを身につけ、障害の状態の改善・克服を図る

ともすれば、自立活動を、ソーシャルスキルを身につけるSST活動とのみ限定的に考え、学習課題と切り離して考える誤解がある。

しかし、特別支援学校の新学習指導要領(以下、新学習指導要領)では、「障害に基づく種々の困難」を「障害による学習上又は生活上の困難」に改め、「学習上の困難」の改善・克服も自立活動に属することが明瞭に示されている。つまり、本人の認知特性に応じた、各教科のより効果的な学び方を見つけ出し、本人が手ごたえを感じ取れるところまで習熟訓練する。この学ぴ方を続けて、本人の努力・家庭のサポート・在籍校の指導で、うまくいけると判断できれぱ、退級にまで至る。

通級は、単に単元を次々にこなしていく補習塾の一種ではない。

ICFの観点から、自立活励を考え、本人と在籍学級の状況の実態把握をまず行う

今回の新学習指導要領では、2001年のWHOの国際生活機能分類(ICF)を活用して自立活動を捉え、「解説」には「疾病等に基づく状態のマイナス面のみを取り上げ」るのではなく、「障害による学習上又は生活上の困難を的確にとらえるとともに」、「生徒が現在行っていることや、指導すればできること、環境を整えれぱできることなどに一層目を向ける」こと、言い換えると、社会的不利を取り除くためには、本人の持ち味を生かしながら、個人因子だけでなく環境因子も共に改善していくことを求めている。

まずは、本人と在籍学級の長所・課題を見つけ出す実態把握を行うことが大切となる。

「自立活動」の観点を生かしたAさんの指導内容の事例(表参照)

Aさんは、他校から週1回通級してくる生徒である。本人と在籍学級の実態把握から指導目標、自立活動の項目選定、具体的な指導内容に至る指導計画をまとめたものが表である。なお、この表は「解説」11,13頁所収の表を参考にした。

今回、ICFの観点から、在籍学級の「学級生活面」での実態把握、指導目標、自立活動の項目選定と指導内容の設定を在籍校の学級担任との連携により記し、指導計画を作成した。表の順で対象生徒の指導内容を検討すれぱ、通級と在籍校は、① 本人にとっては自身の課題を軽減するバリアフリースキルを身に付けていくこと、② すべての生徒にとってはさまざまな課題を軽減するユニバーサルデザインスキルを身につけていくことや環境整備をしていくこと、の双方を視野に入れつつ、連携して実践しやすくなると思われる。

<参考文献> 文科省編著『改訂版 通級による指導の手引』第一法規2007年、

*表は別紙

*DAISYの利用に関するリハ協への要望、意見(平成21年12月より抜粋一部改変)

1 LDのみならず、その周辺にまで広がりつつある、滞在的な需要状況があり、より広範な課題をもつ人々にとっても、有益な置用方法の研究が必要。

DAISYの利用は、当初、Aさん1名のみの利用になっていたが、保護者からの熱心な働きかけで、現在は5名の利用に拡大しつつある。利用生徒の障害もADHDのようにディスレクシアとは直接には接続していない生徒にも拡大しつつある。

本年度のLD学会で議論された新たな主題は、ADHDや広汎性発達障害の子どもの学びにくさをどのように支援していくのかといったテーマであった。Aさんにも、DAISY利用方法にかなりのこだわりがあり、単なるLDとは異なる状況も見られる。

また、別の生徒には、構音障害がらみの課題がみられる。

さらに、利用生徒の保護者の中には、プラジル国籍の方もあり、DAISYを多くの外国人の日本語や日本歴史学習にも活用したいという強い希望を持っている。

通常の学級を担当する各教科の先生方の中には、学級規模での活用を研究したいと考えている方もおられる。

2 DAISY活用の裾野を広げ、より効果的な活用方法についての多彩な実践研究を促す、幅広い関係者の参加を促すシンポジウムの提案。

DAISYの利用を、様々な発達障害をもつ生徒や一般の生徒、さらに利用に関心を寄せる多くの市民に対し、広く知っていただく機会を浜松市内でも開催したい。

教育関係者だけでなく、福祉や外国人関連の行政に携わっておられる方々にも知っていただきたける機会にしたい。来年度の中頃にでも行いたい。リハ協の皆様のご協力もお願いしたい。

3 当該学年用だけでなく、下学年のDAISY教科書の供給を熱望する。通級でも、特別支援教室でも「学び直し」のために不可欠。

供給していただけるDAISYに関しては、本人の当該学年だけではなく、下学年の教科書も使って通級では指導をしている。

また、文科省が各学校に広めようとしている特別支援教室も、本人の学ぴ直しの小集団学習を進めていく際にも、下学年の教科書が活用されている。ここには不登校ぎみの生徒が多数いる。

特別支援教育が特に必要な生徒ほど、下学年の教科書が必要となっている現状がある。

いいかえると、現行のような、現在の在籍学年の教科書のみの供給というシステムでは、効果的な支援体制は組みにくい状況になっている。そこで、ぜひ下学年のDAISYも供給できるようにしてほしいと念願している。

4 ① 英語と数学のDAISYについての要望と英語用の補助プリントの活用と効果。 ② 理科・社会のDAISYについての要望と社会科歴史の楠助プリントも活用と効果。 ③ 紙媒体の教科警自休への改善要望。

① ◆ 英語では、やはり英文・和文が連続して音声と文字で示されるタイプが、生徒には最も分かりやすいと言われている。

  • 英文。和文のセット音読の効果的な利用方法。・・・セットで記憶。耳と目で。
  • ロールプレイによって体験を通して習得していく。・・・体験を通した場面記憶。
  • 話者の意図・願いを、相手にどのように伝えていくのか。・・・ソーシャルスキルの改善にも。

◆また、数学では答えと解き方が音声と文字で示されるタイプの出現を待望している。

② ◆理科・社会では見開き1時聞授業のポイントを把握して、小見出し単位に分節化して内容理解を確認し、深めていく。穴埋め問題で文字記憶の確認→記述・論述問題でキー概念の把握を確認。

③ ◆これらの要望は、実は、紙媒体の教科書自体の改善にも関連する内容であり、発達障害はじめ、各教科の専門家による検討と現場での実践研究の積み重ねが必要であると考えている。

イラストと本文との対応関係がより明らかになるような工夫が必要。

5 歴史のDAISYのように教科書1冊分が1枚のCDは、とっても使いやすくて重宝。

ぜひ、各教科のDAISYについても同様の仕様となることを願う。また、速やかな供給ができるように財政面でも文科省からのバックアップが一層求められると考えている。

6 家庭で取り組め、通級で確認できる学力保障システムとしてのDAISY。

当通級では、DAISY利用の直後に、段落単位のキーワード想起テスト、内容理解テストも併せて行っており、単に聞き流すのではなく、内容理解を促進させるブログラムも開発しつつある。文科省の学力向上方針にも合致したものとなると確信している。通級生徒の定期テストでの点数、通信簿の評価点の上昇とも符合している。

7 文科省新指導要領の成果と問題点。DAISYのユニバーサルな活用への道を開く。

21年6月に発行した『特別支援学校指導要領解説自立活動編』73頁にDAISYについて特筆されていることは画期的だと思うが、使用する生徒を「文字や文章を読んで理解することに極端な困難を示す場合」と形容されている点に、大きな問題がある。この文言をとらえて、「極端な困難」ではないので、DAISYの使用を躊躇するといった動きもでかねない文言である。

DAISY図書は、一般の健常者の大人にとっても手軽に書籍に親しむことを促し、日本人の活字離れを食い止める良策であるユニバーサルデザインのツールと考えられる。高齢社会に突入している現在の日本にとって、高齢者の認知症予防にも効果的であると確信している。

そこで、まずはこの『特別支援学校指導要領解説自立活動編』の上記の文言から「極端な」という部分を削除してもらいたい。