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マルチメディアDAISY:児童及び教師に対するアンケート調査

マルチメディアDAISYによる読書能力の発達

多くの読書研究者が、児童に録音図書の利用を促すことによって、児童の読書に対する意欲と興味が増していく可能性があると述べています。この読書方法が悪い連鎖を断ち切り、良い方向へと道を開くことができます(Høien & Lundberg 1999)。またこの研究者達は、重度の読み書き困難/ディスレクシアの児童にとっての大きな問題は、読書技術の捉え方そのものであると主張しています。

読書の従来の公式:
読書=単語の解読力×(図書の)内容の理解力

けれどもこの公式は方程式として成り立つのですから、そこには相互関係がなければならないと強調されています。(Høien & Lundberg 1999)

時には単語の解読力は内容の理解力よりも大事であると言われますが、しかし文章が目の前に映し出されると同時にコンピューターによって読み上げられているような場合においては、この順番を変え、内容の理解力からスタートすることも可能なのです。(Anderesen 2007)

児童は物語を聴くことによって読むことや本そのものに興味を持ち続けられるように、助けを得ることができるでしょう。その上この方法による読書は、彼または彼女が自分で読んだのと同じように、語彙や知識を与えてくれるのです。(Schaywitz 2003)

文章の理解力

読むことを学ぶのに困難がある児童に対しては、私達が読み聞かせをすることが重要です。私達が読み聞かせをする時、児童は、話し言葉の会話文とは違う、書き言葉の形式に触れることができます。彼らは文章に出てくる、形の整った理路整然とした言語に慣れ親しむ可能性を得ることができます。児童は読書をする時に、その理路整然とした言語を必ず自分自身の中で再構成しています。それがある児童にとっては困難なこともあるのです。また別の方法は、彼らに録音図書を利用させることによって、書き言葉を聴く可能性を与えることです。(Frost 2002)

児童は文章を読み始める前の段階で、会話や扱われている分野に関係する経験をお互いに話し合うこと等で、必要な前知識を得ることができます。この前知識があることで、より集中して熟読することができるのです。読書とは2つの主要な要素、単語の解読力と内容の理解力によって成り立っています。

ある児童は図書『リネアが犬を見つけました』の読み上げを聴いて、以下のようにコメントしていました。

  • 始めに自分で読まなくていいのは、とても楽です。こんなに文字が多いのですから。もし自分で読まなくてはならないのだったら、とても気力が持たないでしょう。

最近の研究により、児童の文章に対するより深い理解力は、通し読みのような概要を掴む方法から読書を始めることにより、強化されることがわかっています。(DfES 2005)

多くの年少の児童は一般的な概念を学ぶと、図書の内容の中からある部分部分を選び出し、そこに強い興味を持ちます。これは年少の児童が総体を重視する学習スタイルを持っていることに起因しています。(Dunn 2003)

その後児童が文章の内容を理解するだけの十分な前知識を得た時、読書方法は通し読みから普通の読書へ、さらに熟読へと変化していきます。児童の中にはコンピューターによる読み上げを利用する子どももいますし、その他の児童は目で読みます。また見る、聴く両方を使って読書をする児童もいます。(Andresen 2007, Myrberg 2001)

これはマルチメディアDAISYによって児童達が図書中の文章に触れるようになって、私達が目にしてきたことです。児童達は文章が目の前にあることと、読み上げに伴って黄色いマークが動いていくことを本当に喜びます。彼らはこの方法で文章を読むことが楽になったと表現しています。ある男子はこのように述べました。

  • この方法を使ってぼくは、普通の本を読んでいた時よりも難しい文章を読めるようになりました。

単語の解読力

児童は自分で読書をする時、理路整然とした文章を自分の中で再構成しなければなりません。これ自体が難しい作業かもしれません。けれども解読力と理解力間に相互作用が生まれ得ないほど、もしある児童の単語に対する解読力に欠陥があった場合、当然問題は大きくなります。児童の文章に対する言語的管理能力が高められる時、メタ言語的洞察力を管理できる可能性も高まっていきます。同じ文章を何度も読み聞かせることにより、私達は児童が文章に対する言語的な管理能力を身に付けられるように支援できるのです。(Frost 2002)児童はマルチメディアDAISYによって、この機会を容易に得ることができます。

このプロジェクトでは児童は、まず前知識を得て内容を理解する為に文章を通して聴きました。その後一文の読み上げを聴きます。この同じ文章を児童は望むだけ何度も聴くことができます。それを通して児童は、聴いた後に自分で声に出して読むことができるのです。この学習方法は、フロストによって支持されています。フロストは、児童は学びを全体像の把握から始める時、細部をより深く知ることに、驚くほどの集中力を見せるものだと記述しています。これを方法論として用いない手はありません。ですから音声テープを用いて児童が読み上げを聴くと同時に文章を追っていけるようにするのです。読み上げの間児童は、読み上げられている言葉と目の前の文章とを一致させることに集中しています。これは児童が自分自身で文章を読める段階に到達する前に、ある程度の文章を読むことに親しむ一つの方法です。

児童の一人は『ベルマンは一枚のFAXを受け取った』を読みました。彼女はまず一段落分の文章を聴き、その後同じ箇所の段落を読みました。そうすると彼女は文章を覚え、とても上手に読むことができるのです。教師によると彼女は、ある本の中の一文を何度も繰り返して練習したのと同じくらい上手に読むことが出来たそうです。彼女はマルチメディアDAISYを用いることにより、滑らかに読む能力を、時間をかけずに身につけることができたのです。

児童は首尾一貫性のある読書とは何かという技術的な見識を身に付けます。これは一般的にはなかなか獲得できません。もちろんそのためにはちょうどいい難易度の文章を選ばなければなりません。解読力のための文章とは、各児童に近位の、つまり最も近い発達領域の中にあるべきです。(Frost 2002)

指導法の提案

自閉症の児童には以下のような指導法が必要です。

  1. モニターの電源を消し、文章の読み上げだけを聴く。
  2. 文章を聴きながら、印刷されている図書を見る。
  3. コンピューターを使い、教師とスクリーンリーダーの手助けによって、内容を書いてみる。
  4. マルチメディアDAISYの図書を聴き、読んでみる。
  5. 児童はスペースキーを押して読み上げを始める。
  6. 教師は句点や短い段落の最後の文字の後、スペースキーを押して休止をする。
  7. 児童と教師は一緒に挿絵を見る。挿絵について話し合う。時には挿絵の全体が見えるようにスクロールリストをスクロールしなければならない。
  8. 児童が感想を話す。
  9. 児童がスペースキーを押し、さらに文章の読み上げを聴く。