スウェーデンの事例
リーディングエー市の学校でマルチメディアDAISY図書を試用
調査期間:2008年春
対象地域:リーディングエー市
目的:マルチメディアDAISY図書を様々な学校で試し、生徒達に適合するか調査すること
運営:スウェーデン国立録音点字図書館(TPB)
調査担当:アニータ・ヒルデン(ティレスエー市 レークニィッタン(Leknyttan)教育者)
対象:読み書きが困難な生徒、注意欠陥障害の生徒、発達障害の生徒とその教師(約50名)
再生ソフト:AMISおよびEasyReader(Dolphin Computer Access)
手法:マルチメディアDAISY図書を1ページずつ聞き、その後読み上げを停止し、 同じ文章を自分で読み、教師に質問をする。
感想:
マークがつくのはいいね。
これがないと文章のどこを読んでいたのかすぐに分からなくなってしまうんだ。
(ヨハン・アーンファルク(4年生))
絵が見えると、いつもよりよく理解できるんだ。
ぼくは本の中の文字が小さいとよく読めないんだけど、文字が拡大できるだけで楽になるんだ。
(ビクトール・ビェルクベリィ(4年生))
読字障害を持つ生徒達の多くが、大きい文字を好むことには気がついていました。 なぜかは分かりませんが、そのように見受けられました。 かつてこんなすばらしいものが出版されたことはありません! とてもうまくいっています。生徒達が自分で吹き込みもできたら、 おそらくもっと良くなるでしょう。
(シェールセットラ校の特殊教諭 アッキー・トーングレン)
調査担当者の考察:
読書トレーニングにおいては、内容も大変重要だと思います。親しみやすい図書の方が、読書にすっと入り込めます。(中略)図書の内容理解において重要なのは、予備知識を持っていることです。全ての図書がこのような形態であるべきです。生徒達は見ることと聞くこと、両方ができることによって、内容を確かによりよく理解しています。
教師による考察:
各学校に何か新たなものを紹介するとき、多くの場合ブレーキとなってしまうのが技術である。教師に変革に対応できるように迫ることになるからだ。シェールセットラ校の特殊教諭、アッキー・トーングレンは、だからこそ生徒達が自覚してできるだけ早期に自分の望む読書スタイルを把握することが重要だと考えている。「そうすれば生徒達は、小学校高学年から中学生に進級する時に自分でその情報を携えていって、新たな多くの教師達に出会うことができます。『私はこのようにして本を読みます。ですからこのような図書を望みます』と言うことができるのです」。
評価はまだ済んでいないが、シェールセットラ校の生徒達と教師達の意見は一致している。 彼らは今後も続けてマルチメディアDAISY図書を使っていきたいと考えている。
このテキストは、TPBが発行している以下の雑誌の記事を翻訳し、その内容を要約したものです。
Boqvist, Lena. “Nytt projekt: Elever testar text i talbocker”. Bibliotek for alla. 2008, No.3, p.4-5.
http://www.tpb.se/filer/trycksaker/pdf/bfa32008.pdf (accessed 2009-02-03).
マルチメディアDAISY:児童及び教師に対するアンケート調査
(この調査を担当したアニータ・ヒルデン氏の報告書です。)
アニータ・ヒルデン著
スウェーデン国立録音点字図書館(TPB)発行
要旨
リーディングエー市の学校に通う7歳から15歳までの児童がマルチメディアDAISY(DAISY text och ljud)により読書をしました。各図書に付き、10人の児童と10人の教師が試読を行いました。各々それぞれの図書を読んだ後にアンケートに答えてくれました。
各図書を読むのに用いたのは、学校用プログラムとしてリーディングエー市のネットワークにインストールしてあるDAISY再生ソフト、AMISです。 このソフトは全体としては技術的にうまく機能しており、児童は楽に理解をしてこのソフトを利用することがました。図書のうち2種類の速度で読み上げられた本に関しては、EasyReaderというソフトも試してみました。
教師達は児童達の年齢に応じて図書を選び、ほとんどの児童はその図書や読み上げを好ましく感じました。それぞれの図書には挿絵がついており、児童達は挿絵のおかげで本がより面白くなり、内容が理解しやすくなったと感じました。
文字の大きさは拡大することができますが、ほとんどの児童がこの機能を利用しました。文章には読み上げに合わせて、網掛けのマーキングがかかります。教師達も児童達も、この方法で読む方が、印刷版の図書を読むよりも何倍も楽だと返答しました。多くの児童や教師が、マルチメディアDAISYで読書をした結果、より複雑な内容の図書を読むことができたと述べました。
ほとんどの児童は、この方法で読書を続けることを希望し、教師達は全員がマルチメディアDAISYを彼らの授業で継続して用いることを望みました。
目次
- はじめに
- 方法
- 実施
- アンケートの答え
- 再生ソフト及び図書に対する口頭、または文章による意見
- マルチメディアDAISYによる読書能力の発達
- 参考文献
- 付録1:調査で使用したアンケート用紙
- 付録2:AMISについて
掲載者注
付録2は、再生ソフトAMISの各操作ボタンに関する説明である。この内容は、DAISY研究センターのページに掲載している「AMIS基本操作ガイド」の内容に相当するため、ここでは特に翻訳はしていない。
AMIS基本操作ガイド
http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/software/amis_install.html#two
原本書誌情報
Anita Hilden. DAISY text och ljud : en enkatundersokning bland elever och larare. TPB, 2008, 35p.
http://www.tpb.se/filer/dokument/pdf/rappdaisytextochljud0811.pdf (accessed 2009-05-08)
写真は原本を参照のこと