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マルチメディアDAISY:児童及び教師に対するアンケート調査

再生ソフト及び図書に対する口頭、または文章による意見

著作権に関する表記

各図書の再生時には次の文章が読み上げられます。「この図書は著作権法第17条により、機能障害を持つ人々のために製作されています。不法な配布または送信に対しては法的措置を取るものとします。」

子ども達は機能障害という言葉を聴くとぎょっとして、図書から目をはずします。図書を紹介する大人達は、子ども達が自分は機能障害のある人々だと、このような否定的で感じの悪い方法で認識することは望みません。ですからこの情報は読み飛ばします。物語の始まりから子ども達に読ませようとするのです。

何人もの教師が、機能障害という言葉は図書の始まりとしては暗い響きの言葉だとコメントしました。彼らはこの情報が図書の最後に紹介されることを望んでいます。その他、「機能障害を持つ人々のために」という言葉を消し、後の文章を残しておけばよいのではという提案も出ました。

画面上の挿絵

挿絵は、読み上げの時にどの文字の大きさが選択されているかによって、画面上に現れてから消えるまでの速度が変わります。多くの教師達が、挿絵が現れた時には再生ソフトは一時停止するはずだと考えていました。そうではないと気づいた時、彼らは、以下のような希望を出しました。

彼らは読み上げが自動的に止まり、その後児童がスペースキーで読み上げのスタートか、または継続をできるようにしてほしいと望んでいます。

  • 挿絵の箇所に来たらソフトが自動的に止まるべきだと思います。挿絵の全体を見ることができるように。

ほとんどの教師達から出されたその他の意見はこのようなものでした。

  • 文章の読み上げ速度を下げる選択ができるように、ソフトを改良することはとても大事です。

特殊録音

このプロジェクトを始めた時には児童達は、グドルン・ウェスネルト著の『魔法の根』を読むことになっていました。この図書は1500年代のスウェーデンで生きていた、まもなく15歳になろうとしている少女、ウルリケを描いています。ある日彼女は彫金師ディドリックの死の床の傍に座っていました。彼女はそのことによって彼の黄金資産を全て引き継ぐことになりました。またマンドラゴラン、つまり不思議な力を持つ人型のマンドラーケの根をも受け継いだのです。

図書の内容は特別学校の児童達が持っていないような前知識を要求する上に、彼らには扱っている題材が難しすぎました。このような理由からこの図書ははずされ、イェオリィ・ヨハンソン著の『ムッレメックは車を作りました』に取り替えることになったのです。この本は車を作ることに決めたムッレメックについて書いています。庭先で作業が行われ、彼のガラクタの山が様々な方向から組み合わされていくのです。励ましてくれたり、手伝ってくれたりするのは犬のブッファです。挿絵では車が出来上がっていく様子が示されています。けれどもムッレメックは車の発車に失敗してしまいます。そしてここで、彼が何を忘れていたのかが問題になるのです。

図書『ムッレメックは車を作りました』は2008年に完成し、2名の児童が読んでみました。一人は特別学校の生徒で、もう一人は自閉症のある特別学校の生徒でした。

教師達はこの図書の録音は、聞き取りが難しいかもしれないと感じました。なぜならば遅い速度の録音が、自然な韻律には聞こえないからです。この図書は大変ゆっくりとしたテンポで録音されているのですが、その結果一語一語が歯切れ良く発音されています。それが児童にとっては途切れ途切れに聞こえるのです。この読み上げの速度を上げることはできません。

この図書は児童に聞こえるように擬音が入っています。読み上げを続けるために、擬音を中断することもできます。これによって読者は、ソフトが次の文章を読み上げるように能動的に選択をすることができるのです。児童はスペースキーを押せばよいのです。

『ムッレメックは車を作りました』を読んだ2名の児童は、それまでに録音図書を読んだことが一度もありませんでした。2名の児童はこの図書を本当に楽しみました。1人は何度も繰り返して読みました。この2名がムッレメックに図書とコンピューターソフトの両方で出会うことができたことも、大きな喜びの理由でしょう。2名のうちのどちらも、挿絵や物語に添えられた描写的な背景音を聞いたとはコメントしていませんでした。彼らはその擬音を自然なものとして感じ、楽しんでいたようでした。教師達のコメントが的を射ているかどうか知るには、もっと多くの児童にこの図書を読んでもらう必要があると言えるでしょう。

2つの速度による読書訓練

図書『リネアが犬を見つけました』を読んだ児童は12名でした。この図書は自分のペットが欲しくてたまらないリネアについて書いてあります。リネアには2人の兄弟がいるのですが、兄弟がいてもペットほどには楽しくありません。リネアはお兄さんと一緒にお店に行った時、自分だけの犬が手に入るチャンスを手にします。その犬はとてもさびしそうにお店の外に繋がれており、明らかに誰かに世話をして欲しがっているようにリネアには見えました。この図書は印刷されている図書の方も読書訓練に用いられており、教師達がよく知っている図書でした。

『リネアが犬を見つけました』は読書訓練のために製作されています。この図書は2つの速度で録音されていて、AMISでもEasyReaderでも読むことができます。この図書をAMISで読む時には、一瞬で開くことができます。技術的にも実践的にもうまく機能します。大きな違いは、EasyReaderを用いた場合は読み上げ速度を遅くできることです。これはAMISを用いるとできないことなのです。ある3人の児童の為ために、遅い方の速度の読み上げが選択されました。速い速度の読み上げは、この3人には速すぎたのです。遅い方の速度を選択すると、速度を上げることはできません。それができたら良かったのですが。それをしようとするとプログラムがロックされ、エラーメッセージが出ます。その後読み上げが中断されてしまいます。

教師達が児童に録音No.2つまり遅い方の吹き込みを聞かせようとした時は、一語一語の間の休止の長さがばらばらで内容が分からなくなってしまった為、この読書方法を中断せざるを得なかった、とコメントが残されていました。

  • 遅い方の速度は読み方に滑らかさがありませんでした。そのため内容が分かりにくかったです。吹き込み手が遅い速度で吹き込むなら、文章の内容がきちんと判るようなイントネーションや区切り方をすることが重要です。この図書ではそれが難しかったと思います。文章のテンポが揃っていませんでした。時々、読点や句点の箇所で停止していました。2年生の男の子がそれを嫌がっていました。
  • 録音者は同じ拍子を保つべきだと思います。句点の箇所の休止の長さを揃えてください。
  • 7歳の女子はこの本に興味を持ったようです。彼女は集中して聴いていました。

この結果は、録音者が録音速度を下げる時に、語句の通常のイントネーションを保つことがいかに重要かということを示しています。

この図書を読んだ児童達は、その他の図書を読んだ児童よりも年齢が下です。12名のうち8名は7~10歳であり、読み書き困難/ディスレクシアを負っています。これは印刷されている図書自体が年少の児童向けの読み物なので、当然のことです。小学校の児童達は、これまでに一度も何か録音図書を読んだことはなく、これが始めての体験でした。それに対して11~15歳の特別学校に通う3名の児童は、すでに録音図書を読んだ経験がありました。

この図書の内容は年少の児童にとってはちょうど良いレベルで、読書訓練の教材としても適していました。それに対して特別学校の教師達は、内容は簡単すぎると考えましたが、発達障害及び自閉症の児童達はより複雑な内容の文章を読んだり聴いたりできるようになるために、聴き取り能力のトレーニングをする必要があるのでこの図書を選びました。

何人もの児童が次のような方法で訓練を受けました。録音速度1(速い方の速度)を選び、教師と児童が一緒にモニターの前に座ります。児童は全頁の読み上げを通して聴きます。教師が読み上げを停め、教師と児童とで挿絵について話し合います。その後一緒に挿絵の細かい部分を見ていきます。全頁をこのような方法で一緒に読んでいきます。もし児童にとって何かわからないことがあれば、一文か短い段落をさらにもう一度聴きます。児童達が物語を全て聴いてみて、前知識を得ることができたら、今度は児童が自分で聴いたり読んだりする番です。

ある児童は読んでみて、速い方の速度の読み上げについていくことができました。

その他の児童は録音速度2、つまり速度が遅い方の読み上げを選択しました。ある児童は一文づつ聴いていきました。その時に読み上げについていけるように文章を指さすか、マウスでマーキングをしていました。なかには読み上げと同時に自分でも声に出して読んでみる児童もいました。またスペースキーで読み上げを停めては、文章を自分自身で読んでいる児童もいました。

このような遅い速度の読み上げの際、録音者は遅い速度で読み上げると同時に、様々な綴りに対して正しいアクセントで吹き込みを行うことが大事です。またこの図書では、句読点の後の休止の長さが揃っていないということが起こりました。

3名の児童が、このような方法でこの図書を読みました。彼らはそれを楽しみ、自分が良く出来るという自信を持ちました。もちろん彼らはそうなのです。彼らはこれまでに、同じような機会を得てこんなに本を読めたことも、これほどたくさんの文章を読もうとしたこともありませんでした。

ホーカン・イェンソン著『ブッレルの大騒ぎ』

この図書は『ブッレルのいたずら』(Bullers bluff)から始まるシリーズの第4作目です。ブッレルはどこにでもいるような、けれども他の子どもとは違ったタイプの小学校高学年の少年です。失業中の建築士の新しい父親は家族をお金持ちにするための発明にいつも没頭しています。母親は赤ちゃんのベーダにかかりきりです。ブッレルのことなど誰も気にしていないように思えます。ブッレルの親友の少女、エレンでさえ、最近は新しい男友達とばかり一緒にいます。そこでブッレルは、大みそかにテレビに出演することに決めました。それなら少なくともみんながブッレルを見てくれるでしょう。

この図書を読んだ小学校に通う5人の10~11歳の児童は、録音図書を読んだことはこれまでに一度もありませんでした。また養護学校に通う4人の児童は、録音図書には不慣れで、何冊か読んだことがあるだけでした。彼らのうち誰も、通常は読書に興味などありませんでした。言わば読書に不慣れな児童だったのです。彼らはブッレル少年のシリーズを読んだことは、これまでに一度もありませんでした。通常彼らの年齢の児童は、ブッレルの図書を好むものなのですが。彼らが読書に慣れていないことは、読み始めた時にすぐにわかりました。そのため、彼らには、なぜブッレルがグローベンのてっぺんに座っていたのか、図書の始めの部分の説明が必要でした。

教師からのコメント:

  • 図書の概要から始められたら良いですね。吹き込まれた概要が必要です。背表紙の文章が冒頭にあるべきだと思います。内容について、かなり話さなければなりませんでした。文章の中に、過去と現在のギャップがあります。この時制のギャップが読書に不慣れな児童には難しいと思います。私の住む地域にいる児童達はマンションに住む環境のことも、ブッレルが持つようなタイプの親たちのこともよく知りません。彼らはこのような種類の文章にはこれまで一度も出会ったことがないのです。いつもは私の児童(10歳)は難しい図書を読みとおすことなどとても出来ません。今日彼は開眼したのです。「もっとたくさんのブッレルのシリーズを借りたい」と言い出しました。

児童達は図書中の挿絵は、読書の助けになると考えました。この図書には白黒の挿絵がついており、ある児童はこれらの絵が醜いと思い、また別の児童は変な絵だと思いました。6名の児童はこれは良い図書だと思い、2名の児童はすばらしい図書だと思いました。また別の2名は良くも悪くもないと思いました。

  • ブッレルがみんなに見つけてもらえて良かったです。あの女の子がテレビの4チャンネルの中にいる彼を見て、エレンが…会いに行きたいと手紙を書きました。
  • とてもわくわくしました。私は普通はこういう種類の本を読まないのですが。図書を閉じることができない程でした。
  • 私が色々な事を学べるような本を読むのは楽しいです。私は本をあまり読まないし、読むのはLLブックだけです。この本にはとてもわくわくしました。少し恋愛やその他のことも入っていました。
  • これは楽しいわくわくする本でした。内容がとても面白かったです。友達がいなくて、誰も構ってくれる人のいないブッレルは大変だったと思います。

ある教師は1つの文章であるならば、読み上げを継続してほしいと希望を出しました。読み上げに関してこの教師が述べたコメントは以下です。

  • 2行にまたがっている1つの文章に休止が入るのは間違いです。(第1章)(第2章の13頁)「彼はもう気づく・・・はずだ」等。例えば63頁から64頁の移り目など。

教師達は全員、マルチメディアDAISYを今後も継続して用いることを希望しました。またこの本を読んだ児童も全員、この方法でまた新たに本を読んでみたいと述べました。

  • 読書をする時に、この黄色いテキストのおかげで楽に読むことができます。この黄色いマーキングがあると、文章のどこを読んでいるかが分かるので便利です。(14歳、特別学校)
  • 普通の本なら自分で読みたいと思いますが、厚い本ならこのような方法で読みたいと思います。
  • この方法で読むと理解しやすいです。
  • この方法で本を読みたいです。私は今までよりも長い時間本を読んでいることができました。いつもなら本を読んでいるととても疲れてしまうのです。とても面白かったです。こういう本を図書館で借りたいです。
  • こちらの方が簡単でした。私はもっと学びたいです。もっと続けたいです。いつもだったら本を読んでいるとすぐに疲れてしまうのです。
  • 面白かったです。普通の本よりも長く読んでいることができました。
  • とても楽しかったです。想像をする余裕があり、本の中で生きているような気持になりました。そういう時には状況を頭の中に想い描くことができるのです。

ウルフ・パルムフェルト著『ベルマンは一枚のFAXを受け取った』

この本には昔からよく知られているパターンのベルマンの物語が37話収められています。一部は知られているでしょうし、また新たな知識となる部分もあるでしょう。ベルマンの抜け目なさやずる賢さは子どもの無邪気でまっすぐなおおらかさと結びついています。王や女王、警察、ローマ法王、ドイツ人もノルウェー人もベルマンの痛烈でちゃかすようなユーモアをはねつけることができません。

8名の児童がこの図書をAMISソフトで、2名の児童がEasyReaderソフトで読みました。この2名の児童は読み上げの速度を遅くする必要があったのです。

ほとんどの児童はこの図書を好み、その内容に大笑いしました。4名の児童がこの図書は大変良いと思い、2名の児童が良いと思い、残りの4名の児童が良くも悪くもないと考えました。何人かの児童がこの図書を聴くと同時に読んでみました。この読書方法は多くの児童の笑いを誘い、どのお話が一番良かったか、どれとどれが面白かったかなどの会話が生まれました。

あるお母さんの話では、彼女の息子はこの図書を何度も読み、その後の夏の間中家族をベルマンの様々な物語で「苦しめた」そうです。ベルマン物語が載ったこの図書に対する読書熱は、やがて印刷された図書への読書熱へと彼をいざないました。お母さんが言いました。

  • これはまさに、息子が読書に興味を持つためのターニングポイントとなりました。

教師達のその他のコメント:

  • 彼にはユーモアがあり、愉快な物語を好みました。意欲は高いです。
  • 面白かったです。何度も笑いが起こりました。意欲を刺激しました。挿絵は愉快なお楽しみに満ちています。
  • クラスの全員が面白いと思いました。けれども彼女(8歳女子)だけは違いました。
  • 自閉症の14歳の男子はベルマン物語の面白さがわかりませんでした。彼は文章を文字通りに理解し、解釈しました。

文字にかかったマーキングには以下のようなコメントが寄せられました。

  • 彼女は一段落を聴いてから、その段落を読むことができました。そうすると彼女は文を覚えるので、同じ難易度の印刷されている図書よりも理解して読むことができるのです。
  • はっきりとしたマーキングのおかげで文章を読むことが容易になりました。
  • 彼女はまず一段落を聴き、そのあと同じ段落を読みます。そうすると彼女は文章を覚えて、きちんと理解して読むことができるのです。印刷された図書で訓練してきたのと同じようにきちんと理解して読むことができます。この方法で今までよりも早くスムーズに読書をすることができます。

児童達がこの方法で再び図書を読みたいかという質問には、6名の児童がはいと答え、2名がいいえと答えました。おそらくいいえと答えたのは、文章についていけなかった児童であることが確認できるでしょう。以下のコメントを見てみましょう。

  • 私は普通の本の方がいいと思います。そちらなら文章についていくことができます。こちらはあっという間文章が流れてしまいます。私は文章を眼で追いたくはありません。(9歳、女子)
  • はい。もし自分で図書が選べるなら。例えば『指輪物語』など。
  • 目で追える文章の量はちょうどいいと思います。行がはっきりします。
  • 面白かったです。

トーマス・ブロム著『郊外の子ども達』

この図書はイルヴァ・グスタヴソンとハンス・レンヘッルが制作したフィルム原稿を下敷きにして作られました。ソマリア出身の9歳のアミーナは、滞在許可証がないまま自分のお祖父さんと一緒にスウェーデンに暮らしています。彼らは避難民をかくまっているヨハンの元に身を寄せます。アミーナはすぐに郊外にあるその家の中で友達を作ります。お祖父さんが亡くなった時ヨハンは、アミーナが彼の元で暮らせるように申請を出します。そこへ一団の悪者達が盗品や麻薬を隠すためにその家の地下室を使います。アミーナを引き取るための手続きの最中に、ヨハンは窃盗と盗品受け入れの罪で起訴されてしまいます。

この図書はAMISとEasyReaderのどちらにおいても、ページ番号と共に読み上げられてしまっています。ページ番号は消去されたにも拘わらず。ページ番号やをめくる音が文章に割って入るので、読み上げ自体の妨害になります。

この図書を読んだ児童のうち7人は10~11歳の年齢層でした。これらの児童の半数が特別学校に通っており、録音図書を前にも読んだことがありました。その学期に児童達がこの映画を鑑賞するように、教師達が計画しており、その点でこの図書の選択は適していました。彼らのほとんどはこの図書を読んだ後で映画に行きました。

8名の児童がこの図書は良かったと感じ、1名が大変良かったと感じました。1名は良かったとも悪かったとも思いませんでした。彼らは以下のようにコメントしました。

  • とてもわくわくしました。
  • 私はこの映画を見ました。ビデオが家にあるのです。
  • 普通の本よりも面白かったです。
  • 私はこの映画を見たことがありましたし、私の先生はこの本を読んだことがあったので、良かったです。

この図書の録音速度は、6名の児童がちょうどいいと感じ、4名の児童が速すぎたと感じました。

  • 録音された音声が余りにも速く過ぎるので、彼女はTPB Readerで続きを読むことにしました。(14歳女子、特別学校)
  • 文章の読み上げが速すぎました。彼女は会話文の箇所や間に休止が入る文章のような、短い文の箇所のみついていくことができました。(10歳女子)
  • ある男子はところどころしか文章についていくことができませんでした。彼は黄色いマークを目で追おうと努力していました。(11歳)

この図書には映画から抜粋した10枚の写真がついていて、64頁と65頁の間の、番号のない頁にまとめて載せられていました。多くの教師がこれらの写真は前書きのように冒頭にくるべきだと述べました。ある教師は自分の受け持つ4人の児童にこれらの写真を、それぞれが読書を始める前に見せました。

これがコメントです。

  • どんな光景が出てくるのか、分かっていた方がいいですから。

この図書を読んだ児童は全員、この方法で読書を続けたいと述べました。

  • 私はまたこうして読書をしたいと思います。ただクラスメートに見えてしまうので、クラスでするのはいやです。(10歳女子)
  • 続けたいですね。でも普通のDAISYブックなら車で旅行をする方がいいです。
  • 文章を耳から聞き、それを目で見ることが出来ると頭の中に入ってきます。その方が簡単です。黄色いマーキングはどこを読んでいたかすぐ分からなくなってしまう人にはいいと思います。これがあれば分からなくならないですから。写真は始めには来ない方がいいと思います。少しこの本の内容を最初に紹介してくれて、その後に写真を見せてくれたら良いと思います。その方が読書訓練も楽しくなると思います。
  • 黄色いマーキングがかかるのは、他のDAISYブックよりも良いと思います。この女子は前にDAISYブックを読んだことがありましたが、その時には読み上げを聞いているのが退屈だと言っていました。
  • 普通の本よりもいいですね。

マティアス・ダニエルソン、カロリーネ・インネル、ペール・グスタブソン著『怒りとは』

怒った時はどんな気持ちになるでしょう。そして人はどれほど怒ることができるのでしょうか?その答えや怒りについての様々な質問や往生際が悪いとはどんなことなのかが、特に友達や両親とのけんかについて書いてある手紙を通して紹介されています。また怒っている時の身体の反応に関するレポート、怒った時に使う言葉のリストや、どのようにして怒りを静めるかというヒントも書かれています。作家のモニ・ニルソン-ブレンストレームも短編の物語を書いて協力しています。

この図書を読んだ児童達は11歳より上の年齢層でした。そのうちの半数が基礎学校、半数が特別学校に行っています。教師達は自閉症と診断されている子ども以外の児童達にとっては、ちょうど良い難易度だったと述べています。この図書に対する意見は様々でした。

  • 私達がディスカッションのテーマにできるような良い内容でした。児童は軽い怒りをよく表します。児童が興味を引かれるような一章を抜粋しました。
  • 感情について語るような授業で用いるのに適しています。
  • 自閉症のある彼は、起こったこと、書中で人物が言ったことを文字通りに理解していました。けれども自分が体験したことのみを理解できるだけなのです。今回の件では彼は文章のみを繰り返していました。怒りとは感情というテーマの1つであるかのように。
  • 自閉症の14歳男子は怒りに関する図書の内容に混乱してしまいました。彼は会話文を通して他人の怒りが何を意味するのかは分かりました。でも自分の怒りに関しては理解できません。彼は人々が怒って眉を吊り上げるのを知っていますし、図書を見ていてもそれに気が付きました。

1人の児童は、自分が読みたいのは普通の図書だけだと言いました。教師は彼がマルチメディアDAISYを読むように、気持ちを変えてほしいと思いました。教師にしてみれば、彼により多くの楽しい読書体験をしてもらうことが目的だったのです。彼女は自閉症を持つその生徒に、以下の方法で図書を読んでもらうことにしました。

彼女はまずモニターの電源を切り、読み上げる音声だけを聞かせました。彼がさほどそれを好きではないことを見て取ると、教師は印刷された図書とセットになっている別の録音図書を取り出しました。彼は印刷された図書を目の前に置いて、読み上げを聴きました。この時には彼が読み上げだけを聴くことができるように、再びモニターの電気は消してありました。次の段階として彼は教師とスクリーンリーダーの助けを借りて図書の内容について、何行か書きました。これは彼にとって、普段から慣れている作業でした。

それから少し経った頃、彼はマルチメディアDAISYを聴きました。始めモニターは消したままでした。児童がスペースキーを押すと読み上げが始まりました。教師は句点や短い段落の最後の言葉の後でスペースキーを押して一回一回読み上げを停めました。その後教師はモニターを付け、挿絵を一緒に見ました。そして挿絵について話し合いました。教師は挿絵の全体部が見えるように時々スクロールリストをスクロールしなければなりませんでした。児童はやっと画面上に挿絵と文章があることを受け入れました。児童はスペースキーを押してさらに読み上げが聴けるようにしました。

自閉症の2名の児童が文章を読むことができ、読み上げについていくこともできました。けれども全ての内容を理解するわけではありません。彼らは図書になれていますが、このように新しいメディアが入ってくると、もう録音図書による読書をしたがりません。それでも教師達は、これは読書をするのに良い方法だと確信しているので、今後時間をかけてもっと多くの録音図書を紹介しようと思っています。それ以外の児童はこの方法でもっと読書をしたいと言いました。

  • 画面で読む方がいいけれど、時々は普通の本を読みたいと思います。最初に聞いてその後に読むめることは便利です。(10歳女子、特別学校)
  • この本はEQについてのクラスで読む予定です。