Panel Discussion
パネルディスカッション
●カーリ・クマネヤ(ノルウェー視覚障害者図書館-ノルウェー)
こんにちは。この発表する機会をいただきましてありがとうございます。日本に来れてうれしく思っております。ありがとうございます。カーリ・クマネヤと申します。ノルウェー視覚障害者図書館(*以下NLBと記載)の貸し出し部門のマネジャーを務めております。
まず初めにこの図書館の内容について触れさせていただきます。文化庁の資金を供与されておりまして、年間の予算としましては約4700万ノルウェークローネとなっております。1万4,000タイトル以上の図書を提供しております。また対象者としましてはディスレクシア、また印刷物を読めない障害を持った人たちです。ノルウェーにおいてDAISY図書の提供を行っております。年間の貸し出しとしましても41万タイトルとなっています。点字図書は6,000タイトル、またDAISY図書は1万4,000タイトル以上を持っております。肉声と合成音声による図書、両方によって構成されています。利用者数は1万3500人、そして利用者はすべてのサービスは無料で返却は不要となっております。
ではこれからノルウェーの法律についてお話をします。ノルウェーの知的財産権に関する法律におきましては政府に任命された特定団体が、印刷物を読むことに障害を持つ人にアクセシブルなフォーマットを製作することができると規定されております。
NLBはそのような団体となっています。我々は権利所有者に対して許可を求めることなく製作をすることができます。またこの法律の中では著者に対して支払いをしなくてはいけないということが書かれております。翻訳されている場合には著者は支払いを翻訳者に対してもする、出版社に対しての支払いはないということが書かれております。この支払いがどれぐらいかということなどに関しましては契約によって決められております。政府とそれから八つの異なる組織の間で決められております。
例としまして、まず初めに利用者になるためには印刷物を読むことに障害があるという書面を提示しなくてはいけません。NLBとしましては無制限で同時に利用者に対して図書を製作することができ、そしてNLBはすべてのコピーに対して透かしを入れ、違法コピーが配布されるのを防いでいます。スウェーデンと同様、製作と貸し出しの役割と責任が分担されています。
ヒューズビー・リソースセンター(Huseby Kompetansesenter)は初等中等教育の生徒に対しての責任を持っております。またNLBは、DAISY図書などを大学生、職業学校に対して提供しております。そういった意味ではディスレクシアやその他の障害の人たちとの区別はありません。NLBは大学また短大、職業学校の視覚障害者に対して製作の責任を持っております。法律では視覚障害者以外にも対象を広げましたが、我々の年間予算では、例えばディスレクシアなどの人たちに対して割く費用が十分ではありません。今の段階では、まだ残念なことに何の対策もとられておりません。
これから幾つか統計をお見せしたいと思います。
この発表の中では生徒に対するサービスに焦点が当てられています。
年間の貸し出しは昨年から12%の増加が見られており9,800あります。また製作としましても、毎年330タイトルがあります。約60%が合成音声、フルテキストによるものになっています。また全体的な蔵書が3,100となっています。
生徒数は、印刷物を読むことに障害のある人たちの数が増えています。2010年には視覚障害障害のある学生が65人でしたが、印刷物を読むことに障害のある人たちは454名となっています。
教科書を約450人の人たちに配布をしているのは先ほど述べた通りです。思っているほど多くの人たちには届いておりませんので、NLBとしてはより多くの教科書などを製作し、そしてより小さなテキストなどにするという形で配布をしていきたいと考えています。
現在DAISYの図書におきましては、イージーリーダーエクスプレスプレーヤー(Easy Reader Express)が入っておりますので、他のプログラムは必要ありません。DAISY図書を読みたいときには、DAISYを入れればすぐ見れるようになっています。
次に、大学部門との協力についてお話をさせていただきます。
大学における文献のユニバーサルな構造化とアクセシビリティの改善に向け、2007年にノルウェーにおけるアクセシビリティに関する委員会を設置し協力し始めています。
また目的は高等教育の部門においてもすべての生徒に対して代替図書を提供するようにするということ、また、それを一元管理して提供できるようにということを行っております。
今までの成果としましては、大学のセクターは大規模での製作ということはまだ前向きに取り組んでおりません。しかしながらより多くの生徒に対して提供することができていますので、プロジェクトはある意味成功しているということが言えます。例えばディスレクシアの人たちがより多くの高等教育を受けられるようになっています。
印刷物を読むことに障害のある人たちというのは非常に多くの影響を受けています。また、特殊ニーズに関わっている医師や、看護師、また教員の人たちなどから障害についての書面における証明をもらわなくてはいけません。
教科書などが肉声または合成音声などによって記録されています。2009年には「Brage(ブレジ)」というのが使われています。これはTPBとの間の協力で作られていたものです。非常に多くの録音図書の製作をすることができました。無制限で自己で製作するタイトルがたくさん提供され、そしてウェイティング・リストもありませんし、また図書館に対して返却の必要性もありません。
マスターファイルベースの製作も始めています。DTブックベース(DTBook)の製作というふうに呼んでいます。またイージーリーダーがすべてDAISYの本の中に入れられています。またブックシェアとの協力もあります。教科書の商業的なプロバイダーであります。
新たな配布システムとして、ダウンロード、そしてストリーミングは、2011年の4月から提供することが可能です。これはWebサイト上にサービスとして含まれています。生徒などはネットでログインし、図書をストリーミングすることができます。図書館に連絡をすることなく。これが実施されるのを非常に楽しみにしております。これはデディコン(Dedicon)と一緒に協力をさせていただきました。
幾つかの課題が存在しております。これは後ほどのパネルセッションでお話しさせていただくことになると思いますが、マーケティング活動に焦点を当てていますが、それでも生徒に対して非常に幅広くアプローチするのは難しいということが言えます。どのようにしてそのニーズに適応していけばいいのか、必要なものが提供できているのか、またディスレクシアの生徒に対しての製作権の問題ですとか、また予算としても非常にコストが高すぎるので実現できないということもありますし、生徒が望ましいと考えているフォーマット、何を必要としているのかといったような課題があります。また著作権の問題も存在しています。透かしを入れるということになりますと、生徒に書面を提示してもらわなくてはいけない状況にあります。生徒もこの機会を悪用しないようにしてほしいと思っていますが、著作権者との間でもしかすると問題が起こるかもしれません。パネルディスカッションなどでもまた後ほどお話をさせていただきたいと思っています。
ご清聴ありがとうございました。