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Panel Discussion

【パネルディスカッション】

河村●
お待たせしました。それではこれから4時半までパネルディスカッションに入りたいと思います。これまでのプレゼンテーションでそれぞれの国の現況が紹介されました。日本の場合には法律的には著作権法が整備されました。ところが実際に作るほうについてはマルチメディアのDAISY教科書に関しては国からの費用は一切出ていないという状況であります。ただしそれをボランティアの皆さんが頑張って作って140タイトル、そして700人ぐらいの人が今それを使っている、生徒が使っているのです。そしてさらに先生方もそれを使えるようになってきたので、これから増えるのではないかと思われます。ただしそういう現状でいいとは思ってはいません。やはり国が責任を持ってやってほしいということが語られました。
そしてスウェーデンからは、国立の図書館であるTPBからの報告として、ビッテさんから、大学等の高等教育と義務教育とを分けて二つの国の機関が、一つはTPB(国立録音点字図書館)、もう一つはSPSMという教育省の機関がそれを担当しているというお話がありました。
それからオランダのクーン・クリッカーさんからは、オランダのモデルと言いますか、サーバを通じて手元にプレーヤーを持たなくても読めるといったオンラインサービスの提供の報告がありました。またバックグラウンドの情報がありまして、さらに教育に関しては今、国の費用、これは教育省のほうから出ている費用で教科書の提供が行われているという報告もありました。
さらにノルウェーからは、今日、マイ・リンさんのユーザーとしてのお話があったわけですけれども、今度はサービス提供側として、これもノルウェーの国立の図書館であるわけですが、視覚障害者図書館のカーリさんのほうから、今どういうサービスをしているかという概況のお話がありました。その中で法律的には高校までのところはすべての読みの障害、視覚障害だけでなくその他の障害についても教科書がきちんと提供されることになっているということでした。それに対して大学については国立図書館の責任としては視覚障害者のために製作をするという責任の範囲での予算がついているだけであるという報告でした。それにもかかわらず、提供のほうではさらに広い範囲の読みの障害のある人たちに提供できるようになっているという状況が語られたわけです。
それぞれ短い時間にまとめてくださいというふうに言ったので、皆さんもっとここをもう少し聞きたいというのがあると思います。それから今日は、登壇していただいている方の他にも、ベルギーとドイツ、それから南アフリカからも来ています。これまでのスピーカー全体に対して、そこの国でここはどうなっているの?ということも含めて結構です。まず最初にパネリストでも会場の方でも結構ですから、質問や説明してほしいものなどありましたら、まず受け付けたいと思います。その後意見交換に入りたいと思います。
会場①●
小学校から高校までの理系(数学、算数、理科など)の教科書について、テキストDAISYベースで製作されているのかどうかというのを教えていただきたいと思います。お願いします。
河村●
質問を全部受けて、その後割り振ります。それでは次の方お願いします。
会場②●
質問は2点あるんですが、一つは、先ほどから配信とかそういうのも出ていましたけれども、現物を送ってらっしゃるところもあると思うんです。その場合に、日本ですと視覚障害者の場合は無料で音声のものが送れますね。ところがそれ以外の方には送れないんですね。この辺りを他の国ではどういう扱いになっているのかということが一つです。
それからこれは日本の方、外国の方にも伺いたいんですが、教科書を今作ってらっしゃいますが、日本ですと副読本みたいなのがありますが、日本では教科書の次に対象に入っているのかどうかとか、リハ協((財)日本障害者リハビリテーション協会)で作っているのかということと、それとも地方独特なので、その地域で何らかの方法をどこかやってらっしゃるところをご存じかどうか。この2点をお伺いしたいと思います。
河村●
ありがとうございました。

パネルディスカッションの様子

会場③●
2点あります。一つは、図書を使えるように登録するための認定のためにはどういう手続が必要なのかなということなんです。日本ではまだ診断機関が、数が本当に少なくて、ディスレクシアと診断される人が本当に少ないんです。それで、今のところ自己申告で「読めない」と言っている人に対してはすべて教科書を提供している状況なんですけれども、もし国が費用を出すとなると、そういうわけにいかなくなるのかなと思っています。そうすると提供の幅がぐっと狭くなってしまって、読みたい子どもに十分行き渡らないという状況になるのではないかなと私は心配していますが、それに関して、皆さんの国ではどういうふうに認定されるのかなということが一つ。
あと、今までの報告を見ていますと、テキストDAISYはたくさん作られているんですけど、画像が皆さん、あまり入ってないかなと思うんです。今日本では一生懸命、画像も理解の助けになるということで、子どもたちも画像が入っているほうがいいという意見がたくさんあるので、一生懸命画像も入れていますが、そのへんもいかがかなとお伺いしたいなと思います。
河村●
ありがとうございます。それではクリスさん。マイクをお待ちください。
クリストファー●
河村先生、ありがとうございます。先ほど、日本の経験として政府の予算がアクセシブルな教科書に関してはないと、すなわちそれはチャリティとしてボランティアが行っているというふうにおっしゃっていましたが、世界盲人連合の読む権利のキャンペーンでは、各国のボランティアセクターがキャンペーンを進めるべきだと、政府に対して訴えようということを言っています。出版会社が教科書を作りたいということで政府の入札に参加するのであれば、そういうことを文部省に訴えてほしいんですけれども、入札するための条件として政府のほうで、入札を落札した場合には、必ずアクセシブルな教科書を作るようにということを要件につけたらいいのではないかと思います。具体的なやり方はいろいろあると思います。そうしたらボランティアセクターのみがやるということにならず、政府が介入することで出版社自身が作るかもしれませんし、委託してボランティアの組織が作るかもしれませんし、またマスターコピーを文部省に提供して、実際の製作はオンデマンドで行うこともできると思います。出版会社が商業的な活動をするということから、その責任の一端としてアクセシブルなフォーマットを準備するということを要件にしたらいいということを今訴えています。そういう取り組みをしているのですが、パネリストの方のご意見を伺いたいです。
河村●
それでは、今、クリスさんから私の要約についてのご質問ですけれども、マルチメディアDAISYの教科書についての製作費用は国から一切出ていないという意味です。ただし国から今出ていますのは、紙に印刷した点字、それから拡大教科書の費用は国の費用が出ています。
これから回答となりますが、まず野村さんから日本の状況について、副読本は今どういうふうになっているのか、日本の状況について回答していただけますか。
野村●
副読本まで行ければいいんですけれども、今の状況ですと、限られたリソースの中でDAISY教科書というものを作っておりますので、そこまで行けない状態です。ただし、わりと地域で作られた歴史とか、そういったものは簡単に著作権というものは取れるように思いますので、そういった場合に、どなたにでも使ってもらえる副読本のDAISY版ということで作れる可能性はあるのではないかというふうに思いました。
河村●
ありがとうございました。次の質問は、二つの質問がつながっているので。最初にありました、テキストを含んだDAISYで、理数系の教科書を作るという点についてはどんな状況にあるかをもう少し補足してほしいということと、最後のほうのご質問で、レイアウトの必要のある画像を含んだDAISYの製作というのがどうやっているのか。これについて、クーンさん、それから他にカーリさんからもお答えいただけますか?
クーン●
質問はオランダにおける状況ということで、DAISYの理数系の本があるとすれば何年生からかということだと思うんですが、小学校では簡単な導入本的な、数学、歴史、地理などがDAISYのオーディオのみの形態で出ていますし、テキストのみの形態でも出ています。
製作に関しては現状では、視覚障害者のニーズに対する要求、要請が強いです。例えば初等教育における理数系で、例えばスキャン、OCRをし、そして画像は全部捨ててしまうということをやるんですが、これはちょっと馬鹿げていると思いますが、それでもまだそういうことを今現状やっています。唯一特別なプロジェクトがあるときだけは画像はそのままキープして、それをマルチメディアの中に取り込むようにしています。
今障害となっているものが二つあります。まず一つが予算。マルチメディアのほうがより費用がかかるというのが一つです。二つ目は、他のハンディを持つ人たちのニーズも、我々はもっと聞いていかなければいけないと思いますが、今まだ十分にやり切れていないということです。そして学校での視覚障害の子どもたちについても、まず先にいろいろとリサーチをしなければいけないと思っています。実際何が本当のニーズなのか、何が必要なのか、それを考えてから、今まで通りやらない方法というのを明らかにすることが必要です。以上が小学校に関してです。そして中学校に関しは、特別プロジェクト資金というのが出ています。教育用のものとして800タイトルほど今作っています。ただ2012年8月までの予算で、それ以降のことは今わかりません。というのが現状です。マルチメディアの大学レベルでの図書の予算というのは残念ながらありません。
河村●
カーリさんはどうですか。
カーリ●
ノルウェーの状況は、今、クーンさんが言われた状況と似ていまして、理数系の高等教育の図書は作っていますけれども、現在マルチメディアは製作していません。だから、例えば図であるとか絵などは作成していおりません。そして電子ファイルと、あるいはテキストファイルというものを視覚障害者向けに作っていますが、多くの場合、電子のテキストファイルを他の何かと組み合わせているということが多いかと思います。すなわち誰かに助けてもらって教科書の絵を説明してもらうといったことです。視覚障害者は何かを組み合わせた形で使うことが多いということがあります。
マルチメディアの子ども向けの本について今トライアル版というのをやっていますけれども、まだ本格化されていません。初等中等教育に関しては、先ほどの発表で申し上げたように、まだやっていません。クーンさんも言われましたように、NLBの予算の問題もありますし、またリソースの問題もあります。従業員が48名しかNLBにはいませんし、現状、画像を入れた教科書に対応するスキルもありません。
ビッテ●
スウェーデンでは、すべてのテキスト、オーディオ、これは画像付きとなっています。
また画像の説明も付いています。オーディオで画像についての説明も描写も入ります。学校以外で使われる本に関しても子ども向けには絵が入っています。また、印刷された本と同じような形でコンピュータで製作をしています。
DAISYのフォーマットで本を製作するときはどうするかというところで、できるだけ元に近い形でやっています。また大学向けに関しては理数系の本はたくさんやっています。数学、物理、そして公式もすべて入ったものを作っています。ただ合成音声ではなくて肉声がほとんど使われています。そのほうが公式の変換がしやすいということがあります。また義務教育においても同じようにやっています。大学に関してはかなり前からやっています。
カーリ●
ビッテさんのコメントなんですが、私たちは幸いにもTPBと密に協力をすることができています。TPBから教科書を借りて、それを使うということができます。ビッテさんも言われましたように、こうした教科書は、特に理数系に関しては非常に質が高いものが多いというのがあります。ですから、ノルウェーについては、そういう機会があるということでかなり状況が改善されています。密な協力を得られているおかげだということが言えます。
河村●
今ありましたように、それぞれ国の中央の製作団体という立場でノルウェー、スウェーデン、オランダからのお話がありましたが、クーンさんのお話にもありましたように、実験的に作ったというのでどのくらいの数かなと聞いていたら800冊って言うんですね。そのあたりが、実験的と言っても800冊も作っているというのが、日本で実験的に作るというと、なかなかそういう規模ではないんですよね。そこがやはりちょっとうらやましいなというふうに思うところです。
それから前にビッテさんのTPBを見学したときに、SPSMとの協力で今作っているんだということで、私が見せてもらった製作工程は、プログラマーの人たちがTPBの中で働いていまして、XMLエディタというプログラミングのツールを使って、DAISY図書を、これはフルテキストの図書ですけれども、作っているんですね。要するにプログラミング言語を知っている人がXMLエディタで本を作って、確か小中学校の教科書を作っていました。それも、「実験的」とは言っていましたけれども、確か規模が100冊ぐらいだったと思います。ですから、「実験的」と言うときにも、そのくらいの数は作ってこれから実験をするということなので、多分、その実験の結果がまたどこかで出てくるのではないかなと思います。
会場①●
同じ質問ですが、もう少し確認させてください。あまり図式的な言い方はしたくないのですが、例えばアメリカとヨーロッパを比較すると、視覚障害に関して言うと、アメリカはどちらかと言うとスピーチ中心、ヨーロッパはやはり点字をかなり重視してきているというふうに思っています。一方インクルーシブ教育、これも随分この20年、30年間、積極的に試みてきていると思うんですが、そこでインクルーシブ教育の中でも点字の教科書というのは、非常に重要だというのです。子どものときから見えない視覚障害の子どもたちにとっては点字と点図、両方とも非常に重要だと思うのですが、それは依然として、その考え方は変わってないと理解していいでしょうか。実験的というふうなお話が多かったんですけど、一般的には点字の教科書をインクルーシブ教育の中でも提供してやっているというふうに理解していいのか、それとも音声中心にヨーロッパも変わってきているということなのかというのをちょっと確認をさせていただきたい。
河村●
今の質問に答えていただく前に、小学校から高校までは別のところでやっている、自分たちのところは高等教育を担当しているという団体が結構ここにいるので、そのことを前提にしてお答えいただきたいと思います。点字の教育が重要なので、そちらのほうでやっていくというのが中心だから、あまりDAISYでの教科書作りというのは、これまで中心的な取り扱いにはなっていなかったのかということかと思いますが、皆さんのところでは、国では分担を分けていますね。
義務教育の教科書作りと、それからそうでないところ。オランダでは実験的にインクルーシブなKES(ケス)をやってみようということで始めた。そのときのターゲットグループとして、視覚障害に関してはやはり点字を中心にしていくという考え方が一つあるのではないか。点字と、それから今日報告のあったDAISYなどとの関係をもう少し詳しく話していただける人がいませんかということと教育の支援についてです。
クーン●
私のほうでお答えを試みたいと思います。今、いろいろなテーマが挙げられたかと思うのですが、まず第一に、私は点字について詳しいわけではないのですが、私が知っているのはテキストベースの製作、そしてオーディオベースの製作ということをオランダでは言います。この数年では点字は印刷物としてのアウトプットとしてとらえられています。印刷物での配布、そしてマークアップが十分にされたテキストファイル、そしてそれを印刷された点字に変えるということもできるわけですが、こうしたテキストファイルは同時にマルチメディアのテキストファイルにすることもできます。もちろん例えば図であるとか公式であるとか、絵であるとかです。
そして最終的にはビデオも可能かと思います。こういう切り口のほうがわかりやすいかと思います。傾向としては、デディコンにおいてはテキストファイルへの力点が大きく、またオーディオブックも配布の一つのフォーマットとして使われています。というのは、印刷された本、あるいは電子ファイルをベースにしてナレーターはナレーションをつけます。それが一部お答えにはなっているのではないかと思うのですが、続けて他の方から何かあるでしょうか。
カーリ●
ノルウェーで昨年は、マスターファイルをベースにした製作を始めました。つまり、マスターファイルを通常の点字印刷にする、あるいはDAISYにする、あるいは電子的な点字に換えることができるということです。すなわち我々が作るそれぞれの本は、今申し上げたいずれかのフォーマットで製作することができます。教科書に関してはちょっと状況が違いまして、言いましたように、ほとんどは電子のテキストファイルを作ります。スクリーンリーダーで読めるような形態で提供しています。
ビッテ●
スウェーデンでは、教科書から点字ということをしたいと思っていますが、まだそこまで到達していません。近いうちにできればというふうに思っています。今見ている状況としては、大学の生徒は点字の本を以前ほど注文していないということです。年に1回ぐらい、もしくは年に2~3回ぐらいしか注文していません。スウェーデンでは特殊なフォーマットとして、点字を読む人たちに対しての特殊なe-テキストを持っています。これはコンピュータ向けのプログラムです。辞書ですとかは、このようなフォーマットに出ていますが、これは大学向けのみです。義務教育向けには多くの点字の図書が出ていますが、何冊あるかはよくわかりません。私のところではその責任を持っておりませんので、どれぐらいかよくわかっておりません。
河村●
この件について、何か意見があるそうですので、お願いします。
トーマス●
トーマス・カーネスです。ドイツから来ております。このすばらしい会にご招待いただき、ありがとうございます。点字ということについてですが、ツール、スキル、点字をより利用可能に、それも手頃に手に入るようにする必要性があるというふうに思っています。読むためには、また読んでいるものを理解するためには、点字で理解をすることができます。音声のDAISYがあるから、もはや点字は必要がないということではありません。ですからDAISYがあっても、点字に対してのアクセスも必要です。紙において印刷をするというのと、もう一つ点字のディスプレイを作るということも可能だと思います。今後もさらに、数年間の間に賢く多くのマルチメディアですとか点字などについてのさまざまな写真やグラフィックなどにアクセスを持たなくてはいけないと思っています。
点字のディスプレイがもっと手頃に入手できるようになればいいと思いますし、例えばグラフィックなどが描けるようになればいいと思っています。今はありませんけれども将来的にそういったものができればと思っていますので。音声を使うというだけではなく両方とも必要です。
DAISYはそれを推し進めるための一つの手段だと思っています。
もう一つ申し上げたいのは、9月に点字についてのWBUの会議を行う予定になっておりますので、もしこのURL(http://breille21.net/)を見ていただければ情報を探していただくことができます。
河村●
次の項目ですね。画像の処理ということで、これは、先ほどのご質問の趣旨は、主に目が見えるけれども文章が読めないディスレクシアの子どもたちに教科書を作る際に、画像の中に文字がある、そのレイアウトを維持しながらそこを読めるようにするのに大変苦労しておられるというところから出てくるんだと思いますが、DAISYで画像あるいは先ほどの「KES」で画像の中に文字がある部分を、ディスレクシアあるいは弱視の生徒に読みやすくするための特別の工夫やあるいは事例がありましたら教えていただけますか。クーンさん。
クーン●
技術的には厳密にはすばらしいマルチメディアの本を作ることは可能だとは思います。
個人的には今のところ十分な知識がないのではないかと思っています。ディスレクシアの学生ですとか、どうやって学習のプロセスを最適化すればいいかということは、まだわかっていないと思います。技術的な道具箱はあると思うのです。コストはかかりますが、ただそれは存在しています。今の段階ではまだ十分な、どのように使えばいいかといったような知識がないと思うのです。
ですからディスレクシアのコミュニティの方々、もしくはマイ・リンさんからもご意見などをいただいて、もしその点について何かおっしゃる点があればお聞きしたいと思いますし、どれぐらい、教科書の中に画像があるということが重要なのかということを聞きたいですし、我々のような製作者が、そのような画像をどうやって入れればいいのか、拡大すべきなのか、それともすべて本の後ろのほうにまとめておいたほうがいいのか。それともリンクか何か作ったほうがいいのか、そういったような質問というのを、有効なので、聞くのが必要なのではないかと思っています。
皆さん、同じご意見でしょうか。
ビッテ●
はい、私は同じ意見です。今のところわかっていません。学生がどうやってその教科書を使っているのかもわかっていませんし、技術的な可能性がどのように本の中で使われているのか、MP3プレーヤーだけなのか、それともオーディオだけなのか。DAISYの音声テキストが今までで最高のものだったというふうに言われた生徒に会ったことはあります。生徒はMP3のプレーヤーしか使っていないということもわかりました。どうやってその図書を使っているのかということに関して、より多くの調査をしたりですとか、もっと聞き込みをしなくてはいけないと思います。まだまだ技術の可能性は多く残っているからです。一つわかっていることは、ディスレクシアのうちの少なくとも何人かの人たちは、画像についての説明はしてほしくない、これは削除してほしいけれども、それは可能ではないのかといったようなことを聞かれたことがあります。今はできませんが。ですから、これはいろいろな人たちに対して配布していくという必要性はありますが、ディスレクシアの学生は必ずしも皆同じニーズを持っているとは思いません。こういう読み方をしたいけど、あなたは違う読み方をしたいでしょ、というのがあると思いますから、まだまだ調べなくてはいけないことがあります。
野村●
マルチメディアDAISYということで画像が入っております。そしてそれがそのまま視覚障害者に使えないということがあります。ほとんどが、私たちは、オーディオ・ディスクリプションというのを画像に対して入れていません。その理由は、多分ビッテさんが今おっしゃったように、全ての絵の説明を、必要ではないんじゃないかというところがあります。ただ、どういったものがディスレクシアにとっていいのか、そういった研究と言うか、あるいはガイドラインと言うか、他の国々の方と一緒に作成できればいいなと思います。日本でもすごくそういった部分に苦労しているところがあります。それから多分、数学を、例えば画像の中の数式ですが、読むということは、多分、次のDAISY3だと、サポートしていますよね。
河村●
次はDAISY4です。
野村●
DAISY3のフォーマットでは数式を読んでいるかと思うんですけれども、私たちの一番の問題は、さっき申し上げましたように、縦書きの部分と、ルビがDAISY3でもサポートされていないということなのです。ですからDAISY4では、今後、縦書きもルビもサポートされるということなので、かなり私は期待をしております。
マイ・リン(母)●
マイ・リンの経験、数学の教科書に関する経験というのは、DAISYのフォーマットにおいて必要ないというふうに思っていました。直接的に本と関連性が付けられればというふうに思っていたので、DAISYによって混乱してしまったということを言っています。また、彼女がうなずいていたのは、時々説明がなされているというのは、馬鹿げているというふうに思っていたということを言っています。彼女がDAISYの本で宿題をしているときに時々見ていたのですが、歴史などをしていたときにも写真ですとか、またイラストが出てきたときには、彼女の頭がそのイラストからの指示、インストラクションについてもフォローしようとしていたというところを見ていました。ですから彼女が両方ともできるかどうかということはわかりません。マイ・リンさんは常にフルテキストリーダーです。またDAISYの本も同時に聞こうとしています。ですから、もう既に聞かなくてはいけないという状況であったとしても、慣れてはきています。
河村●
それでは他の質問もありますので、次に進ませていただきたいと思います。日本でこれから例えば国の費用でマルチメディアDAISYのテキストを作るというふうになったときに、どういうふうに、それが必要であるということを証明するのかという点での、よその国ではどうなっているのかというご質問でした。それぞれの国で、少しプレゼンで紹介されたところもあるんですが、何か証明書が必要というときは、どういうふうな証明書が必要なのか。それについてそれぞれお答えいただけますか。
ビッテ●
スウェーデンにおきましては、診断もしくは書面で読むことに障害があるといったような証明は必要ありません。大学でさまざまな支援を得るためには、例えば試験などを受けなくてはいけないときですとか、また学習をするときに必要な場合などだけとなります。ほとんどは公立の図書館で行われています。誰も診断書を必要というふうには考えていません。しかしながら図書館のスタッフの人たちができるだけ話をするようにということを勧めています。そして借りる人側が印刷物を読むことに障害があるということを伝える権利、そのためにこの本を借りるというふうにするのがスウェーデンでの仕組みになっています。
クーン●
オランダの場合ですが、スウェーデンの状況と関連していると思います。公共の場で借りる、公共の図書館で借りる、あるいは国立のフロントオフィスから借りる場合には、何も要件はありません。今、公立図書館と交渉中です。ダウンロードできるようにしたいということ、スウェーデンと同じようにしたいと思っているから交渉しています。
公立図書館は、何らかの方法でクライアントは有資格のDAISY利用者であるということを登録しようとしています。DAISYの図書については特定のグループ対象というふうに限られています。
診断ということを言っているわけではありません。自己申告型のシンプルなステートメント、書面に記入してもらって、「私は印刷物を読むことに障害がある」というふうに自己申告をしていただく、自分で責任をとる、著作権に関連して、それを侵害するような使い方はしません、ということを宣言してもらう。そしてこれは保険を購入するときに、「自分は健康です」とか、「タバコを吸っていません」ということをきちんと言ってから保険に入りますが、それと同じようなことと考えていただいたらいいと思います。
ディスレクシアの診断、そして治療については、資金的なサポートを受けたい、DAISYのプレーヤーを購入するに当たって補助を受けたいのであれば診断は必要です。なかなかその診断を受けるのも難しいのですが。オランダでは、学校で試験を受ける際にはディスレクシアであれば時間延長が可能です。ただそのときには証明をしなければいけません。そして学校のほうで必要な準備をします。
カーリ●
ノルウェーでは出版社との間に合意がありまして、必要なだけのコピーを作ってもいい、図書に関しては作ってもいいという合意があります。2年前はそれはできなかったのです。
新しい著作権に関する取り決めがありますので、コピーの数については必要な数だけ作っていいということになりました。著作権者は厳格に、誰がこの図書館の利用者になるのかということを示せということを求めておりますので、それに関する書面が求められています。ただディスレクシアだという診断が必要ということではありません。地域のドクターのところに行って、自分は読むのに障害があると言えば、医師が何らかの書面を作って、この人は印刷物を読む際に障害がある、したがってこの方についてはNLBの図書を利用できればプラスになると考えられるというような書面です。こういったことをきちんとしなければ著作権関係で問題になりますのでこういったことが求められています。
製作権については、プロダクションの権利については、予算をもらっているのは視覚障害の学生向けのみであります。それについては書面が必要です。他の省庁で既に登録を受けている方が多いですので、こういった書面があるということを図書館に示していただければ特に問題はありません。
河村●
最後に残った質問があります。それは、公共図書館で、日本の場合には、視覚障害者の利用者には無料の郵便で貸し出せるんですけれども、視覚障害者以外の印刷物を読めない障害の利用者には郵便料が無料になりません。この点についてそれぞれの国では、例えばCD-ROMを郵送するとき、配送料はどういうふうになっているかを、それぞれ短くお知らせください。
カーリ●
ノルウェーではすべてのサービスが無料であります。ノルウェーの郵政関係とちゃんと合意があって、CDの郵送は無料です。またCDを返却しなくてもいいということになっています。
CDをもう使った、そのときにCDを他の人が間違って使うということがないように破棄することが求められています。また4週間の貸し出し期間になっていますので、4週間すんだらデータベースからそのことは削除されるというふうになっています。サービスはいずれも無料です。
クーン●
私の国では少し違います。DAISYもCD-ROMも点字も無料です。ただこれは「視覚障害者に対して」という限定がついていまして、それ以外の、印刷物を読むことに障害がある人についてはそうなっておりません。配布の方法に関しては学校の教科書については既に問題を解決していますが、ただ、150万ぐらい作っておりますCDに関してはその問題はまだ解決していません。オランダの郵政省の人はいないので言えるのですが、確かにCDブックをディスレクシアの方に実は無料で送っています。ベルギーの人には聞かれてしまいますが、実際はそういうことをやっています。と言うことは問題があるということです。ただオンライン配信になれば問題はなくなってほしいと考えています。ノルウェーと状況が違います。オランダの場合には、この図書を読んだ後、教科書でない場合には返さなければならない。そしてデータもきちんと追跡されています。
そして返ってきたら次の人に貸し出すというシステムになっていますので。
ビッテ●
スウェーデンでは郵送に関してはプリントも録音図書も点字図書も、無料です。いろいろなところに送ります。図書館にとっても施設にとっても、これは無料ですけれども、民間の企業に関しては無料ではありません。
河村●
あと5分になったんですね。ずっと質問に答えるということでパネリストの方には答えていただいたのですが、最後5分ですので、一人1分ずつ、自分の言いたいことをまとめとして言っていただいて閉じたいと思います。それではここでこれを言いたいということを一人ずつ1分前後でお願いします。
カーリ●
NLBが心配しているのは学生さん、ディスレクシアのある生徒たちです。本が製作されるという権利がまだ与えられていません。ディスレクシアのある人が勉強したいときに、その教科がたまたま視覚障害者がいる教科であれば、ディスレクシアの生徒も図書を手に入れることができるというのがノルウェーの状況です。いつも政府に働きかけてこの点を改善してほしいと要望していますが、今までのところ予算がないというふうに言われてしまいます。これが今一番心配しているところです。非常に重要な点だと思っています。ディスレクシアを抱えた生徒は、同じように教科書を製作してもらう権利を、視覚障害者と同じ権利を持っていると思うからです。
クーン●
1点指摘したいと思います。昨日、日本ライトハウスを訪問して気が付いたのですが、本当に感銘を受けました。本当に熱心に、ボランティアの方々が懸命に技術レベルの高い、このマルチメディアのDAISYの教科書、あるいは録音図書を製作されているということです。私たちが仕事をしている組織は、十分なボランティアの方を確保できないのです。状況が、オランダの経済が変わってきたということ、女性が仕事をするようになりました。労働市場に出て行ったということ、また私自身の組織は、ボランティアの仕事を減らして製作のスピードを上げようということでアウトソースする、外注する、例えばコストの安いインドで製作をするということが増えています。したがってボランティアの方のインプットが減っています。
日本の皆さんがまた違ったやり方があるということを示してくださった、そのことを持ち帰ってオランダで同じようなことができないのかということ、もっとボランティアの方に参加をしてもらって製作できるんじゃないかということを話してみたいと思います。予算は限られていますから。
ビッテ●
本当に議論すべきことはたくさんあると思います。私たちが提供している印刷物を読むことに障害がある人々のためのサービスについて他の国がどのようにしているかということを学び合うのは本当に大切です。他の国のやり方、他の国の抱える問題は何かを知るのは重要です。
今日、話題になったのは、もっとたくさんの人がサービスを必要としている、その人たちにどのようにサービスを届けたらいいのか、そしてその人たちのニーズは何なのかということを把握する必要があると思っています。他国の例を知り、学ぶというのは非常に重要です。自分たちだけでできることは限られていますから、協力をするというのは重要です。他の人たちと他の国と他の施設と協力をするのが非常に重要だと思っています。
野村●
他の国がどうやっているかということについてとても学んだセッションかなというふうに思います。スウェンソンさんが言っていましたけど、コミュニケート、コーディネート、コーポレート、コラボレーション、というふうにおっしゃっていたように、やはりお互いにトラストして、どういうふうにやっていくかということを考えていかなきゃいけないのかなと思っております。ただし1個だけ、ボランティアベースというのは確かに必要だと思うのですが、国が支援の保障と言った場合に権利として国がやるべきだというふうに私は思っていますし、そういうふうにDAISY教科書もなってほしいなと思っております。
河村●
ありがとうございました。だいたい期待していた内容は出されたかなというふうに思っています。ここで何か、こうやるとうまくいくという結論がすぐに出るものではないということは改めてよくわかったと思います。それぞれの国がそれぞれ苦労しながら模索をしている。そして今日お話をいただいたマイ・リンさんのように、日本で言うと青年部長なんですかね、数千人の団体の中の青年たちの集まり、グループの中心メンバーとして、もっと若いディスレクシアの子どもたちにコンピュータの使い方を教えるワークショップを自分たちで寄付を集めるところから始めてやっているというふうに伺いました。そしてできるんだということで、みんなだんだん自信を持って進めていると。近い将来、そういう活動の中から、私たちに、こうするともっとうまくいく、こういうことが欲しいんだということを、やはり言葉にして教えてもらえるのではないのかなと期待をしているところです。
日本でもDAISYの製作を始めている学習障害の青年たちのグループがいます。やっぱり、自分では作れるし、作ってあげたいと思っているけれども、作り方を教えるのが難しかったり、わからないところを聞いたりするのが難しかったりというところで、いろいろつまずいたりもするようです。そういう、ボランタリーな、自発的な、「困っている人を助けよう」というのは、とても大事なことだと思うんですね。それは自分ができることを役割としてやっていく、そういう精神というのは非常に重要な、スーさんのおっしゃった社会革命につながっていく原動力ではないかと思います。でも、一方で野村さんが言ったように、権利であるのに、その権利を、国あるいは行政がどういうふうに保障していくのかということについても、国、行政としての責任というのはやはりあるんだと思います。そこが協力関係をうまく確立して、さらに同じようなことをそれぞれの国で模索しているわけですから、国際的な協力を確立して、何とか前進をしていきたいというふうに思います。
最後に、この6月に、DAISYは、今日基調報告で申し上げましたように、EPUBと統合して、普通に売っている電子図書を、すぐその印刷物を読めない障害の人たちが読めるということも夢ではなくなるんですね。そこを一つの大きなバネとして、これまでの成果を生かした取り組みをさらに一層強めていければ今日の経験交流というのは生きてくるのではないのかなというふうに思います。これをもちましてパネルディスカッションを終わります。パネリストの皆さん、どうもありがとうございました。