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ディスレクシアに優しい学校を実現する 第2版 情報集

前書き デイヴィド・ブランケット(教育雇用大臣)

あらゆる生徒の教育水準を上げようと努力してるとき、ディスレクシアが特定の学習障害として、どのように読み書き能力と数量的思考能力の両方のスキルの学習を妨げ、全ての知的レベルの子供に影響を与えるのかを認識することは需要である。私の直接体験からわかっているが、ディスレクシアは子供が成長して克服できるものではなく、認識されないでいると、悲惨な状態、挫折、成績不振につながる可能性がある。

ディスレクシアの影響は、適切な教育戦略と一所懸命な学習態度により緩和できることを理解するのも同じくらい重要である。教師には、特別な教育的ニーズがある子供たちを明らかにする方法と、それが明らかになったら、その子供たちへの対応方法を知るための支援が必要である。国家識字戦略で奨励されている効果的な識字教育が、幅広い様々なニーズを抱える生徒のためになることがわかった。9月から導入する、日々の基本的な数学の授業の土台となる新しい国家の「数学教育の枠組み」は、この成功に基づいて行っていく。我々は、ベースライン評価<訳注: “baseline assessments” 4、5歳の頃、入学時に受ける教育的ニーズの評価>の結果に基づいて迅速に対応し、適切な支援を適切な時に提供することができるようになるだろう。

我々の特別な教育的ニーズのための方針や、基準を引き上げようとする決意が、全てのディスレクシアの人々にとって、学習および幅広くやりがいのある仕事を得るための、より良い機会への扉を開く鍵となれるよう希望する。我々には、これからも理解を深めていき、効果的な支援方法を見つけるという共通の課題がある。従って、イギリス・ディスレクシア協会の「ディスレクシアに優しい学校の情報集」の作成を心から支援できることをうれしく思う。この情報集ができるだけ幅広く行き渡り、ディスレクシアの生徒を支援する立場にある方々全員の関心をとらえることを希望する。

ディスレクシアであること

書くこと

教室で椅子に腰をかけていて、脳がごちゃごちゃになっているのが感じられるくらい疲れて、精根使い果たしてしまう。内容のある作文を書き始めるのは本当に骨が折れる。どのように取り掛かり、どのように考えをまとめたらいいのかわからない。物を書いていると、文字が断片的に抜けてしまうことがよくあるが、それほど問題ではない。なぜならば、まだ、読み手には私の言いたいことがわかるからだ。単語が抜けてしまうことも時々あるが、こうなると少し困難になる。大きな文章のかたまりが抜けてしまい、自分で通読するまで気が付かず、書いたことが分らない、何と書いたはずだか思い出せない、ということも時々ある。学校に通っていたとき、作文の採点で、先生からよく「注意力不足による間違い」と書かれたものだった。これには腹が立った。なぜならば、作文の課題をやるときは110%集中しなければならないのに、「注意力不足による間違い」だということは、精一杯、一所懸命やっていないということを意味しているからである。

読むこと

読んでいるときは、言っている意味は全部わかる。しかし、読み終わって、読んだことを思い出そうとすると、頭の中が真っ白になる。だから、文章についての設問に答えるのが非常に困難だし、時間が制限時間よりもずっと多くかかってしまう。30分ほどのやさしい作業だと思われるものでも、ずっと長くかかるし非常に大変で、混乱し、慌ててしまう。そうなると、もっと集中できなくなるし、もちろん集中なんかできない。読むのを開始。読むのを終了。たった今読んだことを思い出そうとする。もう一度読む。慌てる。自分の頭の中にあることをどのように書き出したらいいか考える。できない。肩と首が緊張してチリチリする。ペンと足でコツコツ音を立てる。もっと神経が高ぶる。コーラのビンを開けて中身をコップに注ぎ、半分以上泡にして、コップに耳に当てると、泡がはじける大きな音が聞こえるだろう。私の頭の中はそんな状態である。

なぜ、こうなるのだろうか。どうして、こんなに大変なのだろうか。何か作業を始める前には、いつだって何かしら考えがあるのに、いざそれを紙に書こうとすると、考えは消え失せてしまったり、それがどのように収まるのかわからなくなったりする。腹立たしい。それよりも、恐怖を感じて、もっと緊張するだけだ。

記憶

人の記憶力を網にたとえると、網目が小さくて、何も漏れないものもあるし、網目が大きくて物が漏れてしまうものもある。壊れてほころびや裂け目があって、何が漏れずに残り、何が漏れてしまうのか予想できない網もある。私の網は、網とはどんなものか、または、網の機能はどうあるべきか知らない人が作ったものである。大きな穴が開いているところもあり、小さな穴が開いているところもあり、その他の場所には、ほころび、裂け目、切れ目がめちゃくちゃに入っている。その結果、網に何が入っているか、何が網からこぼれてしまったか、どのくらい網に留まっているのか、ほとんど分らない。私の中等教育終了一般資格(GCSE)を見て、なんとかやったじゃないかと言われるが、そういう人たちは、それほど問題はないと考えているのではないだろうか。どうやって私がGCSEを取得したか、多分、優れた教育のおかげということは、誰にもわからないだろう。わかっているのは、7歳くらいから、ほとんどいつでも、学校にいるのがいやでたまらなかったことである。

コリン・オートン、17歳。GCSEでA-C級10科目合格。Aレベルを中途でやめる前にこの文章を書いた。

僕は愚かだとか、頭が悪いとか言われたくない。アリステア、9歳

ディスレクシア

私はディスレクシアの障害をもって生まれた
でも、このために
このせいで叩かれた
このことで声をあげて泣いた
このために戦った
厄介払いしようとした
アルバート・アインシュタインもそうだった
このせいで不機嫌だった
このせいで悪口を言われた
私はいやだった
このせいで、お母さんは私にうんざりしていた
これを抱えて生きてはいられない
本当に抱えて生きなければならないのだろうか
このせいで、お母さんは私が怠け者だと思っていた
このせいで、自分は頭がおかしいと思っていた
このせいで、拳骨で壁を叩いた
この件をめぐって問題に陥った
このせいで、授業を中断させた
退席した、これから離れようとした
このせいで、ばつの悪い思いをした
これを恥じていた
先生をののしった
ただ、これと共に生きなければならない

ジョン・ロジャースとリー・ボーン

カブスカウトや水泳の試験などでいつも失敗する。先週できたことや、覚えたことが、実際の試験で必要な時に頭に残っていないからだ。 アリステア

ディスレクシアの見分け方

学校にいる間ずっと、ディスレクシアの子供は以下の兆候があるかもしれない。

  • 賢く有能に見えるが、紙の上に考えを書き表せない。
  • 他より優れた分野がある。特に、劇、芸術、討論。
  • 不器用である。
  • 自分で勉強ができないと思っていて、それを隠すために「クラスのピエロ」を演じる。
  • 引きこもり、孤立し、うしろの方に座って、参加しない。
  • 1つのことを非常にうまくやれるときがあるが、全体を覚えられない。
  • あまり早口で話されると、「こわばった表情」になる。
  • 勉強に一所懸命にならなければならず、普段の1日が終わると疲れきって帰宅する。
  • いじめにあう。

以下は、ディスレクシアの生徒を見分けるのに役立つ、年齢グループ別の「明らかな症状」である。

就学前の子供が示す可能性がある症状

  • 童謡または「テーブル」、「椅子」のような物の名前を覚えるのが非常に困難。
  • 話を読んでもらうのは好きだが、文字や単語には興味を示さない。
  • 注意散漫だとよくしかられる。
  • 上手に服を着たり、靴を左右間違えずに履くことがいつも大変。
  • 球を捕ったり、蹴ったり、投げたりや、跳んだりはねたりが下手。
  • 単純なリズムで拍手するのが困難。
  • 話し言葉の発達が遅い。

多くの場合、ディスレクシアは遺伝するので、家系が重要である。しかし、1世代前には情報が少なかったので、親は自分がディスレクシアであることには気でいていないかもしれない、ということを忘れてはならない。

ディスレクシアの小学生が示す可能性がある症状

  • 方向音痴で右左がごっちゃになる。
  • 靴の紐を結んだり、服を着たりするのが困難。
  • 表出性言語と受容性言語の違い。
  • 短期記憶の限界。例えば、九九、アルファベットまたは教室での指示を覚えるのが苦手。
  • 音読が困難。しかし、全てのディスレクシアの子供がこの問題をかかえているわけではないことを忘れてはならない。

特に、以下について見逃さないよう気をつけること。

  • 読むのを躊躇するまたは、苦心する。
  • 行を省略する、または、同じ行を繰り返す
  • テキストで読んでいる場所がわからなくなる
  • 似ている単語がごちゃまぜになる。例えば「no」と「on」、「for」と「off」、「was」と「saw」
  • 多音節の単語の発音が困難
  • 自分が読んだことを理解するのが困難

ディスレクシアの人には克服しなければならない困難がたくさんある。そして、私たちには実際的な戦略が必要である。 リチャード・ロジャーズ卿、建築家

書くことや綴りの困難。エラーの例:

  • 書き言葉と話し言葉の違い
  • 作品が汚い。例えば、ページがめくれている、線を引いて消す、字配りが悪い。
  • 骨の折れる大変な作業のように見える筆跡。
  • 「b」と「d」、「p」と「q」、「w」と「m」のように、似ている文字を取り違える。
  • 変な綴り
  • 1つの作品の中で、同じ単語の綴りが違う。例えば「more」、「mor」、「mro」。
  • 大文字と小文字や、文字の名前と音の概念の混乱

そして驚いたことに、彼らは他の部分では聡明で注意深く、多くの場合、芸術的で創造的である。

中等学校の生徒が示す可能性がある症状

小学生の時に引き続き、同じ問題を抱えている。例えば、

  • まだ、読みが不正確
  • まだ、綴りの問題がある
  • 場所、時間、日付を取り違える
  • 指示を繰り返してもらう必要がある
  • 「preliminary(予備的な)」や「philosophical(哲学の)」のような長い単語が「自由に使えない」
  • 小論の構想を練ったり書いたりするのが苦手
  • 自信がなく、自尊心が希薄

さらに、中等学校では新たな難問が待ち受けている。これが、短期記憶やまとめあげる能力で既に問題を抱えているディスレクシアの生徒には測り知れないプレッシャーとなる。現れる可能性のある症状:

  • 教室にどの本を持っていくのか思い出せない。
  • 時間割に従って生活を組み立てるのが苦手
  • 複雑な指示を誤解する
  • 素早くメモをとって、時間どおりに仕事を終えるのが苦手

緊張のため、ディスレクシアの生徒は疲労困憊し、怒りっぽくなって、可能な限り、物事を避けるようになるかもしれない。やる気や自尊心が急速に失せていく様子が簡単にわかる。挑発的な態度になる者もいる。

ディスレクシアには、しつこく続く要素がたくさんある。それは、学校を卒業する時になってもまだ目立つだろう。その例は、以下のとおり。

  • 明白な理由は無いが、明らかに良い日と悪い日がある。
  • 記憶障害。試験の時、学習した事実が効果的にまとめられない。
  • 書いた文章が支離滅裂
  • 読み違い。理解に影響があるかもしれない。

子供がディスレクシアかもしれないという懸念があれば、鑑定すべきであり、学校の専門家の教師による鑑定が理想である。子供の障害の性質に対して十分に理解して、授業のやり方や、その子供が必要な特別の支援にそれを浸透させるべきである。それでも遅れる状態が続く場合は、「急行コース」に乗せて、専門家の鑑定や支援をさらに得られるようにしなければならない。

しかし100年たった今は、ディスレクシアの人たちの持つ障害だけでなく、その能力や可能性にも目を向ける時である。 リチャード・ロジャーズ卿

親との協力体制を作る

ディスレクシアであることはいらいらする。ディスレクシアの子供を教えると、いらいらすることがある。ディスレクシアの子供を持つといらいらすることがある。助けて。

自分の子供がディスレクシアであることが判明したときの親の典型的な反応は、以下のような様々な感情が入り混じったものかもしれない。

  • 「怒り」なぜ誰かもっと早く指摘してくれなかったのか。無視されていたのか。
  • 「安堵」何かおかしいと思っていた。やっと、何か手が打てる。
  • 「心配」次は何が起こるのだろうか。うまくいくのだろうか。
  • 「いらいら」息子は集中力が無い。娘はやれと言ったことをいつも忘れてしまう。
  • 「罪の意識」私が悪いのだ。もっと早く気づいてあげるべきだった。息子をがっかりさせてしまった。
  • 「恐れ」私のときと同じように息子もいやな目にあうのだろうか。
  • 「当惑」私自身がまだ問題を抱えていることを学校に言うべきか。

ディスレクシアの子供は、学校で怒りっぽくなったり、いらいらしたりして、日常の集中力のなさ、記憶力の悪さ、まとめられない症状が悪化し、必然的に家族全員との間の緊張が高まる。親は、子供が自分の障害に対して感情的に反応することに特に心配するようになる。心配が抑えきれなくなって、あっけないほど簡単に、学校との健全な協力関係が脅かされるようになってしまう。

専門家は、親の極度の心配を非論理的で根拠が無いと考えるかもしれない。しかし、最高に計画され機知に富んだ教育でさえも、親が混乱したり、心配したり、反感を持っていたらば効果はあまりないかもしれない。特別な教育的ニーズの確認と評価の行動規範には、「専門家の支援は、親の協力の上に築いたものでない限り、完全な効果が出せることはめったにない」と書かれている。

何が親を心配させるのか

  • 「心配しないで下さい」と言って、親の心配を妥当なものとして受入れない専門家。
  • 証拠も無いのに「うまくいく」と言う専門家の安請合い。
  • 教師の間で、子供の学習障害についての意見が一致しないこと。
  • 子供の長期的な将来について心配。「息子は中等学校でどうやっていくのだろうか。娘は仕事に就けるだろうか。」
  • 家族の中に読み書きの問題を今も抱える人がいて、現在も、不利益または障害があることへの認識。

教師は、心配している親を安心させるために何ができるか

学校が、第一に、親の心配を理解していること、第二に、自分たちのやっていることがわかっており、支援するための戦略を積極的に続行していることを示すことで、教師は、子供の教育に対する親の不安を鎮める手伝いができる。教師が口にする最悪の言葉は「できることは全てやっている」である。心配している親はすぐに「教師は十分にやっていない」と思ってしまう。

息子がディスレクシアだと診断されて初めて、なぜ私の学校生活があのように不快だったのか悟った。 ジェームス・ホエール、TVおよびラジオの司会者

しかし、親を参加させるのは時間がかかり、努力や計画も必要である。以下の質問を検討することで、改善する分野についての役に立つ指針が得られるかもしれない。

  • 学校案内には、親が子供の先生に連絡がとれる時と方法が明確に記されているか。
  • 学校への道順が親にわかるか。学校の看板ははっきりしているか。
  • 親が学校や教室に訪問できる時間が決まっているか。
  • 学校には、親のための部屋や親が利用できる掲示板があるか。
  • 働いている親はどのようにあなたに連絡するのか。
  • 良い知らせはどのように連絡するか。悪い知らせはどのように連絡するか。
  • 誰がオープン・イブニング<訳注: 学校参観>に出席するか。誰が、なぜ来ないのか。例えば時間を変えたら、もっと出席者が増やせるだろうか。

教師が、子供の特別な教育的ニーズ(SEN)を理解していることを示すための助言

ディスレクシアの子供の親は、教師が問題を認めてくれると安心する。「ディスレクシア」という単語を使うことは、手早く簡単に「理解している」ということを示す方法であり、親はもっと状態を明らかにすることができる。自分の子供について教師が言ったことは、親は全部忘れない、ということを忘れてはならない。特に、自分の不安が無視されたと感じた場合、まず、教師の努力を信用しないかもしれない。

  • 子供の障害の総合的な評価を提供し、親も教師も問題の程度を知り、根拠の無い保証ではなく、行動に基づいた解決策のための明確な指針が持てるようにする。
  • おそらく、自宅教育の本や学校での支援の機会を通して良い関係を築き、将来利用できるかもしれない支援について引き続き情報を提供する。
  • 障害を克服して、充実し、成功した人生を手に入れたディスレクシアの人の良い例を示す。
  • ディスレクシアのせいで出来ないことについて、子供や親を決して批判してはいけない。彼らが、問題を回避するための戦略を立てるのを助けること。
  • あなたと同僚の教師がチームを組んで、例えば、この情報集に記載されたディスレクシアに優しいテクニックについて説明し、教育課程全体の進捗状況を監視することによって、彼らの子供を支援しているということを必ず親にわからせること。
  • 「特別のニーズの登録」、「実施規則」、「個別教育計画」というような言葉を親に理解してもらい、教育の専門用語で締め出されたと感じさせないようにすること。
  • 親に、地元のディスレクシア協会に参加するよう提案する。BDAに連絡のこと。
  • 親または他の家族もディスレクシアかもしれないことを忘れないこと。子供に声を出して本を読んでやるよう彼らに頼むと、不安を緩和するのではなく、不安を生み出すかもしれない。

BDAのディスレクシアの手引き(1998年)に報告された、教師、教育心理学者のグリニス・ハネルの研究から。

私はいつも「起きろよ、ホエール。また白日夢にふけっているね。」と言われていた。 ジェームス・ホエール

中等学校の教師への助言

初等教育から中等教育へ移るときは、多くの11歳の子供にとって不安な時期である。ディスレクシアの子供は特に不安を感じる。彼らは、新しい環境に慣れるのが他の子供よりも時間がかかるということを知っている。そして、自分の読み書き能力、記憶力の悪さ、まとめ上げる能力の欠如を恥じているかもしれない。また、新しい教師が自分のことを愚かだと思うのではないか、と心配しているかもしれない。

まず、日々の教育の助けとなる指針を挙げることができるか。

生徒の年齢にかかわらず、以下について自問自答して欲しい。

  • 可能な限り多感覚を利用して教えているか。できるだけ多くの感覚を、同時に刺激しているだろうか。「見る」と「やる」の活動に、所々「聞く」を入れているか。子供は、様々の異なる学習方法を利用しているか。例えば、声を出して話す、カードに書く、友人と1つの話題について話す。
  • 子供の長所と学習スタイルを最高に上手に利用しているか。
  • 脳は、何よりも馬鹿馬鹿しいことを記憶する、という事実を最大限に活用しているか。
  • 例えばネットボールなど特定の課題に必要な準備について子供が忘れないように、小型のノートや個人のチェックリストの利用して、子供の寝室や教室の壁に貼るよう勧めているか。特別のものを持っていく必要がある日を示した、挿絵のついた大きな時間割を教室に掲示しているか。
  • 使えるペンや削った鉛筆を必ず持っているようにするなど、自立を促すため、登録時間をうまく利用しているか。

学校での最初の記憶は、恐怖の記憶である。教師に気づかれたくなかったので、全ての時間を自分の障害を隠すのに費やした。そして、隠すのがとても上手になった。 マイク

  • 綴りを覚える助けとして装置に名前を付け、教室にある重要単語を示しているか。
  • 練習問題の用紙は、大きな文字で間隔をはっきりと空けて、簡潔に書かれているか。
  • 時間構成を示した復習用紙を渡しているか。個々の学習スタイルを考慮して、積極的に復習するために最も良い方法を子供に気づかせているか。
  • ディスレクシアの子供が最も集中力が発揮できるよう、適切な子供の隣に座らせているかどうか。そして、必要な場合、座席を移動しているか。
  • 課題をワープロ処理するよう子供に勧めているか。
  • 毎回授業の初めに内容の概略を示しているか。授業を終えるとき、学んだことを要約しているか。
  • 学校は、子供が支援や助言を必要なときに求めに行ける場所になっているか。

例えばディスレクシアの子供に質問に答えるよう勧めるなど、彼らが授業に全面的に参加するよう助けるテクニックはあるか。

処理速度がディスレクシアの子供にとって問題となる可能性がある。ある子供が次のように言っている。「先生に見られると、いつも答えが出てこなくなる。手を上げたときにはわかっていたのに。」役に立つヒントとして、合図を前もって決める方法がある。この質問はあなたのためのものだが、必ずしも直ちに答える必要はない、という意味ディスレクシアの子供にへの合図である。「もうすぐ、あなたを指します」という意味の合図は、目を合わせる方法でも、その生徒の隣や前に立つという方法でも良い。その間、教室を見回し、その質問について話をして、ディスレクシアの子供に考えをまとめる機会を与えることもできる。その子供を指す前に、その子供に、頷いたり首を振ったりするチャンスを与える。このテクニックを成功させるには、当然、教室の規律を保つことが不可欠で、大声で叫ぶ態度は認められない。

指示を出す特別な方法はあるか。

処理速度もディスレクシアの子供の指示を受ける能力に影響を与える。彼らは「本当に、先生の言葉に耳を傾けているのに忘れてしまう。助けを求めると、注意していないからだと叱られてしまう」と言っている。積極的に話を聞く戦略を教えて、教師が話をするときはいつも「止まる。注視する。耳を傾ける」ようにさせる。このやり方による対処を練習することにより、自分自身驚くほど、もっと思い出すようになり、理解していることに気がつく。しかし、彼らは同時にメモをとることができない、ということも忘れてはならない。また、

  • 指示を出す前に、ディスレクシアの子供が聞いていることを確認する。その子の名前を言って、その指示が自分と関係あるものにする必要があるかもしれない。
  • 動き回りすぎてはいけない。必ず、目を合わせるようにする。ディスレクシアの子供の気が散るのを最小限に抑えるために、その子のすぐそばで話をする。1回に与える指示は1つにする。
  • 指示を口頭および書面で与える必要があるかどうか考える。
  • 短期記憶の減少は、通常、文章処理能力の低下を伴う、ということを念頭に置くこと。つまり、複雑な指示は細かく分け、次の指示を与える前に各指示を理解させる。文章を短くして、単純な文法を使うこと。
  • 指示を繰り返し、単語や用語を変えたり定義し直したりして、明確にする準備をすること。

宿題をやらなかったり、間違ったページをやってしまったりしたのにはいつも理由があった。結局、自信をなくし、木工のGCSEを取得して、学校を去った。 マイク

「勉強方法を学ぶこと」と最高の学習方法を理解することが、ディスレクシアの子供のために重要な問題と思われる。これは、実際にはどういう意味か。子供がそうできるようにするためには、どうしたらよいか。

教室で以下について話合い、子供たちに自問自答させる。

  • なぜ自分はこれをやっているのか。 - 目的
  • 求められている最終結果は何か - 結果
  • どんな戦略を使うべきか - 戦略
  • それはうまくいったか - 監視
  • どのように改善できるか - 発展
  • これは他の技術に移せるか - 移転

「段落のサンドイッチ」(フレンシャムのモア・ハウス・スクール)をサンドイッチを例にして図解。”主題の文”はかぶせてあるパン。”支える文”部分が中身。”結論の文”が下部のパン

タイトルを中心として、「どこで」「いつ」「何」「どうやって」「なぜ」「誰が」を配置
タイトルを先頭に、「導入」「段落2」「段落3」「段落4」「結論」を配置したフローチャート

タイトルの下に「初め」「中間」「終わり」を直線的に配置した図

リストラされてから自分がディスレクシアであることがわかった。情報を使えるような形で教育を受ければ学べることがわかった。成績は2.1<訳注:大学の成績でUpper Second Class。「two-one」と呼ぶらしい。日本の「優」くらい>で学士の学位を取得し、現在、文学修士コースで勉強をしている。 マイク

中等学校では、下の学年よりも試験の数が明らかに増える。ディスレクシアの子供の記憶を助けるためのヒントはあるだろうか。

積極的な復習は、ディスレクシアに関連した短期記憶障害のある子供を助けるための試験済みの方法である。

  • 課題を読む - これは視覚的経路である。
  • これを声に出してテープに録音し(誰か他の人がやってあげなければならないかもしれない)、再生できるようにする。
  • 課題をまとめる - これには思考の技術が必要である。
  • 重要語にマークをし、関連した考えに注目する。
  • 思考の流れ図や、図表を作成してみる。
  • 記憶を助ける工夫、韻、頭字語、語連想を作り出す。
  • 考えを結びつけるためにカラーペンや矢印を使う。
  • 重要な事実を列挙し、それらに番号を振る。
  • 書く - これは、運動感覚の経路である。
  • 要点を書き留めることが、それらを記憶する助けになる。一週間後にメモを見ても、全ての事実を思い出せない場合、テキストに戻る必要がある。
  • 十分なメモを、大きな紙に書き写し、寝室の壁にかける。
  • 言う - これは、聴覚の経路である。
  • メモを声に出して読むことは、記憶力強化の助けになる。
  • 確認する - これも思考経路を使う。

年間を通して、各テーマの最後にまとめを書くように生徒に対して勧める。これにより、かっこうの復習教材ができる。試験テクニックを練習する。例えば、質問を正確に読む、構想を立てる。ディスレクシアの生徒はいつも、同じ能力を持ったディスレクシアでない生徒よりも読むのに時間がかかる傾向があり、読み間違えをしやすくなる。特にストレスを受けるとそうなる。彼らは、通常、学校に特別の取決めがある場合にのみ、全国テストで余分に時間をもらえる資格が与えられる。

最後に、気をつけなければならない「してはならないこと」はあるか。

  • 口頭の指示を出しすぎたり、書く課題を要求しすぎたりしてディスレクシアの子供に負担をかけすぎてはいけない。
  • 間違いをからかってはいけない。- 故意でなくても、非常にやりがちなことである。「また、やらないでね・・・」
  • 課題を全部書き直しさせてはいけない。
  • 子供がわかっていない、または、集中力を失っているという徴候を無視してはいけない。
  • 休みもとらせずに長い間子供に勉強させてはならない。
  • 板書したものを書き写させてはならない。
  • 直ちに答えをもらおうといつも期待してはならない。
  • 「愛の鞭」を使うことを恐れてはいけない。- つまり、その子供がもっとうまくやれると思うなら、悪い成績のままその子供を解放して、そのために自尊心が傷つくことがないようにしなければならない。そうではなくて、課題を通して話をし、彼らがどのように再開するのか理解できるようにする。

私は、情報を取り入れ、フローチャートや思考の流れ図に考えを表現することができる。考えの流れが変わったり、新しい主題が出てきたりするときは、色を使うのも非常に役立つ。 マイク

小学校教師向けのヒント

皆それぞれ、自分の学習スタイルを持っている。どの年齢でも、ディスレクシアの人は、情報処理の方法が異なるようだ。ディスレクシアの子供を教室で効果的に学ばせるためには、彼らとって最良の学習方法を理解し、柔軟に教育することが極めて重要である。

我々は、ディスレクシアに優しい方法で小学生を教えるための実際的な支援と助言を提供している。

まず、ディスレクシアの子供を教えるための役に立つ基本原則はあるだろうか。

以下のものが役立つかもしれない。

  • 彼らの知的刺激には高い期待を持つこと。しかし、彼らが書いたものには無理を言わないこと。
  • 様々なやりかたで、物事をひとつひとつ何度も説明する心構えが必要。
  • 子供がいないときに課題の採点をしなければならない場合は、2色使って行うこと。1色は内容、もう1色は綴りと表現用。
  • 生徒の課題を見るときは、間違えた理由を理解しようとし、彼らに自分の障害について説明する機会を与えること。これは、教える必要のある事柄は何か、練習する必要があるのは何かを知る助けとなるだろう。
  • 飽きおよび疲労の徴候に気を配る。ディスレクシアの子供は他の生徒よりも一所懸命やらなければならないので疲れやすい。
  • 指示を与えるときはゆっくり、静かに、慎重に行い、言葉の意味が「染み込む」時間を与える。
  • 可能な場合は、多感覚応用の教授法を行う。この方法は全ての感覚を同時に使うので、子供は見る、聞く、書く、話すを同時にできるかもしれない。
  • ディスレクシアの子供が、書くことに障害があっても、興味、知識、技術を示すことが出来るようにする。彼らは口頭では「輝く」ことができるようになることが多い。教師はこの点を育てなければならない。
  • 課題への系統的な対処方法について指導する。他の子供が特別の大人からの助けなしに理解する多くのことについて、ディスレクシアの子供は教えてもらう必要があることが多い。例えば、引き出しを整頓する、おもちゃを片付ける、服を着る、無くした物を探す、通学鞄に必要な物を入れる、紐または靴紐を結ぶことである。教師を含む大人は、いつもの日課の中でこれらの技術を系統的、反復的に時間をかけて教えることの重要性を認識する必要がある。
  • 自信と自尊心がなくなっていく徴候を見逃さないようにする。

教室を配置はどのようにするか。

学習環境は、ディスレクシアの子供にとって「成功か否かの分かれ目」となる。彼らは既に傾聴する、聞く、見る、じっとしている、集中する、書く、必要なものを見つけることに困難を抱えているかもしれない。教室の環境が悪いと、どんなに一所懸命に頑張ってもうまくいかないだろう。

その答えは、簡潔な言葉で私の考えとぴったりと合った。 ウィリアム

ディスレクシアに優しい教室のあるべき姿は以下のとおり。

  • 授業の間にディスレクシアの子供が前列の近くに座れるように座席を配置する。
  • 可能な場合は、指示について説明を聞けるように、やる気のある子供や「勉強友達」とディスレクシアの子供を並んで座らせる。
  • 周りの雑音や目に入る動きで気が散るディスレクシアの子供もいるので、教室の周囲に動きがあまりないように、できるだけ静かな環境を準備する。
  • 資料にはっきりと印をつけ、整然と整頓して、簡単に見つけられるようにする。

ディスレクシアに優しいどんな方法が、小学生への読み書きの学習の助けとなるか。

単語の理解が、読みの学習に非常に重要な点である。不規則語は、「単語全体」学習<訳注: 「単語をまるごと覚えてしまう」学習方法>が必要で、効果的に利用できるディスレクシアに優しい手法がたくさんある。例えば、

  • 何らかの形で関係がある単語のフラッシュカード<訳注: 単語、絵、数字などの教材用カード。短時間だけ見せて生徒の反応速度を増す練習に使う。>。例えば、「大」と「小」のような反対語。「has」、「had」、「have」のように最初の文字が同じ単語。「me」、「we」、「be」、「he」のように同じ文字で終わる単語。
  • 1回に提示する新しい単語の数は少なくし、せいぜい6個までにする。

書き留める前に、記憶がごちゃごちゃしていて、さっと消えてしまう。 ウィリアム

  • 極少数のグループか、できれば完全に1対1で、「草書体」を使って手書きを教える。この手法は特に役立つ。鉛筆がずっと紙に触れているので、手の運動感覚が文字の順序を記憶する助けとなるからである。砂の上で、粘土を使って、空中で、字を書く練習をする。
  • 可能な限りコンピュータを使う。初等教育の学習の全ての面で、良いソフトが入手できる。多くある利点の中の1つに、子供が長い時間、1対1の支援を受けられる点が挙げられる。ディスレクシアの子供のことを考えたプログラムがたくさん作成されている。BDAのコンピュータ委員会の小冊子はたびたび更新されている。
  • 一緒に読み書きをする時間、子供たちがただ受動的に座っているのではなく、ついてきていることを確認する。1つの案として、一緒に読む授業に使う本や文章を前の週にディスレクシアの子供に渡して、練習できるようにする方法もある。
  • 自分が読んでいる文章をディスレクシアの子供が理解できるように助ける。ディスレクシアの人には、何歳になっても理解の問題が残るかもしれない。ディスレクシアの子供には一節が読めても、その意味が全然わからない。今自分が読んでいることの意味に常に注意を向けることが極めて重要であり、頻繁に練習しなければならない。ヒントとしては例えば、各単語または文を2度読む、声に出して読む、各単語または文の意味を考えて読む。句読点で今読んだことを心に描く、などが挙げられる。

ホワイトボードまたは黒板は利用できるか。

ホワイトボードまたは黒板の字(すなわち、遠くの垂直の平面)から紙(すなわち、近くの水平の平面)に字を書き写すことは、ほとんど全てのディスレクシアの人にとって非常に困難な作業である。彼らは正確に書き写すことができない。そして、最悪なのは、自分の本に目を移した後、板書の文字の場所を探し出すことが出来ないことである。

頭の中にある言葉は、手の中にある言葉と同じではない。少なくともペンで書く言葉とは違う。 ウィリアム

以下のヒントは役立つかもしれない。

  • 大きな課題ではなく、メモとしてボードを使用する。
  • ボードを使わなければならない場合は、ディスレクシアの生徒にはコピーをあげれば、うまくやれる機会が与えられる。
  • 休憩時間まで子供を引き止めて、板書をさせない。
  • 字は大きく、はっきりと、間隔を十分に空けて書かなければならない。
  • ボードを読むための時間を十分に与える。

最後に、ディスレクシアに優しい教師が気をつけなければならない「してはならないこと」はあるか。

  • ディスレクシアの子供が物を無くしたり忘れたり、何かの意味を把握しなかったり、「うまくいかない日」だったとしても怒鳴ってはならない。聴覚障害の子供があなたの声が聞こえないからといって、腹を立てるだろうか。
  • 他の子供と同じ分量の作品を書くことを期待してはならない。
  • ディスレクシア子供が障害の徴候を示したとき、それを馬鹿にしたり、笑ったりしてはならない。他の者が、彼らをひやかしたり、「頭が悪い」と言ったりするのを許してはならない。
  • ディスレクシアの子供にボードの字を書き写すことを期待してはならない。
  • ディスレクシアの子供に指示を与えすぎてはならない。
  • 彼ら自身が苦痛を感じないようにならない限り、音読をさせてはならない。
  • 時間割、教師、課題を突然に変更してはならない。
  • 例えば掛け算の九九など、一連の事実の暗記を期待してはならない。

自分の作品を見たとき、深い底の方で、迷いから覚め始めているのではないかと思った。 ウィリアム