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2000年から2009年まで

この時代、分科会は戦略計画に修正を加え、IFLAはこれを「完璧なモデル」と称した。(102)計画の中では、不利な立場にある人々に対する図書館情報サービスの世界的な状況の調査研究を継続することを提唱していたが、分科会が追求する有意義な活動はすべてこの分野の正しい理解にかかっていたので、これは重要な焦点であった。計画ではさらに、可能な限り世界中から幅広く会員を募集し続ける方法も確認した。そして第3の目標は、ガイドライン作成の継続で、これは特別なニーズのある人々の図書館と図書館サービスへの平等なアクセスを促進する重要な手段である。最後に、計画では、ヨーロッパディスレクシア協会(European Dyslexia Association)や世界ろう連盟などの図書館専門家以外のパートナー組織を引き続き確認していくことを目的としていた。(103)

この時代、分科会はまた、設立70周年(2001年ボストン)と75周年(2006年ソウル)をそれぞれ祝福した。75周年記念の際には、分科会情報冊子のテキストと画像が、その活動を一層反映するために手直しされた。

この10年の間に、IFLAは2001年から2005年までの分科会の活動を見直すことを命じ、2005年11月に提出されたLSNによるレビューでは、過去、現在および未来の目標、方針、そして活動に重点が置かれた。(104)またこの時代には、常任委員会が長期間にわたり分科会の名称変更について議論したが、これはひとつには、分科会のユーザーグループに関する国際用語に発展が見られたことにより必要に迫られたといえる。最終的に名称は、2008年末に「特別なニーズのある人々に対する図書館サービス分科会(Library Services to People with Special Needs Section)」へ変更された。

最後に、この時代、5つの新たな実践ガイドラインと、図書館利用において不利な立場にある人々にサービスを提供する図書館のためのリソースブック、そしてアクセシビリティチェックリストが発行された。ガイドラインとチェックリストはIFLAの公式言語に翻訳されたが、一部は日本語、クロアチア語、ペルシア語、ノルウェー語、ブラジルポルトガル語、デンマーク語、フィンランド語、スウェーデン語、イタリア語、韓国語、スロヴェニア語にも翻訳された。

最初に発行されたのは、『入院患者、長期介護施設内の高齢者および障害者のための図書館サービスガイドライン(Guidelines for library services to hospital patients and the elderly and disabled in long-term care institutions)』だった。 (105)このような図書館サービスが目指すレベルを示すことを目的とし、同ガイドラインは、地域の制約に関係なく、多くの状況において利用できる、柔軟性のある勧告として策定された。ガイドラインのための情報は30ヶ国以上から寄せられ、その見直しには4大陸の5ヶ国の代表が参加した。

次に発行されたのは、『聴覚障害者のための図書館サービスガイドライン』第2版であった。(106)この大幅増補改訂版では、インターネットやWWWなどの、聴覚障害者に重大な影響を与える通信の進歩を考慮に入れていた。ガイドラインは、勧告以外にも、聴覚障害者コミュニティ独自の図書館情報に関わるニーズを、図書館司書に伝えることを目的としていた。第3版は2009年に発行予定である。 これに続いて『ディスレクシアのための図書館サービスのガイドライン(Guidelines for library services to persons with dyslexia)』(107)が発行された。世界人口のおよそ8%に影響を与えている、無症状の学習障害(108)であるディスレクシアは、1990年代に2度、年次大会プログラムで取り上げられてきた。同ガイドラインは見直しのために、原稿段階でスカンジナヴィア諸国に配布され、ヨーロッパディスレクシア協会および国際ディスレクシア協会(International Dyslexia Association)に対してもコメントが求められた。

『受刑者のための図書館サービスガイドライン(Guidelines for library services to prisoners)』(109)は、2005年に受刑者に対する図書館サービスの企画、実施および評価の手引きとして発行された。またこれには、この分野の独自のガイドラインの作成を希望している国でモデルとして役立てるという意図もあった。さらにこれは、受刑者は、読み、学び、そして情報にアクセスする基本的権利を有するという考えを強化するステートメントとして役立てられることになっていた。同ガイドラインは、図書館司書、図書館経営者、刑務所当局、政府出先機関、その他の刑務所図書館運営担当・資金調達担当機関/当局のために作成された。

最後に、『認知症の人のための図書館サービスガイドライン(Guidelines for library services to persons with dementia)』(110)が2007年に発行された。このガイドラインの内容は広範囲にわたり、認知症の背景、その原因と種類、そして在宅か施設在住かを問わず、認知症に苦しむ人へのサービスの課題を紹介している。また、認知症の人のための資料とサービスに言及し、サービスのモデル、読書指導員、民俗的・文化的マイノリティグループの問題も取り上げている。

『図書館利用において不利な立場にある人々へのサービス国際リソースブック(International resource book for libraries serving disadvantaged persons)』(111) は2001年にK.G.ソール社(K.G.Saur)シリーズとして発行された。これは分科会のユーザーグループに対する図書館サービスに関する画期的な文献目録を更新したもので、分科会の設立と2000年までの発展についても詳細に記されている。

『障害者のための図書館へのアクセス-チェックリストの紹介(Access to libraries for persons with disabilities - CHECKLIST)』(112) は2005年に発行され、障害者のための図書館、図書資料、サービスおよびメディアフォーマットへの物理的なアクセスに関する提言を行った。さらに、特別なニーズのある人々に必要なサービスを提供し、効果的にコミュニケーションをとるための、図書館職員の研修方法も提案した。

LSNのユーザーグループに関連のある『用語集(A Glossary of Terms)』は、2009年に発行される予定である。おもに国際的な情報源と、LSNが支援しているグループに関するLSN独自の実用的な知識をもとに、250を超える項目が集められた。用語集は、LSNの会員だけでなく、他のIFLA分科会、そしてLSNの活動に関心を持つ国際社会の人々にも役に立つと期待されている。

2009年にはまた、『読みやすい図書のためのIFLA指針第3版』の発行も予定されている。この第3版のガイドラインでは、幅広いニーズが取り上げられることになっており、認知障害者、言語スキルが限られている人を含む識字レベルが低い人々、そして認知障害はないにもかかわらず、読むことに問題を抱えている人々も含まれる。

最後に、2009年には、『図書館利用において不利な立場にある人々へのサービス国際リソースブック』の第2版が発行される予定である。このモノグラフには、特別なニーズのある人々に対する図書館サービスに関する最新の文献目録と、2000年から2008年までの分科会の功績が新たに掲載される。