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ディスレクシア・ツールキット

全米LDセンター(the National Center for Learning Disabilities)が提供する必携資料

目次

第一部 基本情報

第一章:ディスレクシアとは?

第二章:幼稚園入園前から小学2年生までのディスレクシアの一般的な兆候

第三章:小学3年生から中学2年生までのディスレクシアの一般的な兆候

第四章:十代のディスレクシアの一般的な兆候

第五章:大学生及び成人のディスレクシアの一般的な兆候

第六章:ディスレクシアの検査

第七章:ディスレクシアに役立つ情報源

第八章:動画:ディスレクシアとは?

第二部 ディスレクシアとともに生き、学ぶ

第九章:オーディオブックや電子書籍で子供の学習成果を上げられるか?

第十章:ディスレクシアの児童・生徒への配慮

第十一章:宿題攻略法 入門編

第十二章:当事者活動はどのように革新へとつなげられるか:ベン・フォス(Ben Foss)とのインタビュー

第十三章:ディスレクシア:障害ではあるが、限界ではない

第一部 基本情報

第一章:ディスレクシアとは?

他の学習障害と同様、ディスレクシアは生涯続く、生まれつきの問題である。この言語処理障害は、読み書き、綴り、そしてときには話すことさえも妨げることがある。詳しく述べる前に、ディスレクシアが書字にどのように表れるかを見てみよう。

次の文章は、スタンフォード大学出身のベン・フォス(Ben Foss)のインタビュー原稿から引用したものである。インタビューは第12章に掲載されている。

ためしに自分のことお皆に知らせてみて、この問題を隠さなければどんな気持ちするかを知ることがとてもじゅようです。怠けているとか頭が悪いと連想されるようなぶるいに自分が入ると打ち明けるのは、こわいことでもあるでしょう。僕はそんな心の痛みかんじてきました。スタンフォードロースクールで論文出した日、あるクラスメートが教務科で大笑いました。僕の論文の題に学習障害という言葉があっただからです。「奴らは何も考えをまとめられないんだぜ!」僕は彼をじっと見て、自分には学習障害があると説明しました。彼はきまり悪がって、誤ってくれました。

訳者注:以下の原文で誤っている箇所にできるだけ近い所で間違った記述にして翻訳している。
(It is criticla they you experiment with being public about who you are and see what ifeels like not to hide on this issues. It canbe scary to tell people that you are of part of a lable that is associated with being lazy or stupid. I have fel this sting. The day I turned in mt thesis at Stanford Law School, a classmate laughed outloud at the registers office bcause I had the term learning disabilities in my title. "They can;t articulate anything!" I looked at him and explained that I had a learning disabilities. He was embarrassed and appologized.)

ディスレクシアは、知能の低さや怠けていることを示すものではない。また、視力が悪いために起こることでもない。ディスレクシアの子供や成人は、神経障害を抱えているだけで、そのために脳が違う方法で情報を処理し、解釈しているのだ。

ディスレクシアは、あらゆる経済的・民族的背景を持つ人々に起こる。家族の二人以上がディスレクシアであることも多い。アメリカ国立小児保健・人間発達研究所(National Institute of Child Health and Human Development:NICHD)によれば、アメリカ人の実に15パーセントが、重大な読みの問題を抱えているとのことである。

教室内で行われる多くのことは、読み書きを基本としている。このため、できるだけ早い時期にディスレクシアとわかることが重要である。代わりの学習手段を利用すれば、ディスレクシアの人々は成功できるのだ。

ディスレクシアの影響とは?

ディスレクシアはさまざまな影響を与える可能性がある。その影響は、学習障害の深刻さと、代わりの学習手段の成果に一部左右される。ディスレクシアには、読みと綴りに問題がある者もいれば、書字や左右の識別に苦労する者もいる。子供によっては、初期の読み書きには困難の兆候がほとんど表れないこともある。しかし後になって、文法、読解、深く掘り下げた作文など、複雑な言語スキルに問題が生じる場合がある。

また、ディスレクシアのために、自分の言いたいことを明確に表現するのが難しくなることもある。会話をしながら、語彙を駆使して考えをまとめるのが難しいことがあるのだ。話しかけられたときに、理解に苦労する者もいる。冗談やことわざのような、抽象的な概念や文字通りの意味ではない言語の場合は、さらに難しくなる。これらはすべて、ディスレクシアの人の自己イメージに大きな影響を与える。支援がなければ、子供は多くの場合、学習で挫折感を味わうようになる。学校の課題をこなすストレスから、ディスレクシアの子供は、自分が直面するハードルに挑戦し続け、これを克服しようという意欲を失ってしまうことが多い。

どのような兆候があるか?

ディスレクシアの人には、年齢によって異なる兆候が見られる。年齢別のディスレクシアの兆候に関するさらに詳しい情報は、第2章から第5章を参照。

人は皆、ときとして学習に苦労する。しかし、ディスレクシアのような学習障害は、恒常的で長時間継続する。以下のリストは、ディスレクシアを診断する一般的な指針である。全米LDセンター(NCLD)の対話型学習障害チェックリスト(Interactive Learing Disabilities Checklist)も、検討すべき資料としてあげられる。最後に、これらのリストに掲載されている「症状」の一部は、他の学習障害や、LDと合併することが多い注意欠陥多動性障害(AD/HD)などの他の障害にも当てはまることに注意する。

もし、自分や子供がこれらの兆候のいくつかを呈しているなら、助けを求めることをためらってはならない。子供に当てはまる兆候に印をつけ、それを相談先の専門家の所へ持参する。正確な診断と支援があれば、子供は、学校や職場、そして人生において、もっと成功することができるのだ。親ほど子供のことをよくわかっている者はいないのだから、支援が必要だと思うのなら、自分の直感を信じるとよい。

ディスレクシアはどのように診断されるのか?

ディスレクシアの診断は、訓練を受けた専門家により、正式な評価を用いて下される。これは、話し言葉と書き言葉に関する理解力と利用能力を見るもので、読むことに必要なスキルの強みと弱みを検討する。他の要素も多数考慮されるが、それには、家族歴、知能、学歴及び社会環境が含まれる。

ディスレクシアにはどのように対処するのか?

人生のできるだけ早い時期に、ディスレクシアと診断されることが有効である。診断を受けていないディスレクシアの成人は、自分の知的能力よりも低い仕事に就いていることが多い。しかし、指導者や教師、その他の訓練を受けた専門家の支援があれば、ディスレクシアの人々はほぼ全員が、優れた読み手と書き手になることができる。ディスレクシアの人々の進歩を助けるには、以下の方略を利用するとよい。

  • 幼児期に子供に音読、書き方、描画をさせ、活字の知識や基本的な文字の構成、認知スキル、言語意識(音と意味の関係)を身に付ける練習をさせる。
  • 子供にさまざまな種類の文章を読む練習をさせる。これには、本、雑誌、広告及び漫画が含まれる。
  • 多感覚を併用した、構造化された言語指導を行う。新たな概念を紹介する際には、視覚、聴覚及び触覚を使って練習をさせる。
  • 教室内で変更できることを探す。これには、課題を仕上げる時間の延長、ノートテイキングの援助、口頭による試験、別の評価手段が含まれる。
  • テープに録音された図書や支援技術を使用する。支援技術には、スクリーンリーダーや音声認識ソフトなどがある。
  • 学習の問題を克服するための苦労から生じる情緒的な問題に対する支援を行う。

読み書きは、日常生活の重要なスキルである。しかし、学習と表現にかかわる、読み書き以外の側面も重視することが重要である。すべての人々と同様、ディスレクシアの人々も、自分の強みや興味をうまく引き出してくれる活動を楽しむ。例えば、ディスレクシアの人々は、言語スキルを重視しない分野に魅力を感じるであろう。デザイン、美術、建築、工学、手術などが例としてあげられる。

第二章:幼稚園入園前から小学2年生までのディスレクシアの一般的な兆候

ディスレクシアは学齢期に正式に診断されることが最も多いが、ディスレクシアの兆候は、しばしば未就学児にも認められる。

あなたが子供のことで心配なら、幼稚園入学前から小学2年生までのディスレクシアの一般的な兆候をあげた以下のチェックリストを見直すとよい。

少なくとも過去6カ月間、子供は次のことに問題を抱えている。

言語:

□アルファベット、数字及び曜日の学習

□人や物の名前を言うこと

□正確に話すことと、多様な、年齢相応の語彙を使うこと

□話題からそれないこと

□物語や本に興味を持つこと、または興味を持ち続けること

□会話の習得(同級生と比べて遅れている)

□話し手と聞き手の関係の理解

□言葉を正確に発音すること(例 「magazine(雑誌)」ではなく「mazagine」と言ってしまう)

□新たな語彙を学び、正確に使うこと

□同じような音の別の言葉と区別すること

□韻を踏む言葉の使用

□指図/指示の理解

□たった今言われた内容を繰り返すこと

読むこと:

□文字の名前を言うこと

□文字を認識し、音と結びつけること、また、話すときに音を混成すること

□年齢相応の読みの学習

□文字と音を結びつけること、また、単語の中のさまざまな音の違いを理解すること

□単語の中の文字の音を正確に混成すること

□サイトワードの認識と記憶

□印刷された単語の記憶

□見た目が似ている文字や単語の区別

□新たな語彙を学び、記憶すること

□単語を飛ばさずに読み続けること

□読むことに自信と興味を持つこと

書くこと:

□年齢相応のレベルの視写や書字の学習

□文字、数字及び記号や符号を正しい書き順で書くこと

□単語を、ほとんどの場合、常に正確に綴ること

□書いた文章を校正し、訂正すること

社会・情緒面:

□友人を作り、友人関係を維持すること

□非言語的な手掛かり、「ボディーランゲージ」、口調の解釈

□学習に対する意欲と自信を持つこと

その他:

□方向感覚/空間概念(左右など)

□日々の課題を一貫して実行すること

第三章:小学3年生から中学2年生までのディスレクシアの一般的な兆候

あなたは、自分の小学生や中学生の子供が、同級生と同じ様に上手に学習したり、コミュニケーションを取ったり、人間関係を築いたりしていないことが心配だろうか? あなたの子供は特に読むことに苦労しているか? それは、子供の自信や意欲に影響を与えているか?

もしそうなら、小学3年生から中学2年生までのディスレクシアの一般的な兆候をあげた以下のチェックリストが、あなたの懸念を払拭するのに役立つであろう。

少なくとも過去6カ月間、子供は次のことに問題を抱えている。

言語:

□指図や指示の理解

□たった今言われた内容を正しい順序で繰り返すこと

□話題からそれず、要点を話すこと(細部にこだわりすぎて話が進まなくなる)

□人や物の名前を言うこと

□的確で正確な言語、適切な文法、多様な語彙を使って話すこと

□音が似ている単語の区別

□単語を正確に発音すること

□あまり途切れることなく、あるいは「フィラー」(「えーと」など)を使うことなく、円滑に話すこと

□韻を踏むこと

□ユーモア、だじゃれ、慣用句の理解

読むこと:

□年齢相応の内容を流暢に読むこと

□内容を十分に理解しながら、音読または黙読すること

□読むことに自信と興味を持つこと

□サイトワード及びその他の活字の単語の記憶

□新たな語彙を学び、記憶すること

□なじみのない単語を正確に分析すること(分析する代わりに推測する傾向がある)

□読み替えや読み飛ばしをほとんどせずに、正しい順番で単語や文字を読むこと

□算数の文章題の理解

書くこと:

□綴り方の規則の習得

□同じ単語を一貫して正確に綴ること

□文字、数字及び記号や符号を正しい書き順で書くこと

□自分で書いた文章の校正と訂正

□系統立てて考えを表現すること(年齢が高い子供の場合)

□作文の課題を作成する/まとめること(年齢が高い子供の場合)

□十分に考えを練り、書面にまとめること(年齢が高い子供の場合)

□聞きながらノートを取ること

社会・情緒面

□同世代の集団に参加し、好ましい社会的地位を維持すること

□非言語的な手掛かり、「ボディーランゲージ」、気持ち、口調の解釈

□周囲からの圧力やきまり悪さに対処し、適切に感情を表現すること

□現実的な社会的目標の設定

□学習や他の人とうまく付き合うことに関して、前向きな自尊心を持ち続けること

□同級生やその他の同世代の仲間に「なじむ」ことに関して、自信を持ち続けること

その他:

□新たなスキルの学習/記憶(暗記に大きく依存)

□事実や数字の記憶

□方向感覚/空間概念(左右など)

□日々の課題を一貫して実行すること

□ある状況におけるスキルを別の状況に適用すること

□新しいゲームを覚えること、パズルを解くこと

第四章:十代のディスレクシアの一般的な兆候

あなたは、自分の十代の子供が学校の勉強に苦労しているので心配しているだろうか? 社会的不適応や、同世代の子供を敬遠する傾向があることに気づいているだろうか? 意欲の無さが問題と思われるか? 自尊心の低さが学習の喜びを奪っているのではないかと心配しているだろうか?

これらはすべて、ディスレクシアのような未診断の学習障害(LD)の兆候かもしれない。十代のディスレクシアの一般的な兆候を示した以下のチェックリストに目を通してほしい。

少なくとも過去6カ月間、十代の子供は次のことに問題を抱えている。

言語:

□豊富な語彙を駆使して、(途切れることなく)流暢かつ正確に話すこと

□指図/指示の理解

□正確な文法と語彙の使用

□話し手と聞き手の関係の理解と、会話への適切な参加

□話題からそれず、要点を話すこと(細部にこだわりすぎて話が進まなくなる)

□話をまとめること

□見た目や音が似ている単語の区別

□慣用句や冗談など、文字通りの意味ではない言語の理解

読むこと:

□当該学年で期待されるレベルの速さと正確さで読むこと

□音読

□読む場所を間違えずに、また、読み替え/読み飛ばしをせずに読むこと

□サイトワードの認識

□なじみのない単語を読む/覚えるために、単語を(推測ではなく)分析すること

□読むことに楽しみを見出し、自信を持つこと

書くこと:

□一貫して正確に綴ること

□書いた文章の校正と編集

□書いた文章の要約の作成

□論理的に、系統立てて考えを表現すること

□十分に考えを練り、書面にまとめること

社会・情緒面:

□他の人の気持ちや感情をくみ取ること

□からかいを理解し、これに適切に対応すること

□友人を作り、友人関係を維持すること

□社会的関係に関する現実的な目標の設定

□集団の圧力やきまり悪さ、予期せぬ困難な課題への対処

□自分の社会性の強みと弱みについて、現実に即して理解すること

□学習と人間関係の構築に対する意欲と自信を持つこと

その他:

□時間のやりくりと管理

□空間と方向を間違えずに進むこと(例 左右がわかる)

□図表や地図の読み取り

□日々の課題を一貫して実行すること

□ある状況で学んだスキルを別の状況に適用すること

□新しいゲームを覚えること、パズルを解くこと

□記憶

□外国語の学習

第五章:大学生及び成人のディスレクシアの一般的な兆候

あなたは、読むこと、綴ること、あるいは書くことに、いつも苦労しており、自分(あるいはあなたが気にかけている成人)が、ディスレクシアなどの学習障害(LD)を抱えているのではないかと心配したことがあるだろうか?

LDが、これらの問題の原因となっているか、あるいは根底にあるかを明らかにするため、支援を求めるのに遅すぎるということは決してない。以下は、大学生及び成人のディスレクシアの一般的な兆候を示したチェックリストである。このリストが、あなたを長年困らせ、苦しめてきた困難を解き明かしてくれるかもしれない。

少なくとも過去6カ月間、私は次のことに問題を抱えている。

言語:

□見た目や音が似ている単語の区別

□冗談や慣用句など、文字通りの意味ではない言語の理解

□非言語的な手掛かりに気づくこと。会話への適切な参加

□指示/指図の理解

□「言い間違い」を避けること(例 "a rolling stone gathers no moths" )

(訳注:正しくは、"a rolling stone gathers no moss" 「転がる石に苔むさず」という意味)

□物語、論文あるいは本の主旨をまとめること

□考えを、明確かつ論理的に表現し、細部にこだわりすぎて話が進まなくなることがないようにすること

□外国語の学習

□記憶

読むこと:

□かなり速いペースで、期待されるレベルの内容を読むこと

□流暢かつ正確に音読すること

□読む場所を間違えずに読むこと

□なじみのない単語の意味を理解するために、(推測ではなく)「単語分析」を利用すること

□活字の単語の認識

□読むことを通じて楽しみを見出だし、自信を持つこと

書くこと:

□一貫して正確に単語を綴ること

□適切な文法の使用

□書いた文章を校正し、自分で訂正すること

□筆記課題のアウトラインを作成し、まとめること

□十分に考えを練り、書面にまとめること

□論理的に、系統立てて考えを表現すること

社会・情緒面:

□他の人の気持ちや感情をくみ取ること

□からかいを理解し、これに適切に対応すること

□友人を作り、友人関係を維持すること

□社会的関係に関する現実的な目標の設定

□集団の圧力やきまり悪さ、予期せぬ困難な課題への対処

□社会性の強みと弱みについて、現実に即して理解すること

□学校や職場で意欲を持ち、学習能力に自信を持つこと

□一部の分野では、他の分野と比較して容易に成功を収められる理由を理解すること

その他:

□時間のやりくりと管理

□空間と方向を間違えずに進むこと(例 左右の区別がつく)

□速さと距離を正確に判断すること(例 運転中)

□図表や地図の読み取り

□日々の課題を一貫して実行すること

□ある状況で学んだスキルを別の状況に適用すること

第六章:ディスレクシアの検査

子供がディスレクシアではないかと疑われる場合、評価を受けることで、問題のより深い理解と、対処方法の提案につなげられる。また、検査結果は、州及び地域の特別な教育サービスを受給する適格性と、大学での支援プログラムやサービスの適格性の判定にも利用される。

評価結果が、指導上の決定を下す根拠を提供し、どの教育サービスと支援が最も効果的かを決定するのに役立てられることが理想である。

ディスレクシアの検査は何歳で受けるべきか?

ディスレクシアの検査は何歳でも受けられる。使用される検査と手順は、年齢や現在抱えている問題によって異なる。例えば、幼い子供の検査では、音韻処理、受容言語及び表出言語の能力、音/記号を結びつける能力を見ることが多い。これらの領域に問題が認められれば、的を絞った介入が即座に開始できる。当然のことだが、読みの指導への早期介入のためにディスレクシアの診断を下さなければならない、というわけではない。

ディスレクシアの診断を下す資格があるのは誰か?

いくつかの分野について専門知識を持つ専門家が、ディスレクシアの診断に最も適任である。検査は、専門家が一人で、またはチームで行う。心理学、読み、言語学及び教育学の知識と経験が必要とされる。検査者は、読みの学習方法と、一部の人が読みの学習に問題を抱えている理由に関する実用的な知識を、十分に備えていなければならない。また、検査者は、評価データを管理し、解釈する方法と、読みに関する適切な介入の計画方法も理解していなければならない。

ディスレクシアの診断にはどのような検査が使用されるのか?

ディスレクシアの検査に使用できる単一のアセスメント手段はない。通常、評価特性や、その検査で照会事項に対応可能か否かを基に、一連の検査(あるいは下位検査)が選択される。さまざまな検査が使用されるが、優れたアセスメントの要素は常に同じである。口頭表出言語、文字表出言語、口頭受容言語、文字受容言語、知的機能、認知処理及び学業成績などの分野のデータ収集に、特に注意を払わなければならない。

評価には何を含めるべきか?

専門の評価者(あるいは専門家チーム)が、学習の問題が特に読みに関するものなのかどうか、あるいは注意欠陥多動性障害(AD/HD)、情緒障害(不安、鬱)、中枢聴覚処理の機能不全、広汎性発達障害及び身体または感覚機能障害などの他の障害に関連しているのかどうかを判定する、総合的なアセスメントを実施する。

ディスレクシアのアセスメントには、以下の要素を含めなければならない。

  • 発達、医療、行動、学業及び家族に関する履歴
  • 全般的な知的機能の測定(適宜)
  • 認知処理(言語、記憶、聴覚処理、視覚処理、視覚運動統合、推論能力及び実行機能)に関する情報
  • 読み書きの成功に関連のある特別な口頭言語技能の検査に、音韻処理検査を含める。
  • 読み方、綴り方、書き言葉及び算数の基本的な技能分野における機能レベルを判定するための教育検査

読み書きの検査には、以下の方法による評価を含めなければならない。

  • 実在語と無意味語の両方の単語解読
  • 文章の音読と黙読(速度、流暢さ、理解度及び正確さを評価)
  • 読解
  • 綴り方の書き取りテスト
  • 文章表現:文を書くことと、物語や小論文の作成
  • 手書き
  • 試行された改善プログラムのアセスメントを行うため、教室観察及び学童を対象とした言語科目カリキュラムの見直し

評価後、何が行われるか?

検査者とともに検査結果の検討が行われる。検査のスコアと検査結果の説明を記載した書面による報告書を受領する。実施された検査の名称が明示されなければならない。面談と検査データに基づく被験者の強みと弱みの説明と、具体的な提案がなされなければならない。

学齢期の児童・生徒の場合、評価終了後にチーム会議を開かなければならない。この会議には、児童・生徒の教師、親、検査者が参加する。

読みの問題がある場合、報告書で具体的な介入の技術を提案しなければならない。この介入は、研究に基づく明確な指導の訓練を特に受けた、熟練した教師によって提供されなければならない。

検査にはどのくらい時間がかかるか?

平均的な一連の検査は、およそ3時間かかる。特に、注意持続時間が短い、あるいはすぐに疲れてしまう、幼い子供の場合は、ときには2回以上に分けて検査を実施する必要がある。評価の範囲は臨床判断に基づく。

検査を受ける資格があるのは誰か?

個別障害者教育法(IDEA)では、公立学校に通う子供に対して、無料の検査と特別な教育サービスの提供を規定している。1973年のリハビリテーション法第504条と、障害をもつアメリカ人法(ADA)では、連邦政府が資金提供するプログラムにおける、資格基準を満たす個人に対する差別からの保護を規定している。これには、ディスレクシアと診断された個人も含まれる。

第七章:ディスレクシアに役立つ情報源

ディスレクシアについて、さらに情報を探しているのなら、学習障害のあらゆる側面に関するコンテンツ(動画ポッドキャスト)が満載の、LD.orgのホームページをチェックするとよい。以下のリソースは、ディスレクシアについてさらに学び、地域の支援を見つけることに役立つだろう。自分が住んでいる地域のプログラムを見つけるには、全米LDセンター(NCLD)のリソース・ロケーター(Resource Locator)が、常に利用できる。

  • ブックシェア(Bookshare):ブックシェアは、ディスレクシアやその他の障害のある人々のための、アクセシブルなオンライン図書館である。16万を超えるタイトルが利用可能で、学生の会費は無料となっている。
  • ミシガン大学のディスレクシア・ヘルプ(Dyslexia Help):ディスレクシア・ヘルプは、ディスレクシアと言語障害について理解し、学ぶ手助けをすることを目的としている。ディスレクシア当事者、親及び専門家向けの情報が豊富な、ディスレクシア・ヘルプのウェブサイトを訪問するとよい。ディスレクシアの有名人について知りたいと思ったことがあるなら、ディスレクシア・ヘルプの「ディスレクシア成功談(Dyslexia Success Stories)」のセクションを必ずチェックしてほしい。
  • キッズ・ヘルス(Kids Health)ティーンズ・ヘルス(Teens Health)のディスレクシアに関する記事:あなたは、ディスレクシアに関する年齢相応の資料を探している親や教育関係者だろうか? これらの記事は、子供や十代の若者の読みと発達のレベルに合わせた、ディスレクシアに関する基本情報を提供する。
  • アイ・ツー・アイ(Eye to Eye):アイ・ツー・アイは「さまざまな思考者のためのメンタリング活動」で、ディスレクシアやAD/HDなどの学習障害と診断された児童・生徒に、メンタリングプログラムを提供している。プログラムについてさらに詳しく学び、参加方法を知るには、アイ・ツー・アイのウェブサイトを訪問してほしい。
  • 国際ディスレクシア協会(International Dyslexia Association):国際ディスレクシア協会(IDA)は、ディスレクシア当事者とその家族、そして彼らを支援するコミュニティの支援を専門とする国際非営利機関である。最寄りの地域支部と連絡を取り、自分が住んでいる地域でIDA会員となっているサービス提供者を見つけ、ディスレクシアについてさらに詳しく学ぶには、IDAのウェブサイトを訪問してほしい。
  • ラーニング・アライ(Learning Ally):以前はレコーディング・フォー・ザ・ブラインド・アンド・ディスレクシック(RFB&D)として知られていたラーニング・アライは、75,000を超えるデジタル録音によるオーディオブック(教科書と文学作品の両方)を提供している。
  • ペアレント・センター・ネットワーク(Parent Center Network)‐ペアレント・センター・リスト:もし、あなたが幼稚園生から高校3年生までのディスレクシアの子供の親なら、このウェブサイトを見て、最寄りのペアレント研修情報センター(PTI)を見つけたいと思うだろう。PTIは、連邦政府による資金提供を受け、個別障害者教育法(IDEA)に基づき、親を支援し、その子供が特別な教育を受けたり、自らの権利を行使したりできるようにしている。
  • 『ザ・ビッグ・ピクチャー:ディスレクシア再考(The Big Picture: Rethinking Dyslexia)』(映画):新作映画『ザ・ビッグ・ピクチャー:ディスレクシア再考』(2012年10月テレビ初放送予定)のウェブサイトでは、映画のビデオクリップで、ディスレクシアの人々を支援する行動を起こす方法を紹介するとともに、ディスレクシアの児童・生徒とその親の励みになるアドバイスを提供している。
  • イェール大学ディスレクシアと創造性センター(The Yale Center for Dyslexia and Creativity):イェール大学のディスレクシアと創造性センターは、ディスレクシアの人々の強みを明らかにし、情報と実践的なアドバイス、科学研究に基づく最新の技術革新を普及し、ディスレクシアの子供と大人の生活を変革しようと努めている。同センターの最先端の研究についてさらに詳しく学び、親、教育関係者及びディスレクシア当事者への具体的な助言を得るには、同センターのウェブサイトを訪問するとよい。

第八章:動画:ディスレクシアとは?

学習障害の専門家であるシェルドン・ホロウィッツ(Sheldon Horowitz)博士が、ディスレクシアとLD当事者に対するその影響について、洞察に満ちた以下の動画の中で語っている。インターネットに接続済みの場合、クリックして動画を視聴できる。

第二部 ディスレクシアとともに生き、学ぶ

第九章:オーディオブックや電子書籍で子供の学習成果を上げられるか?

ディスレクシアのような学習障害(LD)のある子供は、自分が読む単語の理解に問題を抱えている。LDの原因は明確ではないが、知能の低さや学習意欲の不足によるものではないことが、今ではわかっている。

ディスレクシアは生涯にわたって見られる症状だが、早期診断と、親や教師の支援、電子書籍やオーディオブック及びその他の教材の利用により、子供の学習成果を高め、LDの問題にうまく対処できるよう、より入念に準備することができる。

現在、LDの子供は、(しばしばAIMと称される)アクセシブルな教材、すなわち、音声及び/あるいはデジタルフォーマットで提供される教科書や教材を与えられれば、学校で優秀な成績を収め、さらには読むことを楽しめるようになることが、研究によって証明されている。

デジタル書籍(または電子書籍)及びオーディオブックを使った読書は、多感覚に訴える方法(例 読むことと聞くことを同時に行う、電子書籍が各単語をハイライトするのに合わせて読み上げる)で、ユーザーをコンテンツに引き付け、ユーザーの学習経験を豊かにすることができる。

残念ながら、ディスレクシアなどのプリントディスアビリティのために読みに苦労している数千人もの子供達は、往々にして、読むことを楽しむ助けとなる支援へのアクセスを得られていない。

アクセシブルなフォーマットについて

アクセシブルな教材(AIM)とは、教科書及びその他の印刷教材の特別なデジタルフォーマット版で、視覚機能障害、全盲、身体障害あるいはディスレクシアによる読みの障害を原因とするプリントディスアビリティのある人々に配慮するために、特別に提供される。ディスレクシアの人々は、デジタルフォーマットを通じて、コンピューターの画面上で、あるいは機器を使用して、テキストを「見ながら」同時に「聞く」ことができるようになる。

AIMのフォーマットには、点字、音声、大活字、及びDAISY(アクセシブルな情報システム)と呼ばれる共通標準ファイルフォーマットによるデジタルテキストがある。DAISYはオーディオブックに使用され、録音された肉声や合成された電子音声を再生してユーザーが音声を聞けるようにする。デジタルファイルは、読み上げソフトを使用し、ユーザーがテキストを見ながら、おもにコンピューターの音声による読み上げを聞けるようにするものである。多くの子供は、テレビゲームやコンピューター及びその他の電子機器を使用しているため、コンピューター音声になじみがあり、快適に使用できる。

アクセスについて定めている法律

米国の特別な教育に関する法律である個別障害者教育法(IDEA)には、全米指導教材アクセシビリティ標準規格(NIMAS)についての記載がある。

NIMASの目的は、「印刷された教科書のアクセシブルな代替フォーマット版を、幼稚園入園前から高校3年生までの障害のある児童・生徒に提供する支援を行うこと」である。NIMASは、ディスレクシアなどの読みの障害のある児童・生徒に、電子フォーマットによる教科書及びその他の学校教材へのアクセスをどのように提供するべきかをめぐる、個別教育計画(IEP)チームの議論に役立てられる。

あなたの子供が読みの障害のために、IEPまたはリハビリテーション法第504条に基づく計画を作成してもらっているなら、AIM利用の適格性に関する設問があるかどうか見直すとよい。AIMの利用について適格とされなかった場合、学校側と面談し、学校教材の代替フォーマットと、それを使用するための技術(デジタルリーダー及び/あるいはソフトウェア)へアクセスする資格があると見なされない理由を、話し合う権利がある。子供にとっての最適な学習方法と、アクセシブルな教材の追加が、子供の学習能力と自信、学習にかかわる高揚感の向上のすべてに、ときとしていかに劇的な変化をもたらすことができるかを、学校側と話し合うのに遅すぎるということは決してない。

アクセシブルなオーディオブック及び電子書籍をどこで見つけるか

あなたの学校が、著作権で保護されている15万以上の図書と教科書を備えたオンラインデジタル図書館のブックシェア(Bookshare)(bookshare.org)や、7万を超えるデジタル録音及び肉声録音による教科書と文学作品を備えたオーディオライブラリーのラーニング・アライ(Learning Ally)(learningally.org)などの、アクセシブルなフォーマットの提供を専門とする機関の会員となっているか、尋ねるとよい。

どちらの機関も、プリントディスアビリティがあると認定された児童・生徒用のデジタルファイル/フォーマットを要求してきた学区及び学校にAIMを提供する機関として、アメリカ合衆国教育省に承認されている。両機関が連携して活動しているおかげで、いずれかの機関の会員「資格」を一度得れば、もう一方の機関の会員になることは極めて容易である。常にというわけではないが、一部の学校と学区では、これらの機関の一方または両方の利用資格のある子供の会費を負担してくれることがある。子供に最適の読みの解決策を決定するために、これらの機関を試しに利用してみることもできる。

以上が、AIMに関する情報と、ディスレクシアなどのプリントディスアビリティのある児童・生徒が、一般に学校や学区でAIMの利用資格があるとされなければならない理由である。さらに、デジタル(あるいは電子書籍)ファイルフォーマットについての情報が示され、AIMについてIEPチームと話し合うという提案がなされ、質の良い音声教材とデジタル教材をどこで見つけるかについても、明らかにされた。

音声合成(TTS)を使用した読みの技術の特徴と利点

現在、学習障害のある児童・生徒は、適切な読みの技術を利用したデジタルフォーマットや音声フォーマットを使えば、より深く理解し、流暢に読むスキルを得て、読むことができると示唆する研究がある。音声合成すなわちTTSを利用して、(コンピューター画面や携帯機器上で、単語や文がハイライトされるのを見ながら)コンテンツの読み上げを聞く経験は、「マルチモーダルな」または「多感覚併用の」読みと言われる。

今日のデジタル教育環境においては、学習はどこででも(教室内、家庭内あるいは戸外でも)行えるが、学習障害やプリントディスアビリティのある子供達を支援する、質の高い読みの支援技術プログラムが、いくつか存在する。

これらのプログラムには、カンビウム(Cambium)社のKurzweil 3000、テキストヘルプ(TextHelp)社のRead Write Gold、ドン・ジョンストン(Don Johnston)社のRead: OutLoudなどがある。また、ブックシェア(Bookshare)によって製作された、会員がデジタル図書をオンライン図書館からアップル社の機器にダウンロードして読むことができるRead2Goなどのアプリケーションを備えた、デジタルフォーマットを読めるiPadのような携帯機器(電子書籍リーダー)もある。ユーザーは、デジタルテキストを利用して、パラグラフやページ、章あるいは目次を自由に移動すること、また、以下を設定したり、好みに合わせて変更したりすることができる。

  • 壁紙
  • フォントサイズとハイパーテキストリンクの色
  • 男声及び女声の選択
  • 読み上げ速度
  • 読み上げのオン/オフ機能
  • ブックマーク

ソフトウェアと携帯機器の中には、内蔵スキャナーやグラフィックオーガナイザー、小論文作成用のノートテイキングツール、アウトライン作成のためのサポート機能、書誌データ作成機能、辞書、スペルチェッカー及びキーワード検索機能を備えているものもある。音声録音または音声認識機能、テキストの読み上げを、Acapela Voicesを使用して、スペイン語やその他の言語で聞くオプション(英語学習者に適したオプション)を備えているものもある。

一つ注意したいのは、今日でも、デジタルフォーマットの完全なアクセシビリティには限界があるという点である。グラフ、図表及び数学的概念などのすべての画像を、TTSを使用して正確に説明することができるわけではない。ブックシェアの親団体であるベネテック(Benetech)のDIAGRAMセンターによって製作された、POETと呼ばれる新たなウェブアプリケーションツールは、非常に大きな進歩を見せている。POETはオープンソースリソースで、DAISY図書の画像記述の作成を容易にし、画像記述のクラウドソーシングを可能にするものである。

知識を学び、受け取る、新たな方法

ナショナル・リーディング・パネル(the National Reading Panel)の2000年度報告書で、効果的な読みの指導に関する以下の3つの重要な要素が明らかにされて以来、読みの指導の効果的な手段としてのTTSに関する研究は、十分に立証されている。

  • アルファベット(音素認識とフォニックス)
  • 流暢さと理解(語彙、文章読解)
  • 読解法

AIMへの十分なアクセスを得られるLDやプリントディスアビリティの児童・生徒の数が増えるように、教師と、学校における支援技術の専門家に対し、電子書籍とデジタル技術の恩恵について意見を求めた。以下に、最も多かった回答の一部を紹介する。

より多くの親や教師との会話のきっかけとして、以下の点が注目されるだろう。

  • 新たな学習の可能性の世界を開く。
  • 学習のスタイルと好みに基づいた、柔軟性のある選択肢を提供する。
  • 自立、社会化及び個人の発達を促進する。
  • 解読の苦労を解消する。
  • 読み手の注意力持続時間をより長く保つ。
  • 学年相応レベルの読みやすさを確保する。
  • ノートテイキングと注釈を促進する。
  • 綴りを訂正する。

多感覚を併用した読みの経験は子供に役立つか?

もし、これが心に浮かんだ疑問なら、今こそ、あなたの子供を最も支援できるAIMと読みの技術を模索するときである。まず、子供にとって何が最もうまくいくか(方策とツール)を、特殊教育担当教師または科学技術に精通している教師、言語療法士(SLP)などの指導の専門家、読みの指導担当教師、あるいは支援技術専門家とともに調べることから始める。多感覚を併用した読みの経験と学びのユニバーサルデザイン(UDL)のベストプラクティスに学習者の参加を得るために、2004年個別障害者教育法(IDEA)のAIMに関する規定の順守、TTSを支える研究、教師が示すデジタルフォーマットの恩恵を指摘することもできる。

新たな会話への扉を開くことで、より多くの子供達が、質の高いデジタルフォーマット及び音声フォーマットと、今日存在する技術へのアクセスを得られるようになる。学力向上のための支援やツールを盛り込んだIEPやリハビリテーション法第504条に基づく計画が、子供に必要か否かを判断するには、アクセシブルなカリキュラム(例 図書、文献及び教科書)について問い合わせるとよい。おそらくあなたは、電子書籍を読むプログラムや、親を対象とした技術ネットワークを立ち上げたり、本書に書かれている電子書籍の恩恵についてツィッターでつぶやいたりし始めるだろう。今日あなたがとる措置によって、あなたの子供やLDを抱えている人が皆、必ずや学習成果を上げ、有意義な読みの体験を楽しめるようになるだろう。

追加情報

教育への技術導入センター:学びのユニバーサルデザイン(the Center for Implementing Technology in Education(CITEd): Universal Design for Learning)

全国アクセシブル指導教材センター:支援技術研究(the National Center on Accessible Instructional Materials: Assistive Technology Research)

ベネテック(Benetech)DIAGRAMセンター

支援技術についてさらに詳しく学ぶには、こちらをクリック

第十章:ディスレクシアの児童・生徒への配慮

さまざまな場面で、ディスレクシアの児童・生徒の指導が困難なことがある。次にあげるのは、普通教育及び特殊教育担当教師が、性質の異なるさまざまな学習者から成る教室内で利用できる配慮である。

双方向型指導に関する配慮

児童・生徒の注意を引き、一定時間参加させるには、多くの指導技術と管理技術が必要である。双方向型指導活動の成功を促進する配慮は、以下のとおりである。

  • 指示を繰り返す。指示に従うのが難しい児童・生徒には、自分の言葉で指示を繰り返すよう求めることが有効な場合が多い。
  • 日課を続ける。学習の問題を抱えている児童・生徒の多くは、期待されていることを知り、実行するために、日課のシステムを必要としている。
  • 児童・生徒にグラフィックオーガナイザーを提供する。アウトライン、チャートまたは白紙のウェビング図を児童・生徒に与え、説明を聞きながら書き込めるようにする。これは、児童・生徒が重要な情報を聞き取り、概念や関連情報の関係を理解する助けとなる。
  • 段階的な指導。新しい、あるいは難しい情報は、細かい段階に分けて、順次提示する。これは、部分から全体へと学びを広げていく明示的な指導が必要な、事前の知識が限られている学習者に有効である。
  • 言語情報と視覚情報を同時に組み合わせる。言語情報は、視覚的表示(オーバーヘッドプロジェクターやプリント)とともに提供するとよい。
  • 重要なポイントや言葉を板書する。教師は、新たな語彙や重要なポイントを説明する前に、黒板やオーバーヘッドプロジェクターに書くとよい。
  • 説明と活動のバランスをとる。口頭による説明と視覚情報及び参加型活動のバランスをとるよう努めなければならない。また、大グループ、小グループ及び個人による活動のバランスもとらなければならない。
  • 日々の振り返りを重視する。過去の学習や授業を日々振り返ることは、児童・生徒が、事前の知識と新たな情報とを結びつけるのに役立てられる。

児童・生徒の成績に関する配慮

児童・生徒がさまざまな方法で回答する能力には著しい差がある。例えば、口頭でのプレゼンテーション、ディスカッションへの参加、文字と数字の筆記、パラグラフの執筆、事物の描画、綴り方、騒々しい、または雑然とした場での作業、速いペースで読み書きや話をする能力は、児童・生徒によって異なる。さらに、視覚・聴覚フォーマットで提示された情報の処理能力も、児童・生徒によって差が見られる。児童・生徒の成績を上げるには、以下の配慮を利用できる。

  • 回答方法を変える。微細運動を伴う回答(書字など)が困難な児童・生徒には、下線を引く、複数の選択肢から選ぶ、並べ替える、あるいは印をつけるなど、回答方法を変更するとよい。微細運動に問題がある児童・生徒には、ワークシート上の回答欄を大きくしたり、個人用の黒板に回答を記すことを許可したりするとよい。
  • グラフィックオーガナイザーの使用を促す。グラフィックオーガナイザーには、資料を視覚フォーマットにまとめる機能がある。
  • 課題ノートやカレンダーの使用を促す。児童・生徒は、課題の提出日や学校関連の活動のリスト、試験日を記録し、学校の勉強に関する予定を記すためにカレンダーを使うとよい。また、課題ノートやカレンダーに特別なセクションを設け、宿題の記録に使うべきである。
  • 情報や活動内容をプリントやワークシートに記載し、書き写すことを減らす。
  • 児童・生徒には、罫線入りの紙を縦にして算数・数学用に使わせる。罫線入りの紙を縦にして使えば、算数・数学の問題で筆算をするときに、数字の桁を常に正しく書くことができる。
  • 重要な項目を示すために手掛かりを使う。評価で重視される質問や活動は、アスタリスクや矢印で示すとよい。これにより、児童・生徒は、試験や課題に取り組む際に、適切に時間配分することができる。
  • 階層的なワークシートを考案する。教師は最も簡単な問題から最も難しい問題へと順に並べたワークシートを作成するとよい。早い段階での成功が、児童・生徒の活動への取り掛かりに役立つ。
  • 教育支援の利用を許可する。児童・生徒が文字や数字を正確に書けるように、一覧表を与えるとよい。児童・生徒が数学的手法を一度理解してしまえば、数直線、計数器及び計算機が計算に役立てられる。
  • 作品の見本を展示する。児童・生徒が期待されている内容を理解し、それに基づいて計画を立てられるように、完成した課題の見本を展示するとよい。
  • 仲間との協同学習を利用する。教師は能力段階の異なる者同士をペアにし、ノートの見直し、試験勉強、相互音読、物語の創作、実験などを行わせるとよい。また、読みの問題を抱えている児童・生徒が問題を解けるように、パートナーが算数・数学の問題を読んでやることもできる。
  • 作業時間に柔軟性を持たせる。作業が遅い児童・生徒が筆記課題を完成できるように、時間を延長するとよい。

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第十一章:宿題攻略法 入門編

あなたの子供がディスレクシアなら、宿題は特に面倒なことになる可能性がある。座って宿題をやる時間になると、児童・生徒の読み書き及び/あるいは綴り方との苦闘が、時間の配分や管理などの難しさと重なるのだ。これが、児童・生徒にも、またその親にとっても、どれほどストレスになるかは容易に理解できる。しかし、ディスレクシアやその他の学習障害のある児童・生徒にとって、宿題が日々の闘いである必要はない。あなたの子供が、家族全員が抱える宿題のストレスを減らすスキルとシステムを築けるよう支援するには、以下のアドバイスを読むとよい。

学校と家庭の組織化

  • 学校に本/ノートを忘れてしまうリスクをなくすために、教師に1日の終わりに子供とチェックしてもらう。ロッカーを使用している子供には、毎日宿題をしまうときに気をつけること思い出せるように、リストをタイプした色紙をかけておく。また、子供のスケジュール帳の表紙に、小さなインデックスカードをテープで貼るのもよい。
  • 家庭と学校の間のコミュニケーションシステムの確立を進める。

宿題の組織化

  • 宿題をする場所と必要な学用品を選ぶ。宿題が終わったら、すべての資料/学用品を、所定の場所に戻すよう子供に求める。
  • 子供が宿題を避けないよう支援する。いつ、どのようにして宿題を仕上げるか、子供と一緒にルール作りに取り組む。例えば、好きな教科から始めるべきか? 一つの課題が終わるごとに休みを取るか? どうしたら子供は勉強を再開する時間だとわかるか?(「ジョハンナ、念のため言いますが、休み時間はあと2分だけですよ」などの言葉かけで思い出させる。また、タイマーは、勉強を再開することを子供に思い出させるのに大変効果的である。)勉強しているときに許容できる刺激と許容できない刺激は何か? 宿題をどのように仕上げるかは、宿題を仕上げることと同様に重要である。
  • 週末の宿題については、金曜日の晩に取り掛かるよう子供に促す。これは極めて重要である。頭の中の情報が新鮮であるだけでなく、本の忘れ物やプロジェクト用の資料の購入など、不測の事態に対する計画を練る時間が十分に取れるからである。
  • 自分に問いかける。「教師は、我が子に最適な宿題と指示を出しているか?」もし、そうでなければ、教師に懸念と意見を伝えることをためらってはならない。
  • 子供が学校を休んだら、子供自身が翌日の宿題について責任をもって調べられるように手助けをする。教室での指導がなければ宿題を仕上げられないこともあるかもしれないが、それでも、その日のうちにクラスメートに電話したり、教師に電子メールを送ったり(この選択肢が利用可能な場合)させて、子供にフォローさせるとよい。このようにして身に付けたスキルは、小学校中学年までには非常に重要になり、当然、中学校でも同様に重要となる。さらに、これにより、子供が学校に復帰する際に、不安を最小限に抑えられる。
  • 服薬中の子供については、その薬が可能な限り最適な効果を上げていると子供が感じているかどうか、自分自身と子供に問いかける。専門家とともに、変更が必要か否かを判断する。

学習の強化

  • 子供のニーズ領域(例えば、組織化、不注意、理解、解読)を深く理解し、学習を促進し、強化する適切なテクニックを見つける手助けをする。学年度の早い時期に、子供の学校及び/または民間部門に、有効な方略を提供できる専門家を配置する。
  • 一般に、参考書やワークシートよりも、学習カードやインデックスカードの方が簡単である。子供自身に、一方の面には単語や概念、または質問を書かせ、もう一方の面には答えを書かせる。カードに書き出す行為が、記憶を強化することで学習を促進する、もう一つの機会となる。
  • 教室内で使われる資料に追加し、これを補足するために、インターネットを利用する。
  • 考えを導き出すのが難しい子供には、単語のリストを作り、その中から選べるようにする。同様に、子供に考えを比較し、対比するよう求める。作文が困難な子供には、いくつかの方法がある。まず、自分の考えを口頭で言わせる。作文を書く前に、ウェビング図のワークシートや、昔ながらの矢印を使ったアウトラインを利用する。子供に、これらのリスト/チャート/ウェビング図/見出しを参照し、詳細は最小限(幼い子供の場合は2、3個、年齢が高い子供の場合は4個から10個)に抑えるよう促す。
  • 学習を強化するもう一つの手段として、ビンゴやロットボードなどのボードゲームの制作を検討する。開いたマニラフォルダーが、ボードとして利用できる。インデックスカードを問題用紙として使用し、硬貨をプレーヤーの駒にするとよい。お金もかからず、簡単だが、家族の時間に大いに貢献してくれる!
  • 模擬試験を行う。学校で2、3週間過ごせば、教師の試験方法がわかるだろう。教師の試験方法に似せた模擬試験は、質問される可能性のあることを「経験」する機会を子供に与える。
  • 勉強会を検討する。少し年齢が高い子供の場合、2、3人での勉強会が非常に有効で、学習をより楽しくすることができる。

最終的な目標は、特別なニーズのある学習者に、好ましい学習習慣を身に付けさせ、準備と予測をさせ、不必要な遅延を避け、課題への取り組みを続けさせることである。当然のことながら、教育組織、宿題及び学習戦略に関しては、長期的なコミットメントが必要である。最も重要なルールは、子供にとって最適なシステムを見つけることである。これはしばしば、最適なシステムを見つけるまで、何度も試行することを意味する。皆のストレスを最小限に抑えながら、子供に達成感と進歩を感じさせるには、親の支援が大いに有効だと言える。

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第十二章:当事者活動はどのように革新へとつなげられるか:ベン・フォス(Ben Foss)とのインタビュー

ベン・フォスは、以前はインテル(Intel)社のアクセス技術ディレクターであった。現在は、特異的学習障害のある人々及びその他の印刷されたテキストを読むことに困難を抱えている人々のためのツールを製作するチームを指揮している。ベンのディスレクシアとしての経験が、自分以外の読みの障害のある人々の情報へのアクセスを支援する新たな方法を見つけたいという動機となった。ベンはまた、学習障害のある人々がお互いに連携する新たな機会を作ることにも熱心に取り組んでいる。ベンはスタンフォード大学でMBAと法学の学位を取得した。

NCLD:学習障害だと最初に診断されたのはいつでしたか? ご両親はその情報をあなたにどのように伝えましたか?

ベン・フォス:小学校1年生のときに診断されました。学校に呼び出されて、ティッシュ箱が載った机の前に座った母は、ワッと泣き出しました。そしてこう言いました。「何かあると思っていました。それで、どうしましょう?」学校側は、新たな資金を得たばかりだと説明しました。ちょうどその頃、個別障害者教育法(IDEA)関係の最初の資金が、各学校に届いていたのです。それで、学校側は僕に特別な教育を受けさせたいと考えました。

両親は僕に対してとても率直で、あえて僕を話し合いに参加させました。ディスレクシアがどういうことか、つまり、それは僕が読むことに問題を抱えているということで、頭がよくないということではないと話してくれました。また、綴り方のテストに失敗して怒っているときや、読書の時間にずっと一人ぼっちで座っていなければならないことに悲しくなったとき、自分の部屋ではかんしゃくを起こしてもいいけれど、つまり、物を投げたり、自分の持ち物を壊したりしてもいいけれど、学校やほかの場所では礼儀正しくしなければならない、という約束をしました。このおかげで、勉強すると覚悟を決めて学校に姿を見せる一方で、イライラを発散する場所ができました。

NCLD:自分がディスレクシアであることを人に知られたくない時期があったのですね。どうして気が変わったのですか、また、ディスレクシアについてもっとオープンになろうと決心したとき、どんな気持ちがしましたか?

ベン・フォス:小中学校の間は、命がけで隠していました。大学では、秘密の配慮をしてもらいました。作文の先生といい関係を築いて、座って僕の論文を朗読してもらい、間違いのチェックを手伝ってもらったのです。ただ、このために問題が2つ発生しました。僕は、必要な支援よりも少ない支援しか受けられませんでした。つまり、テープに録音した本が役立てられるのに、僕は教科書と格闘して夜更かしをしていたということです。もっと重要なことには、僕はこれを恐ろしい秘密として抱え込んでいて、それを隠すには精神力が必要でした。

最大の転機は、スタンフォードのビジネススクールにいた頃にやってきました。そこで僕は、マーク・ブリームホルスト(Mark Briemhorst)という、両手のない、同期のMBA候補生と出会いました。

マークは僕に、障害のある人の委員会に参加して、僕達の学校の将来のリーダー達に、職場での障害にはあらゆる形態があることを説明するよう勧めてくれました。僕はマークから、障害のある一人の人間としての自分の扱い方について、周りの人に事情を説明することが重要だと学びました。マークは学校の皆に、「やあ、僕はマークです。両手がありません。僕に会ったら、手首を持って握手してください。クラスで僕を見かけても、バッグを持ち上げるのに、助けはいりません。そもそも僕が自分でバッグを運んできたのですから…」などと説明するメールを送っていました。このことで、自分がどんな人間か、何が必要かを説明すれば、周りの人は普通、それに対して心を開いてくれるのだとわかりました。もし心を開いてくれなければ、それはその人達が解決するべき問題なのです。

NCLD:自分自身のニーズを主張することに、初めて積極的にかかわるようになったのはいつですか? 学校生活の早い段階で、当事者活動の重要性を理解するのに役立った特別な経験はありましたか?

ベン・フォス:僕は、自分に起きたことについて話す権利があると、早くから教えられました。自分が何の服を着たかということでも、いつ寝たかということでもいいので、家族は僕に、自分の世界がどんなふうになっているのか、話をさせました。学校では、親と先生方の会議にはすべて招かれました。自分の意見を主張するのは、ときにはつらい決断でした。中学時代、代数でDを取ったときには、翌年一生懸命勉強するなら進級できると言われました。でも僕は留年することに決めました。代数をマスターすることは、将来の数学の授業すべてに重要だとわかっていたからです。

ロースクールに入ったとき、配慮を受ける権利のために立ち上がる真の力を身に付けました。多くの場合、学校は配慮を提供する義務があることを知っています。でも、あなたに何が必要なのかはわかっていません。ロースクールの1年生のとき、TTSソフトを使ってコンピューターで読み上げるのに加えて、誰かに論文を朗読してもらう許可を得る交渉をしました。誰かに、作文の中のcouncilとcounselのような同音異義語を指摘してもらわなければならなかったからです。僕は何度も学生部長達と面談をし、これ以外の支援を得るためにこの支援者に頼ることはしていない、という誓約書に署名しなければなりませんでした。

NCLD:LDの人にとっては、「支援コミュニティ」を築くことが重要だとわかっています。学生時代、あなたの支援コミュニティはどんなふうでしたか、それは今もあなたにとって、貴重な支援になっていますか?

ベン・フォス:支援には多くの形があります。理想としては、まず家族です。母と、父と兄(弟)は、戦略を練る相談役になってくれました。大学では、一部の人に自分の経験を知らせました。例をあげたり、具体的なエピソードを紹介したりすることが重要でした。「僕はディスレクシアなんだ」と言う代わりに、「書類は家にファックスして、母に読んでもらうんだ」と言いました。こうすれば、周りの人の印象に残る、具体的な詳しい内容が伝えられます。

一番見つけるのが難しいのが、自分以外のLDの人達のコミュニティです。僕達のことは、はたから見てもわかりません。ただし、タイムズスクエアを見回して、1万人の人が目に入れば、そこには1000人以上のLDの人がいる可能性があることは指摘しておきたいですね。ヘッドストロング(Headstrong)(headstrongnation.org)のようなオンラインコミュニティや、キャンパスのメンタリングプログラムで見つけることが重要です。コミュニティ参加者の間には、特別な絆があります。共通の経験と難しい問題を抱えていて、同じ場所からの移民者のようにかかわりあっています。郷土料理を思いつくことさえできれば、パスポートの申請だってできるでしょう。

NDLD:ディスレクシアにもかかわらず、あなたはホワイトハウスの国家経済会議(National Economic Council)や、児童擁護基金(the Children's Defense Fund)で働いた経験がありますし、スタンフォードで大学院の学位も取得しています。日々のLDの課題にもかかわらず、成功するために必要な自信をどのようにして身に付けたのですか?

ベン・フォス:「ディスレクシアにもかかわらず」というのは間違いです。「ディスレクシアのおかげで」、僕はこのような専門的な環境でうまく働けたのです。僕は、学術的な場面や専門的な場面で、何が問題になっているかに注意を払うことを学びました。自分は本1冊全部を読むことはできないとわかっていたので、優先順位をつけ、一番重要な章だけを読みました。ホワイトハウスでは、皆十分な時間がありませんから、優先順位をつけたり、人に任せたりすることが重要です。また、人を巻き込むことや、その人の役割を理解することも学びました。僕はこの方法で、小学3年生をうまく切り抜けたのです。普通教育の担任ではなく、支援室の先生が、綴り方のテストに合格するための切符だとわかりましたから。同じことが、児童擁護基金についても当てはまりました。例えば、僕の予算請求を支持してもらうには、組織の専務取締役ではなくて、予算担当の取締役が重要なわけです。

NCLD:インテル・リーダー開発プロジェクトのマネージャーとして、この革新的なツールを開発するおもな目標は何でしたか? また、このツールが、読みを支援する他の支援技術と異なる点は何ですか?

ベン・フォス:今あるツールには不満がありました。自分が使える音声フォーマットの本を手に入れるために、3週間待ったものです。しかもこれは、スタンフォードという、資金が豊富な名門校でのことでした。僕はその場で読めるようにしたいと考えました。インテル社で2006年に、カメラとコンピューターを使った再生機器の開発に取り掛かりましたが、印刷されたテキストを自分で自由にオートフォーカス撮影したり、聞いたりできるシステムを作れることに気づきました。僕の総合的な目標は、最高の技術を、それを必要とする人に届けることです。インテル社は素晴らしい科学者がスタッフにいて、その人達と一緒に技術的な問題の解決に取り組むことで、自分で持ち運びできるものが開発できました。これは、フラットベッドスキャナを持ち歩かなくても、教室でプリントを読んだり、レストランでメニューを読んだりと、出先で読めるということです。

NCLD:一人の大人として、あなたはディスレクシアの人達の熱意あふれる代弁者であり、当事者活動の重要性を熱心に広めてきました。あなたの組織、ヘッドストロングについて教えてください。

ベン・フォス:ヘッドストロングは2003年に立ち上げました。学習障害についての役に立つ情報がすべて本に書かれていたことに不満を持っていたからです。これは、車いすの人達の会議を上階で開くと言っているようなものです。僕達はこのような情報を、映像など、LDのコミュニティの人達が使えるフォーマットに変換しています。また、ディスレクシアにかかわる訴訟で初めて市民権を勝ち取った人物に関する映画、『ヘッドストロング(Headstrong)』 を製作し、国内で賞を取りました。

この映画は、ヘッドストロングのウェブサイトで、無料で視聴できます。また、ウェブサイトには、ディスカッションフォーラムや支援に関する情報もありますし、ボタンをクリックすれば内容を読み上げてくれます。公共政策と市民権の問題の観点から、組織を全面的に見直しているところです。

学校で適切な配慮が受けられていれば、高校の卒業証書を手に入れることができ、何人の人が刑務所に入らずに済んだでしょうか? LDの人が職場で必要なことを要求できるように訓練を施していたら、この国の経済は、今よりどれだけ多くの仕事を創出できたでしょうか? これらは、僕達が問うべき問題です。

NCLD:LDの子供を持つ親に向けたアドバイス、ベスト5は何ですか?

ベン・フォス:

  • LDについて知っていることを、早い時期に、たびたび子供に話してください。子供の関心を引き、数を教え、自分は賢くて、よくできるようになると励ましてください。
  • 子供のために、LDの正式な診断を得てください。学校の教育心理学者または学習専門家が、適切な支援を示すことができます。学校側が検査を望まない場合は、自分で診断書を得る方法を探してください。これには高い費用がかかる可能性がありますが、サービスの受給、子供特有のプロフィールの理解、試験で配慮してもらうための症歴の証明に、非常に重要です。
  • 録音図書や読み上げ機能付きコンピューターなどの支援技術を、早くから多用してください。子供を言語に多く触れさせ、必要となるツールを使いこなせるようにするのは、学年相応のレベルを保つことに役立ちます。マイクロソフト社のWindowsには、基本的な読み上げエンジンが内蔵されています(コントロールパネルの「スピーチ」を参照)。アップル社のコンピューターも同様です。これで試してみることができますし、気に入るかどうか確かめられます。設定には10分かかりますが、子供は電子メールやウェブサイトを、すぐにその場で読めるようになります。
  • LDコミュニティの中で子供の相談相手を探してください。その人達に、headstrongnation.org/documentaryの映像を見せてください。学校のほかの親達に働きかけたり、地元のカレッジのメンタリングプログラムを探したりしてください。
  • 子供にとって最高の目標は自己決定です。私の両親は私に、イェール大学へ行けるとか、ノーベル賞を取れると言ってくれました。私達の中には、素晴らしいことを成し遂げられる人もいれば、成し遂げられない人もいます。しかし重要なのは、どんなふうになるかを決めるのは、LDの人自身でなければならないということです。子供には、自分が運命の主体者だと考えるよう教えてください。

NCLD:LDの十代の人と大人に向けた具体的なアドバイスは何ですか?

ベン・フォス:カミングアウトしてください。ためしに自分のことを皆に知らせてみて、この問題を隠さなければどんな気持ちがするかを知ることがとても重要です。怠けているとか頭が悪いと連想されるような部類に自分が入ると打ち明けるのは、怖いことでもあるでしょう。僕はそんな心の痛みを感じてきました。スタンフォードロースクールで論文を出した日、あるクラスメートが教務課で大笑いしました。僕の論文の題に学習障害という言葉があったからです。「奴らは何も考えをまとめられないんだぜ!」僕は彼をじっと見て、自分には学習障害があると説明しました。彼はきまり悪がって、謝ってくれました。彼と一緒に笑って隠すこともできたでしょう。でも、それでは自分を傷つけることになります。ここで大事なのは、自分の経験を受けとめてくれる人のコミュニティを見つけることです。自分の経験について、親友に話して下さい。兄弟姉妹に話して下さい。少しずつ努力して、信頼のおける一人の先生に話せるようになってください。そうしたら、新しい先生も試してみるのです。詳しいことを伝える、正直な、自分にとってうまくいくシナリオを作って、練習してください。だんだんと知らない人にも、それについて気楽に話せるようになるでしょう。そうしたら、LDを抱えているほかの人達がやって来るようになって、何かもっと大きなことに参加できるようになるでしょう。それは気持ちのいいことだし、それこそが、あなたが受けられる一番重要な配慮なのです。

ディスレクシアに関するカミングアウトの一例として、僕が文章を書くとどんなふうになるか、生の原稿をお見せしたいと思います。下にあげるのは、最後の質問に対する僕の回答で、スペルチェックは受けておらず、自分で文法を直せるように、TTS(スティーブン・ホーキング(Steven Hawking)の声を思い浮かべて下さい)に3回復唱させて、何とか完成させたものです。今回のような公開フォーラムでは、LDではない人が編集してくれた原稿も用意されています。僕がこういうことにかかわるようになったきっかけをわかっていただくために、下の生原稿をご覧ください。そして、これは今も変わっていないことを思い出してください。僕はスタンフォードの法学士/MBAの学位を持っていますが、綴り方はひどいということを。

…カミングアウトしてください。ためしに自分のことお皆に知らせてみて、この問題を隠さなければどんな気持ちするかを知ることがとてもじゅようです。怠けているとか頭が悪いと連想されるようなぶるいに自分が入ると打ち明けるのは、こわいことでもあるでしょう。僕はそんな心の痛みかんじてきました。スタンフォードロースクールで論文出した日、あるクラスメートが教務科で大笑いました。僕の論文の題に学習障害という言葉があっただからです。「奴らは何も考えをまとめられないんだぜ!」僕は彼をじっと見て、自分には学習障害があると説明しました。彼はきまり悪がって、誤ってくれました。

彼と一緒に笑って隠すこともできたでしょう。でも、それでは自分を傷つくことになります。ここで大事なのは、自分の軽験を受けとめてくれる入のコミュニティを見つけることです。自分の経験について、親友話して下さい。兄弟姉妹話して下さい。少しづつ努力して、信頼のおける一人の先生に話せるなってください。そうしたら、新しい先生も試してみるのです。詳しいことを伝える、正直なら、自分にとってうまくいくシナリオを作て、練習してください。だんだんと知ない人も、それについて気楽に話せるようになるでしょう。そうしたら、LDを抱えているほかの人達がやって来るようになって、何かもっと大きなことに三加できようになるでしょう。

訳者注:以下の原文で誤っている箇所にできるだけ近い所で間違った記述にして翻訳している。
(It is criticla they you experiment with being public about who you are and see what ifeels like not to hide on this issues. It canbe scary to tell people that you are of part of a lable that is associated with being lazy or stupid. I have fel this sting. The day I turned in mt thesis at Stanford Law School, a classmate laughed outloud at the registers office bcause I had the term learning disabilities in my title. "They can;t articulate anything!" I looked at him and explained that I had a learning disabilities. He was embarrassed and appologized.

I could have laughed with him and hid, but I woud have been doing damamge to myself. The key to this is finding a community of peopel swho get you experieicne. Tell you best friend about your experience. Tell you syblings. Work you way yo to telling a teacher you trust. Then try a new teacher. Reherse and develo pa script that tells specifics, if honest and work for you. Eventually, you will be comfortable talking ro stragers about it. And then other people with LD will start coming to you, alloing you to be lart of something larger.)

『LD権利擁護活動ガイド(LD Advocates Guide)』のダウンロードは、こちらをクリック

第十三章:ディスレクシア:障害ではあるが、限界ではない

2012年、アン・フォード(Anne Ford)奨学生のシルヴィア・オルティス-ロザレス(Silvia Ortiz-Rosales)(右写真)は、自分のことを「知識と成功を渇望」していると説明した。小学4年生のときにディスレクシアと診断されると、シルヴィアは、LDのせいで学業や個人的な成功を妨げられるということがないようにしようと心に誓った。以下は、シルヴィアの話である。

先生が黒板の所へ歩いていき、課題を書き始めました。今晩は簡単でした。アカウントにログインして、名前を登録すること。家に帰ったとき、良い印象を与えたいので、早く名前を登録したいと考えました。驚いたことに、画面には、私が入力したパスワードは間違っているという言葉が赤で表示されました。何度か試してみて、先生はクラスに間違ったパスワードを伝えたに違いないという結論に達しました。

次の日、授業の後で先生の所に行くと、先生は困っているように見えました。先生は私に、どうして登録できなかったのかを尋ね、私は、もらったパスワードではうまくいかなかったからだと言いました。先生は私の課題表をチェックしました。そこには課題がすべて書き留めてありました。先生は私に言いました。「シルヴィア、黒板に書かれていたパスワードは、w4kogではなくてm4kogですよ。こんなに不注意ではいけませんね。」私は黒板を見上げ、先生が正しいと気づきました。

こんなふうにちょっとしたことなのです。学校の課題をするときは、いつも時間をかけてしなければならないと、自分に思い出させてくれるのは。もっと幼い頃は、学校で苦労しました。私が同級生と同じペースで学習していないことに先生が気づいたのは、小学4年生のときでした。試験を受けるのは、私にはとても難しいことでした。学校ではほとんどの時間を、先生が話していることを理解しようとするのに費やしていました。試験や小テストには、平均して同級生の2倍の時間がかかりました。学校側は、母と面談した後、私に学習障害があるかどうか調べるために、私を学習センターに送ることを決めました。そして、私はディスレクシアで、聴覚処理の方法が異なっていることがわかったのです。

当然のことながら、小学4年生だった私には理解できませんでしたし、それが重要だとも思いませんでした。でも、年齢を重ねるにつれ、教材を理解するために、同級生よりも一生懸命勉強しなければならないことに気づき始めました。母は私がディスレクシアであることを責めるようになりました。しばらくの間、私は周りと同じことをして過ごし、学校では成功する必要はないと考えるようにしていました。でも、成績が悪いのはディスレクシアのせいだという考えを、家族が押し付ければ押し付けるほど、私は家族が間違っていることを証明したいと、強く願うようになりました。

ある日、もう我慢できなくなりました。私は必死に勉強し、学校で理解できなかった教材を自分自身で学ぶ別のテクニックを編み出すことを始めました。単純な技と、詳しい背景をインターネットで検索することで、物を記憶することがどれほど楽になるかを学びました。また、正確かつ的確であることは、一番に仕上げることよりもずっと重要だと気づきました。私が通っていた聖ジョセフ・ノートルダム高校が配慮してくれたおかげで、ついに、課題や試験、そして小テストをすべて正確に完成させるのに必要な時間をとってもらえるようになりました。学習障害を受け入れるようになってから、私は素晴らしい資質を得ました。障害があっても挑戦し続け、適応し、学習する能力を身に付けたのです。ディスレクシアと聴覚処理の違いを克服する最善の方法は、それらを受け入れて、自分は同級生と競争できるとほかの人達に示すために、努力することです。また、助けが必要なときに、それを求めるのは何も悪いことではないと学びました。そして、集中力のおかげで、周りの期待を超え、学習障害に足を引っ張られることはないと示すことができました。

私は意欲的な人間になりましたし、そのことに誇りを持っています。私はたくさんの授業を飛び級で取っていますし、課外活動にも数多く挑戦していますが、大学は、さらに多くの参加の機会を与えてくれるでしょう。新しい人と出会い、新たなコミュニティの活発な一員になることへの期待以上に、心躍ることはありません。これからの数年間、自分自身を常に駆り立てて行かなければなりませんが、私はそれを、とても楽しみにしています。私は成功します。知識と成功を渇望していることが、大学への私の熱意に火をつけています。学習障害と闘いながら、家族の中で初めて大学に通うことになった「第一世代」の大学生として、私は、ディスレクシアが足を引っ張ることはないと世界に証明したくてたまらないのです。私は、ディスレクシアは限界ではなく、意欲を持ち続けるために与えられた障害にすぎないことを証明するという希望を支えに、勉強を続けていくつもりです。大学は難しいことは知っていますが、大学生活がもたらしてくれる新たな機会を喜んで受け入れていきます。

私は、高校を卒業したら、カリフォルニア州立大学イーストベイ校の学生になります。大学ではジャーナリズムを勉強したいと考えています。書くことは、私が常に楽しんできたことです。周りの人はしばしば、「あなたはディスレクシアだから、書くこともできないはずです。ディスレクシアの人は、読めないと思っていましたが?」とコメントして、私の読み書き能力を疑ってきました。でも私は、自分が読み書きの両方とも、かなり得意であることに気づきました。多くの人よりも時間は長くかかりますが、私は読み書きを楽しんでいます。去年は、驚いたことに、学校から英語に関する表彰状をいただきました。暇なときには、さらにスキルの上達をはかるため、新しい創造的な方法で書くことに努力しています。人生に挑戦するテーマの文学作品がとても好きなので、それらを読んで、自分なりの解釈をしています。ブログではいつも、ディスレクシアの困難な課題を、日々の苦労とあわせて紹介しています。

ジャーナリズムの職を求めることで、最終的には、自分が書いた文章を一般の人に読んでもらいたいと願っています。私の文章が、学習障害のあるほかの学生にとってアクセシブルになり、今度はその学生が、障害を乗り越える努力をする気になってくれれば幸いです。年齢にかかわらず、皆さんに私をお手本としてもらい、何らかの学習障害と闘っている人達の権利を守る活動をしてほしいと願っています。私は学習面で人と違う点がありますが、人生にどんな困難が降りかかってきても、さらに多くを求め続けていきます。

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原文の「The Dyslexia Toolkit : An Essential Resource Proviede by the Nathional Center for Learning Disabilities」は、Nathional Center for Learning Disabilities の以下のページからダウンロードできる。

Dyslexia Toolkit By NCLD Editorial Team