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NIMASおよびNIMACを通して読むことに困難がある生徒にアクセシブルな教材の提供:家族と教師のための概要

抄訳

ジョアン・カージャー(Joanne Karger)法務博士、教育学博士
2012年1月16日

出典: The Provision of Accessible Instructional Materials to Students with Print Disabilities through NIMAS and the NIMAC: A Brief for Families and Educators
http://aim.cast.org/learn/aim4families/nimas_nimac_families_educators

全国アクセシブル指導教材センター(National Center on Accessible Instructional Materials:NCAIM)の支援を受け、特殊技術応用センター(CAST)と連邦教育省特殊教育プログラム局(OSEP)の共同契約(No.H327T090001)のもと執筆された。本報告書に示された意見は必ずしもOSEPの方針または立場を反映させたものではなく、教育省の公式な承認を意味するものではない。

個別障害者教育法(IDEA)およびごく最近、落ちこぼれ防止法(NCLB)として再承認された初等・中等教育法第一章(Title 1)は、障害のある生徒がすべての生徒を対象に設定された高い教育水準に達するための指導を受けられるようにし、障害のない生徒に対して提供される一般教育課程に同様に参加する機会を得られるようにすることを義務付けている。しかし印刷物を読めない障害がある生徒については、印刷教材が一般教育課程への参加を阻む壁となっている。

この概要は、家族や教育者が印刷物を読めない障害がある生徒のためのアクセシブルな教材の質を改善し、その提供を促進するために、IDEA2004に盛り込まれた規定を理解する手助けをすることを目的としている。印刷物を読めない障害がある生徒の中には、印刷された文章を見ることが難しい視覚障害を抱えている者もいるだろう。また、身体障害のために印刷物を手に持つことができない生徒もいるかもしれない。ほかにも、障害関係のニーズがあるために、印刷された文章を読んだり意味を理解したりすることができない生徒もいるだろう。アクセシブルな教材とは、印刷物を読めない障害がある生徒が、クラスの他の生徒と同じカリキュラムを学べるように、アクセシブルなフォーマットや特別なフォーマット(点字、音声、デジタルテキスト、大活字など)に変換された教材のことである。

NIMASとは?

IDEA2004では、NIMAS(全国指導教材アクセシビリティー標準規格)1が確立された。この技術標準規格は、教材を特別なフォーマット(点字、音声、デジタルテキスト、大活字など)2に変換する際に利用可能な「電子ファイル」の作成に使用される。すべての州で、視覚障害あるいはその他の印刷物を読めない障害がある生徒に教材を提供するためにNIMASを採用することが義務付けられた3。すべての州がNIMASを採用するとはいえ、その一方で、州教育局(SEAS)は、NIMAC(以下でさらに説明されている)4と連携をするかどうかを選択することができる。NIMASを採用するにあたり、各州では、少なくともNIMASフォーマット5による教材の電子コピーを受領し、使用しなければならなくなった。NIMASの採用は州の義務であり、出版社にはいかなる法的義務も課せられない。

アクセシブルな教材の提供にかかわる費用を削減し、遅延を防ぐためには、全国的な標準規格が必要だった。たとえば、さまざまな州や地域が、同一の教科書を異なるフォーマットで製作するよう出版社に求めることが、しばしば問題となっていた。

NIMACとは?

IDEA2004では、NIMAC(全国指導教材アクセスセンター)6の設立も定められた。NIMACは、NIMAS7に基づいて開発された印刷教材の電子ファイルを保存する。NIMACはアメリカン・プリンティング・ハウス・フォー・ザ・ブラインド(American Printing House for the Blind)8によって運営される。

IDEA2004の下で州教育局(SEA)と地方教育局(LEA)は、NIMAC9との連携を希望するか否かを選択する。現在50州すべてがNIMACとの連携を選択している。SEAやLEAは、NIMACと連携を取るために、印刷教材を出版社から購入する際、書面により以下の契約を結ばなければならない。

  • NIMASに基づく印刷教材の電子ファイルをNIMACに提供することを、出版社に義務付けること。あるいは、
  • 既に特別なフォーマットで製作された教材、あるいは今後特別なフォーマット10に変換される可能性のある教材を、出版社から直接購入すること。

NIMACはSEAおよびLEAに対し、NIMASファイルセットのカタログに代理人としてアクセスできる「公認ユーザー」を認定することを認める制度を設けた。公認ユーザーは、アクセシブルなメディアの製作者(AMPs)として活動可能な企業や組織と契約をし、NIMASファイルを生徒がすぐに利用できるフォーマットに変換してもらう。

NIMAS/NIMAC規定の目的は、印刷教材をアクセシブルなフォーマットに変換する作業を一層効果的に、かつ低コストで進める手助けをし、さまざまな州や学区による作業の重複を防ぐことである。これらの規定を実行するにあたり、SEAは州の支援技術担当機関と最大限協力する必要がある。11

「印刷教材」という言葉が意味するものは?

印刷教材とは、おもに小中学校と高校での指導用に執筆、出版された、印刷された教科書や関連主教材である。12 SEAやLEAは、これらの教材についても生徒が教室内で使用できるようにしなければならない。13 IDEAは、2006年7月19日以降に出版された印刷教材について、NIMASファイルセットをNIMACに提供することを義務付けている。14「出版された」とは、教材がもともとこの日以前に出版されたものであっても、この日以降「一般の人々が利用できるように販売された」ということを意味する。15

NIMAS/NIMACのプロセスを免除されるカリキュラムは、数学、科学、外国語も含め何もない。16 しかし、おもに高等教育用に出版された教科書は含まれない。17また、上級コースで使用される教材、一般書あるいは副教材については、おもに小中学校と高校での指導用に出版されたものや、生徒が教室内で使用しなければならないとSEAあるいはLEAが定めたもの以外は含まれない。18 教師用の教材も対象外である。19

アクセシブルな教材を「タイミング良く」提供するとはどういう意味か?

すべてのSEAおよびLEAは、NIMACと連携するか否かに関わらず、アクセシブルな教材を必要としている障害のある生徒が、そのような教材を「タイミング良く」受け取れるようにしなければならない。20そして各州は、「タイミング良く」という言葉の独自の定義を定めなければならない。21 IDEA2004では、「タイミング良く」という言葉の定義を定めていないが、IDEA規則では、SEAはLEAに対し、アクセシブルな教材を必要としている障害のある生徒に、他の生徒が教材を受け取るのと「同時に」これを提供するためのあらゆる「合理的な手段」を確実に取らせなければならないと定めている。22

NIMASファイルセットをもとに製作された教材を、NIMACを通じて受け取る資格があるのはどのような生徒か?

「視覚障害あるいはその他の印刷物を読めない障害がある人々」という定義に該当する生徒は、NIMASファイルセットをもとに製作された教材を、NIMACを通じて受け取る資格がある。23この定義に該当する生徒は以下の通りである。

  • IDEAに従いサービスを受けており、かつ、
  • 「成人の視覚障害者のために図書を提供するための法律」(An Act to provide books for the adult blind)に従い、特別なフォーマットで製作された図書およびその他の出版物を受け取る資格がある者24

(1) IDEAに従いサービスを受けている生徒

IDEAに従いサービスを受けている生徒は、以下に該当する場合、この法によって「障害のある子ども」として適格であると決定された。

  • 生徒に、IDEAで認められている障害(知的障害、聴覚障害、言語障害、視覚障害、深刻な情緒障害、整形外科的障害、自閉症、外傷性脳損傷、その他の健康障害、特異的学習障害、3歳から9歳までの児童については発達遅滞)の一つがあり、かつ、
  • その障害が原因で、生徒が特別支援教育と関連サービスを必要としている。25

IDEAに従いサービスを受けている生徒に限り、NIMASファイルセットをもとに製作された特別なフォーマットを、NIMACを通じて受け取る資格がある。26リハビリテーション法第504条に従いサービスを受けている生徒には、IDEAに従いこれらの教材を受け取る資格がない限り、この資格はない。27

(2) 「成人の視覚障害者のために図書を提供するための法律」に従い適格と認められた生徒

IDEAに従いサービスを受けていることに加えて、生徒は「「成人の視覚障害者のために図書を提供するための法律」に基づき適格であると認定されなければならない。281931年に初めて可決されたこの法律は、議会図書館に対し、視覚障害のある成人のための全国的な図書館プログラムを確立することを認めるものであった。29このプログラムは後に、視覚障害のある児童にも対象を拡大し、30最終的には「視覚障害および身体障害のある人々のための全国図書館サービス(NLS)」31となった。連邦規則では、NLSプログラムの個人利用資格を認められる4種の障害を定めている。

  • 全盲
  • 視覚障害
  • 身体的制約
  • 器質的機能不全が原因で起こる読みの障害32

生徒が上記の障害種の1種に該当すると認められるためには、「資格のある権威者」による認定が必要となる。33最初の3種については、資格のある権威者は、医師、整骨医、眼科医、検眼士、セラピスト、ソーシャルワーカー、カウンセラーなどの個人であってもよい。34器質的機能不全が原因で起こる読みの障害については、資格のある権威者は医師でなければならないが、他科の医師と相談してもよい。35器質的機能不全が原因で起こる読みの障害は、中枢神経系に「物理的に根ざしている」あるいは「物理的に由来する」読字障害である。36LEAは生徒に関する適切な証明書を入手する責任を負い、医師による証明書にかかわるあらゆる費用を代わりに負担する。37

NIMAS/NIMACの利用資格が「ない」生徒にアクセシブルな教材を提供することに関して、SEAおよびLEAにはどのような責任があるか?

IDEAに従いサービスを受けている生徒で、「成人の視覚障害者のために図書を提供するための法律」により適格と認められた生徒に限り、NIMASファイルをもとに製作された特別なフォーマットを、NIMACを通じて受け取る資格がある。38しかし、アクセシブルな教材を必要としている障害のある生徒は「全員」、このような教材をタイミング良く提供されなければならない。IDEA規則では、SEAおよびLEAは以下を確保しなければならないと定めている。

  • アクセシブルな教材を必要としているが、NIMAS/NIMACの利用資格がない障害のある生徒が、そのような教材をタイミング良く受け取り、かつ、
  • NIMASファイルセットをもとに製作することができないアクセシブルな教材を必要としている障害のある生徒が、そのような教材をタイミング良く受け取ること。39

NIMAS/NIMACのプロセスではアクセシブルな教材を受け取ることができない生徒のために、SEAおよびLEAは、そのような教材を別の方法で入手しなければならない。

合衆国教育省は、適切でアクセシブルな教材を必要としている障害のある生徒が、そのような教材をタイミング良く利用できるようにすることは、障害のある生徒に無償かつ適切な公教育(FAPE)を提供し、障害のある生徒が個別教育計画(IEP)の定めに従い、一般教育課程に参加できることを保障する公的機関の義務の根幹をなすと述べている。40


1.20 U.S.C. § 1474(e)(3)(B).
2. 20 U.S.C. §§ 1474(e)(3)(B), 1474(e)(3)(D) (incorporating by reference 17 U.S.C. § 121(d)(3) (current version at 17 U.S.C. § 121(d)(4)).
3. 20 U.S.C. § 1412(a)(23)(A); 34 C.F.R. § 300.172(a)(1).
4. 20 U.S.C. § 1412(a)(23)(B); 34 C.F.R. § 300.172(b)(1).
5. 71 Fed. Reg. 46540, 46616 (Aug. 14, 2006).
6. 20 U.S.C. § 1474(e)(1).
7.Id. § 1474(e)(2)(A).
8.Id. § 1474(e)(1).
9.20 U.S.C. §§ 1412(a)(23)(B), 1413(a)(6); 34 C.F.R. §§ 300.172(b)(1), 300.210.
10.20 U.S.C. §§ 1412(a)(23)(C), 1413(a)(6)(A); 34 C.F.R. §§ 300.172(c)(1), 300.210(a).
11.20 U.S.C. § 1412(a)(23)(D); 34 C.F.R. § 300.172(d).
12.20 U.S.C. § 1474(e)(3)(C).
13.Id.
14.Letter to Koscielniak, 50 IDELR 287, at **1-2 (OSEP 2008) (citing 20 U.S.C. § 1474(e)(4)).
15.Id. at *2.
16.Id. at *3; OFFICE OF SPECIAL EDUC. PROGRAMS, U.S. DEP’T OF EDUC., QUESTIONS AND ANSWERS ON THE NATIONAL INSTRUCTIONAL MATERIALS ACCESSIBILITY STANDARD (NIMAS), at 10 (rev. Aug. 2010).
17.Letter to Koscielniak, 50 IDELR 287, at *3 (OSEP 2008).
18.Id.
19.Id.
20.34 C.F.R. §§ 300.172(b)(2), (c)(2), 300.210(b)(2), (3).
21.34 C.F.R. § 300.172(a)(2).
22.Id. § 300.172(b)(4).
23.20 U.S.C. § 1474(e)(2)(B).
24.Id. § 1474(e)(3)(A).
25.20 U.S.C. § 1401(3); 34 C.F.R. § 300.8.
26.20 U.S.C. § 1474(e)(3)(A).
27.OFFICE OF SPECIAL EDUC. PROGRAMS, U.S. DEP’T OF EDUC., QUESTIONS AND ANSWERS ON THE NATIONAL INSTRUCTIONAL MATERIALS ACCESSIBILITY STANDARD (NIMAS), at 6 (rev. Aug. 2010).
28.20 U.S.C. § 1474(e)(3)(A).
29.Pub. L. No. 71-787, ch. 400, §§ 1-2, 46 Stat 1487 (Mar. 3, 1931) (current version at 2 U.S.C. §§ 135a, 135a-1, 135b).
30.Pub. L. No. 82-446, ch. 566, 66 Stat. 326 (July 3, 1952).
31.National Library Service for the Blind and Physically Handicapped (NLS), Library of Congress, A History of the National Library Service for Blind and Handicapped Individuals, the Library of Congress, in THAT ALL MAY READ: LIBRARY SERVICE FOR BLIND AND PHYSICALLY HANDICAPPED PEOPLE, at 156 (1983).
32.36 C.F.R. § 701.6(b)(1).
33.Id.
34.Id § 701.6(b)(2)(i).
35.Id § 701.6(b)(2)(ii).
36.Library of Congress, NLS Factsheets: Talking Books and Reading Disabilities (1997), available at < http://www.loc.gov/nls/reference/factsheets/readingdisabilities.html >.
37.OFFICE OF SPECIAL EDUC. PROGRAMS, U.S. DEP’T OF EDUC., QUESTIONS AND ANSWERS ON THE NATIONAL INSTRUCTIONAL MATERIALS ACCESSIBILITY STANDARD (NIMAS), at 7 (rev. Aug. 2010).
38.20 U.S.C. § 1474(e)(3)(A).
39.34 C.F.R. §§ 300.172(b)(3), 300.210(b)(3).
40.71 Fed. Reg. 46540, 46618 (Aug. 14, 2006).