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世界を広げるために

アイリーン・マックミーン
盲ろう協会(NSW) オーストラリア

項目 内容
会議名 印刷物を読むことに障害がある人々のための情報アクセスに関する円卓会議
発表年月日 2007年5月6日

初めに、私自身が直接ここで、この文書を提出できないことをお詫びしたい。今年後半にパースで開かれる、盲ろうインターナショナルの会議に、ADBC(オーストラリア盲ろう協議会)から2、3人参加したいと考えており、ADBCのガイド通訳者がその会議に同行する予定なので、今回は私に同行し、車椅子を押して通訳をしてくれる

盲ろうインターナショナルによる盲ろうの国際的な定義

さまざまに程度は異なるが、聴覚障害および視覚障害の両方が重複した状態。2つの感覚障害がお互いの障害を増大化、深刻化し、重度の障害を生じさせる点が、他の障害と異なり、独特である。すべての盲ろう者は、コミュニケーション、アクセス、情報および移動において困難を経験する。しかし、その特有のニーズは、年齢、障害を持つようになった時期、および盲ろうのタイプによって大きく異なる。

ADBCによって使用されている、オーストラリア国内における盲ろうの定義

盲ろうは、独特な、孤立をもたらす感覚障害として説明されている。これは、聴覚と視覚の両方の損失が重複した結果起こる、コミュニケーション、社会化、移動および日常生活に重大な影響を及ぼす障害であるが、盲ろう者は、必ずしも全ろう、全盲ではない。盲ろうは、視覚と聴覚の損失が重複することで、それぞれの障害を足し合わせた状態よりもずっと重い症状を呈する、特有の障害である。それはコミュニケーションおよび移動の問題を引き起こし、通訳ガイドによる一対一の介助を必要とすることが多い。他の障害に比べて時間がかかることが多い、このようなコミュニケーションの困難さと、独特なニーズのため、片方だけの感覚器官に対するサービスでは、このような人々に適切な支援を提供することはできない。盲ろう者を、支援とサービスの受動的な受け手だと考えず、多くの能力を持っているが、他の人々に常識と考えられている方法でコミュニティにアクセスするには支援を必要とする者、と考えることが重要である。

コミュニケーション

盲ろう者によって使用されるコミュニケーション方法は多数あるが、盲ろうのタイプや障害を抱えるようになった年齢により異なっている。使用されているさまざまな方法には、オーストラリア触手話、指点字、補聴器、および、盲ろう者が話し相手の唇の動きと声の振動を感じることによってコミュニケーションをとるタドマ法などがある。タドマ法はオーストラリアではあまり使われておらず、アメリカの方が利用が多い。コミュニケーション方法が大きく異なるので、多くの盲ろう者は、通訳者を利用すること無しにお互いにコミュニケーションをとることができない。私自身は補聴器に加えて、Vibro Tactile Aid(振動型触覚補助器)を使用している。私のTact-Aid(触覚補助器)は、音声を振動に変えて腕に伝えるので、そのパターンを頭の中で読むことができる。私はタドマ法も使っているが、これはのどと唇の振動を利用した方法である。毎年DBA(盲ろう協会)は障害者サーフィンデイに参加するが、そのときには私は多くのボランティアと話すのにこの方法を利用し、水中では装用できない補聴器やTact-Aid(触覚補助器)無しでもコミュニケーションをとることができる。盲ろう者にはコミュニケーション手段が無いというのは間違っている。誰もが、何らかの方法でコミュニケーションをとることができる。たとえ、正式なコミュニケーション手段を何も持っていない先天的な盲ろう者であっても、体の反応がコミュニケーション手段となるのである。

情報へのアクセスの欠如

情報へのアクセスの欠如は盲ろう者にとって非常に大きな問題である。私たちが受け取る情報の90%は、目および/あるいは耳を通して入ってくる。人は、自分の周囲や世界で起こっていることを知るために、新聞を読んだり、テレビを見たり、ラジオを聴いたり、電話を使ったり、お互いの話を聞きあったりする。盲ろう者は、視力が残っている場合は、読み上げソフトや点字、拡大印刷機能を備えたコンピュータの、また、聴力が残っている場合は、ピッチやスピードを変えて出力する機能を備えたコンピュータの、使い方を学べない限り、触れることによってしか学ぶことができない。

過去2,3年の間に、触覚によるコミュニケーションによって私が学んだことのいくつかは、以下の通りである。

風車はどのように見えるか。私はオランダの風車とオーストラリアの風車の、異なる2、3の模型に触れなければならなかった。

ある日友人に、その前の週にインドで起きた地震のニュースを聞いたかどうか質問されたが、私は彼女が何について話しているのかまったくわからなかった。

別のときに、トリシュ・ジェームズが携帯電話を使っていた。私はそのようなものについてそれまで聞いたことが無かった。電話がどこにでも持ち運びできるということを知って面白いと思った。

コンピュータとコンピュータがもたらす変化

現代技術はすばらしいもので、盲ろう者が経験する孤立感の克服に役立つ。私は、初めてのコンピュータを受け取った日のことを決して忘れないであろう。それはわたしが長い間夢見てきたことであった。私は視覚障害者の友人たちから、電子メールや、電子メールをやり取りするグループについて聞いていた。一番胸を躍らせたことの一つは、インターネットで新聞が読めると知ったことであったと思う。Spastic Centre(脳性麻痺センター)のデイプログラムに行くときには、今でもインターネットにつないで、日々のニュースを読み上げてもらっている。コンピュータを手に入れたとき、私は幸運にも、Able Australia(エイブル・オーストラリア)の研修プログラムを受けに、3週間メルボルンに行くことができた。このAble Link(コンピュータ研修センター)が、コンピュータの理解と使用に関するしっかりとした基礎を私に与えてくれた。

Able Link のプログラム

これは、オーストラリア盲ろう協議会によって設立された、多くの盲ろう者が感じる孤立感の克服を支援するためのコンピュータの使用について研修を行う、専門のコンピュータ研修施設である。支援機器の使い方を学ぶために訪れて過ごすことができる、すばらしい施設である。私の友人の1人は、現在空き待ちをしており、Braillenote(視覚障害者用のPDA)を使えるようになるのを楽しみにしている。

私は電子メールの利用を通じて多くの友情を育んできた。そして友人たちと定期的にコミュニケーションをとり、電子メールをやり取りするグループにもいくつか参加し、情報へのアクセスを改善できた。私は家族に電子メールを送ることができるので、皆と連絡を取り続けている。そして皆の誕生日には電子メールのメッセージを送っているが、これは私が独力でできるので、バースデーカードよりもよい。

インターネットは情報が満載されたすばらしい場である。ADBCのある盲ろうの会員は、家事の知恵についての情報をダウンロードすることに多くの時間を費やし、その情報を、コンピュータを持っていない会員のために、毎月発行しているニュースレターに載せている。

今年はこれまで既にボランティアの研修を行ったが、私はインターネット上で点字に関する多くの情報を見つけ、ボランティアにプリントアウトして提供した。MSNメッセンジャーは他の盲ろう者とチャットをするのに非常に役に立つ。私は手話ができないので、特にオーストラリア手話を使っている人たちとの間でこれを利用している。

TTY

TTYは聴覚障害者用の電話である。私もKnown BrailleをTTYとして使用している。これは普通のTTYが点字ディスプレイに接続されたもので、会話が点字で表されるので、私はそれを読むことができるのである。TTYを持っていない人へ電話をするのを手伝ってもらうには、National Relay Service(全国中継サービス)を使用することができ、これによって、友人や家族と更にコミュニケーションをとることができる。また私はTTYを会議の内容を理解する手段としても利用している。誰か(通常は視覚障害者)が発言内容をTTYのキーでタイプしてくれれば、発言内容を点字ディスプレイ上で読めるのである。また、点字ディスプレイを共有しなければならないが、これを他の盲ろう者とコミュニケーションを取ることにも使うことができる。

幸いにも、Telstra(オーストラリアの通信会社)は、現在これらの機器を必要とする人々に支給しており、私たちは電話を借りるのと同じように借りている。

ピーター・ミンターと私はともにDBA(盲ろう協会)の経営委員会に携わっており、どちらも盲ろうである。ピーターは会計係で、すべての財務上の報告書を担当し、コンピュータに記録を保持しており、すべての銀行関係の業務を引き受け、そしてすべてが彼のコンピュータに入っているので、何が起こっているのかを正確に把握している。

私は書記で、スキャナーを使って手紙を読み、それをすべて記録し、委員会に月例報告書を提出する。また、各ファイルの仕切りに点字ラベルをつけたので、毎週手紙をファイルすることもできる。

私が知るもう1人の盲ろう者は、怒りとフラストレーションを感じていた人であったが、今では電子メールを使ってコミュニケーションをとるようになり、世界中に友人を持つ、幸せな、生き生きとした人へと変わった。

私はまた、(編み物が好きなので)編み物のパターンをスキャンして点字にし、Mountbatten Brailler(点字ワープロ)で打ち出すことも研究している。これにはもう少し努力が必要であるが、幸運に恵まれれば、成し遂げることができるであろう。

数人の盲ろう者が、就職という希望を持ちながら、知識を高めるために、大学やTAFEで学んでいる。これらのどれも、現代技術の利用無くしては不可能であろう。現代技術は間違いなく、それにアクセスできる幸運な者に、新たな世界を開くのである。

技術コスト

オーストラリアではほとんどの盲ろう者は、作業所で働く以外働くことができず、収入としては年金だけであること、また、周知のようにJAWSやZoomtext(スクリーンリーダー)でさえも高価であることから、これは非常に大きな問題となりうる。更に、点字ディスプレイの費用も加わるので、大部分の人々にとっては高くついてしまう。

この分野に関しては、私は大変幸運であった。というのは、私は脳性麻痺のためにPerkins Brailler(点字ワープロ)を使用できないので、PADP(Provision of Aids for Disabled People:障害者のための支援提供機関)の資金援助を受け、保健省からMountbatten Brailler(点字ワープロ)を入手できたからである。

更に私はBraillenoteコンピュータ(視覚障害者用のPDA)を購入することができた。私は資金集めのために4年間チョコレートを売っていたのだが、友人が地元の新聞で地域のロータリークラブの広告を見て、私の名前と情報を送ったところ、残りの費用を寄付してくれたのである。

PADPは、盲ろう者がこの機器を利用できるように支援するという難題に立ち向かう必要がある。そうすれば、更に多くの人々がこのすばらしい経験を積むことができるのだ。

このように私は、技術によって、生産的でより充実した生活をおくれるようになった。私は常にこのことを高く評価したい。私は、更に多くの盲ろう者が技術を利用できるようになり、このような人たちの孤立感が解消され、情報へのアクセスによって、このような人たちが力づけられることを願っている。