音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

スウェーデンにおける印刷字を読むことに障害のある人々への図書館サービス-ディスレクシアとDAISYを中心に-

受賞者達は、DAISY図書が目に留まるように努力した

文:レーナ・ブークヴィスト(Lena Boqvist)

DAISYを定着させるための、大変な努力が実を結んだ。ノルシェーピング(Norrköpings)の市立図書館は今年度のDAISY図書館賞2007を勝ち得た。

「私達は人々がカセットの代わりにDAISY録音図書を聴いてくれるように、大変な努力をしました。」カリーナ・リュング(Carina Ljung)は言った。彼女は日々ノルシェーピングの市立図書館で録音図書の担当をしている図書館司書だ。彼女達の戦略は、図書館内でDAISYが利用者達の目に留まるように積極的に働きかけることだった。

録音図書をインフォーメーションデスクのそばに

ノルシェーピングには約126,000人の人々が住んでいる。中央図書館はドロットニング通り(Drottninggatan)とセードラプロムナード(Södra promenaden)の十字路に建つ、コンクリートのモダンな建物の一角にある。建物全体が明るく、通気性が良く、天井が高い。デイジー図書館賞2007の賞状はインフォーメーションデスクに誇らしげに飾られている。このデスクの近くには録音図書、拡大図書、それにりんごの棚(機能障害を持つ人々を対象とした本棚)がある。

「この図書館に来る人々は、すぐにDAISY録音図書を見ることができます。私達はどこか片隅に隠してしまったりはしません。」図書館司書のインゲラ・カールソン(Ingela Karlsson)は言った。

同じ建物の中に学校コンピュータープレイセンターを運営しているメディアセンターが ある。メディアセンターは同図書館と良い協力関係にある。

学校コンピュータープレイセンターは活躍している

学校コンピュータープレイセンターは読み書きに困難を持つ生徒やDAMP/ADHDの生徒を教えている教師達に目を向けた。

「私達は各学校が、DAISY図書やTPBリーダー(録音図書をPCで読むためのプログラム)を入手するように大変な努力を重ねました。(困難を持つ)子供たちに、自分は一人ではないのだと伝えることが、とても重要だからです。」ディスレクシア専門コンサルタントかつ教育補助士(pedagogassistent)、ギュードビョルグ・グドヨンスドッティル(Gudbjörg Gudjonsdottir)は述べた。彼女自身も読み書き困難を持つ。彼女はよく教師達、親達、それに生徒達を録音図書の棚に連れていき、それらがどのように機能するのかを説明する。

「教師達に忍耐を持つように教えることはとても大切です。もしカッレが上手く本を読めないなら、本を換えなさい!とね。子どもは本を楽しむものなのですから。」 彼女は述べた。

人気のある本をダウンロードする

ノルシェーピングの市立図書館には、約4,600冊の録音図書と約220の本&録音図書のパックがある。また当図書館は録音図書の利用許可を取っている。それは、スウェーデン国立録音点字図書館(TPB)にある50,000冊のデジタル録音図書が利用できることを意味している。

「私達は欲しいと思う図書はほとんど購入しています。ですから蔵書をダウンロードによって蓄積しているということはありません。けれども人気のある本は何冊か揃えることにしており、もし予約待ちリストが長くなっているならダウンロードすることにしています。」カリーナは述べた。

DAISYフォーマットの録音図書の貸し出しは30%以上増加し、カセットの貸し出しは50%減少した。

送付貸出利用者への勧め

この市立図書館には1,300人あまりの、積極的な録音図書利用者がいる。大部分の利用者は録音図書を図書館で借りていく。しかし180人の人々は、いわゆる送付貸出利用者だ。つまり図書館が図書を彼らに送っているのである。

この前の秋録音図書課は、このグループの中でも、定期的に図書を借りている人々を対象にある試みを行った。

「私達はアナログの録音図書を借り続けている人々に電話をかけ、図書館のプレイヤーを借りてみないかと勧めたのです。また希望者には彼らの家を訪ねて、どのように動かすのかをやってみせました。」図書館司書のヨハンナ・ワスホルムは述べた。

結果は上々だった。今日では彼らのうちの多くが、DAISY録音図書を借りるようになった。また視聴覚センターは利用者登録をしてある重度の弱視者に対して、録音図書プレイヤーに関する支援を行っている。

参加する職員

カセットの録音図書はまもなく、図書館の本棚にあった思い出となる。

「2008年になると、本棚に並ぶのはデイジー録音図書のみになります。カセットは年の変わり目に倉庫へ移されるのです。」カリーナ・リュングは言った。必要がある時には、もちろんカセットを借りることはできるのだが、そのために図書館に尋ねなくてはならなくなる。

カリーナ・リュング、インゲラ・カールソン、それにヨハンナ・ワスホルムは、全ての職員にDAISY及びDAISYのプレイヤーについて情報を伝えることに、かなりの時間を割いてきた。

「全職員が参加していると感じています。これは『あなた方の』そして『私達の』利用者といった問題ではないのです。これは録音図書貸し出し利用者への、特別な対応ではないのですから。」 カリーナは述べた。

誇り高い勝者

カリーナ及び彼女の同僚が、どれだけ喜んだかは言うまでもないだろう。その活力を彼女たちは、お互いから、利用者から、そして自分たちの館長、ビルギッタ・イェルペによって『上』から受ける。同賞が図書及び図書館フェアにおいて授与された時、図書館長は述べた。

「私達は大きな誇りと喜びを感じています。これは一種の品質保証印のようなものですし、私達が正しい方法で働いてきたと、承認されたということなのです。大変名誉なことと感じます。」

『みんなの図書館』, スウェーデン国立録音点字図書館(TPB)発行, 2007年第4号, p.12~p.13より翻訳

文中のDAMP(Deficit in Attention, Motor control and Perception) は、ノルウェーやスウェーデンで自閉症の類縁症状やADHDとの関連で使われている用語である。