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スウェーデンにおける印刷字を読むことに障害のある人々への図書館サービス-ディスレクシアとDAISYを中心に-

ディスレクシア週間‐マルメー(Malmö) で加えられた一撃
作文は困難である

スウェーデンディスレクシア協会(FMLS)発行
新聞『読み書き』2007年5月号, p.13
文・写真:エンマ・スヴェンソン

私達は、作文を1つの過程と考えるべきである。完成された文章としてとらえるべきではない。これはオーサ・ヴェンゲリンが、ヨーロッパディスレクシア週間にマルメー国民高等学校で講演を行った時のメッセージである。

様々な作者が書いていても、資料が録音されているので参加者達は文章がどのように進んでいくのかついていくことができる。キーボードの一打一打、中断、訂正などが満席の講演会場の前面に映し出される。書くことに困難がある女性がディスレクシアという言葉を12回書くと、聴衆にそのフラストレーションが伝わった。その女性にとってはこの言葉を正しいつづりで書いたのは、初めてのことだった。

ヨーロッパディスレクシア週間は、全国で様々な方法で注目された。マルメーではルンド大学(Lunds universitet)の研究者オーサ・ヴェンゲリンが、『作文の過程は困難である』という装飾文字の下で講義を行った。

「私は、作文とは出来上がった文章ではなく、1つの過程であることを示したいのです。背後で何が起こっているかを熟考することはとても大切です。」オーサ・ヴェンゲリンは述べた。

オーサ・ヴェンゲリンは、私達が作文を書く間には、3つの異なる行為が進行すると述べた。何を書くのかを考える。それを言葉に変換する。最後にその書いたものを評価する。これらが連続して起きるのだ。重要なのは、書いている間に一部何か困難があると、その他の部分にあっという間に波及するということだ。

「作文の間にあなたが行う事は、なんであれ、膨大な認知力を使うのです。もしあなたがつづりを考える必要がなかったら、良い文章を構成することにより多くの時間を費やすことができるのです。そうすれば文章の本筋を考えることが容易になります。」

オーサ・ヴェンゲリンのアドバイスは、つづりや、その時困難だと感じている事柄にあまり気を取られないことだという。それならば文章を書き終えてから、訂正すれば済むことだからである。ヴェンゲリンは、教師達が教えているとき作文の過程がどのようになっているのか意識していることが重要なのだと強調する。1つの問題は、多くの生徒達が、彼らには出来ないという言葉を学校で聞くことなのだという。このことが状況をさらに悪くしてしまうのだ。

ヨルゲン・パルムはマルメーFMLSの代表である。彼はこの講演を企画し、参加した者の1人だ。「多くの人々が、たかが書くことだと考えています。アイデアを思いついて、その後に文章にする。その全てにそれなりの時間がかかりますが、ディスレクシアの人間はもっと時間がかかってしまうのです。」

マルメー国民高等学校は、特に読み書き困難をもつ生徒を対象にした特別コースをいくつも行っている。ヨルゲン・パルムはこの講演会が、ディスレクシアと戦っている人々に、同じ状況にいる人々が大勢いるのだと示してくれることを願っている。「問題を抱えているというだけで、自分は一人なのだと思いがちです。しかし決してそんなことはないのです。」彼は言う。

ヨーロッパディスレクシア週間と関連付けてマルメーFMLSは、トレレボリィ、トメリラ及びスクルプで講演会とパネルディスカッションを開催した。ヨーロッパ週間は終わってしまったが、マルメーの様々な企画は終了したわけではない。今春はマルメー国民高等学校、労働者の為の教育団体(ABF)、マルメーの市立図書館と協力して、一連の講演会が開かれる。

「ここではありとあらゆる事が起こるのですよ。」ヨルゲン・パルムは言った。

新聞『読み書き』, スウェーデンディスレクシア協会(FMLS)発行, 2007年5月号, p.13より翻訳