スウェーデンにおける印刷字を読むことに障害のある人々への図書館サービス-ディスレクシアとDAISYを中心に-
「書かない」という選択には、(その他の)才能が要求される
スウェーデンディスレクシア協会(FMLS)発行
新聞『読み書き』2007年5月号, p.14
何年もの間パオロ・ロベルトは、ものを書かないで済むようにありとあらゆる事をしてきた。彼はつづりがとても苦手なので恥ずかしかったからだ。
しかし今、彼は伝記を書き、最近料理の本を出版し、まもなくトレーニングの本を出す。ターニングポイントとなったのは何なのだろう。
「私は常に公正な戦いというものを常に重要視してきました。私は、ついに自分の書くことへの困難の前で身を屈しているわけにはいかなくなりました。相手が手ごわい程、克服する喜びも大きいのです。」前プロボクサーは述べた。
TVの有名人、パオロ・ロベルトには読み書き困難がある。単語がどのようなつづりになっているのか見分けるのが、彼には難しいのである。彼にはbとdが入れ替わって見えてしまい、そうなると言葉の意味を間違ってとらえてしまうのである。彼にとって一番複雑なのは、子音が二つ続く単語である。
学校時代、彼も教師達も何かがおかしいということをわかっていた。けれどもそれが何かということまでは理解していなかった。パオロは優秀でありたいと願い、始めのうちは学校も楽しかった。歴史は彼の好きな科目だった。彼は勉強が好きだった。それでもうまくいかなかった。
パオロは努力を重ねた。学校に行くと、生徒達は何が書けるのか判定を受け、つづりができないと愚かだとされたと、パオロは語った。パオロの書いた文が赤の印でいっぱいになって返ってくる度に彼の自信は砕かれていった。内容は良かったにもかかわらず。最後にパオロは諦めた。
「誰もがある程度までは優秀であろうと頑張ることができますが、その先は疲れてしまいます。6年生から中学生になる頃、私は全て投げ出し、学校をさぼるようになりました。何もかも無視していました。」
パオロはストックホルムのクングストレードゴーデンをたむろする不良になった。彼は何に対しても一番でいたかったので、一番の不良になる為になんでもした。取っ組み合いも度重なり、何度も警察に捕まった。彼は1980年代の大部分を危険な10代として過ごし、注目を集めていた。1987年にスタッファン・ヒルデブランドが制作した『ストックホルムの夜』という映画では、パオロは主役になってしまった。
この時に人生は大きく転換したのだ。パオロは自分が大騒ぎをする以外に得意になるものがあることに目覚め、プロボクサーとしての道を歩み始めた。その他彼はまもなく政治にも関わるようになった。彼が推進した政治課題の1つは、スウェーデンにおけるプロボクシングの合法化だった。彼はメディアに顔を出すようになり、だんだんにテレビのアンカーマンをも務めるようになっていった。
現在彼は3社の企業を経営し、健康と孤立感について講演している。また彼は新聞等の記事や本をも書いている。
つい最近彼は始めの著書『ぼくのおばさんの料理』を出版した。また春には彼のトレーニングの本、『パオロ・ロベルトと一日15分間トレーニングしよう』が発売される。
「私は言語に関して努力することを、受け入れたのです。」パオロは言う。「最初は、出版された私の文章は特別なのだと思いました。とても格好よく見え、誇らしく思いました。これは大きなご褒美でした。けれども私が最も重要だと思っているのは、苦労をして克服をすることなのです。」
パオロにとって、語ることの必要性はとても大きい。しかし今でも彼は書くことは苦手である。PCの前に座る前に、まず頭の中で全文を考えなければならない。彼がうまく書けるのは、言葉を頭の中で熟考した時だ。彼は相変わらずつづりに関してはコンプレックスを持っており、彼以外の誰かに熟読してもらうまでは手元から離すことはない。
パオロは自分が読み書き困難をオープンに語ることのできる、有名人で良かったと考えている。誰かがもし綴りが苦手であっても、自分は一人ではないと分かってもらえるからである。
「私達の社会は、人々が上手に読み書きができることを基本に成り立っています。それができないことが落ち込みの原因になります。しかし私は、それでもうまくいくことを証明しています。私は良い人生を過ごしています。良い仕事を持ち、高い給与を得ています。高校に行ったことがなく、17歳の時から働いていますけれど。
「もし何か大事なことが苦手だとしたら、その他の面を伸ばせばよいのです。私は言語面を伸ばしました、さらに、幾つかの物事を避けることに長けています。「書かない」という選択には、(その他の)才能が要求されるのです。」パオロ・ロベルトは述べた。
新聞『読み書き』, スウェーデンディスレクシア協会(FMLS)発行, 2007年5月号, p.14より翻訳