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スウェーデンにおける印刷字を読むことに障害のある人々への図書館サービス-ディスレクシアとDAISYを中心に-

すばらしい研究が進んでいる

スウェーデンディスレクシア協会(FMLS)発行
新聞『読み書き』2007年5月号, p.4

世界中でディスレクシア及び、私達の読み書きを学ぶ能力に関する興味深い研究が進められている。

新聞『読み書き』は、論文『ディスレクシア‐知識の概要』を書いたマッツ・ミルベリィ教授と話し合った。

マッツ・ミルベリィはストックホルムにある教育大学の特殊教育学教授である。彼自身が特に興味深いと思っているのは遺伝子研究である。

遺伝学

ディスレクシアが遺伝的な資質ということは、疑う余地がない。またそこに環境要因も加わることを私達は知っている。それでは最も大きな要因は遺伝だろうか、それとも環境だろうか。現在のところはまだ研究者たちは、この質問に対し完全な答えは出していない。個々のケースに対して、困難がどのような要因によるものか正確に知ることは難しいからである。

研究者達が、ディスレクシア遺伝子を発見したと言いだしたら、それはあまりにも単純すぎるだろう。読み書き困難の原因となるディスレクシア遺伝子を1つだけ抜き出すことなど誰にもできはしないと、マッツ・ミィルベリィは主張する。多くの遺伝子が互いに、また環境と作用しあうのである。

「血液検査によって誰がディスレクシアか判断することは決してできないでしょう。1つまたは幾つかの遺伝的な逸脱は、ディスレクシアの説明として充分ではないのです。」ミィルベリィは言う。

それでは遺伝子研究が何の役に立つかといえば、ディスレクシアになる危険性が比較的高い子どもを見つけられることである。これは重要な利点である。もしその危険性を持つ子どもを見つけることができたなら、早い段階にその子どもの言語発達や音韻能力を刺激することができる。

遺伝子学の研究者は多く存在する。マッツ・ミィルベリィは特にステファン・サミュエルソンの名前を挙げた。彼は大規模な双子に関する研究プロジェクトで、遺伝や環境がいかに子どもの読み書き能力に影響するかについて調べている。この研究の結果から、遺伝子が6歳児の音韻能力では大きな役割果たすが、しかし会話能力における役割は小さいことが判明した。またこの研究により、6歳の音韻能力と、7歳児の読字能力の良好な発達の間の関係はかなり深いこともわかった。

「この音韻能力は読み書きを学び始めた時に、特に重要なのです。また読めるようになった時、例えば理解力といったその他の能力もより重要になってきます。その能力も部分的には遺伝子から影響を受けているのです。」

神経生物学

ディスレクシアの人々は読み書きを学ぶ神経生物学的な条件が他の人と比較して悪い。脳の研究者はディスレクシアの脳の働きは、他の人々と異なっていると指摘している。

フィンランドのヘイッキ・リィティネンが行った研究は、ディスレクシアの両親を持つ6ヶ月の赤ちゃんには既に他の赤ちゃんとは異なった点があることを示している。

遺伝のせいでこれらの赤ちゃんは、自分自身もディスレクシアとして育つ危険性を持っているのである。

ヘイッキ・リィティネンの研究は、子どもの脳は繰り返される刺激に大きな影響を受けることを示している。マッツ・ミィルベリィは読むことは脳に影響を与えると結論付けた。早期に読み上げや、自分で読書をすることは、後々の人生において脳の機能に大きな影響を与えるのである。

精神神経学

その他、精神神経学的機能障害を研究するものも興味深い。カロリンスカ・インスティテュート(Karolinska Institutet)のハンス・フォッシュベリィはいわゆる自閉症スペクトラムに含まれる様々な精神神経学的機能障害の間の関係性を研究している。その中には自閉症、ADHD、言語障害、ディスレクシアなどが含まれている。

「ディスレクシアはこれらの研究の中では子どもが読み書きを学び始める時に発見される、言語障害のヴァリエーションだと見なされています。様々な精神神経学的機能障害の間には関連性があります。この10年の間には精神神経学的機能障害の実態が明らかになると、私は予想しています。」マッツ・ミィルベリィは述べた。

新聞『読み書き』, スウェーデンディスレクシア協会(FMLS)発行, 2007年5月号, p.4より翻訳