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スウェーデンにおける印刷字を読むことに障害のある人々への図書館サービス-ディスレクシアとDAISYを中心に-

ディスレクシアの人々は論理的思考が得意である

スウェーデンディスレクシア協会(FMLS)発行
新聞『読み書き』2007年5月号, p.9
文:エヴァ・ヘドベリィ

「読み書き困難は、あなたが大人としてどのような感性を持つのかを決めるわけではありません。その他の要素の方が、より重要なのです。協力的な家族、理解してくれる教師、良い友達、あなたの好きな趣味などにより、困難をやりすごすのが容易になるでしょう。」

上記を示したのは、心理学者グンネル・インゲソンがつい最近完成させた博士論文である。この論文は、ディスレクシアの多くの子ども達が、言語にはよらない知力を同年代の子どもよりも発達させていることをも示している。

グンネル・インゲソンは、ディスレクシアとして育つとはどういうものなのか、知りたいと願った。そのため彼女は、6年程度前にディスレクシアの診断を受けている75人の若者にインタビューを行った。グンネルはその結果に少々驚いた。彼女はもっと多くの若者が、機能障害によって目立ってしまっていると考えていた。彼らは学校等で居心地悪く過ごしているに違いないと。

「しかしそうではありませんでした。ほとんどが心地よく過ごしていたのです。これは私が受けた肯定的なイメージでした。」彼女は述べた。

インタビューの機会を持つことができたのは、14-25歳の間の若者達だった。彼らは皆、以前グンネルが働いていたルンドのディスレクシア相談室と連絡を取ったことがあった。グンネルが相談室で会った子ども達と親達は多くの場合、自分の置かれた状況に絶望していた。上記の結果は、グンネルの以前の体験とは対照的な様相を見せていた。

このような結果になった、決め手はなんだったのだろう。少なくともディスレクシアの程度ではない。すばらしい自信を身につけている10人の若者がいたが、その一人は、基本的には書けるのは自分の名前だけである。彼は決して自分の機能障害を包み隠さず、ディスレクシアであることを恥じたことはない。心地良く過ごしている彼らに共通しているのは、家族から支援を受け、良い友達がいて、趣味や才能があり平均的な知力を備えているということだ。さらに彼らは学校の理解を得て、配慮と励ましを受けている。

最もひどい気持ちで過ごしているのは、学校からも家からも支援を受けていない子ども達だ。彼らは友達を作るのにも問題があり、多くがいじめを受けている。彼らは何事にも興味を持たず得意なものがない。このような子ども達にとっては、ディスレクシアは大きな問題なのだ。

この若者達の大多数が、最もひどかったのは小学校の時だったと述べている。その後状況は良くなっていったのだ。グンネルはそれまで、彼らにとって一番大変なのは、小学校の高学年時と中学校の時だと考えていた。

「子ども達は幼い時、何かが間違っていると感じるものなのです。けれども何が間違っているのかは分らないのです。少し大きくなって診断を受けた時に自分をそれまでとは少し違った観点から見ることができるのです。彼らはディスレクシアが何を意味するかを知っています。そして自分の頭脳が劣っているわけではないことをよく理解すると、何もかもがそれまでよりスムーズにいくようになるのです。」

また調査の別の部分でグンネルは、多くの場合ディスレクシアの子ども達は同年代の子ども達に比べ、論理的思考を発達させることを証明している。それは学習の為及び問題解決のために、より直感的で創造的な方法を取得する為であろう。この方法で、言語によらない知力が発達していくのである。

グンネルは彼女の論文が、親達や子ども達の元へ希望を届けることを望んでいる。

「私は、子どもの困難を重く感じるあまりに、かえって子ども達の余計な負担になってしまう親達を見てきました。また子ども達のディスレクシアが原因で、療養証明書の発行を受けた母親にも会ったことがあります。これはなんの信号なのでしょうか? 親達は、子ども達が学校でうまくやっていく能力を信じる姿勢を見せなければなりません。子ども達にはその能力があるのですから。」

論文のいくつかの結論

  • 困難を誇張してはいけない。子ども達がうまく学校でやっていけることを信じる姿勢を見せなければいけない。
  • 彼または彼女が、楽しめることをするのを励ますべきである。学校と平行して何か興味があることを持つのは重要である。
  • もしディスレクシアの調査を業務としているなら、子どもが何に困難を感じているのか、そして何には困難を感じていないのかを親達と子ども達が理解しているかどうかに注目するべきである。問題の区分をつけることで、治療が簡単になる。
  • すべての子どもが配慮と励ましを必要としているが、困難を持つ子どもは他の子どもに比べて特にそれらを必要とする。

この論文の題名:ディスレクシアと共に育つ:認知的、心理的な影響と健康的な要素。
この論文の審査会は6月にルンド大学で行う。

新聞『読み書き』, スウェーデンディスレクシア協会(FMLS)発行, 2007年5月号, p.9より翻訳