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要旨

バングラデシュは南アジアに位置する国で、ミャンマー、及びベンガル湾とのわずかな境界を除き、周囲のほとんどはインドに囲まれている。面積は147,570平方キロメーター、人口はおよそ1億1,400万人である。WHOの推計(10%)から算出すると、1億1,400万人の人口をかかえるバングラデシュには、およそ1,400万人の障害者がいることになる。障害に関する無知と誤った認識が、家族や地域社会の否定的、かつ軽蔑的な態度により増幅し、バングラデシュの障害関連部門の発達が遅れた。

2002年5月、国連アジア太平洋経済社会委員会(UN ESCAP)は、バリアフリー社会を目指す「21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のための、インクルーシブでバリアフリーな、かつ権利に基づく社会の促進」決議を採択した。2003年、UN ESCAPはびわこミレニアム・フレームワーク(BMF)をまとめ、新たな10年(2003 – 2012)において、障害者のための決議の達成に向け、地域の政府と関係者による行動のための政策勧告を提供した。

障害者のミレニアム10年とびわこミレニアム・フレームワークにおいて活発なメンバー国であるバングラデシュは、障害者のための、インクルーシブでバリアフリーな、かつ権利に基づく社会の達成に向けた活動の実施において、早期にイニシアチブを取った。

まず、全国障害者団体協議会(NFOWD)とハンディキャップ・インターナショナル(HI)はBMFの目標に対する中間評価を実行するプロセスを開始した。さらに、社会福祉省、社会サービス部、障害者の発展のための国家基金、NFOWD、およびHIが共同で調査にあたることを決議した。

調査の主な目的は、びわこミレニアム・フレームワーク(BMF)において定められた目標と比較し、バングラデシュでの進捗を包括的に評価することである。BMFは、障害者のためのインクルーシブ社会を達成するために 優先分野、戦略、および目標を割り当てた。一定期間内でびわこの目標を達成するために100以上の指標が設けられた。本調査は、これらの指標に基づいており、達成できたものと失敗したことの両方を識別、かつ評価している。

この見直し作業は当局機関と関係者にフィードバックされ、必要に応じて障害介入をデザインし直すこと、バングラデシュの障害者のニーズを満たすよう主導力を加速させることが期待される。

この調査は主に3つの異なるレベル、すなわち政策、実施、および効果における、7つの優先分野に焦点を当てた。

この点において、様々な方法が採用された。目的と目標に基づき、政策関連の資料、国の報告書、定期刊行物、回覧など、障害関連の省と部署、並びにBMFの資料を可能な限り集め、徹底的に見直した。前もってアンケートを用意し、政府、国内と国際機関など72の団体から情報を集めた。障害者、家族、地域の住民、教師、介護士、およびその他の関係者で重点的なグループ・ディスカッションを行った。

また、政府、NGO、市民団体、および障害者の代表を交え、3つの部門でワークショップが終日開催された。調査はまた、UN ESCAPが指定したびわこ監視手段に従った。調査チームは集めた情報を基に報告書案を作成した。調査結果は国家調査委員会のメンバーと共有し、最終的に承認された。

バングラデシュにおいて、社会福祉省、社会サービス部、ならびに障害者の発展のための国家基金は、教育、雇用、リハビリテーションなどの分野における障害者のニーズを満たすことのできる三つの政府組織である。政府とは別に、およそ400のNGO団体が障害者と共に働いている。これらのNGOの大半は弱小で、外部資金に大きく頼っている。

調査結果の要点はこの項に記載されているが、重大な問題点と懸念は本文に記載されている。

あらゆる国内的、および国際的責務・義務に準じ、またバングラデシュ憲法の条項の範囲で、政府は1995年に障害に対する国家政策を展開・承認した。その政策は、バングラデシュ障害者のための福祉条例2001の制定を通して法的なバックアップを得た。これが障害の定義と分類を国が定めた最初である。

障害者の自助組織については、障害者の権利に取り組む政府部門が障害者のための国家政策を承認した。さらに、国内調整委員会が改正され、障害関連事項について様々な活動を請け負い、かつ調整できるようになった。障害者問題に取り組む政府職員とNGOの代表により、地区調整協議会が全国的に形成された。

障害をもつ女性の優先分野に従い、バングラデシュ政府は、女性の全般的な健康管理、教育、および訓練に重点を置いてきた。つまり、政府機関によるマネジメントとリーダーシップの研修は、女性と障害をもつ女性がアクセスできる方法を作り出した。一方、閣僚級の国内調整委員会と地方の地域障害福祉委員会は、各地域における障害をもつ女性の間での情報の普及に貢献している。さらに重要なことは、障害をもつ女性を含め、女性に対するあらゆる種類の虐待や暴力に対応するため、政府は「女性と子供の抑圧防止条例2000」という名前の法律を施行し、2003年に改定した。さらに、多くのNGOが、障害をもつ女性が社会参加できるよう、様々な研修計画に前向きに取り組んできた。

早期発見、早期介入(就学前の子供の教育・保護活動)、ならびに教育という優先分野において、教育省と初等大衆教育省は、障害をもつ子供を、段階的に普通学級で教育を受けさせるという目標を定めた。その結果、国内調整委員会に承認された障害に関する国家行動計画は、障害をもつ子供の教育をあらゆるレベルで推進する特別な計画を指示した。

初等教育開発計画には、インクルーシブ教育と障害をもつ子供の普通初等学校での教育、という全国レベルでの計画課題が含まれる。社会福祉省は社会サービス部を窓口とし、統合(無差別)教育センターを64校、視覚障害をもつ子供のための特殊校を5校、聴覚障害をもつ子供のための学校を7校、そして知的障害をもつ子供の学校を1校、無料で運営している。さらに、政府はNGOを通じ、障害をもつ子供のインクルーシブ教育に向け財政的、技術的支援を提供してきた。また、教育研究協会、ダッカ大学の社会福祉協会、ならびに国立特殊教育センター(NCSE)は、障害をもつ子供の教育を推進する研究分野に貢献している。障害をもつ子供の教育の可能性と機会に関する意識改革プログラムが全国的に実施されてきたことにより、国民の意識が高まった。

障害者へのアクセスと補助を確実にするため、政府は87ヶ所の公立病院で「病院における社会福祉ユニット」を導入した。公立病院にならい、私立病院も早期発見、早期介入のための特別サービスを全国レベル、または準全国レベルで展開している。

障害者の自営業を含めた訓練と雇用に関連して、社会福祉省は、障害者のための訓練センターを5ヶ所運営している。身体障害者のための雇用リハビリテーション・センター(ERCPH)は、訓練課程を終了した人が収入を創出する活動を始めるにあたり、元手となる資金を与えるという点で注目に値する。社会福祉省は障害者手当のための条項と、障害者のためのマイクロ・クレジットを導入した。バングラデシュ政府は障害者の雇用を確保するため、割当制を導入した。障害者の権利、平等な待遇、および機会を守るため、政府は、職業リハビリテーションと雇用に関する国際条約を批准した。政府と共に、NGOと民間も障害者の雇用を奨励している。さらに、自営業を促進するために、社会福祉省と多くの政府系銀行は、障害者に無利子、または単利のマイクロ・クレジットを提供する施設を作った。

障害者とお年寄りのための周囲環境と公共交通機関へのアクセスについて、バングラデシュ工科大学(BUET)は、障害者のアクセシビリティーに関する課題を教育課程に含めた。水と公衆衛生の向上のために活動するNGOのネットワークは、全国で活動する仲間のNGOを通じ、水と公衆衛生へのアクセシビリティーについても活動し始めた。障害に関する国家行動計画は、アクセス・スロープ、専用のチケットカウンター、および公共の交通機関と発着場における障害者用の座席など、アクセシビリティにとって不可欠な要素を樹立する計画である。

情報、通信、およびアシスト機能を有する技術を含む、情報と通信へのアクセスを容易にするため、NGOは主導を取り、障害者の情報通信技術(ICT)を促進した。専門家と関連機関により、障害者のためのICTに関する作業グループが結成された。JAWSとDAISYという名前の二つのソフトウェアが視覚障害者に紹介された。コンピュータ処理されたベンガル語の点字ソフトが、NGOと有名なソフト開発会社の共同作業により開発された(テキストから点字、点字からテキスト)。しかしながら、コンピュータとインターネット・サービスにアクセスできる障害者は非常に限られている。

貧困の緩和、社会保障、および暮らしに関し、貧困の削減を促進させる国家戦略は、障害者の貧困関連問題に焦点を当てた。社会福祉省は、貧困者のための開発プログラムを主導する省の一つである。社会福祉省はまた、障害者も一般社会の構成員とするプロプア開発プログラムの政策を考案し、運営している。また、国有地と老齢手当の分配を通して、リハビリテーション・プログラムを開始した。同様に、政府は、障害者のための収入創出活動を促進するため、NGOに対し回転資金と助成金を割り当てた。

 

結 論

びわこミレニアム・フレームワークでの宣言後、政府は、バングラデシュにおける障害者のための、インクルーシブでバリアフリーな、かつ権利に基づく社会に対応する活動の実施においてイニシアチブを取った。また、非政府部門においても、国際、国内、および地域のNGOによる障害者関連の介入が増加している。企業部門がこの問題に関心を寄せ始め、雇用やその他の支援のための新しい手段を創出している。メディア-電子メディアと印刷物-もまたこの問題と障害者の可能性ついて焦点を当て始めた。BMFに明記される目標と優先分野は、全ての関係者が成功裏に前進するためのガイドラインとして、その機能を果たすであろう。