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第二章 目標についての評価、要求される行動の状況、および優先分野に関する重要な課題

序 文

この章は関係する政府部門、国内外のNGO、障害者、その家族、地域社会の住民、およびその他の関連する開発関係者からの情報の提供を基に展開する。また、目標達成の評価、要求された行動の状況、および行動のためのBMF優先分野に付随する重大な課題についての懸念に焦点を当てる。

目標の達成は、関連する政府、非政府機関に予め配布したアンケートを集計、編集して得た結果に基づいており、関連する文書を分析して集めた情報により補足されている。要求される行動に関する状況は、関連機関から回収されたアンケートのBMFフレームワークで指示された課題という質問に対する回答を反映している。

それぞれの優先分野における重要な課題は、ワークショップでのディスカッションや調査期間中に開催された重点的グループ・ディスカッションで集められた障害者、その家族、地域社会の人々、およびその他の関連する開発関係者の意見を反映している。公開された懸念は必ずしも全土に当てはまる訳ではない。状況は、場所によってはもっと良好である。特に、政府とNGOが協調して取り組んでいる地域ではその傾向が顕著である。

NGOは最近、既存の障害者プログラムを新たに開始、向上、拡大させている。これらの地域では、障害者の状況は、他の地域の障害者に比べ格段に良い。しかし、より良い生活を送る障害者の数は、バングラデシュにおける障害者総数と比較するとわずかである。

 

責任、政策、ならび法的問題点

I.障害問題に対する国の責務:国のメカニズム

バングラデシュにおいて障害者問題を調整する最高機関は、バングラデシュ障害者福祉国内調整委員会として知られている。委員会は1993年に設置され、2002年に条例2001に基づき改正された。委員会は18人のメンバーで構成され、そのうち13人は異なる省と部の代表、5人は障害者と働くNGOの代表である。委員会の中心は、大臣自らが議長を努める社会福祉省である。社会福祉省長官は副議長を務め、障害者の発展のための国家基金の代表が担当である。

国家行動計画

国内調整委員会は2006年9月、国家行動5ヶ年計画を承認した。国家行動計画が取り扱う分野は、国家の調整、障害原因の予防、訓練、識別と早期発見、教育と補助器具の開発、コミュニケーション、雇用とリハビリテーション、人材開発、社会保障、および自助組織の促進である。

BMF実施のための行動

びわこミレニアム・フレームワークはベンガル語に翻訳され、障害者と働く全ての関係団体に配布された。これまでの注目に値する活動は、国、地方レベルでのワークショップ・セミナー、並びにディスカッション、電子・活字媒体による啓発、およびBMFに関する課題についての出版がある。国際障害者の日と国際白い杖安全の日とは別に、バングラデシュは4月の第一水曜日をバングラデシュ障害者の日に定めた。バングラデシュは毎年この日を選ばれたテーマで祝い、年間を通してそのテーマとなった課題の実施を訴える。

 

II.政策における障害問題のメインストリーミング:

障害者に関する国家政策を超え、その他の国家政策と補足文書が、貧困削減、雇用、インフラの整備、および教育分野において障害者関連の問題を取り扱っている。

 

III.法律:憲法

バングラデシュ憲法に定められた数々の条項において、特に10、11、15、17、19、20、21、27、28、29、31、32、および36条において、バングラデシュ政府は、平等に、いかなる偏見も持たず、全てのバングラデシュ国民の権利と尊厳を守ることを誓約している。この憲法により、政府はバングラデシュの障害者の発展のために、一連の法的、政策的フレームワークを発展させる機会を得た。

障害者問題の統合

バングラデシュでは、障害者の問題を統合的に扱う包括的な法律は、障害者福祉法を除き制定されていない。

障害者のための分野別の法律

バングラデシュでは障害に特化した分野別の法律はまだ制定されていない。

障害者のための包括的な法律

障害者福祉法は、障害者のための包括的な法律として2001年に国会で採択され、同年8月1日に施行された。これは、国が初めて定めた障害者の定義と分類である。

その法律は、地区委員会が全ての障害者を特定し、障害者にIDカードを交付することにより、公共施設や民間の娯楽施設を利用しやすくする必要性を強調している。これはまた、GOBが10の計画の中で強調していることでもある。

障害者法が対象とするその他の分野は、予防、身分証明、治療処置、教育、医療サービス、リハビリと雇用、交通、文化的事項、社会保障、並びに自助組織である。

障害者のための差別禁止法

このような差別禁止法はバングラデシュでは未だ施行されていない。

障害者の参加

障害者福祉法の権限において設置された国内調整委員会は、障害関連団体からの代表に対する規定を作り、障害者の参加を可能にした。国家執行委員会と地区障害委員会も障害者の参加を可能にする同様の規定を設けている。

 

IV.障害の統計:

国勢調査に障害者の問題を含めようとする試みはあったが、これまでのところ障害の統計について適切な回答を見出してはいない。全国障害者団体協議会(NFOWD)は2005年に障害に関するサンプル調査を行った。中でも、障害統計の調査は、障害の種類、年齢、地方と都市での分布などを網羅した。この調査による分布は、すべての障害を合計して5.6%であった。

 

優先分野に基づいた評価

1.自助組織

目標の達成状況 : 目標1

政府、国際資金提供機関、及び非政府組織(NGO)は2004年までに、あらゆる地域の障害者に、特に貧困地区と農村部で暮らす障害者に焦点をあて、その自助組織の発展と設立を支援するために、必要な資金分配を確保する政策を制定する。政府は2005年までに、自治体レベルでの親の会の設置に向けた方策を講じ、2010年までに国家レベルで親の会を連合させる。

質問参照1.1

障害者のための国家政策は、1995年、障害者の権利に対応する憲法の規定を検討していた政府により承認された。その政策は、自助組織(SHO)を促進し、支援を提供することを含む。

第13項「自助運動」の中の国家障害者施策は、自助を主導するリーダーシップ力の開発と、障害者に開発プロセスに参加する権限を与えることを指示している。

国家調整評議会が採択した国家行動計画は、自助組織 (SHO) を促進・強化する計画を指示している。

質問参照1.2

国家障害者施策を実施するにあたり、2000年、NGOに財政支援を提供する目的で障害者の発展のための国家基金が設立された。NGOには障害者の自助組織も含む。しかし、その財政支援額は、国内において増加するニーズと要求を満たしていない。

質問参照1.3

国家障害者施策は、全ての障害に当てはまり、国内全土を対象とする。

質問参照1.4

障害者施策があると報告した国際開発団体は、アクションエイド・バングラデシュ、ハンディキャップ・インターナショナル、ヘレン・ケラー・インターナショナル、障害と発展のための行動、およびサイトセイバーズ・インターナショナルなどに限られている。その対策には、自助組織への支援など障害者のニーズを代弁する様々な介入がある。

サービスを受けている団体の中には、地方および都市部で活動する自助組織が含まれる。

質問参照1.5

自治体レベルにおいて、いくつかの親の会が存在する。特に聴覚、視覚、知的障害を持つ子供の親による父母会がある。国内で最大の親の会は、1977年に設立された「知的障害者の福祉の会(SWID)」であり、国内に47の支部を持つ連合組織である。

目標2

政府と市民団体は、2005年までに、障害者の生活に直接的・間接的にかかわるプログラムを計画・実施する意思決定のプロセスに、障害者の団体を含める。

質問参照2.1

社会福祉大臣をリーダーとする国内調整委員会が設置された。委員会は障害者とその関係団体をメンバーに加えなければならないという規定を有する。この委員会は、障害者の利益を代弁するための介入調整をする最高機関である。

さらに、副コミッショナーをリーダーとする64の地区レベルの委員会が設置されている。委員会のメンバーには、障害者のために活動する自治体レベルの団体の代表と有能な障害者が含まれる。

政府は障害の問題を国家貧困削減戦略文書(PRSP)に組み入れた。その結果、今後は、障害者の貧困レベルを緩和する行動計画が取られることになる。

政府は、社会福祉省(MSW)の障害者の発展のための国家基金(NFDDP)を窓口として、自助組織とその他の関連父母会の設立を奨励、支援する。

著しい数の障害者が国家の意思決定プロセスに貢献し、メンバーとして国会に参加している。現在、弁護士の資格がある障害者が裁判所で申し立てを行っている。

要求される行動の状況:

障害者の権利に対応する憲法の規定を検討していた政府は、障害者のための国家政策を承認した。

上記政策と国際的な約束に基づき、政府は2001年に障害者福祉法を制定した。その法律は、障害者

の権利を守るために政府が約束した事を実現するための一歩としてとらえられた。

障害に関する様々な活動を引き受け、調整するために国家調整評議会が改正された。また、政府職員と障害者問題について活動するNGOの代表による地域調整評議会が全土に設置された。

重要な問題:

自身の権利を最も良く訴えることができ、主張できる団体として、自助組織と父母会に対する是認と認識が高まっている。国内にはこのような団体や協会の数が増加している。しかし、これらの団体の多くは、政府の政策レベルで主張できるほど十分に組織化され、また経験を積んではいない。これらの団体の能力を高めるための支援は、特に政府の支援は、限られている。団体の間には、リーダーシップの資格を築くと称する不適切なイニシアチブもある。自助組織と親の会が、国内全体の発展のためのイニシアチブと運動において代表となる場面は限られている。

国内には数多くの自助組織が生まれたが、その持続性については疑問が残る。このような組織が突然閉鎖された場合、悪影響があるかもしれない。ほとんどの団体と協会は、組織とプログラムの開発を進めるのに必要な資金を得られていない。また、組織の運営をサポートするための資金もわずかである。

 

2 障害をもつ女性

目標の達成状況 : 目標3

政府は2005年までに、必要に応じて、障害をもつ女性の権利を守るための差別禁止対策を講ずる。

質問参照3.1

政府は、必要に応じ、障害をもつ女性の権利を保護する差別禁止対策を確実にするため、また国内の全国規模の女性の会のメンバーシップを与えるため、いくつかのイニシアチブを取った。

目標4

障害者の自助組織は2005年までに、マネジメント、組織訓練、権利擁護プログラムなどの活動に、障害をもつ女性の完全参加と平等の代表権を与える政策を採択する。

質問参照4.1

ほとんどの自助組織は政策を採択したか、または障害をもつ女性の代表の参加を積極的に進めている。最近、全国レベルでの自助組織同盟が形成され、また障害をもつ女性の全国レベルの同盟も出現した。両者とも国際団体や国内のSHOから財政支援を受けている。

目標5

障害をもつ女性は2005年までに、全国規模の女性の会のメンバーになる。

質問参照5.1

バングラデシュ政府は、地域社会のあらゆる層の代表において、女性の参加を奨励してきた。その結果、障害をもつ男女は、ユニオン評議会(地方の評議会)、および国家レベル評議会のメンバーとして貢献している。

 

要求される行動の状況:

バングラデシュ政府は女性の包括的な健康管理に重点を置いてきた。バングラデシュでは、障害をもつ女性の多くが、高度の栄養不良と環境汚染に苦しんでいる。政府は健康管理へのアクセス、教育、訓練、および雇用を促進するためのイニシアチブを取ってきた。

政府機関によるマネジメント研修とリーダーシップ研修に、女性と障害をもつ女性がアクセスできるようになった。さらに多くのNGOが、様々な訓練プログラムを通じ、障害をもつ女性に資格を与えようと活動している。一般に、開発パートナーはNGOがそのような訓練を行う支援をし、政府は資金を得られるよう承認を与えることでNGOを支援している。将来的に政府は、訓練の質を評価し向上させるための見直し機能を導入する計画である。

バングラデシュは、女性や子供に対する性的、またはその他の虐待と暴力をなくすために闘っている。政府はこの問題を解決するため、「女性と子供の抑圧防止条例2000」という名前の法律を施行、2003年に改正した。特殊な法律、たとえば結婚持参金禁止法1980や女性と子供抑圧条例1995なども、女性と子供の抑圧、虐待、売買防止に大きな役割を担っている。

女性と子供の権利に対する認識を高め、国の印刷物や電子メディアを通じてあらゆる暴力と偏見から守ることが重要である。

バングラデシュ政府は、自治体と国のNGO、自治体政府、マスメディア、および支援プログラムを通じ、地域、国家、コミュニティー・レベルで、障害をもつ女性の権利と特権が性差別を受けている実態の普及を図っている。

閣僚級の国内調整委員会と自治体レベルの地区障害者福祉委員会は、それぞれの地域で、障害をもつ女性への情報の普及に貢献している。

重要な問題:

開発実行者、メディア、人権団体、および婦人グループは過去数十年、バングラデシュにおける「女性」の地位向上のために熱心に活動してきた。国内における「女性」の地位は目に見えて向上したと言える。バングラデシュの発展において、女性の「参加」と「貢献」は重要だ。

残念なことに、これらの取り組みは障害をもつ女性の問題を適切に考慮しているわけではない。障害をもつ女性への配慮とサービスは、障害をもつ男子と男性のそれに比べはるかに劣っている。ほとんどの場合、障害をもつ女性は家族内で差別を受け、医療、教育、職業訓練、雇用、および所得創出の機会へのアクセスを否定され、かつ社会、および地域活動から除外される。

国内のほとんどの家庭において、女子は家族の重荷である。女の子が成長し思春期にさしかかり女性になると、家族が増加する心配がある。バングラデシュにおいて、障害をもつ少女や女性は身体的、性的虐待を受けるリスクが大きい。その結果、多くの家族は「障害をもつ女児」を家から学校や職場に通わせるのをためらう。

障害をもつ女性が人生のパートナーを見つけるのは大変難しい。「障害をもつ男性」の多くは、特に農村部では、多くの場合花嫁を見つけることができるが、「障害をもつ女性」の家族は「人生のパートナー」を見つけることが難しい。

「障害をもつ女性」の移動手段は未だ大きな問題である。公共交通機関を利用するにも大きな困難にぶつかる。丘陵地帯や地理的に困難な地域に住む障害をもつ女性は、移動においてさらなる困難に直面する。雨期には、自宅周辺の移動にも問題が生じる。

過去10年間、バングラデシュでは自助 の動きがおおきなうねりとなった。自助組織がつぎつぎに設立され、障害者の権利を促進・主張するようになった。しかし、自助のイニシアチブにおいて障害をもつ女性の参加と役割は、未だ限られている。これらの問題に適切な光はあてられていない。

国内の開発のシナリオにおいて、障害者がリーダーシップを取ることは大変まれである。リーダーシップを取ったとしても、ほとんどの場合それは障害をもつ男性である。バングラデシュでは、障害をもつ女性にリーダーシップの資格を育てる機会は限られている。

障害をもつ男性と女性の間に広がる伝統を変える政府の取り組みはまだ限られていると、障害をもつ女性は報告している。

 

3.早期発見、早期介入および教育

目標の達成状況 : 目標6

2015年までに、全ての少年少女に初等教育の全課程を受けさせるというミレニアム開発目標のターゲットにおいて、障害をもつ子供と青年も例外ではない。

障害をもつ子供の教育問題は、初等教育開発計画に含まれている。教育・初等大衆教育省は、障害をもつ子供を段階的に普通教育に含めることを公式に発表した。

多くのNGOが、自らが運営する非公式の教育プログラムに、障害をもつ生徒の入学を認めるようになった。初期介入の取り組みはNGOレベルで行われているが、全国的なニーズに対し、その数は非常に限られている。

目標7

学齢期に達した障害をもつ子供と青年のうち、少なくとも75パーセントは、2010年までに初等教育の全課程を修了する。

質問参照7.1

初等教育部(DPE)初等大衆教育課(PMED)が2002年に行った調査(ESTEEM-II)の結果によると、開発機関が障害に関する活動を行っている地域での入学率(18%)は、障害活動のない地域の入学率(4%)に比べ高かった。

質問参照7.2

教育・初等大衆教育省は、初等教育開発計画の中で、障害をもつ生徒をメインストリームの普通教育を受けさせる方針を含めている。

MOSW、社会サービス部(DSS)は毎年、およそ1500人の障害をもつ子供に教育の機会を創出してきた。教育の機会には、初等教育の機会に加え、特別教育・統合教育と職業・技能教育の機会を含む。

政府は障害者が重視される教育プログラムに対する資金を導入した。障害者の教育を促進するため、視覚障害をもつ生徒のための統合学校を64校、視覚障害をもつ子供のための特別学校を5校、聴覚障害をもつ子供のための学校を7校、そして知的障害をもつ子供の学校1校を無料で受けられるよう運営している。さらに、政府は国内のNGOを通じ、障害をもつ子供のインクルーシブ教育に向け、財政的、技術的支援を提供してきた。

国内のNGOには、全国レベル、または地域レベルで特別教育プログラムを実施し、毎年入学者枠を広げているところもある。近年NGOは、非公式の普通教育プログラムに障害を持つ子供を受け入れるようになり、入学率は徐々に増加している。

目標8

2012年までに、全ての乳幼児(誕生から4歳児まで)はコミュニティベースの早期介入サービスを受けられるようになる。サービスは乳幼児の生存を確実にし、家族のための支援と訓練も含む。

質問参照8.1

政府は87ヶ所の国立病院で「病院における社会サービス・ユニット」を導入し、ソーシャルワーカーのチームが確実に障害者にアクセスし、支援できるようにした。また、火傷の被害者には医療費と治療の援助を行い、障害者には特別な配慮をするようになる。政府はまた、女性を含めた全ての障害者がBCC教材にアクセスできるよう特別の措置をとった。

目標9

政府は、できる限り早期に障害を発見する施策を確実に行う。

質問参照9.1

全国レベル、および地域レベルの国立病院は、障害者を含む全ての年齢の全ての国民に対し、ヘルスケア・サービスを提供している。政府が運営するコミュニティー・ヘルスケア・センターは、医師と訓練された地域の保健師による基本的なヘルスケア・サービスを提供し、障害を早期に認定する役割も担っている。最近、多くのコミュニティベースのNGO(300以上)が、訓練を受けたコミュニティのリハビリテーションワーカーによる、子供の障害の早期発見、早期介入を始めた。

全国レベル、および地域レベルの民間病院も、障害の発見と早期介入のための特別なサービスを提供している。

要求される行動の状況:

障害者条例2001のD項では、障害をもつ成人と子供の教育を確実にするため、特別な施策を指示している。それは、初等教育に関するミレニアム開発目標とも関連する。

2007年に承認された障害者に関する国家行動計画は、障害をもつ子供の教育を促進するための特別な行動を指示している。

社会福祉省は、社会サービス部を通じ、特別統合教育センターに視覚障害者のための、点字教材などの教育教材を提供する。NGOは、聴覚・言語障害をもつ生徒との意思の疎通を図るための手話教材を導入し、情報・通信技術を促進している。

障害をもつ子供の教育に対する意識を高め、教育の展望と機会を創出するため、啓発キャンペーンが全国的に展開されてきた。NGOは、地方と都市の両方で、政府当局機関と開発に取り組む団体などの横断的な人材を招いたセミナーと啓発ワークショップを、全国、および地域レベルで開催してきた。障害者の日2002のテーマは「障害をもつ子供の教育促進」であった。キャンペーンのメッセージには、障害をもつ女児の教育を優先した。

初等教育開発計画に応じ、初等教育省は新規に建設した学校に、アクセシビリティの考えを導入した。学校には車いす用のスロープが設けられている。他の学校でもスロープを設けることを計画している。

2001年から2002年にわたり、初等教育部(DPE)初等大衆教育課(PMED)は、英国国際開発省(DFID)の支援とケンブリッジ・コンソーシアムの技術支援を受け、「困難な環境にいる子供の教育」の調査を行った。調査は、障害をもつ子供の教育状況、これまでの展望と機会、政策的な対策を含む治療の可能性、教育促進の機会創出、についての情報を幅広く網羅している。

ダッカ大学の教育研究所と社会福祉研究所、および社会福祉省の特別教育センター(NCSE)もまた、障害をもつ子供の教育を促進する研究分野で貢献している。

重要な問題:

バングラデシュでは、障害の早期発見に必要な「知識」と「技術」をもっている人の数は限られている。特に農村部では数が少ない。農村部ではいまだ、大半の出産は「伝統的な助産婦」の手で行われている。障害に関する知識をもつ助産婦はほとんどいない。地域の保健師も障害に関する指導を受けてはいない。母親も同様である。その結果、子供の障害が早期に発見されることはほとんどない。

バングラデシュでは、障害についての「無知」と「誤解」が横行している。障害をもつ子供を産むと、母親が非難されるのが一般的である。多くの人は未だに「障害」を、呪い、悪の心を持つことに対する神からの罰であると考える。多くの人はまず、宗教治療家、心霊治療家、またはいんちきな医者にかかる。そこで受ける治療が、多くの場合、子供の障害の状況を悪化させることになる。

国内ではまだ、早期の障害発見・介入サービスは、総合的な健康・社会サービスの一環とはなっていない。障害をもつ子供のほとんどは、早期介入サービスにアクセスすることができない。その結果、障害に起因する二次障害が起こる。

バングラデシュは「全ての子供に教育を」と呼びかけているが、障害者の教育の機会はまだ限られている。就学年齢に達した、障害をもつ子供が教育を受けられる割合は5%以下と推定される。国内における障害者の教育を妨げる主な要因には、消極的な態度、情報と技術のある教師の不足、不適切な教師の訓練、硬直したカリキュラムと評価方法、適切な教材と教具の不足、障害者の通学を妨げる学校の構造と環境、が挙げられる。

学校に入学し勉強を続ける場合に、子供が直面するであろう難しい問題を恐れ、多くの親は障害をもつ子供を学校に送るのをためらっている。また、学校は障害をもつ子供が通うには遠すぎるところにあるため、あるいは雨期には道路がアクセス不能になるため、障害をもつ子供の多くは勉強することができない。

聴覚・言語障害、視覚障害、および知的障害をもつ生徒の教育の機会は特に限られている。国内には、聴覚・言語障害を有する生徒が高等教育を受けられる学校はほとんど存在しない。視覚障害をもつ学生が受けられる高等教育は、2、3の科目に限られている。

障害をもつ学生とその両親は、この先の教育、特に高等教育を受けられるどうかを心配する。多くは教育の最終結果と、雇用される可能性に懐疑的である。教育は大きな課題であると考えている。多くの家族が子供の教育に投資するのをためらう理由はここにあると、障害者とその家族は考える。

障害者は通常、スポーツや試合から取り残される。近年、NGOは障害者のスポーツや試合を促進する意識改革活動を始めた。ここ2、3年、NGOは、全国レベル、または地域レベルでスポーツ大会を開催している。ほとんどの地区レベルの活動において、地区障害者委員会に採択された障害関連問題に関する計画は、地区レベルのスポーツに障害者の参加を認める計画を受け入れている。

障害者のスポーツ参加で大成功を納めたのは、知的障害をもつ子供がスペシャルオリンピックに参加し、多くの金、銀、銅メダルを獲得したことである。

 

4.自営を含む訓練と雇用

目標の達成状況 : 目標10

2012年までに、少なくとも調印国(加盟国)の30パーセントは、(障害者の)職業リハビリテーションおよび雇用に関する国際労働機関条約(NO.159)1983に批准する。

質問参照10.1

バングラデシュ政府は1972年に、国際労働機関(障害者の)職業リハビリテーションおよび雇用条約に批准した。条約第100号は1998年に批准したが、条約第138号(最低年齢条約)はまだ批准していない。

目標11

2012年までに、調印国で実施される職業訓練プログラムの少なくとも30パーセントに障害者が参加でき、適切な支援と職業の斡旋、または事業開発サービスを提供する。

質問参照11.1

政府は障害者のための訓練センターを、国内の異なる地域5ヶ所で運営している。中でもガジプールにある肢体障害者のための雇用リハビリテーション・センター(ERCPH)は、選ばれた障害者に居住設備の整った訓練施設を提供し、様々な職業訓練を行っている。訓練コースを終了した研修生には、中小の起業にむけた着手金が与えられる。

社会福祉省は障害者向けの福祉信託を運営している。この信託の支援を受けて、「Maitree Shilpa」は自社の製品、プラスチック商品、「Mukta」ミネラル・ウオーター・プラントという社会企業に障害者を雇い入れ福祉事業に貢献してきた。

目標12

2010年までに、障害者の雇用と自営の割合についての信頼できるデータが、全ての国に存在する。

質問参照12.1

NGOは2002年9月、「バングラデシュにおける障害者の雇用状況」調査を行った。調査対象者には、雇用されている、または雇用に不可欠な技術または教育を有する障害者が選ばれた。452人の回答者のうち、66%は自営業を営んでいることが明らかになった。政府が雇用主であると回答したのは5%、一方非政府団体に雇用されているのは17%であった。残りは民間に雇用されていることが分かった。

要求される行動の状況:

バングラデシュ政府は、政府の雇用の5%を障害者に割当てることを決定した。さらに、クラス1の政府の仕事には1%の割当が決められた。

社会福祉省は、障害者手当、国の所有地の分配を通じたリハビリテーション・プログラム、および老齢手当の支給を導入した。社会サービス部を窓口とし、該当する障害者へのマイクロ・クレジットの開始も始めた。政府はまた、酸で火傷を負った女性と肢体障害を持つ女性のための特別な、無利子のマイクロ・クレジットを導入した。

バングラデシュ政府は、職業リハビリテーションと雇用に関する国際条約を批准した。「障害に関する国家政策」と「障害者福祉条例2001」は、バングラデシュに住む障害者の権利、および平等な待遇と機会を守るための規範である。

政府とNGOのネットワークは啓発活動と支援活動を通じ、民間セクターに障害者の雇用を奨励している。政府とNGOの両方において、障害者の雇用創出の傾向が拡大している。

社会福祉省は障害者のための訓練センターを、国内の異なる地域5ヶ所で運営している。中でも身体障害者のための雇用・リハビリテーション・センター(ERCPH)はよく知られている。ERCPHは選ばれた障害者に居住設備の整った訓練施設を提供し、様々な職業訓練を行っている。訓練コースを終了した研修生には、事業を開始するための着手金が与えられる。このように、政府は国内における障害者の雇用に寄与している。

政府、特に社会福祉省は、国家、または地方レベルでNGO, NGOネットワーク、並びにDPOと協力し、雇用の促進を図っている。また政府は、社会サービス部を窓口として、団体、および地域ベースの両方において、職業訓練とリハビリテーション・サービスのための資金を割り当てている。さらに、国内、国際、および地方のNGOが積極的に貢献している。

社会福祉省と一部の政府系銀行は、障害者の自営を促進するため、無利子または単利の小規模なマイクロ・クレジットを創設した。

重要な問題:

バングラデシュの経済において失業は大きな問題であり、多くの国民の問題でもある。障害者の状況はさらに悪い。採用の過程で差別を受ける。また、障害者を雇う意思があっても、適切な人材を見つけるのは困難であると述べる雇用主もいる。

障害者には、雇用を確保するために必要な条件、例えば教育、技術、経験などが不足している。このことが、障害者を雇用の競争から後退させる。さらに、障害者の可能性に対し、雇用主が否定的な態度をもっていたり懐疑的であることも採用を妨げる要因となっている。

雇用された障害者は、ほとんどが定型的な仕事に就いている。障害者の仕事の選択肢は限られている。さらに雇用の保証もない。また、障害のない人に比べ、収入と手当に差別がある。

さらに職場の環境は、障害者にとって適切ではない、またはニーズに適合していない。

自営においても、障害者は数々の妨害に直面する。障害者は、ビジネスを始めるための、あるいは拡大のための資金を得るのが難しい。否定的な態度や誤解により、人々は障害者と取引するのを避ける傾向がある。障害者は、障害を持たない人と比べ、支払われる額が少ない場合もある。

 

5.既存の環境と公共交通機関へのアクセス

目標の達成状況 : 目標13

政府は、公共施設、インフラ、および交通機関の建設を計画する場合、地方・農村地域においても共通のアクセス基準を、採択・実施する。

質問参照13.1-4

バングラデシュの建築基準法は1993年に公布された。しかし、同法はまだ法律文書として施行されていない。

建築基準法の目的は、設計、建設、資材の品質、使用と居住、建物の配置とメンテナンスにおいて最低限の基準を設けることにある。基準法の規定は、全てのバングラデシュ国民に適用すると明記されている。従って障害者も規定に含まれる。ただし、アクセス基準はまだ採択されていない。

目標14

新たに建設・改修する公共交通システムは、道路、水上、軽量・重量鉄道、および空路の交通システムにいずれにおいても、障害者と高齢者がアクセスできるように建設する。既存の陸、水、空の公共交通システム(車両、停車所、発着所)は、できる限り早く改修する。

質問参照14.1

障害に関する国家行動計画は、国営の交通機関と発着駅において、トイレ、スロープ、専用のチケットカウンター、および専用席など、障害者にとって必要不可欠な機能の設置を盛り込んでいる。

質問参照14.2

首相府は、鉄道と河川交通の発着所に、障害者専用のカウンターを設置する回覧を配布した。障害者に関する国家行動計画は、鉄道の駅、河川交通の発着所、および国営のバスターミナルにおいて、障害者のアクセスを可能にする機能の設置を盛り込んでいる。

質問参照14.3

既存の公共交通システムを、障害者と高齢者が利用できるようにする政策を採択するため、関係者、特に通信省とバングラデシュ道路交通局との間で話し合いが持たれてきた。

目標15

全ての国際的な、および地域のインフラ開発のための基金提供機関は、ユニバーサルでインクルーシブなデザインというコンセプトを、借款や助成金を認める際の基準に含める。

質問参照15.1

情報はない。

要求される行動の状況:

バングラデシュ工科大学(BUET)は、障害者のアクセシビリティに関する課題を教育課程に含めた。学生には、障害者も含めたインクルーシブな建物の設計に関する学位論文を奨励している。

ハンディキャップ・インターナショナル・バングラディッシュは2005年に、DFIDの支援を受けて「アビリティからアクセシビリティまで」と題したアクセシビリティに関する徹底的な調査を行った。そこには今後取るべき措置と対策に加え、綿密な状況分析が映し出された。結果は関係当局、および関係機関と共有され、障害者の生活全般を向上させるために用いられる。

水と衛生改善のために活動するNGOのネットワークは、国内の仲間のNGOを通じ、水と衛生におけるアクセシビリティについての調査を開始した。都市と地方のいずれにおいても効果があり、かつ障害者が利用しやすい、水と衛生のための手段を明確にするため、結果の全ては障害者のために活動する機関、および障害者と共有した。

重要な問題:

バングラデシュで建設されているほとんどの公共、および民間の建物は、障害者がアクセスできる構造にはなっていない。建設業者が建築基準法を順守していないためである。建物を利用することができないため、ほとんどの障害者は基本的な公共サービスを受けることができない。

建築物における障害者の利用を可能にする環境についての政策立案者の理解は進んでいない。新築の建物では、出入り口に障害者のアクセスを考慮した2、3の取り組みの後が見られるものもあるが、建物内部のアクセシビリティについては大方見過ごされている。

バングラデシュの道路は、障害者が利用するのには適していない。特に移動のための補助具を利用する肢体障害者には難しい。バス、鉄道、水上交通のいずれの駅も、障害者のニーズに適応していない。大半の障害者は、利用環境の整っていない埋め合わせとして、他の人の助けに頼っている。

バングラデシュの建物と公共交通において利用環境が整っていないことが、障害者の社会参加とインクルージョンを妨げる大きな障害になっている。

 

6.情報、通信、および支援技術を含む、情報通信へのアクセス

目標の達成状況 : 目標16

2005年までに、障害者は、少なくともその国の市民と同じレベルでインターネットと関連するサービスにアクセスできるようにする。

質問参照16.1

アジア・インターネット世界統計の市場調査とインターネット利用人口統計の情報によると、バングラデシュのインターネット利用者は2007年3月時点で370,000人である。

質問参照16.2

障害者がインターネットにアクセスする割合についてのデータはない。

質問参照16.3

国レベルでのそのような取り組みはまだ始まっていない。NGOは自主的な努力で、一部の視覚障害者にインターネット・ネットワークへアクセスできる環境を提供しており、この技術を他の視覚障害者にも普及させる活動を開始した。

NGOネットワークは、障害者のためのICTに取り組むNGOと協力し、この問題に介入し、促進させる活動を開始した。

全国障害者団体協議会の旗印の下で、障害者のためのICTに関するテーマ別作業部会は、政府と担当する機関に、この取り組みを促進させる申し入れを開始した。

目標17

国際ICT基準を担当する国際機関(国際電気通信連合、国際標準化機構、世界貿易機関、ワールドワイド・ウェブ・コンソーティアム、動画技術グループなど)は2004年までに、国際ICT基準の中に障害者のアクセス基準を盛り込む。

質問参照17.1

そのような取り組みはまだ始まっていない。

目標18

政府は2005年までに国のICT政策において、障害者のためのICTアクセス・ガイドラインを採択し、具体的には、障害者を受益者とする適切な対策を盛り込む。

質問参照18.1

担当である科学技術省はまだ取り組みを始めていない。

目標19

政府はそれぞれの国における、手話、指点字、および触読手話の標準化を進め、その結果を、出版やCD-ROM等あらゆる手段を通じて教育・普及させる。

質問参照19.1

ベンガル語の手話は、NGO団体である開発における障害センター (CDD) が2003年に開発し、現在も開発中で、毎年更新されている。

社会福祉省は専門家と政府職員からなる委員会を設置し、1993年にベンガル語の点字を改良・改正した。さらに、視覚障害をもつ学生と視覚障害者関連団体により、さらなる改良が行われた。

触読手話は、バングラデシュではまだ開始されていない。

目標20

政府は、それぞれの国において、手話通訳者、点訳者、指点字通訳者、および朗読者(ヒューマン・リーダー)を養成・派遣するシステムを確立し、その雇用を奨励する。

質問参照20.1

手話通訳者とその養成者は、以下の訓練を通し能力を高める。ろう者を含む聴覚・言語障害者の発展に取り組むNGOがまず訓練を受け、そのノウ・ハウを個別のプログラムで紹介する。プロの通訳者は、配置に基づいて支払われる。

要求される行動の状況:

ICTをバングラデシュで普及させるため、NGOネットワークは、ワークショップ、セミナー、メディア・キャンペーンを通じ、啓発プログラムを実施してきた。

専門家と関係団体を交えた、障害者のための情報通信技術に関するテーマ別作業部会が設置され、障害者のICTへのアクセスを促進する活動に取り組んでいる。

視覚障害者向けのソフトウェア、JAWSとDAISYが導入された。開発における障害センターと有名なソフト開発会社であるアナンダ・コンピュータの協働により、コンピュータ処理できるベンガル語の点字ソフトも開発された(テキストから点字、点字からテキスト)。

一部の教育機関とNGOの事務所には、コンピュータ処理できる点字とその他のICT手段のデモ・センターが設立されている。国営チャンネルは週に一度、特定のニュース番組に手話通訳を導入している。

多くのNGOが、自身が運営するICT関連施設で、視覚障害者のアクセスの向上、特にコンピュータとインターネット・サービスへのアクセスを開始した。しかし、この取り組みは非常に限定的で、一握りの学生とNGOで働く人だけに許されている。

重要な問題:

障害者の情報通信へのアクセスは限られている。部分的に「代替コミュニケーション」を使用する場合もある。聴覚・言語障害者は、情報にアクセスする機会を大幅に剥奪されている。バングラデシュには未だ承認を受けたベンガル語の手話はない。コミュニケーションの壁により聴覚・言語障害者は不当に扱われ、「孤立」する。ろう者と視覚障害者のコミュニケーションのニーズは見過ごされている。

コンピュータにアクセスできる障害者は非常に少数である。ソフトの代金は、障害者にとって非常に高価である。

貧しい学生にとって点字文書にアクセスするのは時に「ぜいたく」である。重要な国内外の文書は、ほとんど点字化されていない。視覚障害者は日々の生活で、技術の恩恵を得ることができない。視覚障害者は、銀行でATMカードをもらうことができない。インターネットへのアクセスにも困難を伴うので、視覚障害者の情報へのアクセスは限られている。

 

7.貧困の緩和、社会保障、暮らしの計画

目標の達成状況 : 目標21

政府は1990年から2015年の間に、1日の所得/消費が1ドル以下の障害者の割合を半分に削減する。

質問参照21.1

1日の所得/消費が1ドル以下の障害者の割合を調査する取り組みはまだない。

質問参照21.2

上記事項に関するデータを調査する取り組みは行われていない。

要求される行動の状況:

政府は、障害者に資金と訓練を提供するために、積極的に策を講じた。また、特別な社会保障および貧困削減プログラムを通じ、恵まれない重度障害者への手当の支給を導入した。

多くのNGO(300以上)が、障害者のための所得創出活動の支援にかかわっている。

バングラデシュ政府は、障害者とその家族の包括的な発展を目標として、国家障害者政策1995、障害者福祉法2001、国家社会福祉政策2006、および障害者に関する国家行動計画2006を採択した。

主導的立場にある省の一つとして、社会福祉省は、障害者も社会の本流に含めるなど貧困者のための開発プログラム政策を立案・運営している。

政府は、貧しい障害者のための収入創出活動を促進するため、障害者の発展のための国家基金を窓口として、NGOに対し回転資金と助成金を割り当てた。

政府は、社会福祉省が直接運営する学校に、全面的な技術的・財政的支援を提供している。また、障害者を含む高齢者には老齢手当を導入した。

政府は、社会福祉省ホスピタル・ソーシャル・ワークを通じ、障害者を含む貧困な患者に支援している。社会福祉省は障害をもつ学生への奨学金の導入を検討している。

国民予防接種週間、国民予防接種の日、あるいはヨード添加塩の義務など様々な日や週間を設定し、政府は障害原因の予防対策を取ってきた。また、障害合併症や障害原因を予防するために、健康への意識改革を訴えるキャンペーンを実施している。

貧困の削減を促進する国家戦略は「可能性の鍵を開ける」と名付けられた。この戦略は、障害者特有の困難と制約に焦点を当てている。貧困問題を解決するために採択された主な戦略は、全てのレベルでの教育費の免除、公務員職の割当、交通費の免除または割引、障害をもつ弱者への国有地の分配、および老齢手当、訓練の機会、並びに雇用機会の導入、である。

社会福祉省は高齢者のための病院を支援している。NGOと民間団体も高齢者リハビリテーション・センターをいくつか運営している。

重要な問題:

バングラデシュでは国民の40%以上が貧困ライン以下の生活を送っている。障害者が貧困生活者に占める割合はかなり大きい。障害者とその家族は大部分が、貧困程度がより厳しい農村部で生活を送っている。これらの家族にとって、障害者と一緒に生活することは、貧困の状況をさらに悪化させる。家族の総収入を増加させるため、家族のほとんどは何らかの収入獲得、または収入貯蓄活動を行っているが、障害者が家族にいると、障害者の面倒を見る人が必要になり、従って収入獲得活動に従事できる人数が減り、家族の総収入が減ることになる。

その結果、障害者は、ニーズに合わせたサービスなどの必要なサービスの機会を奪われる。また、治療法や補助具を受ける余裕もない。そのようなサービスを受けられないことで、障害の状況は悪化する。貧困により、教育、職業訓練、ヘルスケア、自営業などにアクセスする機会も限られる。

貧困な障害者に「障害者手当」を提供する政府の計画は、わずかな障害者にしか到達していない。多くの障害者は、手当てを受ける資格を得るための手続き上の要件が長くて難しく、完璧に記載するのが難しいと述べる。また、政府の担当事務所の態度が否定的、適切で早急な行動が取られていない、手続きが遅いと不平を言う障害者もいる。政府はまた商業銀行に対し、障害者へローンの貸付を行うよう求めているが、多くの障害者はそのような機会を知らされておらず、あるいは手続きを恐れてローンを借りるのに前向きではない。障害者が自営業を始めるにあたり、ローンの代わりに助成金の提供を政府に期待する障害者もいる。この「無償で恩恵」を得るというメンタリティーもまた、障害者が社会から尊厳と敬意を得る妨害となっているようだ。

バングラデシュにおいてNGOの開発のためのイニシアチブは、貧困生活者を経済的に解放するプロセスにおいて、大きな責任を担っている。残念なことに、「貧困者」のためのプログラムの多くは、障害者のニーズを代弁していない。多くの団体が、障害者にはマイクロ・クレジットを提供していない。職業技術訓練の受給者の中に障害者が含まれることはない。

障害が分野横断的な開発問題であると認識されるようになったのはごく最近のことである。しかし、この理解は一部の政府とNGO関係者に限られている。開発問題の鍵を握る障害者の重要性、並びに貧困、人権、および国際的に合意した開発目標の達成に関連しての障害者の重要性は、いまだ適切に受け入れられていない。

障害者問題に取り組む人々と機関のセクションでは、バングラデシュにおいて、障害者福祉法2001、障害者政策、およびその行動計画の要件はまだ十分には実施されていない、とコメントしている。これらの文書の要件を達成するための資金の調達、適切な実施とフォローアップの機構が可能であれば、障害者の貧困状況は飛躍的に向上するであろう。