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第2次「アジア太平洋障害者の十年」
最終年と今後

松井 亮輔
日本障害者リハビリテーション協会副会長 

出典:すべての人の社会 2012 No.381
編集/日本障害者協議会
発行/日本障害者リハビリテーション協会

第2次十年とBMF

 「アジア太平洋障害者の十年(1993年~2002年)✽1」(以下、十年)の最終年にあたり、同十年の行動課題 の達成状況を評価するとともに、同十年以降の取り組みについて検討するため、最終年ハイレベル政府間会合が2002年10月下旬、滋賀県・大津で開か れました。そこで第2次十年(2003年~2012年)で取り組むべき政策ガイドラインとして「アジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブで、バリア フリーかつ権利に基づく社会に向けての行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」(以下、BMF)が採択されました。
 第2次十年の実施が決まった2002年からは、ニューヨークの国連本部で特別委員会を中心に、障害者権利条約交渉がはじまったことから、日本も含め、ESCAP✽1加盟国関係者の関心は、第2次十年とBMFの実施よりも、むしろ条約交渉に向けられるようになりました。また、第1次十年では、行動課題の進捗状況などについてESCAPで年2回の障害関係会議(TWGDC✽2)および2年ごとの評価会議が開かれ、各国関係者の間に情報の共有がなされていました。しかし、第2次十年では2007年の中間年の評価会合以外には定期的な会合がほとんど開かれなかったこともあり、関係者間でさえ、第1次十年と比べ、第2次十年への関心はきわめて低かったと言えます。

新十年とインチョン戦略

 ESCAP事務局では、アジア太平洋地域において障害者権利条約の批准と履行を促進することを目的に、第2次十年に引き続いて新十年(2013年~2022年)を設けるためのステップとして2010年6月にバンコクで専門家会合を開催。同会合の提案を受け、2010年10月に開かれたESCAP社会開発委員会で新十年の実施が決議されました。そしてこの決議が昨年5月のESCAP総会で承認されたことから、新十年に向けての準備が本格的にはじまりました。その一環として実施された第2次十年およびBMFに関する政府および障害NGOなどへのアンケート調査結果を踏まえ、とりまとめられた新十年戦略(インチョン戦略)案が昨年12月14日~16日ESCAPで開かれた関係者協議会合に諮られました。同戦略案は、①前文、②主要政策方針と原則、③インチョン・ゴールおよびターゲット(INGOTS✽3)、④効果的な実施方法から構成される。③のゴールおよびターゲットには、10のゴールと22のターゲット、および35の指標が含まれます。たとえば、ゴール1「貧困の削減と雇用見通しの改善」の指標のひとつとしては、労働年齢の障害者の就業率と労働人口全体の就業率の格差を半減することが提案されています。

 12月の関係者協議会合での検討結果を踏まえ修正されたインチョン戦略案が3月14日~16日にバンコクで開かれる政府間準備会合で提示されることになっています。そこでの議論を経て、さらに修正されたものが、今年10月29日~11月2日に韓国インチョンで開かれる第2次十年最終年ハイレベル政府間会合に諮られます。
 このハイレベル政府間会合にあわせて、アジア太平洋障害フォーラム(APDF)会議や国際リハビリテーション協会(RI)世界会議などが開催されるなど、10月のインチョンでの会合は、2013年以降のアジア太平洋地域における障害施策の方向性を決めるきわめて重要なものだけに、JDからもできるだけ多くの方々が参加され、積極的に発言されることが期待されます。


✽1 1981年・国際障害者年のスローガンである完全参加と平等の実現に取り組むため実施された「国連・障害者の十年(1983~1992)」に続き、アジア太平洋地域ではまだ課題があるとし、アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)で決議・実施された。

✽2 Thematic Working Group of Disabillity Concerned:課題別作業部会の障害部会

✽3 Inchoen Goals Targets