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障害をもつひとと災害対策シンポジウム

基調報告
「災害から命を守るために、わかりやすい情報を早くみんなで分かち合うシステムの提案」

(財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター長 河村 宏

河村氏
おはようございます。今ご紹介いただきました河村宏です。まずおわびを申し上げなければならないのですが、しゃれにもならないことですが、今朝、目覚し時計のバッテリーが切れておりまして。実は打ち合わせの時刻であるという携帯電話の呼び出してはじめて目がさめまして、あわてて出てきました。本当に申し訳ありませんでした。非常に私にとっても苦い経験ですが、実際に色々なシステム、私はたくさんのコンピュータやあるいは機器を毎日使っていますが、バッテリーが切れるというほど恐ろしいものはないと、身にしみて体験いたしまして、深く反省をしております。 本日の私に与えられましたテーマは、これまで放送協議会という団体が、参加できるようにしているそういう取り組みを行ってきた中で、なぜ障害時のシステムを新しく作り上げなければならないのかということです。理由と、これから何をしようとしていくのか、それについてご紹介することが私の役割です。 タイトルはわかりやすい情報を早くみんなでわかちあう、それがこれからお話いたしますタイトルです。 まず、わかりやすい、それから早く、そしてみんなで分かち合う、このように三つにくくって私たちの思いをこめたものがこのタイトルです。 なぜそうなのか、プロジェクトの目的、お手もとの資料に、私のレジュメの最初のほうにプロジェクトの目的をかかげてあります。災害時の地域、および、それぞれにおける障害者と高齢者の個人としての尊厳を大事にする情報システムの開発の普及。このように書きました。ひとつひとのキーワードについてご説明をします。 まず、障害者というように表現しています。障害をもつ方というのはさまざまです。本日もすでにふれられたと思いますが、先ほどの聴覚障害をお持ちの方。、聞こえない方には、ふだん使う文字を情報の手段として使う方と、手話を使う方がいらっしゃいます。そして、聞こえない方あるいは同時に視力に障害がある方もいらっしゃいます。つまり、盲ろう。そして、視力に障害がある方。視力に障害のある方は情報の手段としては、聴覚、そして点字を習得された方もいれば、普通の印刷された文字を使う方もいらっしゃいます。聴覚が十分機能している方は録音図書を使っておられます。 つまり視覚に障害がある、聴覚二障害があるといいましても、それぞれ日常使う手段には、またその中でさまざまなバリエーションがあります。モビリティー、移動に障害がある方、そしてほかに車椅子を使っている方、あるいは脳性まひで移動が自由に行えない方もいます。 それから、脳性まひ等で自分から情報を発する点に障害がある、例えばキーボードを使いたくても手が自由に動かない、あるいは発生の筋肉に麻痺があって、十分に発声ができない等、いいたいことがたくさんあっても自分からは情報発信できないことがあります。このように多種障害があります。また、外部からはわからない内部障害、例えていえば、大きなトラックをバイクのエンジンで走らせる、そのような心臓に障害がある方もいらっしゃいますし、肺の機能が弱い方もいます。そういう場合にはまったく外見上はわからない。そして、瞬間的には一見何でもできる。でも、それはさきほどたとえましたように、小さいバイクのエンジンでダンプを走らせるとなったらどうなるのか、という障害もあります。ほかに認知、あるいは情報をどのように理解するか、その部分で障害をもつ方もあります。知的障害者障害の方もいらっしゃいます。そして精神障害と呼ばれる一連の障害をもつ方もいらっしゃいます。それぞれの方がそれぞれの日常の努力をしながら情報を発信し、受け、そして社会生活に参加しているわけですが、これらのかたがた、個別に色々な障害とわけていきますとそれを非常にたくさん併せ持つ高齢者の方々、たくさんのものを複合して持っている方々のニーズ、それを十分に包囲した情報のわかりやすさ、そして、それぞれの方がアクセスできる形の情報の提供と発信のしくみ、それを作っていこうと、作らなければいけないんじゃないかと思うのです。それが、放送協議会での私どもの結論です。その中に、どうしても放送というものは、中心的な存在になります。従いまして、その放送の内容について音声で話をしている部分に関しては、必ず字幕を入れる。そして、画面で説明しているものに関しては、見えない方のために必ず副音声で開設を入れる。そして盲ろう者と呼ばれる見えない、見えにくい、聞こえない、聞こえにくい、これらを併せ持っている方には、そのわかる方法、知的に障害をもっている方には言葉だけではなく、より具体的によりわかりやすい情報の構成をとる。とることのできない方のために必ず副音声 で開設を入れる。そして盲ろう者と呼ばれる見えない、見 えにくい、聞こえない、聞こえにくい、これらを併せ持ってい る方にはその、わかる方法、知的に障害をもっている方には言葉だけではなく、より具体的によりわかりやすい情報の構成をとる。そのようなことが放送に求められるのです。 ところが実は放送だけでは解決しないことも確かです。そこにはもうひとつのキーワード、分かち合う、ということ、それに、発信という中身を付け加えて理解できると思います。災害時には、自分はここにいて このような状況にある、あるいは周りにこういう救援がほしい、それが随所におこります。 つまり、そこから発信できなければ、みんなで協力できる人もそこにニーズがあることがわからない。しかもそれをできるだけ早く、広く、その情報を分かち合う必要があるということだと思います。 双方向が求められます。いまの放送は一方的な放送であります。そしてデジタル放送が始まるとき、それは双方向になる可能性を開きます。 したがって私どもは、衛星によるデジタル放送が試験的にはじまった今、近く本来であります地上波、普段みんなが見ているテレビの仕組みがそのための方式が近々決定されようとする今、この双方向の情報をわかちあうことを全国的に可能にする。デジタル放送の仕組み、そのなかに私どもの願いを何とか実現したい。そういうタイミングが今なんだということとを通信かしているわけです。 ということを痛感しています。もう一つ、双方向であることの重要な理由があります。 それは、私たちは、プロジェクトの目的というところに、個人としての尊厳という言葉を掲げました。それは、あくまでも常に合意があり、情報を完全に理解したうえで、そこで選択がおこなわれるということだと思います。これまで、災害になると、確かに善意の方が非常に多く、いろいろな方が救援にいきたいということでお申し出があり、実際に救援に向かいました。それがからまわりに終わらないようにするには、救援される被災地の側の当事者の方の意志がはっきりと尊重されること必要がある、ということがこれまでの教訓でわかっています。被災地はその日、生活するにも非常に困難な条件があります。そこに、大勢の救援の人たちは、これは本当に善意の方ですが、何千人も一度にきたばあい、ただでさえ、衣食住のない条件のところに、また大勢の人が生活するということの困難さは、これまで多くの被災地で体験してきました。 つまり、何とか支援をしたいという意志、そういう行動というものと、現地の状況をふまえた、判断、当事者の選択、それとがどのようにむすびあって、もっとも適切な災害の救援が行われるか。これが重要だということです。したがって、特に先ほどコミュニケーション、あるいは情報へのアクセスに障害をもつ当事者およびその当事者を支援する方々の選択と判断というものが、もっとも尊重されなければならないのは当然のことだと思います。 そのような意味で、一人ひとりが本当に納得し、これがいいんだというふうな、そういう情報の交換ができる。そのうえで、最適の、もっとも状況に適した救援が行われるようにするための情報の仕組み、それはどういうものなのか。そういう観点での検討が非常に大事になると思います。そのような情報システムが今存在しているのかということになると、残念ながら存在していません。 したがって私たちは、当事者が主体になって、当事者ととともに、支援者あるいは全般の地域における防災計画にかかわる行政、企業、NPO、様々なグループ、組織があると思いますが、そういったさまざまな団体が、当事者とともにこのような仕組み、情報の仕組みをつくるということを、改めて企画し、実施することが必要である。 それは現在、いわゆるIT革命というふうに政府が指導して、非常に大きな基盤に対する投資が行われようとしています。 このITの基盤づくり、そこに今申し上げましたように視点と実際の活動を結びつけることによって、一度できあがってしまつたアクセスできないものを後で一部こわして改造するのではなく、最初からIT基盤整備によってできあがる新しい情報の世界というのは、誰もが参加でき、そこで情報をわかちあえる。その中身はわかりやすいものになっている。そういうものをつくりあげることが大事だろう。そのためのプロジェクトの提案を放送協議会で行っています。 その中身を十分なものとして煮詰め、 意義あるものにために、今日かわきりにして、積極的に参加していただいて、あらゆる障害分野の要求、高齢者の特別のニーズをすべて含んだ情報基盤づくり、そのためのコミュニケーションシステムの取り組みを行っていきたい。それがお手元にあります、資料の、私のレジュメの内容です。 具体的には、これからすでに二つご発表がありまして、この後もいくつかの発表と、あと4つだとおもいますが、発表いただき、午後、パネルディスカッションという形で会場の皆さん全体でもっと深める議論をする。その中でこういうプロジェクトにしようというものを描きだしていきたいと思います。 午後のディスカッションに向けた、一つの、今あるもっとも有望な、こういう技術の方向で進めていったら、たぶん、誰もがアクセスできる情報であり、みんなでわかちあえる情報になるのではないかというふうに現時点で私が考えているものを一つ、短いプレゼンテーションを行い、その後みなさんのご発表をいただいた後、午後、さらに、これからの進め方を中心に、議論をさせていただきたいと思います。 それが本日の流れであります。 私のこの基調報告をとじる前に、これから国際的に共同開発をしてまいりましたDAISY(デイジー)というもののプレゼンテーションをおこないます。 ごく短いものです。最初に出しますものは、今年の1月にテレビのCNN、その親会社のタイムワーナー社、これは出版を含む巨大なメディア企業ですが、そこがデイジーの出版をしました。そのデイジーというのは、これから、ご覧いただくマルチメディアになるわけですが、そのマルチメディアがアクセスできるマルチメディアである、誰もがアクセスできる。それが特長です。 その次が、日本の手をつなぐ育成会と私どもが共同で試験的に制作した、ハンドブックの一冊、マルチメディア版です。 それでは続けてプレゼンテーションを行います。最初のものは、タイトルは「I have a dream」。有名な牧師の演説です。 英語になります。 ちょっと画面の説明をさせていただきます。聞こえない方には、牧師の肉声の演説が聞こえなかったと思いますが、画面に黄色くハイライト表示されているところがあります。これが、1行ずつ動いていきました。ここが今、牧師のしゃべっている部分のテキスト、それが1行ずつハイライト表示されます。 その時画面にうつっているテキスト。同じ情報が声で耳から聞こえているわけです。つまり、同時に、聞こえない方と見えない方が、同じ内容の情報を得ているというのが、このプレゼンテーションの特長です。このシステムはDAISY(デイジー)と呼ばれています。今の牧師の演説は、アメリカの一番大きな出版社がつくったものです。 次に、育成会と協力しまして作りました。 「イヤ」という、セクハラを防止するためのものがテーマです。
「ちょっとおもしろそう。 私やってみたい。 よし、話は決まった。 ここに……。 ちょっともどしました。 私はだまされない。 ねぇ、君たちちょっといいかな。 写真をとらせてもらえないかな。 君たち、テレビに出たくないかい。 えー、ちょっとおもしろそう。 私、やってみたい。」
 非常に短くて、もっと読んでみたいという感じのする本ですが、時間がありませんのでここで止めます。これも、黄色く、今セリフをよんでいるところが、ハイライト表示されています。 そして、実は、盲ろう者の方、あるいは点字でこの文字を読みたい方のためには、スクリーンリーディングソフトという画面を読むソフトウェアをつかうと、ピンディスプレイで読むことができます。つまり、点字で読みたいかたは、ハイライト表示されているテキストを点字でも読むことができます。そして、この中身ですが、知的障害のための自立生活を支援する、これまでは普通の絵本として出版されていたものを、DAISY(デイジー)でつくりました。DAISY(デイジー)というのは、パソコンでつくれます。これをつくるためのソフトウェアは、日本障害者リハビリテーション協会が非営利で使う方には、世界中で配布できるライセンスをもっています。これをどんどん教室、あるいは日常生活の必要なあらゆるところで作れる仕組みになっていて、先ほどアメリカの一番大きな出版社が出したといいましたが、世界中の共通の基準ができあがっています。つまり、世界中どこでつくっても、これはお互いに交換できる、という技術です。これがいずれ、デジタル技術の上にも乗せられるような技術的な要素をもっていますが、それについてはこの後、午後パネルディスカッションのなかで、どういうふうな技術が望まれるのか、具体的にお話ししたいと思います。最後に、私たちが求めます情報システムというものは、それだけでは絶対に機能しない。 かならずそれを取り巻く人々が気持ちを一つにして、災害時には、誰もが命を守れる。そのための本人の合意と選択を保障していくための情報提供、あるいは本人からの情報発信、それをうけていける仕組みにする。そして、それを取り巻く人間の組織、ネットワークがもう一つのこれが情報システムと同じぐらい大事であるという認識にたって、構築することが必要だと思います。 そしてそれだけのひろいネットワークあるいは、どういう人でも使える情報システムであるためには、それが開かれたものであることが不可欠だろうと思います。 今ここでは詳しく申し上げませんが、開かれたシステムと いうところをひとつキーワードとして強調し、その中身はさらに後でつめさせていただきたいと思います。 以上をもちまして、簡単ですが、私のほうから提案する今日全体の進め方、目標というものであります。 この後4つプレゼンテーションをいただいて、パネルディスカッションのなかで、さらに煮詰めたいと思います。ご静聴ありがとうございました。