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DAISY活用事例交換セミナー

DAISY活用事例交換セミナーについて
クリニック・かとう
加藤醇子

今回、特に認知・知的問題へのDAISY活用ということで、LD(学習障害)、とりわけ、読字障害(読み書きにLDをもち、ディスレクシアとも云われる)への活用を中心に交換セミナーが組まれた。DAISYの活用への取り組みに対する著者の経験も踏まえて、感想を述べることとする。

文部科学省は、既に出された特別支援教育についての中間まとめを経て、最終報告を待ち、16年2月には、教育基本法の改定が予定され、その後、特別支援教育が実施される手筈となっている。特別支援教育は、学童の1%を占める従来型の特殊教育、盲・聾・養護学校などに加えて、調査結果に基づき、6%いると云われる注意欠陥多動障害、高機能自閉症、アスペルガ-症候群、学習障害などを加えて、総計7%の子どもに対応する教育を考えるということである。従来型の特殊学級や通級制度は原則、廃止される方向にあり、個々の子どもの習熟度に応じたシステムとなると云われている。このような状況にあって、DAISYソフトは、LD特にディスレクシアや使い方によっては、軽度知的障害、盲・聾にも対応可能な教育上の道具や教材作成という、重要な領域を担うものへと発展し得る。

14年8月に、筆者は、LD懇話会かながわ(医療・教育・福祉領域の職種の勉強会)会員である数名の教師、OT、言語聴覚士らと3日間のDAISYソフト活用のための講習を受けたが、その際の問題点としては、次のことが考えられる。
1. 作成技術の難しさ:3日間で作成のアウトラインは分かるが、まだ自分で独自に教材を作成するには至らず、フォローアップの講習が更に必要と思われた。
2. DAISYソフト搭載可能パソコンについて:学校に存在するパソコンは、古く、容量も不充分である。学校現場での普及を考えるのであれば、古いパソコンでも簡単にDAISYを搭載し得るような技術または安価な周辺機器の開発が必要である。
3. 現場の教師に、教材作成の時間が取れないこと:上記の1.や2.の問題も踏まえて考えると、NPO組織を全国展開して、教師の必要とする教材を作成するか、大学の教育学部などの機関に、開発を任せていく方が実際的かもしれない。

活用セミナーで発表した、NPOひなぎくや札幌のかかわり教室における取り組みは、まさに上記の問題を解決しつつある方法である。
実際に、ディスレクシアの子ども達が困るのは、高学年になるにつれ、教科書や辞書を読むことが困難であったり、非常に時間がかかることであろう。教科書や辞書のDAISY化が望まれるが、何回も、企画委員会で取り上げられたように、著作権の問題が解決されないと、DAISYの活用が狭められ、7%の児童やその他の児童に対しても読書や知る楽しみ、勉強の楽しみなどは大きく阻害されるであろう。

活用事例交換セミナーに参加した、ディスレクシア本人からの意見としては、教科書や資料をスキャナーからパソコンに取りこんで、DAISY化し、LP Player などで、学校に持参して使いたいというものがあった。それには、より簡単に、自動的に、DAISY化出来るような技術革新が望まれるし、いずれ、携帯電話などでの利用も視野に入れると、更に、DAISYは進化していかなくてはならない。そうなると、著作権法の問題だけでなく、学校での授業の受け方や進級試験などにおいても、デイスレクシアの学生達が気兼ね無く、他の学生と同等な対応を受けることが可能となろう。
次年度は、こうした未来のDAISYのあり方に向かって邁進してもらいたいものである。