国際セミナー報告書「ヨーロッパとアジアのソーシャル・ファームの動向と取り組み-ソーシャル・インクルージョンを目指して-」
ソーシャル・ファームについて
ソーシャル・ファームの定義
ソーシャル・ファームはソーシャル・エンタープライズの一種である。
ソーシャル・ファームとは障害者に雇用創出のために特に作られたビジネスである。このソーシャル・ファームについて、ソーシャル・ファームスコットランドは次のように定義している。
ソーシャル・ファームとは、ソーシャル・エンタープライズの一種であり、障害者或いは労働市場で不利な立場にある人々のために、仕事を生み出し、また支援付き雇用の機会を提供することに焦点をおいている。ソーシャル・ファームとは、障害者或いは労働市場で不利な立場にある人々の雇用のために作られたビジネスである。
- ソーシャル・ファームは、その社会的任務を遂行するために市場志向の商品の製造及びサービスを提供するビジネスである。
- ソーシャル・ファームに雇用されているかなりの数の人々は、障害者或いはその他の労働市場において不利な立場にある人々である。
- 各労働者は、各自の生産能力に関わらず、仕事に応じた賃金や給料を、市場の相場によって支払われる。
- 労働の機会は、不利な立場にある従業員と、不利な立場にはない従業員とに、平等に与えられる。すべての従業員は同じ権利と義務を持つ。
1.ソーシャル・ファームとしてその収入の少なくとも50%は売上から得られている(つまり、公的資金、民間資金による援助、或いは寄付金にはよらない。)
2.従業員の少なくとも25%は障害者或いは不利な立場にある人々で、他の障害のないスタッフと同じ権利と義務を持ち、同等の条件でスタッフとして参加し、雇用される。
ソーシャル・ファームの始まり
ソーシャル・ファームは、1980年代にオランダ、ドイツおよびイタリアで始まった。仕事を通じてのリハビリテーション、つまり職業リハビリテーションの延長として出現した。福祉作業所との違いは、作業所は、社会的に保護された環境の中で仕事を提供するが、ソーシャル・ファームは、それより更に進んで、市場の相場にあった賃金を得るために仕事を提供することにある。イギリスでは1980年代後半からソーシャル・ファームとして認知されるようになった。
ソーシャル・ファームの法的な立場
1997年のソーシャル・ファーム・ハンドブックによれば、英国においてはソーシャル・ファームの法的な仕組みに言及すると選択肢がある。法的には慈善事業法人の商業部門としてあるいは公認慈善団体として有限会社を設立することができる。あるいは公認の協同組合を設立することができる。