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話題提供2「たんぽぽにおけるインクルーシブな雇用の実現」

桑山 和子
NPO 法人ぬくもり福祉会たんぽぽ会長

講演要旨

たんぽぽは、昭和62年に、飯能市の中央公民館が主催した『婦人講座』を終了した講座生た ちと、私も講師として携わったのが縁で設立されました。当時のキーワードは、「男女平等」「女 性の社会参加」「高齢化社会」「ヘルパーさん10万人」。やはり23年の年月を感じます。当初 は、30代~60代の主婦、子育てのために仕事を止めた人、育児中の者、自営業や非常勤講師 の男性、女性の社会参加に目覚めた人たち等。今振り返ってみると、まさにソーシャルインク ルージョンの先駆けだったように思います。現在では、介護保険事業所を中心として年商4 億 を超えるまでになりました。
理念として人材の育成があります。たんぽぽでヘルパー研修を組み、会員に2級の資格を取 得して働く。さらに3年たって介護福祉士を取得し、さらには5年たってケアマネージャー受 験へと。多くの人が子育てをしながら、自分が働ける範囲内で、また一人親家庭であっても育 児と両立させながら、資格を積み重ねていく。また中途退職者の男性も介護に自分の適性を見 出し成長していく。定年退職者が運転の技術を介護の世界で活かしている。また60代であっ ても子育ての支援者として働いている。知的障害者であっても介護施設の掃除を担ったりと、 ふと振り返ってみると、今までアンペイドワークの障害者や特に主婦たちが、特性を生かして 賃金を得ていったことは、まさに、たんぽぽはソーシャルファームからスタートしたといって も過言ではない、と改めて分析している所です。

介護から農業へ本格的なソーシャルファームへの旅立ち

人間が生活していく中で、喜び、ふれあう、この感動はそれは介護も農業も命が根源にある からです。そこでたんぽぽはソーシャルファームの中で農業分野に進出しました。

障害者がいきいきと働く

ソーシャルファームに意欲を燃やした理由は、飯能市から平成19年に障害者就労支援セ ンターを受託したことにあります。登録者は近頃増え67名。その中で就労者は25名、多く は面接に行っても不採用。障害者からリストラされているのも事実です。また、採用されても 職場に馴染めず止める人も多くいます。そこで私は働く場を創出しよう、同じ働くのなら地域 の中で評価されやすい農業が良いと思ったのです。農業は一人でやるのは、孤独な作業です が、みんなでやれば喜びもつらいときも気持ちが分かち合えると思いました。予想通り障害者 が畑で作業していると、周りの地域住民から「よく育ったね」「暑いのに大変だね」と自然に声 がかかってきました。畑に出ると、太陽や風のそよぎが大地を潤し、植物が循環して出来た有 機肥料がエネルギーとなって作物や人間の心までも豊かにしてくれます。まさに畑はバリア の無い地域のサロンと化してきました。この頃から障害者の顔が生き生きと輝き、自分から仕 事を探して段取りができるようになりました。時間や期限に追われず自分のペースで出来る ようになり、高齢者と一緒になって仕事をしているうちに、作業もはかどるようになってきて います。
障害者雇用4名(1名は実習訓練)、高齢者雇用6名、中途退職者1名 今農閑期、葉を落とした木々たちの落ち葉を拾い集めて、堆肥づくりに勤しんでいます。春 には新しい命が生まれ作物が育っていきます。“命が循環する”それがたんぽぽの理念です。


講演

ただいまご紹介いただきました埼玉県の飯能市からやってまいりました、桑山和子と申し ます。

スライド1
(スライド1の内容)

「今、命を守りたい、生まれてくる命を」。皆さんどこかで聞いた言葉ですね。最近、総理大臣 が施政演説でおっしゃっていました。このフレーズのあとを私が続けます。「消えていくお年 寄りの命を次の世代に伝えていきたい、一粒の種を育て、また種に戻ってくる命を、介護とい う人間の命を農業へ、そして生きる命を」。今私は、地域の皆さんと一緒に命のキャッチボール をしているところです。

スライド2
(スライド2の内容)

これは、飯能市の概要でございます。日本と同じ、山が7割、そして高齢化率が21%という 普通の都市でございます。人口8 万3,000 人、池袋から40 ~ 50 分のところで、今たんぽぽ は介護と、去年の新しい事業として農業を始めているところでございます。

スライド3
(スライド3の内容)

これはぬくもり福祉会本部と、グループホームが入っている木造の素敵な建物でございま す。

スライド4
(スライド4の内容)

たんぽぽの事業はNPO でやっておりますが、今年は4億2,000 万円を超えるのではない かというところで、今考えているところでございます。

スライド5
(スライド5の内容)

たくさんの事業の中でグループホームと、それからデイサービスが2ヶ所あるということ をちょっと頭の中に入れていただければと思います。あとは配食サービスなどもあります。

スライド6
(スライド6の内容)

スライド7
(スライド7の内容)

たんぽぽは、今から23 年前に困ったときはお互いさま、ということで公民館の活動から出 発いたしました。埼玉県の第1号のNPO を取得いたしました。そして困ったときはお互いさ まの助け合い事業、介護保険事業、障害者の福祉事業、そして飯能市からの受託事業をやって います。

介護から農業へ本格的なソーシャルファームへの旅立ち

気がつくとソーシャル・ファームを実践していました。「気がつくと」シリーズをちょっと 申し上げます。

スライド8
(スライド8の内容)

職員の主な有資格者でございます。主任ケアマネージャーが3名、ケアマネージャーが22 名、介護福祉士が、今日も試験がございますね、たんぽぽからも何名か受かるといいんですが、 37 名、そして社会福祉士が4名というところでございます。

スライド9
(スライド9の内容)

次の「気がつくと」シリーズのところで、職員の高齢化率のところでございます。若い人がお ります。20 代の人たちも大勢いますが、要するに高齢になっても働きたい、あるいは働きに くくなった人たちも気がつくと23%というところで、しっかりと力になっていただいており ます。

スライド10
(スライド10の内容)

次の「気がつくと」というところでございます。子育て中の母親、母子家庭の皆様方が全体の 5.7%というところでございます。17 名のお子さんたちも、私どもの仕事の中から一生懸命 子育てをしています。

スライド11
(スライド11の内容)

たんぽぽの障害者雇用率が気がついてみると、なんと5.6%の雇用率だということも誇れ ます。

障害者がいきいきと働く

スライド12
(スライド12の内容)

今までは介護を通した福祉文化から農業文化へと、命の文化が育っていく、また新しく介護 から農業へということで、たんぽぽの命の旅が始まるところでございます。農業へ進出してい きました。

スライド13
(スライド13の内容)

飯能市から障害者就労支援センターを受託したところで、学んだことがございます。皆様方 が雇用がなかなかできない、また会社に面接に行っても落ちてくる。どうしようか。みんない いところがあるんだから、じゃ、自分たちで、私たちで職場を作っていこう、これも一つの理念 でした。それから23 年間やっている中で、地域の皆様方から愛されているという実感もあり ました。これも農業への始まりです。それから今日も、埼玉県の福祉政策課の副課長さんや皆 様が応援に来ていただいております。行政との協働というところ、学校との連携、こういった ところも大きな弾みとなって、無農薬の野菜栽培へと、たんぽぽは挑戦へ燃え続けていきまし た。
では、働いている人たちの様子をご紹介いたします。

〔音楽〕

以上のスライドの中から、皆様方、何かお考えいただけたでしょうか。視聴覚の障害をお持 ちの方々には絵がわからなかったと思います。申し訳ございませんでした。今、障害をお持ち の方々が一生懸命畑を耕して、いろんな困難と戦いながらやっているという風景を映し出し ていたところでございます。

スライド14
(スライド14の内容)

そしていよいよ課題です。昨年の春からやってきたのですが、売上目標のところが一番問題 です。今年はまだ作物が育っておりませんでしたから、職員や皆さんに買っていただいたので 30 万~ 40 万円。ところが580 万円にしないとなかなか雇用ができないというところもござ います。

スライド15
(スライド15の内容)

そのためにどうしようかというところで、ただここで畑のところだけは地域の皆さんが 一生懸命、障害をお持ちの方々も一生懸命やっている姿を見て、たんぽぽさん、使ってくれな い? 私は今まで働いていたんだけど高齢になっちゃったので、今度バトンタッチでお願い しますなどと、いろんな方から声がかかりました。

スライド16
(スライド16の内容)

ここに書いてある数字以上のものが、1万8,000 平米ぐらいの畑が今、お借りしていると ころでございます。

スライド17
(スライド17の内容)

スライド18
(スライド18の内容)

あとは、栽培戦略として、無農薬野菜でやっていこうというところで今、お店、レストラン、 自然食品とか、こういったところと提携しながらやっていこうと、一生懸命、販売、加工などを したりもしているところです。

スライド19
(スライド19の内容)

これは新しい住宅地のところで、移動販売したところの写真です。暮れに行きましたら、 2万円ぐらいの売り上げがございました。

スライド20
(スライド20の内容)

このたんぽぽ直売所も今、考えているところでございます。今年度オープンできたらいいな と思っているところです。

スライド21
(スライド21の内容)

そして人材戦略です。この事業に厚生労働省から本年度だけ補助事業をいただきまして、炭 谷先生、皆さんにお力を得たところで今、募集しましたところ、こんなような方々が応募して くださったりもして、一生懸命やろうとしてくださっています。

スライド22
(スライド22の内容)

今は6名の高齢者の方、それから障害者の方が1名増えまして3名、そして早期リタイアの 方とか、障害をお持ちの方が随時入ってきています。そしてソーシャル・ファームとしてのた んぽぽの一つの理念といたしまして、社会性、革新性、事業性というところで、本年度はまだし めてみないとわからないんですが、ここのところがこれからの大きな難問だと思います。

重点項目としまして、いろいろな問題がございます。まず先ほど申し上げたところで、私ど もは介護を10 年やっておりますので、一日の食材を食べる方が、大体デイサービス、グルー プホームの配食も交えますと150 食くらいになるのではないかということで、まず消費を考 えていきながらということです。地域の皆様にも協力していただこうと。この辺はまた宮嶋さ んにも教えていただけたらと思っているところです。

スライド23
(スライド23の内容)

一番の大変なところは、これからどのようにして雇用していったらいいか。しっかりと賃金 が払えるようなソーシャル・ファームに育っていくということだと思います。介護の事業の方 では、しっかりとやっているのですが、どの辺で投資して、ファームだけで独立できるかとい う問題もございます。また、新しく直営店としてレストランなどもオープンしながら、また障 害をお持ちの皆様方にも協力していただけたらなと思っているところでございます。

ありがとうございました。