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国際シンポジウム
ソーシャル・ファームを中心とした日本と欧州の連携
報告書

関連資料 基調講演および日本側パネリストの当日配布資料

日本でのソーシャルファームの発展に向けて

ソーシャルファームジャパン理事長
恩賜財団済生会理事長
学習院大学法学部特別客員教授
炭谷 茂

1 日本の就労状況

(1)日本全体の雇用状況の厳しさ

高止まりの完全失業率
雇用調整助成金の対象者
新卒予定者の就職内定率の低さ
非正規雇用が3分の1
ホームレス問題は新しい局面へ入る

(2)社会的にハンディを持った人には一層厳しく

障害者、高齢者、難病患者、ニートや引きこもりの若者、ホームレス、刑余者など
少なくとも2千万人以上
障害者の就労状況
真っ先に解雇される障害者

2 働くことの意味

経済的な自立
人間としての自尊心
人間としての成長
規則的な生活による心身の健康維持
社会とのつながり
 社会からの排除、孤立が日本において急激に進行
 多くの社会問題の発生(例えば障害者への差別、自殺、孤独死、児童虐待など)

この解決のためには仕事などを通して社会とのつながりを
→ソーシャルインクルージョンの具体化

3 第3の職場が必要

公的な職場 … 社会的な目的のため、税金が投入されて作られる職場
一般企業  … 大企業には障害者雇用率が適用
社会的企業 … 社会的な目的
        ビジネス的な手法
         利益を外部に出さない
         就労者の状態に合った生きがいの感じる仕事
         住民参加も

4 第3の職場の一つとしてソーシャルファームが重要

障害者を対象として発展してきたが、近年対象の範囲を拡大
ヨーロッパで定着、各国によって特徴がある
当事者が健常者と一緒に働く

日本にも有効
日本で2千社作るべく、それを支援するためソーシャルファームジャパンが2008年12月発足、活動
一昨年6月厚木市、9月新宿区 昨年3月7日茂原市でソーシャルファームを推進するためのサロンを開催、昨年12月19日 東京都新宿 戸山サンライズで総会

5 日本におけるソーシャルファームの展開

(1)未来の日本を担う分野に進出

今後の成長産業…政府の成長戦略分野
他との競争に勝てる

①環境

3R … 秦野市の弘済学園の古本販売
     西尾市の「くるみ会」の食品廃棄物のコンポスト化
     ヨコタ東北の支援によるNPO等による廃プラスチックのリサイクル
     回りの物すべてが3Rの対象になる

地球温暖化対策につながる
     玉野市の「のぞみ園」の竹を伐採し、竹炭作り
     北海道芽室町による障害者の木材ペレットの製造

バイオマス分野なども可能

生物多様性にも
     北海道のNPOアウルスによるエゾシカの皮の活用

②農業、酪農

日本の需給率の向上が食料安保から絶対的に必要
北海道新得町の共働学舎のチーズ作り
飯能市のたんぽぽによる自然農法等による野菜栽培

③福祉

高齢者等の多様なニーズの急激な増大
豊島区の豊芯会による高齢者向け宅配弁当
ワーカーズコープのホームヘルパー派遣

④サービス業

労働集約で有利に
特産物の販売
芸術作品販売
ホテル、コンビニも
姫路市の門口堅蔵氏の白鳥城

(2)発展していくためのポイント

①商品・サービスの開発

皆で考える(サロンの効用)
需要がある
ニッチなもの
独自性
労働集約的
デザイン力

②販売力の強化

ソーシャルファームのネットワークの形成
アンテナショップ
商品カタログの作成
ソーシャルファームブランドの確立
ロゴマーク
今後ソーシャルファームジャパンで検討

③経営資金の確保

国、地方自治体の助成
民間助成団体
探せば必ず見つかる
ソーシャルファームのスピリットは、税に依存せず、自主独立が基本
篤志家の援助
ソーシャルファイナンス

④支援者の確保

資金
ボランテイア
消費者として

⑤健常者とのコラボレーション

それぞれの特徴を発揮

⑥国際協力

ヨーロッパ
途上国

⑦経営主体

現行法制下では一般公益法人、NPO、社会福祉法人など
特例子会社も活用可能

6 新しい福祉国家を求めて

新しい「公」の形成
これからの人間としての生き方の一つ


共働学舎新得農場の歩みからソーシャル・ファーム

農事組合法人共働学舎新得農場代表
NPO共働学舎副理事長
宮嶋望

宮嶋 望 紹介文

1951年生まれ、東京で育ち、自由学園(私立)で放射線物理、植物生態学を学ぶ。1974年卒業後、渡米。ウイスコンシン州の牧場で2年働き、ウイスコンシン大学へ入学、酪農学を学び、1978年に卒業(B.S.)。米国農業の本質を知り、米国農業の真似はしないと決心し帰国。1978年に新得町から誘致を受け、共働学舎新得農場を開設し、心身に重荷を抱える人たちと共に牧場つくりをはじめる。初めは包丁が飛ぶほどの荒れたサバイバル生活だったが、次第に落ち着き、生産活動に力を注げるようになり、今ではチーズが世界ベルで認められるまでになり、経済的な自立も視野にはいってきた。環境の要素を整え、自然と調和した教育や福祉のあり方、農業生産のあり方を実践と通して模索している。

共働学舎新得農場の33年の歩みから「ソーシャル・ファーム」へ

37年の歴史を持つ共働学舎は、「自労自活」のことばを掲げ、障がいを持つ人、ひきこもり、精神的な不安定などの悩みを抱える人たちと「共に働き、ともに生きる」道を模索しながら、全国に5か所で約130人の生活の場を創ってきた。

日本の社会福祉法の枠にはまらないため、任意団体として個人寄付に支えられながら、各々の能力や働く意欲を引き出し、ゆっくりながら確実なモノづくりの形を作ってきている。税法上の問題から2006年にNPO法人格を取得した。

新得農場は1978年に開始し、農業生産法人とし、有機栽培で野菜をつくり、羊を飼って手工芸品をつくり、豚や鶏を飼い豊かな食卓につなげている。放牧された牛たちの乳で、手づくりするチーズは欧米のコンクールで金賞等を受賞し、世界でも認められるようになり、生産の柱となってきた。それには炭と微生物で環境を整えることが重要だった。

新得牧場の年間総生産額は1.8億円(チーズの売り上げ1.2億円)となり、70人余りの日常生活を支えるようになってきた。自ら汗を流して働いた結果が、自分達の生活を支えているという自覚が芽生え、以前は周りから認められていないと感じていた人が、社会人としての自負を持つようになってきている。

しかし、NPOとしては収益事業の割合が寄付に対して大きすぎるとのことから、NPO法人と生産法人を分け、業務委託契約を両法人間で結び、煩雑だが現行の行政の枠に収まるようにしている。

このような社会的事業体が日本でも実現可能だと思えるようになってきた。この牧場の実態はイタリアで始まった「ソーシャル・ファーム」の理念と重なってきている。

これからの日本の社会福祉を考えるときに必要な形態ではないだろうか。

北海道ではソーシャルファームマークを製品につけ、ソーシャル・ファームの理念の普及と理解を深めるよう協力体制を考えている。


就労継続支援A型事業所からソーシャルファームへ

東京家政大学人文学部教育福祉学科学科長・教授
社会福祉法人豊芯会理事長
上野容子

①障害者の賃金状況(2007年障害者白書より)

○雇用の場、福祉工場、授産施設の比較

*福祉的就労事業所における低賃金は、障害者の働く権利の視点から問題がある。

②賃金アップと事業の発展を目指して

○(福)豊芯会フードサービス事業所

(配食センターとふれあい)の事業紹介

1)配食センター

手作りの家庭料理提供 食事作りの不自由な方へ宅配、豊島区の委託事業、特注弁当・パーテイ料理受注(一日平均 240食)

2)ふれあい

  • 豊島区が精神障害者の働く場として提供
  • 池袋の地の利を生かした営業
  • 喫茶・食事の店
  • コーヒー専門店「バッハ」の技術と材料を使った商品提供

3)スタッフ構成

A型登録者 20名
子育て中の女性 1名
身体疾患 1名
高齢者 2名
家族 2名
障害者 1名
その他 8名

*障害者を対象とした訓練の場ではなく、様々な立場の人達と共に事業発展を目指す

4)A型登録者が労働者として主体的に仕事に取り組める環境づくり

  • マネージャー制度の導入
  • 研修制度や対外的な売り場の拡大

5)売り上げの向上・事業の発展

  • 20年度売上比13%アップ
  • 21年4月~9月の
    売り上げ 22,652,260円(全事業収入の59%)
    支援費  10,836,774円(全事業収入の28%)
    補助金   5,165,717円(全事業収入の13%)

③就労継続支援A型事業所からソーシャルファームへ

障害者を対象とした訓練の場から労働者として参画し、事業を発展させる場に


レジュメ
「知的障害者に導かれた企業経営と国への期待」

日本理化学工業株式会社
会長 大山泰弘

一.日本理化学工業㈱とは

国内シェア30%を持つダストレスチョークメーカーで、従業員74人中55人の知的障害者を雇用している

二.何故知的障害者多数雇用モデル工場をつくったのか

  1. 青鳥養護学校の先生の3回の訪問で
  2. 禅のお坊さんの言葉から障害者の多数雇用を決意
  3. 従業員の50%以上を条件とする、国の心身障害者多数雇用モデル工場融資制度を活用してスタート(1975年)

三.知的障害者の雇用割合7割を超す企業経営の進め方

  1. 知的障害者の理解力に合わせた工程の工夫
  2. 彼らの親切さを活用しての班長制度を設けた

四.モデル工場経営は一石三鳥の社会的貢献、そして渋沢栄一賞受賞で知る

日本の中小企業のもう一つの活路

五.真の福祉に立つ日本国憲法からすべての国民が働ける「働く幸せへの直行便制度」を

六.商売繁盛のえびす様が、障害者雇用の日本理化学に子育て文化に貢献するキットパスを用意して下さった

日本理化学工業株式会社の紹介
(画像の内容)