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国際セミナー「地域福祉のとりくみ」

ビデオ・プレゼンテーション

米国教育省特殊教育・リハビリテーション・サービス局次官
ジュディ・ヒューマン

Judy Heumann(以下JH):
 こんにちは。Judy Heumannです。私は特殊教育局とリハビリテーション・サービス局のアシスタント・セクレタリーをしています。

Fred Schroeder (以下FS):
 私はFred Schroederです。リハビリテーション・サービス・アドミニストレーション(以下RSA)のコミッショナーをしています。

Judy Heumann(以下JH):
 こんにちは。Judy Heumannです。私は特殊教育局とリハビリテーション・サービス局のアシスタント・セクレタリーをしています。

JH:
 Fredと私は特殊教育とリハビリテーション・サービス局の教育部で仕事を一緒にしています。今回はこの会議のために日本を訪問することができませんでしたので、ビデオテープで参加させていただきます。地域を基盤にしたサービスについての話をと言われていますので、Fredとの対話形式で進めていきます。まず、米国では障害をもつ人々のために連邦政府がどのようなタイプのサービスを提供しているのか、その中でも我々が教育部で行っている事柄に焦点を当てたいと思います。
 特殊教育部とリハビリテーション・サービス部は3つのプログラムからできあがっており、1つめは特殊教育プログラム、2つめにはFredが監督するリハビリテーション・サービス・アドミニストレーション部、そして3つめが全国障害研究所とリハビリテーションリサーチです。私たちの部署は2つの資金源を持っており、1つは教育と雇用の両部門において州政府に直接提供されるもので、もう1つは私たちが自由裁量の補助金と呼ぶもので、コミュ二テイが非営利団体のために申請できるものです。政府は教育に焦点を置いて州レベルや地域のレベルにより多くの金額的援助を行っており、また専門的開発や親へのトレーニングへも援助を行っています。
 親が教育関係の法律について情報が与えられるということは非常に重要だと私たちは認識しています。というのもそれによって、彼らの障害をもつ児童が統合教育を受けられる権利があるということや、また親が児童の強力な権利擁護者となるための援助の提供となるからです。しかしこれらのことを親が自分たちだけで学んでいくのは難しいのが現実なので、そのために親のためのトレーニング・プログ ラムを立ち上げ、それは自立生活センターでのやり方をモデルとしています。各州内に最低一つの親のためのトレーニング・プログラムがあり、全部で72個所あるこれらのセンターは、地域内の障害を もつ児童の親を見つけ、法律的知識を提供し、それによって彼らの子供が公立学校へ通学でき、必要とするサービスを受けられるようにする責任を負っています。政府が行う地域を基盤とした援助のタイプ例がこのようなものです。
 次に、Fredがリハビリテーション・サービス・アドミニストレーションについて少し話をします。

FS:
 RSAは各州のリハビリテーション機関に、障害をもつ成人のための職業訓練提供のための資金援助を行っています。各州がサービスを提供する方法は様々ですが、全ての州において政府機関と州立リハビリテーション機関、そして非営利団体との関係は深いものだと私たちは考えます。
 それらの機関は様々なサービスを提供していますが、例えば個人がどのような仕事を望み、それに見合った基本的技術があるかどうかを判定する評価サービスであったり、特定の職業訓練であったり、視覚障害をもつ人々の点字や白杖使用の訓練だったりするわけです。いろいろ異なる種類のサービスが州立リハビリテーション機関との契約のもと、地元地域のサービス提供者によって行われている場合もあります。

JH:
 雇用はここでお話する大切なトピックです。なぜなら、好ましい教育は、障害をもつ人々が成長後、良い仕事をにつける能力を与えるものだと私たちは信じるからです。リハビリテーションは16才以上の学生と関わるのみでなく、成人してから障害をもつようになった個人とも関わっていきます。現在のところ私たちは地域を基盤とする団体への援助を通して、多くのプログラムを持っており、これらの団体は障害をもつ人々に仕事の世界における機会提供の援助を行っています。プロジェクトには様々なものがありますが、例えば自立生活センター職員へのトレーニング、教員になるための大学でのトレーニング、修士課程でのトレーニングなどで、私たちの自由裁量の補助金はまた、自立生活センターでの活動に使用されたりしています。それについてはRSAの管轄なので、Fredが少しお話しましょう。

FS:
 私たちは自立生活センターのネットワークに助成を行っています。目下、国内300個所の自立生活センターに資金提供をしています。一見これは良いことのように思えますが、国内の障害をもつ人々の自立生活のニードにはまだまだ届かず、もっと拡張していかなければならない項目です。しかし自立生活センターは政府と消費者サイドの中間点に位置している状況です。全自立生活センターは消費者によってコントロールされねばならず、ということは理事会の多くのメンバー自身は障害をもつ人々でなければなりません。実際、自立生活センターの職員の多くは障害をもつ人々自身です。権利擁護はそこで提供されるサービスのあちこちに組み込まれており、ときにそれらは住宅へのアクセスや、障害をもつ人々が身辺介助者を監督する技術を学ぶためのものであったりしますが、それらは全てエンパワメントモデルのもと実行されているものであり、それが、自立生活センターが成功を収めている理由だと思っています。

JH:
 自立生活センターと親へのトレーニング・プログラムは、地域に存在するギャップを政府の補助金がいかに埋めていくかということの例だと思います。障害をもつ人々は自立生活センターでのサービスを通して、また障害をもつ児童を持つ親は親へのトレーニング・プログラムを通して、異なる政府のプログラムについて学ぶ機会を、政府の補助金が提供しているのです。例をあげると、住宅補助、移動補助などです。
 自立生活センターと親へのトレーニング・プログラムでは両方とも、他の地元の非営利団体へのアドバイスも行っていますが、多くのケースは政策立案者、市町村代表者、郡や州政府にアドバイスを行い 、障害をもつ人々やその家族が持つ問題は何なのか、政府がどのような改革をしていけばよいのかということを学ぶ際の援助を行っているのです。多くのケースの場合、連邦政府からの補助金というのは団体立ち上げの際の大きな援助となります。親へのトレーニング・プログラムや、自立生活センターのことを考える際、中核となるプログラムへの補助金は連邦政府からのものですが、その後彼らは他の タイプの財政援助を受けるためにこの補助金を使用するのです。おわかりいただけますでしょうか。

FS:
 そのとおりです。連邦政府の補助金というのは、地域を基盤とする団体の中核、いわばベースとなる資金ですが、しばしば団体は地元での資金集めを行う際の土台となる援助も受けています。それらの 団体は、その他にも州政府からの補助金や連邦政府からの他の補助金にも申請をだすかもしれませんが、いずれにしても資金源というのは多種多様であり、団体のサービス内容がより組織立ってくるに従い、今度は契約のもと、様々な政府機関の団体にそれらのサービスを売っていくというケースもあります。

JH:
 Fredと私は、これまでここ米国内の州レベル、地域レベル、全国レベルにおいて何度も理事会の役員として仕事をする機会がありましたので、資金に関する経験について少しお話したいと思います。Fredから最初にどうぞ。

FS:
 良い例としては、例えば私は以前ニューメキシコ州に住んで、地元の聴覚障害をもつ人々に手話通訳を提供するセンターの理事をしていたことがあるのですが、私たちのサービスの請求書の送り先であ るクライアントには、州政府、連邦裁判所、大学から民間の会社、私立病院、そして弁護士事務所までと多岐に渡っており、センターの収入源が様々なところからきていたわけです。また、地域での手話 通訳者の増加を図るために、アルバカーキー市からの補助金を受けてもいました。これらのことから地域の団体が入手可能な資金援助の組み合わせが皆さんにもお分かり頂けたかと思います。

JH:
 サービスに対する料金を請求するというコンセプトは、非営利団体が生き残っていくためにも非常に重要なことだと考えています。先ほどFredがあげた例のように、地域内に手話通訳者を必要とする聴覚障害者が存在し、そして差別禁止を謳ったAmericans with Disability Act (ADA アメリカ障害者法)やその他の法律に従わなくてはならない病院や裁判所が存在するわけです。
 病院や裁判所は聴覚障害をもつ人々のために通訳者を提供しなければなりません。多くの場合、これらの団体は通訳を派遣する団体と契約し、そのサービスへの支払いを行うでしょう。その支払いに使用されているお金は連邦政府、州政府、または民間のものかもしれないし、源がどこであるかはわかりません。しかし資金源が様々なところから来ていることは、国内に70から80個所の非営利組織である自立生活センターを持つ日本の皆さんにもお分かりになって頂けると思います。同時に日本の皆さんも民間セクターからの資金援助の方法をも探っているということで、それは私たちが米国で行っているのと非常に似たモデルだと思いますが、米国のほうが民間セクターからの貢献、個人からの寄付金に援助されている非営利団体数が多いと思います。
 自立生活センターや親へのトレーニング・プログラム、大学や病院など、ある程度の規模の団体になれば大抵は広報や資金調達の専門スタッフが存在し、非営利団体への人々の支援を得るために、彼らの組織からのメッセージを地域へ送り出す仕事をしています。米国ではまた、非営利団体に寄付を行うことによって、税金の控除にもなりますし。いくら以上寄付をしなければ控除の対象にならないというような下限がありましたか?

FS:
 いいえ、どんな金額であっても控除の対象になると思います。

JF:
 税金控除によって利益を受けるようになるためには、ある一定以上の収入がなければならず、それが基本的な税金控除の仕組みなのです。収入が高ければ高いほど、寄付金の額も上がり、そしてより多 くの税金控除が受けられるという仕組みです。
 以上が、米国内で政府と非営利組織をつなげていく様々な方法のいくつかなのです。

FS:
 私がここで強調したいのは、米国では政府と地域団体の間に強い結びつきがありますが、それがベストの状態で機能していくためには、我々の仕事における真の目的とするところは何なのかについての、共通の価値観をお互いが持っていなければなりません。障害をもつ人々に関連して大きく進展した部分をあげるならば、それは質の高い雇用、統合された雇用、昇進が期待できる雇用、福利厚生がしっかりしている雇用、そして高賃金へのアクセスであったわけです。これらのことは政府のプログラムと非営利団体のプログラムが、共通の理念 - 障害をもつ人々であっても質の高い、統合された雇用の場に進出する権利があるのだという - を持ち得たからなのです。それは単にサービスを組織立てていく方法や、誰が何を行いどのように資金が流れるかというような技術面的な方法でもなく、共通の価値体系を持つということで最良の結果が得られるのです。

JH:
 私は共通の価値体系ということを話す際、例えば自立生活センターの例を考えます。地域、地元のレベルでまず人が集まってきました。Fredと私は米国内での会議で出会った日本からのたくさんの人々にも、政府の補助金や世界中の自立生活に関連して援助を提供してきました。興味深いのは、多くの国で地域のレベルからいかに自立生活センターが発展してきたかということです。なぜなら、障害をもつ人々は皆、共通の価値体系 - 地域の中で尊厳を持って暮らしていくには何が必要かについてのビジョン - を持っているからです。そして人々が集まり、組織を立ち上げ、権利擁護を発達させ、そしてサービスの提供を開始したのです。
 組織がより洗練されてくるに伴い、最初はボランテイァとして働いていた人々に、彼らの行った仕事に対する報酬が必要とされるようになってくると思います。自立生活センターの場合には、私たちの価値観のひとつに、行った仕事に対して給与が支払われるべきだというのがありました。現在、世界中で組織がいかに成長しているかを私たちは見ることができ、それらの機関が地域、州、全国レベルでのギャップを埋めるに従い、障害をもつ人々の生活の質の向上が図られているわけです。
 今回は皆さんの会議に参加することができずとても残念ですが、これはとても興味深いトピックであり、考えついた人が誰であれ感謝したいと思います。これは良い討議の場を提供することになるでしょう。

FS:
 同感です。より多くの情報については、どうぞいつでも連絡してください。私たちはそれがとても重要なトピックだと考えています。会議の成功をお祈りします。

JF:
 ありがとうございました。