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世界保健機関(WHO)国際セミナー報告書

各国報告1:精神障害者および知的障害者のリハビリテーション

平成9年11月10日(月)13:OO-14:45
D501 Conference room
座長
N.V.K Nair   WHO西太平洋地域事務局
浅井 邦彦    日本精神病院協会


Country report

精神病患者と精神障害者のリハビリテーション
THE REHABILITION OF THE MENTALLYILL AND MENTADISABLED

ロバート フィッシャー
Robert Fisher
ロックハンプトン地区精神保健サービス AUSTRARIA

[要約]
重度慢性精神病患者(SPMI)、とくに精神分裂病は、すべての国々で高い人件費・社会的費用が関わっている。精神病患者のリハビリテーションは、その性質としばしばこの障害の重症度のため、特に困難である。また、よく公式化された研究が、精神病は社会的にマイナスであると認知させる有害な影響を与えた。精神疾患のケアに対する強固かつ統合的な協力を内包し、世界中でさまざまな試行を繰り返した共同体主導治療計画(PACT)は、社会心理的機能とケアに対する患者の充足度を劇的に向上させ、そして、急性期及び慢性期の両方のケア費用を減少させた。共同体主導治療計画(PACT)のオーストラリアの研究では、精神病の入院患者数、精神病患者用のベッド数が著明に減少し、患者の重症度が低下し、機能が改善した。これらの計画は明らかに、費用が少なくて済むことが示された。さらに、社会心理的状態とケアの質を計る尺度の開発によって、費用の削減が臨床的改善に矛盾しないことが見いだされた。 これは精神病患者の管理されたケアの導入をもたらした。新しい共同体主導治療計画(PACT)の重要点は、積極的なケア管理、家族の協力、コンピューターをしばしば利用する認知的治療、適切な住宅、統合して継続されるケアである。しかしながら、特異な集団や問題に対する特殊な必要性、たとえば、二重に診断された者、重度慢性精神病患者(SPMI)におけるHIV予防とその対処のために必要な予防措置、などについては未だ適切には調べられていない。発達遅滞の人々は、各々によく知らされ個人化された障害と健康の評価、能力を最大にすることを中心とするリハビリテーション、障害を代償するための訓練が必要である。精神病患者と発達遅滞の両者にとって、高い危険性のある人々や状況を同定することが予防法の第一番目である。遺伝について、早期の発達について、精神病患者と発達遅滞を促進させる環境の役割について等の、重要な研究が予防活動の基礎を確立させつつある。

[はじめに]
重度持続性精神病患者の発生頻度は先進国・途上国でほぼ同じようである。個人的、社会的、財政的費用は極めて高い。合衆国の1988年の直接・間接的な財政費用は1,300億ドルで、最大の部分は精神分裂病の治療とリハビリテーションに使われた。精神分裂病者は全病院の費用の25%を消費し、全長期ケア目数の40%にのぼった。適切な治療(または2次予防)は、とくに新しい非定型的な抗精神病、抗うつ、またはある種の精神安定剤の1っと共に、全般的な回復とリハビリテーション(3次的予防)にとって、最も重要な要素となるであろう。

 発達遅滞(発達障害)に注意を向けられることが少なく、確かに、精神病患者より少ない財源しか与えられてきていない。いくつかの途上国では、ケアは家庭で適切に与えられ、理想的な状況とはいえないが、障害と健康の対策に利用されている。しかし、未だ多くの国では、発達遅滞者は実際には社会から無視され、非個人的な、しばしば非人道的な、そしてかならず財源の足りない環境にある。

[現状報告と未来への提言]
精神病患者と発達遅滞の評価、治療そして完全なリハビリテーションの莫大な社会的、財政的費用がすべての国々にかかる。そのため、臨床的管理と資産の配分には包括的な注意深いアプローチが必要である。この会議に代表として参加した国々とWHOによる勧告は以下の如くである。

  1.  健康管理体制を統合することによって精神病患者および発達遅滞者に対する国の状況に見合った適切な健康保健体制を整備することができる。
    また、発達遅滞の完全なリハビリテーションにはしばしば高度に特殊化された計画を追加する必要がある。
  2.  ほとんどの精神病患者の健康ケアは共同体の中で”最も制限の少ない環境(患者の病気と状況にとって)”に移行し、急性期用ベッドは人口10万当り3.5~5.Oとすべきである。
    発達障害のすべてのケアもまた、個人の家庭・家族に最も近い、”より制限の少ない環境”で行われるべきである。
    家庭での援助を受けながらのケアが理想的である。発達遅滞者が居住する大きな施設は閉鎖すべきである。
  3.  精神病患者と発達遅滞のすべてのリハビリテーションに家族と”重要な他人”が含まれるべきである。この考え方は、通常患者と家族に高く支持され、文化的に適切で、常に費用の上で有利である。
  4.  実行可能な場所では、24時間利用可能な、特殊な共同体主導治療計画(PACT)チームの形成をすべての加盟州が考えるべきである。同様に、救急体制と健康ケアを一般市民と同じように発達遅滞者が利用できるようにすべきである。
  5.  適切な薬物による治療は精神病者のすべてのリハビリテーションにとって基礎となる。新しい世代の抗うつ薬である(SSRIs)、Clozapineなど非典型的な抗精神薬、気分調整薬の利用は、費用的に大変有利で、財政が許せばすべての国で利用可能にするべきである。
  6.  発達遅滞と他の発達障害は特殊な健康ケアサービスが必要で、可能な場所では、発達に関する専門医がこのようなケアを指導できるようにすべきである。

 WHOはこれらの勧告を実行するのを援助するであろう。精神病患者と発達遅滞のケアの研究と進歩をすすめるために地域のメンバーは協力し合う必要がある。しかし2つの疾患は似通っていても別々のもので、これらに対する各国の法律を相互検討する必要がある。また、乏しい資産を有効に利用する計画を立て大きな製薬会社の協力や進歩した健康器具の支援をもとめ、ときには非常に高価な薬物や医療物品も手に入れるように工夫するべきである。

Country report

共同体精神健康家族ケアにおける精神病患者の社会心理的リハビリテーション
北京の田園Haidian地区における経験
PSYCOLOGICAL REHABILITATION OF MENTAL HEALTH HOME CARE PROGRAM
EXPERIMENTAL FROM BEIJIN'S RURAL HAIDIAN DISTRICT

シェン ユークン、ツアン ウェイ、チェン チャンギ
Shen Yucum Zhang Weixi Chen Changhui
北京医科大学精神保健研究所 CHINA

[要約]
1974年6月、北京医科大学の精神保健科は19万の人口を持つHaidian地域の11の共同体において精神病患者に対する健康保健ネットワークの作成に着手した。はじめにサービスに従事する者の訓練を行い、次にこの地域での重度の精神病患者の調査を行った。プライマリーヘルスワーカーが頻回に患者の家庭を訪問して治療を行った。我々の施設の医療スタッフの指導のもとに患者を可能な限り早期に社会活動に参加させるように励ました。患者は家事を行ったり、集団農場で仕事を分担した。200人以上の精神分裂病患者が薬物療法と共にこの種の家庭での治療を受けた。10年の経過で60%以上の分裂病患者の症状が軽快あるいは著明な改善をみた。共同体に参加するように仕向けるため、家族とプライマリーヘルスワーカーの教育が特に重要であった。これらの経験は中国のいくつかの地域で広く行われるようになった。例えば、Shandong省、Yantaiの農村地区、Liaoning省ShenyangのTeiling地区などで行われている。

[はじめに]
共同体の精神保健の家庭看護計画にもとづいて、患者は家庭の治療とリハビリテーションと看護を受ける。この計画では早期の社会的リハビリテーションに力点が置かれ、家族と共同体の生活環境の医療関連資産をすべて利用する。我々は、精神保健サービスが乏しい農村地区の精神病患者を助ける実際的な方法を見いだす目標のもとにこの計画を企画した。

 この試験的な計画は次の3つの主要な検討に依拠している。

  1.  精神病患者の治療とリハビリテーションの過程で、医療従事者だけでなく家族、友人、共同体が支援する。彼らのより良いリハビリテーションのためには、共同体の支援が絶対的に必要である。
  2.  伝統的に中国人の家族は西洋の家族より強いつながりを持つ。彼らは、精神病患者の看護に責任を持つ。したがって、家庭の看護は中国人にとって受け入れられやすい。
  3.  中国の各村ではすでに、多くのプライマリーケアの施設がある。このため、その従事者と家族の教育を通じて、精神病患者の社会的リハビリテーションに家庭で精神健康看護を与えることができる。

[現状報告]
1970年、1980年と、慢性の精神病患者に対する社会心理的リハビリテーションの委員会が設立され、その委員会の計画のもとに精神病院のスタッフが指導を行って実践活動が開始された。

 都市部の最も印象的なモデルとしてShenyang市で行われている活動がある。そこでは工場長が精神病患者のリハビリテーション・センター長を兼ねている。工場はその地域のそれぞれの慢性精神病患者に職業従事の機会を与えた。工場は行政庁に所属しているが、彼らの活動はセンターの活動に有効であった。

 慢性精神病患者のリハビリテーションの最も一般的なモデルをShanghaiにみることができる。精神病患者の治療・予防委員会とShanghai自治体当局のもとに、この地域の大部分を包括するレクリエーション工場が設立された。レクリエーション工場のセンターには精神病院を退院した患者や共同体に住む精神発達遅滞を含む慢性精神病患者が通院している。そこで彼らはリクリエーション活動のプログラムに従って手作業に参加し、看護婦などから投薬を受ける。

 農村地区では精神病患者の共同体・家庭看護が広く行われているが、これは北京のHaidian地区の活動に由来する。1990年まで、精神病患者の社会心理的リハビリテーションに関する政府の計画は見られない。1992年以後、中国障害者連合が国家計画を提出して、共同体にもとづいた精神疾患の治療や予防を各省毎に地域、都市で推進している。

 共同体にもとづいた精神保健や看護の推進は各省で異なる。1996年から(次の5年間を意味する)、中国障害者連合は200の都市・地域でこの計画を確立させようとしている。私は1996年の後半期に個人的にShatou市を訪問した。そこでは障害者オフィスが有効に機能しており、市の90%以上の分裂病患者が治療と看護を受けていた。多くの慢性分裂病患者が地域の共同体に戻り社会活動に参加していた。彼らは個人個人の細かな訓練計画を与えられ、これに必要な教育器具が準備されており、大きな工場が精神健康センターとして機能していた。

Country report

マレーシアにおける精神病患者の社会心理的リハビリテーションの
進歩と傾向
PROGRESS AND TRENDS IN PSYCHOLOGICAL REHABILITATION OF THE MENTALLY OLL IN MALAYSIA

マハ パラメシュバラ ディヴァ
Maha Parameshvara Deva
マラヤ大学医学部精神科 MALAYSIA

[要約]
マレーシアでは精神障害者の社会心理的なリハビリテーションは身体障害者のリハビリテーションと比べ遅れて出発した。しかし、この30年間に多くの改善がなされ精神障害者を改善させるために何が可能であるか多くの実績を残した。我が国では共同体を中心とした日帰りの社会心理的リハビリテーションが確立されつつある。しかしながら、公共的・職業的な認識が貧困であるため多くの問題が起きている。それはリハビリテーションがほとんど行われない個人的な施設が雨後の筍のように急増していることである。

[はじめに]
社会心理的リハビリテーションは200年前パリのサルペトリエ病院の精神病患者のPinelの解放と監禁された精神障害者の人道的な介護から始まった。このような歴史的経過で始まったにもかかわらず、精神障害者を収容する類の施設が世界的に増加し、そこでは強制的、強圧的な病気の認定によって精神障害者が施設収容され、彼らは非生産的で完全に介護者に依存する状態に貶められた。精神障害者はしばしば法律によって高い壁の施設の中に居住させられ、家族や縁者から隔離され、すべての市民権を奪われた。これらの所業はすべて精神障害者という名のもとで行われた。この状態は1950年代の新しい医学の到来に伴い中止されるはずであった。しかし、現在なお多くの病院で続いている。その理由は精神障害者はヘルスケアの中で優先順位が低く、考慮の外にあるからである。

[現状報告]
マレーシアは人口は2千百万で国土は12万6千平方マイルで、東南アジアの心臓部に位置する。収入は一人当り4千米ドルで経済は東アジアの領域で強力かつ急速な向上を成し遂げていると考えられている。しかし、1957年の独立時には、医師は千名以下でマレーシア人の精神科医はいなかった。精神障害と精神保健を担当する医師は極わずかしかいない状態で、彼らが300から5千床の4つの古い大きな精神病院で働いているにすぎなかった。1957年王立の調査団が編成され、これらの病院で患者が受けている看護の実状調査が行われた。この調査によって、マレーシアの精神医療に初めて大きい変化がもたらされ、患者看護の質の向上により注意がむけられるようになった。同時に精神病患者の看護戦略に占める施設の重要性は低下し始め、1958年Penangで初めて一般病院における精神治療が開始された。最初の日帰り看護センターの治療は1969年Ipohで行われ、今日では共同体に連携したリハビリテーション・センターは15に上っている。 さらに、一般地域病院の精神科が25ヶ所あり多くの精神病者の看護を行っている。4つあった大きな精神病院はいずれもその規模が縮小され、2千床の2つの大きい規模の病院に統合再編されている。一年間の患者数をみるとこの2つの大きい規模の病院より前者のいくつかのリハセンターや一般地域病院の方で診療している数が多くなっている。 また、家族・障害者・精神的ケアを行う10の精神健康組合がある。

 マレーシアには現在約120人の精神科医がいるが、わずかに6人の医師が社会心理的リハビリテーションを行っているに過ぎない。 社会心理的リハビリテーションの活動には、売るための野菜や果物を作る、魚、鶏、あひるなどを育てその卵を収穫するといった、施設内での農作業、洗濯・台所仕事・庭仕事の手伝いなど病院の補助的作業がある。共同体では、電子・プラスチック・電気・梱包など企業からの請け負い仕事が治療として行われている。日帰りセンターでは、心理的、社会的、職業的な計画が強調されているが、一方施設では、ほとんどのリハビリテーションは作業することに向けられている。

[未来への提言]
社会心理的リハビリテーションは現在6つの医学校のうちの1つで在学生と卒業生に教えられている。将来これが他の5つの医学校に広がることが望まれる。将来は、この種のリハビリテーションプログラムが新しい風潮となると思われる。施設における精神病者の治療が一般病院の精神看護としてより広く行き渡るようになると、より有効な治療となるであろう。

 裕福な人々が精神病患者を留めて置くために使う、個人的な介護施設が急激に増加するのを監視する必要がある。1つの提案は社会心理的リハビリテーションセンターのスタッフを訓練することであろう。この目的を達成するために訓練施設を設立することは社会心理的リハビリテーションを強化することに資するであろう。リハビリテーションを受けた精神病患者に必要な援助は何かを考えることは別な領域のものであろう。

Country report

精神病患者と知的障害者のリハビリテーション
-精神的障害者の処遇の変遷-
REHABILITATION OF ILLNESS AND MENTAL RETARDATION IN PURSUIT OF SOME CHANGE ON MENTAL ADDMINISTRATION

吉川 武彦
Takehiko Kikkawa
国立精神・神経センター 精神保健研究所 JAPAN

[要約]
演者は、この機会に精神障害者及び知的障害者(または精神遅滞者)を含む我が国における精神的障害をもつものに関する処遇史を明らかにしたい。このWHOシンポジウムでは、1900年から1997年間になされた精神保健福祉の歴史的変遷をいくつか述べることにする。

 この100年間のうち、1900年から1950年までの50年間の第1段階で精神保健福祉の近代化が始まった。この時期、私たちは精神的障害をもつ人々を強制的に隔離入院させて対応した。第2段階の1950年から1987年までの40年間に、私たちは精神科の患者に対する薬物療法を手に入れた。その結果、この時代は精神的障害をもつものに対しては主に精神科の医療で対応するところとなった。

 精神的障害のあるもの-そのほとんどは精神障害者であるが-に対するリハビリテーションの考え方や技術の進歩が見られるようになると、患者を精神病院から退院させ、地域社会のケアが開始された。これは1990年から現在まで続いており、私たちはいまこの第3段階にいる。

[現状報告]
1987年の精神保健法は、精神的障害のリハビリテーションの推進に貢献した。1995年にこの精神保健法は、精神保健福祉法となり精神障害者はこの法により処遇されている。

 知的障害(精神遅滞)者に関しては、私たちは1990年位から知的障害者の法律で決められた福祉システムを保有している。当時、私たちは精神的障害者に対する治療を次の2つに分けて行った。1つは精神障害者に対するもので他の1つは知的障害者に対するものである。

1990年から福祉サービスによって知的障害者の治療が行われた。換言すると知的障害者には先に述べた福祉サービスが好まれて実践された。この期間、精神障害者に対しては私たちは医療サービスを行ってきた。

 1993年から、私たちは障害者基本法に従って対応している。この法律は、身体障害者、知的障害者、精神障害者など全障害者に対応する法律である。最近知的障害者に対する処遇も一歩一歩と進歩している。

[未来への提言]
私たちは、精神障害を他の2障害と区別することを避けるように心がけている。このような努力によって精神的障害者の社会復帰が可能になると理解している。しかし、現在でも尚私たちは精神障害と知的障害の治療にいくつかの問題を残している。最大の問題は精神的障害者の不測の事態に対するサービス体制の確立である。私は精神的障害者におきる不測の事態には、2つの種類があると考えている。1つは医学的不測の事態であり、他の1つは社会的不測の事態である。医学的不測の事態には医学的対応が必要であり社会的不測の事態は社会的対応が求められる。

 私たちは現在これらの不測の事態に対応するシステムを構築している途上にある。1つは医療機関と地域社会サービス機構が協調して対応するシステムの構築である。他の1つは医療サービスのグループサービス団体やワークステーションと生活支援システムのような地域サービス機関とが協調して対応するシステムの構築である。

私たちは患者の知る権利-Rights of Informed Consent-と生活の質の向上-Quality of Life-に配慮したケアシステムの構築に力を尽くしている。


各国報告2:地域リハビリテーション(CBR)の現状と課題

平成9年11月10日(月)15:00-17:00
D501 Conference room
座長
Linda Milan  WHO西太平洋地域事務局
中村 隆一    国立身体障害者リハビリテーションセンター

Country report

フィジーにおけるリハビリテーション展開のバリア
SECTORAL INTEREST THE BARRIER OF FIJI'SREHABILITATION PROGRESS

ジャカタマ トガ
Jokatama Toga
フィジー障害者全国協議会  FIJI

[要約]
FNCDP(FIJI NATIONAL COUNCIL FOR DISABLED PERSONS)は、障害者の要求によりフィジー政府が障害者施策の先駆的展開を意図して設立した協議会である。協議会の事業は、フィジーのナショナルリハビリテーションプログラムをはじめとする国レベルの障害者に対応する活動プランを作成する。

[はじめに]
フィジー保健省は、Tamavuaリハビリテーションセンターおよび知的障害者を対象としたST.GILES病院の施設リハビリテーションを支援してきた。他の非政府組織は、利用可能な資源を使ってケアを提供している。また、他のボランティアグルーブによるサービス提供も実施されている。

[現状報告]
フィジーをはじめアジア太平洋地域の多くの国は、個人を基盤とした政府、非政府組織による障害者リハビリテーション対策を行っている。政府、非政府組織の各々のさらなる統合、連携が現段階において極めて重要である。

 現在、障害関連のリハビリテーションはSuvaのリハビリテーション病院のみで実施されている。精神障害者のリハビリテーションも保健省が担当している。保健省は、政府機関のうち、施設及び地域リハビリテーションの最も有効なサービス提供機関である。

 しかし、この実践過程には非政府組織や他のボランティアグループによる補助が必要であることを考慮すべきであり、地域リハビリテーションプログラムの確立のためには、これらすべてのサービスの連携が必須である。フィジーはアウトリーチプログラム実施まで地域リハビリテーションプログラム技術が発達していないのである。FNCDPは近年、保健省により事態の打開のために設立され、1997年には地域リハビリテーションの国レベルのワークショップ組織となることを予定している。協議会はこのワークショップ組織となることを強く希望している。

[未来への提言]

  1. フィジーの国レベルリハビリテーション対策とプランの明文化。
  2. 政府と非政府組織の現行サービス強化のための連携。
  3. FNCDPネットワークを通じた地域レベルの資源とニーズの把握。
  4. 国レベルの人口調査による障害者数と分布の把握。

Country report

ナショナルプログラムとしての地域リハビリテーション(CBR)
CBR AS NATIONAL PROGRAM

ハンドヨ チャンドラクスマ
Handojo Tjandrakusuma
インドネシア地域リハビリテーション開発訓練センター  INDONESIA

[要約]
地域リハビリテーション(CBR)プログラムの目的は、障害者の求めるプログラムの適用範囲の拡大、及び地域資源の活用を主とした生活の質の向上である。

 この理念に基づき、多くのCBRパイロット事業が実施されている。これらの目的は類似しているが、プログラムの概念、方策、方法は相違するものである。

 国レベルの有効なCBRプログラム提供には、政府、非政府機関のCBRプログラムヘの関与による国レベルCBR概念と方策の開発が不可欠である。

[はじめに]
CBRパイロット事業はNGOと政府の両者により実施されている。さらに、保健省、福祉省、教育省など、障害者の生活の質の向上に関連する各省の部門よりサービスが提供されている。

 本稿はCBRのナショナルプログラム開発における問題と可能性について検討する。

[現状報告]
政府、非政府組織両者が施設リハビリテーションサービスに加え、多数のCBR活動及びCBR関連活動を実施している。多数の活動から3つの活動について概説する。

A.移動リハビリテーション活動
 このプログラムは社会省が実施している。このプログラムでは移動リハビリテーション専門家チームが郡を訪れ、様々なリハビリテーションサービス、相談業務、適切な機関の紹介、杖・車椅子・三脚などの福祉用具の給付を実施するものである。プログラムには、2週間の地域でのCBRトレーニングもある。
 
B.ヘルスケアシステムにおける医学的リハビリテーションサービス
 包括的な医学的リハビリテーションサービスは、全ての県立病院で実施されている。数年前、保健省は地域病院の医学的リハビリテーションを開始した。現在、プライマリーヘルスケアセンターにおける初期の医学的リハビリテーションサービスの整備が計画されている。プライマリーヘルスケアセンターの医学的リハビリテーションサービスとその照会サービスはCBRの展開に有効であろう。
 
C.地域開発の視点に基づいたCBRプログラムの遂行
 スラカータのCBR開発トレーニングセンターは、CBRプログラムに基づいた地域開発に取り組んでいる。ここでの地域開発の概念・方策・技術には、地域参加評価、コミュニティオーガニゼーション、他の地域教育方策や技術が応用されている。

[未来への提言]

1.国レベルのCBR概念、方策に適合した一般的な概念及び方策の開発
 開発には、様々なパイロット事業とCBR関連プログラムの遂行により得られた成果を活用する。
 
2.共同活動プランと連携活動プランの展開
 CBRプログラムの国レベルのコーディネート機関の設立。個別CBR活動を国レベルCBRへ適用する。

Country report

マカオにおけるリハビリテーション-仮想現実からの脱却-
REHABILITATION IN MACAU-A VIRTUAL REALITY REVERSE

リノ ピント マルケス
Lino Pinto Marques
コンデ・デ・S・ハニュエロ中央病院リハビリテーション部  MACAU

[要約]
マカオの公衆衛生は、2病院(計984床)が担っている。1996年時点で、入院者数は、1床当たり447人、医者1人当たり421人である。さらに9ヵ所の保健センターがあり、主に医学的予防を担当している。

 運営は幾分か中央集権的で、主要な決定は、保健省長官、究極的には政府の責任のもとに行われる。1996年の保健関連の歳出は、GDPの約2.5%(約75億USドル)であり、政府全体の歳出の10%にあたる。ほとんどすべての支出は病院と保健センターに振り分けられ、リハビリテーションはあまり重要視されていない。

本報告では、マカオのリハビリテーションの状況を概括したい。全く新しいプログラムは、政治レベルの課題であることを示唆するに留める。

[はじめに]
マカオは、中国大陸南東、広東省の珠江河口、北緯22度13分5秒、東経113度35分23秒に位置している。国土は、半島部分と2つの島(TaipaとColoane)からなり、2島は2本の橋と陸路で結ばれている。東北東約60km、河を隔てた対岸に香港がある。国土全面積は、21.45平方kmである。埋め立てが行われている。

気候は、年間平均気温が20℃の亜熱帯気候である。気候が最も良いのは(10~12月)秋で、晴天で暖かく、湿度が低い。

 ポルトガル語と中国語の二つが公用語であり、最も広く話されているのは広東語である。英語は、貿易、観光、及び商業の分野で用いられている。

 人口の約95%は中国人であり、その他の5%がポルトガル人、及びその他の地域の出身者である。

 領土は、1999年12月20日まではポルトガルの統治下で、その後は特別自治区として中国に返還される予定である。首長は、ポルトガル共和国大統領により任命される総督で、最大7名の各省長官により補佐されるシステムになっている。各省長官は関連部門の責任者を務める。通貨は、パタカである(1ドル=約8パタカ)。海外通貨は、ホテル及び銀行で両替が可能で、持ち込み及び持ち出し額の制限はない。

[現状報告]
我々の日常生活は、我々の独自の環境、すなわち世界において最高ではないかもしれないが最も人口密度の高い地域(1平方キロメートルにつき5万人)の一つという環境と関わっている。全人口約45万人が、約8平方kmにすぎないマカオ半島に居住している。過去20年間に、中国と数的にははるかに少ないが他の国からの移民により、77.5%の人口増加をみた。年齢構成は、若年者が多く、15歳以下が25%である。65歳以上の人口は7.5%であるが今後は増加が予想される。

 マカオの保健衛生の状況を簡潔かつ正確に伝えるため、本年の始めにリスボンから送られた特別チームが集めた最新のデータに基づいて報告する。

 リスボンからの調査チームにより提供された保健衛生問題に関する情報は、マカオが80年代後半にいわゆる「疫学上の転換点」に達したことを示し、先進国に見られる状況と同様のパターンが見られる。この結論は、出生率、死亡率、罹患率(ここでは幾分なりとも不完全な統計であるが)、平均余命、障害調整平均余命(DALY's)、Katzインデックス、及び経済情報等の国際的に認められている保健衛生の指標に基づいている。この数字は、この分野に対する公的資金の拠出の計画的な制限を明らかにしたものの、病院及び保健センターレベルにおける新しい技術及び新しいサービスの導入による医療援助の質の改善の可能性を示唆している。

 主要な疾病は、循環器系疾患(心臓病、脳卒中、高血圧)、腫瘍(気管、気管支、肺等、悪性腫瘍)、呼吸器疾患(肺炎、気管支炎、気腫、ぜんそく)、及び感染症(結核、肝炎、ウィルス疾患)。である。リスク要因は、摂取カロリー過多を伴う栄養の偏り、脂肪及びアルコール、ストレス、運動不足、及び喫煙等であることがはっきりしている。交通量の増加に伴う大気汚染も呼吸器疾患発生の要因として働いている。これらの問題をモニターし、予防する予防の努力がなされている。

 しかしながら、この報告には若干の欠点もある。リハビリテーションに関する言及がなく、保健衛生については予防から治療に焦点を当てていることを示している。リハビリテーション医学およびサービスは確立されておらず、展開もしていない。

 マカオの将来についての計画は、1999年12月の中国への返還を念頭におくことが求められる。これまでの15年間、マカオは近代化の努力を払い、観光、通信、交通、住居と教育、文化、保健衛生、そして法秩序と公安という分野で発展を見てきた。一方で来るべき新しい政治秩序への適応を図りながら、発展を持続しつつこれらの施設を維持しかつ保全してゆくことが将来への挑戦である。

[未来への提言]
現時点でマカオの主要なリハビリテーションプログラムを固めることは不可能であると考える。しかしながら、保健衛生への具体的活動を続けることを止めてはならないと私は確信する。この意味で、1999年12月の返還に関わる憂慮は、長期的計画および発展の障害としてはならない。
緊急に対処するべき課題は、以下の6点である。

  1. リハビリテーション全般に関わる法律の制定。
  2. マカオにおけるすべてのリハビリテーション活動を指導する調整機関の創設。
  3. 障害に関する最新の統計の確立。
  4. より専門化したスタッフを養成訓練するためのコースの設立及び改善。
  5. リハビリテーションの専門職域の確立と向上を支援する法律の制定。
  6. 特に養成訓練及び情報交換を目的とした近隣諸国との協力体制の強化。

 これらの手段をとれば、状況を明確に把握することができ、今後の発展の基礎を作ることができる。また以下ことが近い将来可能となるであろう。

  1. リハビリテーションセンターとしての機能が可能な中堅レベルの病院の設立。
  2. 適切なナーシングホームの設立、及びこの領域への民間投資の奨励。
  3. 補装具製作施設の設立、及びその技術が得られない地域への拡張サービス。
  4. 障害者のための適切な移動システムの確立。
  5. 福祉用具の購入の補助など地域ヘルスケアシステムの検討。
  6. 適切なキャンペーンによる住民意識改革と支援の促進。
  7. 障害者のための非競技スポーツ等の新しいプログラムの開発。
  8. 可能ならば職業専門施設の設立による職業訓練プログラムの開始。
  9. 報奨金などによって民間企業に対して労働力としての障害者を雇用するよう奨励する。
  10. 既存のヘルスケアセンターの労働条件を向上し、在宅支援活動へと拡大する。
  11. 地域団体が新しい計画に参加するように取り組む。

 以上は、私が近い将来達成可能と考えている提案である。これらは主に身体障害者に焦点を当てているが、他の障害者に対しても適用しうる。私はマカオがこれらのステップを比較的簡単に実行できるぐらい十分成熟し、また発展していると信じている。主たる困難は、政治がこれを実行するようにすることにある。前途がなんであれ我々にはこれを理解し、着手する叡智のあることを期待し、障害に対する差別に終止符を打とう。

Country report

マレーシアにおける地域リハビリテーションの現状と今後の課題
STATUS QUO OF COMMUNITY BASED REHABILITATION AND IT'S FUTURE

サンディヤオ セバスチャン
Sandiyao Sebastian
マラヤ大学教育学部教育心理学科  MALAYSIA

[要約]
マレーシアにおいて、地域リハビリテーション(CBR)プログラムは1983年から試験的にはじめられ、今日では167のプロジェクトに拡大した。さらに1997年末までには、20以上のプロジェクト実施が期待されている。このような展開(発展)は、CBRが障害者リハビリテーションにおいて有効かつ適切であると研究の中で明示された。この研究は、地方政府当局がCBRの初期段階から専門的な相談役を担い、活動に参加することによって、CBRプログラムが有効性を持つことを明らかにした。CBRの基本は、プログラムの効果性、ケアワーカーのトレーニング、障害者の参加、地域資源の最大利用等に充分配慮するという点にある。政府、非政府機関、そして地域社会の有効な協力を常に継続しなければならない。本稿では、国内CBRプログラムの実質的かつ継続的な発展のために、国レベルの協力や評価の必要性について検討する。

[はじめに]
過去14年間、マレーシアにおけるCBRプログラムは急速に展開し、現在167のプロジェクトに達している。これは、施設中心のサービス提供モデルから地域社会の迅速な対応や責任を促すという重要なパラダイムの変化である。報告では以下について概説する。1)障害者の役割、2)マレーシア式アプローチ、3)CBRプログラムのモデル、4)社会福祉省の役割、5)非政府組織の役割、6)CBRプログラムに関する評価、7)今後の限界と課題等である。 マレーシアにおいて最も重視されたCBRプログラムは、都市、地方、そして最も都市から遠い農村地域の人々に対する効果的な支援及びリハビリテーションサービスの提供であった。特別なニーズをもつ子供を家族や地域社会で育てること、地域社会において責任分担の意識を啓発し、「ケア社会」を作りだすことである。

[現状報告]
マレーシアは、基本的ケア、リハビリテーション、及び教育的サービスの提供に、政府や非政府組織がどのように補足的あるいは補充的役割を果たすのかの良い例であろう。マレーシアにおけるCBRプログラムはCBRのWHO定義を適用している。

 プログラムモデルは開始段階の状況と実行プロセスにより相違する。例えば、プログラムモデルを設定するための理論的根拠としては、プログラムをどのように開始するか、資源利用の可能性、マネジメント、対応可能範囲、アセスメントと計画作成の活動などがある。国内のCBRプログラムにおいて社会福祉省は重要な役割を担うと同時に、主たる責任を負うものである。今年、社会福祉省はワーカー認定や施設賃貸費用の支出として2.6百万RM(約100万円)を承認している。追加分合計1,056百万RM(約4千万円)も今年中に20のCBRプロジェクトを設置するため承認された。また既存センターのトレーニング教材やリハビリテーション機器購入のため50万RM(約2千万円)の予算がついた。社会福祉省の長官はプログラムの持続的な展開のため中心的役割を果たしている。

 近年、地域社会における障害者の役割がより明白になっている。つまり、多くの障害者が、障害者としての権利を主張するための特有のチャンネルを利用するようになり、また発生した問題について意見を述べるようになった。障害者たちは自分たちの立場を明言できるようになり、権利主張運動をはじめている。全体動向としては、地域社会における障害の認識は、特に障害者の生活の質の向上や意味ある社会的役割の創出においてより肯定的である。

 非政府組織は地域社会において開拓的、補足的サービス提供の中心的役割を果たしている。障害者組織または障害者のための組織はCBRプログラムの目標を達成するために献身的に活動している。マレーシアでは、ボランタリズムの精神や一致団結の精神が大切な要素となっており、日々新たな問題に直面している。政府は2020年までの「ケア社会づくり」に向け努力しており、これらに向かい展開を開始している。

 CBRプログラムはプログラムの規模、資源、管理により相違する。限られた家庭訪問、グループリハビリテーションプログラムは一般的である(センターを中心とする)。個別家庭訪問も実施されるが主なプログラムではない。これはCBRワーカーの能力や個人支援により相異する。広範囲で治療、教育、訓練、雇用のための対応がなされている。余暇活動やレクリエーションに関する障害者へのサポートは、多くのCBRプログラムの今後の課題の一つである。

[未来への提言]
マレーシアにおけるCBRプログラムは多方面で発展しており、これは障害者にとって朗報である。CBRプログラムの地域評価が実施されるが、そのプログラムの質や代替可能性について、真剣に検討する必要がある。ボランティアの保護と維持はさらに研究と展開が必要とされる領域である。障害者やその家族の参加は、CBRプログラム成功への決定的要素である。CBRワーカーのトレーニングは重要な領域であり、重視する必要性がある。CBRプログラムは、適切なCBRプログラムの評価基準を明確にし、確実に実行しなければならない。CBRワーカーのトレーニングも慎重に考慮すべき評価領域である。最近では6週間のトレーニンクプログラムがマレーシアのIpohという地域で開始された。これは、CBRプログラムにおいて優秀で専門性の高いケースワーカー育成に成功している。CBRワーカーの多様なレベルに対し、柔軟性のある教育トレーニングプログラムの体系的構築が必要である。

マレーシアCBRプログラムは国家調整委員会から提案され、現在検討されているところである。

国家委員会の機能は以下のとおりである。

  • CBRに関する国の政策の明確化の支援。
  • 調査や開発活動の遂行。
  • 情報普及や啓発活動の開始と組織化。
  • CBRプログラムの開発促進。
  • CBRプログラム内のネットワーク強化。
  • 他地域や海外CBR活動の視察のため基金提供及び教育的視察。
  • 国家委員会の課題や機能援助のためCBR財団の設置。

 国際協力およびネットワーク強化がCBRプログラムの今後の課題として示された。実質的な計画が、単なる報告や協力より重要である。調査やモニタリングの機構は、CBRプログラムの有効な発展のための決定的要素である。このような活動の資金確保が必要である。これは必ず推進され実行されるべきである。

 上記に述べた内容や記録は、地域社会またはそれに関連するリハビリテーションを基本とした有効な情報活用のために重要なものである。アジアレベルのCBRニュースは、情報を基本としたネットワークとして展開されてゆくだろう。

Country report

西ネグロス(フィリピン)におけるCBR
CBR EXPERIENCE IN NEGROS OCCIDENTAL,PHILIPPINES

タカド プリミティーポ カマヨ
Cammayo Primitivo Taccad
ネグロス州リハビリテーション基金  PHILIPPINES

[要約]
西ネグロスリハビリテーション財団(NORFI)は、1981年から、フィリピンのネグロス島地域におけるCBRプログラムを指導してきた。その活動は、Bacolod市における小さな機関で始まり、当地域における大部分のスラムと農村地域に拡大されてきた。障害者数は、年々増加している。CBRの概念と原則に関するWHOモデルを用いて、プログラムを改善及び維持するために、複数の活動や評価指標を改革してきた。2005年までには、全地域が対象となる予定である。

[はじめに]
ネグロス島は、フィリピンの西Visayas地方のネグロス島の西半分を占める地域である。 首都は、「砂糖と笑顔の町」と呼ばれるBacolod市である。人口は、Bacolod市に約30万人、全地域では250万人である。西ネグロスは、国内の砂糖の生産地域として有名である。西ネグロスのBacolod市は、試行段階で成功し、CBRプログラムの継続的実施と拡大で有名となった。NORFIは、指導的立場の機関であり、ボランティア、政府の機関及び非政府機関(NGO)の継続的な支援、さらには、障害者とその家族に対する支援を行っている。CBRの主目的は、1)障害によって生じる問題を地域に認識させ、2)地域の問題解決への取り組みを促進し、3)障害者に対する既存のサービスやプログラムを改善し、4)機関間の連携を確立、維持、及び強化し、5)容易なリハビリテーション手法を用いて、地域の専門職、障害者の家族及び障害者自身に対し教育し、6)障害者の自己責任と自己満足感を向上させることである。

[現状報告]
1981年2月に、障害者国家委員会、現在の国立障害者福祉会議(NCWDP)がCBRシステム(CBRS)と呼ばれる計画をBadold市で開始した。その目的は、WHOが障害者リハビリテーションサービスの、容易で実践的な方法を用い、地域レベルでの提供を目指した新しいアプローチの有効性を評価することであった。開始された計画は、都市、農村にかかわらず、貧困地域において不可欠なリハビリテーションサービスの供給システムを、地方に拡散し統合するというフィリピンで初めての取り組みであった。それは、リハビリテーションサービスの費用を削減し、リハビリテーションの必要な障害者に広くサービスを提供することを目的としていた。事業を計画、管理、実施するために、政府機関と非政府機関からの代表者をメンバーとするCBRS計画委員会が発足した。この委員会の責任は、CBRS計画の組織的構造の計画、実施機構、及びWHOのマニュアル(Helander,Mendis,&Nelsonによる地域における障害者の機能回復訓練)をもとに人材開発とその計画を開発することなどである。

 最初、Bacolod市において最も経済成長の低い9村(barangays)、人口35,000人を対象として開始され、現在では、200村、約650,000人がその対象となっている。地域における指導者(スーパーバイザーまたは研究者)が300名おり、プライマリヘルスケアの専門職のほとんどが継続的に訓練をうけている。訓練の第1段階は、1~2週間継続し、学習時間は月ごと、さらに週ごとに計画される。プログラムにおける人材には、1)地域プライマリヘルスケアセンターに所属する助産婦で構成されている中堅クラススーパーバイザー、2)スーパーバイザー、及び中堅クラススーパーバイザーに対する専門技術の、モニタリング、評価、及び支援を実施する地域リハビリテーション事務局、3)さらなる専門的支援を実施する医師、理学療法士、作業療法士、看護職からなるボランティア専門職、4)リハビリテーションのための支所機関の人材支援、及びスーパービジョン支援の実施、理学療法指導者及び訓練生等が該当する。スーパーバイザーの活動で、11,590名の障害者が支援をうけることが可能となった。これらの対象者は、運動、視覚、言語、聴覚、学習等の障害をもつ。このうち、2,591名は現在、機能回復訓練に参加している。開発された支援サービスは、以下の7点である。1)中核機関として、医療的及び高度技術の必要なリハビリテーションサービスを提供する西ネグロスリハビリテーションセンター、2)地域資源及び技術を用いて福祉用具を提供する地域に適合した支援拠点、3)地域病院、及びリハビリテーションセンター所属の地域リハビリテーションのための支所機関(予防、早期介入、グループセラピー、及び次ステップのための評価を実施するボランティア専門職によって運営される)、4)地域の学校における特殊教育の単位の設立、5)セルフヘルプグループ(障害者協会)とサービス提供者としてのボランティアの養成訓練と組織化、6)スーパーバイザーのための月ごとの定期的な会議と学習プログラム、7)投薬、手術、福祉用具、奨学金、及びその他の関連サービス等を直接支援する地元、及び海外の財政支援機関との連携を通じた貧困者助成金、の7点である。

[未来への提言]
CBRの継続と将来の方向性:NORFIでは、CBRプログラムは、開発の資金源としてのみ残されるべきではないと考えている。CBRプログラムは、誰もが平等の機会をもって社会参加できるという目標の達成を目指す地域開発プロセス全体の一部である。以下の指標により評価すると、CBRプログラムが達成してきた結果は維持されている。

  1. 地方自治体の参加と、CBRプログラムのマネジメント機能の地方自治体への移行。
    1989年以来、NORFIは、養成訓練、モニタリング、評価活動に対する助成金を、市、及び地方自治体より毎年受け取っている。
  2. 地域住民のボランティア活動による地域参加。
    ボランティアは、養成訓練、健康促進のための活動、及び財政向上させる活動を可能とする。地方自治体との連携は、必要な薬剤及び福祉用具の提供のための財政資源となりうる。
  3. 医学的、教育的、社会的、心理的、職業的な問題を扱う照会サービスの強化。
    サービスが容易に利用可能になることは、障害者、及びスーパーバイザーの双方にとって有効となる。
  4. 西ネグロスリハビリテーションセンターへの過度の集中を防止するため、各地域に少なくとも一つのリハビリテーションの支所機関設立、
  5. スーパーバイザー活動を継続するための支援として、技術を向上させる養成訓練に対する投資、
  6. 脳性麻庫、脳卒中、リウマチの人々に対するグループセラピーのような新しい活動の継続的な開発、この活動はプログラムの広報的機能をもつ。
  7. モニタリングと評価の継続、
  8. リハビリテーションに関する最新の情報提供活動の継続、
  9. 財政的な活動、研究、情報交換のために、WHO、及びリハビリテーション関連の国内外機関及び非政府機関との連携、及び協力体制の継続、の9点である。

 上記の活動を通じ、2005年までにCBRは、西ネグロス地域全体に対応できるであろうと考えている。

Country report

身体障害のある人々の地域リハビリテーションとプライマリーケア
COMMUNITY BASED REHABILITATION AND PRIMARY CARE FOR PERSONS WITH PHYSICAL DISABILITIES

中村 隆一
Ryuichi Nakamura
国立身体障害者リハビリテーションセンター  JAPAN

[要約]
日本の国勢調査、身体障害者実態調査報告、身体障害者更生施設実態調査、国立身体障害者リハビリテーション病院統計などに基づくと、身体障害のある人々及び高齢者のヘルスケア・ニードは、維持的リハビリテーションとプライマリーケア、特に二次的合併症の予防を含む、リハビリテーション後のヘルスケアであることが明らかとなった。地域リハビリテーションは、これらの目的に貢献すべきである。

[はじめに]
日本の人口構成は高齢化が進行している。65歳以上の人々の人数の増加につれて、1980年以降、身体障害のある人々の数も急速に増加を続けている。身体障害の原因は、主として脳卒中や腎不全、骨関節症のような慢性疾患である。生命の延長、高齢者の増加は、慢性疾患の患者や障害のある人々のヘルスケアの重要性を伴っている。従って、我々は障害予防とリハビリテーションを目指しつつ、慢性疾患モデルに基づいたヘルスケア・サービスを提供するようにしなければならない。

[現状報告]
1990年10月1日に行われた国勢調査によれば、日本の人口は1億2,300万人であり、今世紀末の推定人口は1億2,700万人となっている。65歳以上の人口は、1990年には全人口の12.1%、2000年には17%となろう。1991年の身体障害者実態調査では、18歳以上の身体障害者数は1980年以降、急速に増加していることが判明した。年齢別に見ると、身体障害者の48.4%が65歳以上の人々であった。原因別では、脳卒中や骨関節症のような運動系の機能障害が25.8%、心疾患や腎不全のような内臓機能障害が10.7%となっている。

 わが国の厚生行政に基づいて、身体障害者や高齢者の諸施設の整備が地域において進行している。しかし1995年の厚生省調査によれば、高齢者の諸施設利用には、かなりの地域差が認められている。一方、日本リハビリテーション医学会臨床認定医の数と高齢者数(千人)との比率は、日本を6地域に分けた場合、O.21~O.33であり、専門性のある医師は比較的均等な分布をしている。このような地域差は、障害者や高齢者のヘルスケアに従事している医師の態度の相違によると推定される。

 1993年、我々は全国の身体障害者更生施設を対象にして実態調査(アンケート)を行って136施設中126施設より回答を得た。その中から、1992年度に施設から退所した1,572人の身体障害者の医療ニードに関する回答を検討した。その結果、内臓の機能障害では98.7%、脳卒中では80.7%、脊髄損傷では64.6%の人々に医療ニードのあることが明らかとなった。さらに年齢別で見ると、30歳代では47.9%、40歳代では60.3%、50歳代では72.4%、60歳以上では84.3%となっている。すなわち、高齢障害者ほど医療ニードは高いことになる。また、国立身体障害者リハビリテーション病院に1992年度に入院した脊髄損傷患者147人のうち、褥瘡のように予防可能な二次的合併症の治療を主たる理由とする者は95人(64.6%)であり、機能回復訓練を主とする患者よりも多くなっていた。これらのデータは、身体障害のある人々や高齢者のリハビリテーション後のヘルスケアの重要性を示唆している。 機能維持を目的とするリハビリテーション医療技術サービスとプライマリーケア・サービスとを融合することが緊急に必要とされる事項である。地域リハビリテーションは将来、この領域に貢献すべきである。

[未来への提言]

  1. リハビリテーション後のヘルスケアは重要であり、緊急に必要とされている。これに地域リハビリテーションは貢献すべきである。
  2. 機能維持的リハビリテーションとプライマリーケアを合わせたヘルスケア・サービスが身体障害のある人々および高齢者には必要である。
  3. 身体障害の主な原因となる状態、例えば脳卒中や脊髄損傷において生じる二次的合併症に関する危険因子の調査を全国的に行うべきである。
  4. 地域リハビリテーションに関与する医師、ヘルスケア専門職は身体障害のある人々や高齢者の健康に関する問題のゲートキーパーの役割を果たすべきである。
  5. 障害にかかわる医学的、心理的、社会的問題についての教育がプライマリーケアの従事者に対して体系的に行わなければならない。
  6. プライマリーケア・サービスに必要な知識と技術の教育が医学的リハビリテーションの専門職に行われなければならない。

主題:世界保健機関(WHO)国際セミナー 報告書  1頁~34頁
発行者:国立身体障害者リハビリテーションセンター
財団法人日本障害者リハビリテーション協会
発行年月:平成9年11月
文献に関する問い合わせ先:国立身体障害者リハビリテーションセンター
国際協力事業推進本部事務局
電話 0429-95-3100 ファックス 0429-95-3661
国立障害者リハビリテーションセンターホームページ
http://www.rehab.go.jp/