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障害者放送協議会 放送・通信バリアフリーセミナー
障害者と放送・通信

第1部 
質疑応答

<高岡氏>
パネラーの方々、ご報告ありがとうございました。現在のところ7枚の紙が寄せられているのですが、視覚障害者の方は、なかなか意見を書くのも大変だと思いますので、今何かご意見・質問があれば手を挙げ先にお話をしていただけますか。時間の関係で、すべてこの場でお答えできないと思うのですけれども、後程、報告書とかHPで回答するということも出来ますので、質問と意見だけはどんどん言っていただきたいと思うのです。はい、今、手を挙げられた方。

<質問者>
視覚障害者です。総務省の上原さんにお伺いしたいことがあるのですが、デジタル放送、とりわけデータ放送の本格的なアクセシビリティを実現する場合には、放送局から送信されてくるデータを受信機側で柔軟に取り扱う必要性が出てくるのではないかと思います。この時に、現在のデジタル放送というのは大変しっかりした堅牢な高度な著作権保護機能が取り込まれておりまして、これがひょっとしたら障害になる可能性があるのではないかと考えております。こういう状況で、総務省あるいは国としてバリアフリーの観点から、こういう保護機構などを策定している業界団体に対して、その規格策定にどのように働きかけをしていこうと考えていらっしゃるか、もし何か意見があったらお聞かせ下さい。

<高岡氏>
はい、ありがとうございます。丁度今、放送と通信の融合の問題で色々と議論をされているところですね。後で課長にご説明をお願いします。その他いらっしゃいますか。

<質問者>
上原さんにご質問なのですが、アナログ放送においてはアメリカと日本では、周波数帯域幅が違って、ラジオのAM放送が昔、FM化する場合においての変調方式が、全然アメリカと日本では違うのですけれども、デジタルになってもアメリカと日本との帯域幅との問題とか出てくるのでしょうか*1 下記参照。それと、先程のお話で助成金の話がありまして、放送局に対しての助成金がありますけれども、それを制作する制作会社に関しては、一切降りてきていないのが現状だと思っているのです。このような番組制作、企画とか提案する段階での助成というものに関しては、総務省はどう考えているのかを知りたいと。それとNHKさんに関しましては、障害者のスポーツの捉え方が、まだ福祉扱いであるのではないかと私は思っているのです。JOCに関しては文部科学省の扱いなのですけれど、パラリンピックの扱いが、まだ福祉の段階で、その辺はNHKとしてはパラリンピック及び障害者スポーツを福祉としてではなく、スポーツとして扱っていくのかどうかを知りたいと思います*2 P.92参照(泉谷氏より、第二部質疑応答中に回答あり)

*1 上原氏の回答

現在、世界の地上デジタル放送には、ヨーロッパ方式、アメリカ方式、日本方式の3つの方式があります。放送や通信の国際標準規格は、ITU( 国際電気通信連合)で審議され、決定されます。地上デジタル放送については、国によってサービス内容や導入時の技術水準などが異なるため、1つの方式に統一することは困難で、3つの放送方式が認められています。日本では、地上デジタル放送対応の受信機は字幕を表示する機能が標準装備されています。また、解説放送については、アナログ放送ではステレオ放送の場合、解説放送ができませんでしたが、デジタル放送になれば音声チャンネルが増えるため、それらを組み合わせての放送が可能となります。

<高岡氏>
はい、ありがとうございます。それでは新たに紙が4枚も寄せられましたので、いくつかご紹介してお答えしていただきます。最初に上原課長の方にデジタルテレビ放送と著作権の問題、それから視覚障害者向けの放送の充実の取り組みはどうなっていますか、というご質問があります。それから字幕放送の中に、政見放送とか手話放送の目標とか対象になっていますかという意味だと思うのですか、この3点についてご説明をお願い出来ますか。最初に著作権問題、これが非常に問題解決のネックになっているのではないかといご指摘があったのですけれども、この辺は総務省としてはどういうふうに取り組まれるのかという質問だと思います。2つ目が解説放送の取り組みです。3つ目が政見放送とか手話についての目標なり対象になっていますかという質問です。

<上原氏>
ご質問を頂きまして、ありがとうございます。著作権の関係は、確かに字幕を付けていただくときにも、そういうふうな課題があるという話は聞いております。例えば、日本語の映画で字幕を付けようとした場合に、字幕を付けるにあたっては著作権者の同意がいるということで、字幕を付けたくてもなかなか付けられないというような現状があるというふうに聞いております。それからデータ放送についての著作権というのは、私はあまり承知をしていなかったのですけれども、何か具体的な困った事例があるのでしょうか。どうでしょうか。確かに、著作権の問題で解決しなければならないというところもありまして、少しずつは解決をされてきておりまして、例えば、今インターネットを使って字幕を送るような取り組みがされていますけれども、そういったものについては、著作権は特に許諾等は必要ないで出来ますとか、あるいは点字についても図書館で点字に翻訳する場合には、特段の許諾無しに、翻訳する団体の認可が文化庁から必要になるということがあるようですけれども、そういったことによって対応が出来ると聞いております。今少し申しましたけれども、基本的には文化庁が担当しておられるので、私どもから言うとすると、要望するということであろうかと思いますけれども、具体的に問題があるのであれば、そういったことを私どもにもご指摘いただいても結構ですし、あるいは文化庁の方にも色々言っていただければ、かなり柔軟に法改正等は対応していただいていると思います。そうした中で、もちろん視覚障害者とか聴覚障害者の方に情報をお伝えするというのは、非常に大事なことなのですけれども、そういった方々にいかに限定的にと申しますか、なんと言いますか、例えば音声を文字に切り替えて誰でも受信できるということになると、権利者の権利が損なわれるということになりかねないということもありますので、そこのバランスをいかに取って、実際に聞こえない、見えない方にどうやって情報をお伝えするかというところ、そこをどういうバランスを取るかというところが焦点なのかなと思っております。

それから解説放送については、今日はあまり解説放送については予定をしていなかったので、あまり説明が出来ていないのですが、助成の中で少しご説明をしましたが1993年に制度を創設した時には、解説番組も対象となっておりますし、それから補助金についても解説番組についても補助の対象となっております。こういったものを私どもとしても、是非なるべく沢山作っていただきたいというふうに考えているところであります。

それと、政見放送は実は私どもの担当ではなくて、選挙の担当の部局がございまして、そちらの方で政見放送の字幕についてとか、全般についてどうするかということを行っております。私からは、この点は残念ながらあまり知見が無くてお答えできないのですけれども。ただ政見ではなくて選挙期間中の候補者の方々の放送ということにつきましては、ニュースでも、例えばNHKの放送でも字幕を最近は付けられているようですし、色々努力をされているというふうに伺っております。十分なお答えかどうかはわからないですけれども、ひとまず以上でございます。

<高岡氏>
はい、ありがとうございます。著作権の問題は2つあると思うのです。一つは今後、放送と通信が融合する時に、テレビで放送された番組がインターネットで再度見るために放送するというような場面があった時に、その番組の著作権の許諾というのは、テレビで放送されるということを前提に著作権が決定されているので、それをインターネットで流すといった時には再度、著作権者の許可を取らないと流せないのではないかということで今、新聞などでも大きく話題になっているということです。その辺のご指摘ではないかということと、もう一つはデジタル放送の番組を録画する時に1回しか録画が出来ないという仕組みになっているのです。これは利用者から見ると、非常に利用に制限がかかっているわけです。1回しか録画できないということで、色々な障害者が更にそれをもう一度加工して見やすいアクセスブルな物にしようとした時に、問題になるのではないかなと。そういう色々な問題があると思います。

2つ目の解説放送については今後、字幕放送普及の指針を更に解説放送も、そういう指針を作る必要があるのではないかという意味のご質問だと思うのです。あるいは作ってほしいという。ですから今後2007年の指針の後にどういう形でどういう指針を作るのかということだと思います。3つ目は手話についても目標がないのです。100%ということではなくて、ある段階をおって放送事業者が努力しなさいという目標が必要だと思う、そういうご意見だと思います。

はい。今、手を挙げた方どうぞ。

<質問者>
岩井と申します。今のテーマに関連してなのですが、2番目の音声解説の部分で、今日ご報告を頂いたロバートさんのFCC、アメリカ連邦通信委員会の方でも、音声解説についての積極的な制作の意見はされていますけれども、数値目標としての規定、勧告等はされておられないのでしょうか。我々としたらADA法のあるアメリカにおいて、数値目標が音声解説については入らないというのが、どうも理解できないのです。それと上原課長のお話の中でも、今度2007 年の行政指針の見直しの中で、字幕についての数値目標等のご説明を頂いたわけですけれども、同じ観点で音声解説の部分の数値目標は入らないのかどうか、この辺をお聞きしたいのです。と申しますのも昨秋、私ども同種のシンポジウムの中で、英国から講師をお招きして拝聴したことでは、英国においては2004 年のコミュニケーション法の成立、この元には当然DDA差別禁止法があるということなのですけど、それに基づいて出来た通信関係の法律の中で、きっちりと字幕は当然ですけれども、音声解説についても、あるいは手話についても数値目標が入っているということで、ちなみに2010年を目標に音声解説については6%、手話放送については5%、ということで数値目標が入っているということで、これは罰則規定だということで違法の場合、放送事業免許の取り上げも含んだ法律というふうなことで聞いて、非常に心強く思った次第なのです。数値目標があってこそ、初めて積極的な番組制作が放送事業者中でも展開されるのだということで、視覚障害者の希望として是非入れていただきたいという意見とともに、もし背景をお答えいただければありがたいなと思います*3 下記参照

*3 上原氏の回答
平成9年に放送法等の一部を改正し、解説番組・字幕番組の努力義務の創設を行っており、また、字幕番組・解説番組等の制作費の一部の助成を行うなど、障害者向け放送の拡充に取り組んできているところです。

現行の「字幕放送普及行政の指針」が2007 年度に終期を迎えるところ、それ以降の新目標の策定にあたっては、解説放送も含めた検討を行っていく必要があると考えています。

<高岡氏>
はい、ありがとうございました。時間の関係で、次にロバートさんにご質問があります。アナログテレビからデジタルテレビに移行する時の現状と課題がとても分かり易くて良かったというご感想と、質問はアメリカの障害者施策の策定の過程で当事者の参加はどうなっていますか、何か具体的な規定があるのか、という質問です。放送がテーマですから、放送に関する施策について障害者の参加はどのように保障されているのかという質問に変えさせていただきたいと思います。

<ペドロウ氏>
質問がADA自体に関するものだとすれば、米国でのADA の成立は、この国の障害者たちが長期に渡って直接行動に出たことに負うところ大なるものがあり、その結果最終的にはADA 成立の運びとなったものです。次に放送に関するその後の行動はADA を基盤としてそこから派生したもので、そうした活動にも多くの点で、障害者の直接的関与が見られます。米国で強く支持されている原則があります。それは、「私たちの関与なしに、私たちのことを決めるな。」というもので、すなわち意味は障害に関して、障害者に影響することは何であれ、決定のプロセスに必ず障害者を直接関与させるということです。この原則は放送の分野でも実際に貫かれていると思います。

<高岡氏>
はい、ありがとうございます。それに対して少し追加の質問をしたいのですけれども、具体的に障害者が放送問題に関わる場、あるいは機関というのは、どういうものがありますでしょうか。つまりFCCの中に障害者が関わって、何か議論をするような場所があるのかどうかということです。

<ペドロウ氏>
プロセスがどう機能しているかに関しては、私の知識は限られています。障害者及び障害者を代表するグループが直接声を寄せる機構(メカニズム)があると理解していますが、それがどう機能しているかとなると、詳細は存じません。ただし、そうしたプロセスの一部の側面については知っています。私は米国に来て約6 ヶ月になり、その間学ぶことは多かったのですが、私の知識には抜け落ちている部分があります。

このセッションの前の討論でWGBH が運営しているNational Center for Accessible Media についてお話をしました。同センターは米国のクローズド・キャプションニングに関して長期に渡る役割を果たしており、同組織のシニア・スタッフの多くが障害者であり、こうしたスタッフが米国におけるクローズド・キャプションニングの継続的発展を促進する上で、歴史的にも重要な役割を果たしてきました。申し上げたとおり、このプロセスの他の側面に関しては私の直接的な知見は限られておりますので、今はこの程度にさせていただきます。

<高岡氏>
坂井様にもたくさん質問をいただいているのですけれども、時間の関係でお答えいただく時間がありません。ここで頂いた質問は報告書それから障害者放送協議会のHPの中でお答えしていきたいと思います。ロバートさんにもメールアドレスを伺っていますので、直接お話しされたい方はお伺いして聞いてください。

それでは長い時間どうもありがとうございました。

* はセミナー後日改めて回答頂いたものです。