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平成17年度 国際セミナー報告書
「アジア太平洋地域における日本の障害者支援」

■報告(3) 世界ろう連盟アジア太平洋地域事務局

事務局長 小椋 武夫

こんにちは。ただ今ご紹介にあずかりましたアジア太平洋地域事務局長の小椋でございます。私はパワーポイントを使いませんので、ちょっと暗くなりますが、ご容赦ください。なぜかと申しますと、3人の方の発表があって、ちょっとパワーポイントが支障があるかも、と思ってとりやめました。パワーポイントが使えると改めて知ったので、今後は確認したいと思っています。

アジア太平洋地域事務局の活動についてご報告いたします。

アジア太平洋地域事務局(WFD RSA/P)は世界ろう連盟組織に入っている。様々な活動があるが、代表者会議は各国の情報交換や連携を強めるため、毎年1回開催されている。WFD RSA/Pには現在20カ国のろう協会が加盟しているが、代表者会議にはオブサーバーを含めて23国が参加している。各国のろう協会の活動に関する報告・課題など幅広い議論を行なっています。現在、17回目の開催に至っていますが、政府と関わって開催できたのは昨年のインドネシア会議と今年の上海会議の2回目です。15回目までには、ろう者だけの集まりでしたので、政府からは見えない会議でした。ですから、各国のろう者の問題解決を政府に請願しても効果がありませんでした。 そのために、政府から見える会議にするためにはどうしたら効果的かを考えてきました。

昨年、初めての試みとして開催3ヶ月前に現地の政府に訪問しました。幸いに、昨年のタイのESCAP会議でお会いした方だったので気楽に話し合うことができました。そのためにインドネシア代表者会議の支援をお願いしたら承諾してくれました。中国の上海会議も同様でした。タイのESCAP会議で政府関係者と話し合える機会を得たのは大きな意味があったと思う。

政府と関わりながら開催した代表者会議に大きな変化が多く起きました。

いつもは、参加者は40人から50人でしたが、政府と関わってからインドネシアには100人以上、今年の上海会議には300人以上の多くの参加者があった。障害者団体をはじめ、その関係者が集まり、多くの政府関係者を来賓に迎え盛大に開催されました。政府が出席したためにマスコミが注目し、会議について新聞やテレビで取り上げられました。

また、インドネシアにはたった一人しか手話通訳者がいませんでした。その人は開催数日前に大怪我をしたにも関わらず、休むわけに行かず、痛々しい姿で開会式と閉会式の通訳を務めました。その式に来賓として臨席していた政府関係者がその状況を見て驚き、それがきっかけで手話通訳養成に取り組むことになりました。

上海では、会議開催の契機に上海政府支援の手話学校が新しく建てられました。詳しくは分からないが、会議開催の支援を依頼するため、上海ろう者協会が何回も政府に交渉したようです。将来的にも学校周辺の人々がろう者に対する関心を深めていくのではと期待しています。両会議とも政府とかかわることによって大きな成果をもたらすことが出来たと思います。

会議の中で、現在、進んでいる「国連障害者の権利条約」をテーマに議論が高まりました。ところが「国連障害者の権利条約」の知識があったのはインドネシアとネパールの二カ国のみだということが途中で分かり大きなショックを受けました。私から権利条約のあらましと条約の必要性、ろう者に関わる内容を急遽説明することになりました。ネパールからは、ESCAPのBMFを政府に示したところ、ろう者に対して教育や職業訓練などの支援を行なわれるようになったという嬉しい報告がありました。

そのほかにJICAの派遣でウズベキスタンへ3回訪問したので、簡単に報告したいと思います。

2回目の派遣時に国の社会保障省に要望した手話通訳付きテレビニュース番組が復活した。この復活は私たちにとって大きな朗報でした。

来る12月9日、ウズベキスタン・日本両国の聴覚障害者がテレビ会議で、各々の生活、仕事上の問題点、改善への努力のありかたなどを話し合うことになりました。大きな進展がみられると思います。

ろう者の職業というと木工、洋裁作業くらいで非常に職域が狭い。職域を拡大するためには専門技術を身につける必要があります。そこでウズベキスタンろう者のためのパソコン講座開催は可能かとウズベキスタンにある日本センターに働きかけました。ウズベキスタンろう協会の積極的要望があれば、受け入れるとのことで、急いでウズベキスタンろう者協会に報告しました。

日本に帰ったあと、今年1月から予定通り講座が開催され参加申込みが多くあったと報告がありました。日本センターの協力で、資格講座・研修会などの開催ができ、ろう者が積極的を参加できる状況に変わったという、うれしい報告でした。

また、手話通訳養成に関しても日本のノウハウを情報提供し手話通訳テキストを作成しました。今後は初めて一般人向けの手話講習会を開催して手話通訳者を増やせるだろうと期待しています。

全日本ろうあ連盟、国、JICA、日本センター、大使館が連携し多くの対策をとるならば、さらにろう者の社会への完全参加と平等が可能となります。

私自身は、JICAからの派遣依頼でウズベキスタンに行き、協会指導、手話開発の指導に行っていましたが、このように、ひとつの国に、何度も足を運ばなければ、十分な支援は行えない状況にあり、つまり時間と費用がかかります。加盟国すべては、とてもカバーしきれない。今後、各方面との連携が必要となると痛感します。

以上、報告にかえさせていただきます。ありがとうございました。