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平成17年度 国際セミナー報告書
「アジア太平洋地域における日本の障害者支援」

■パネルディスカッション

ファシリテーター:琉球大学教授 高嶺 豊

コメンテーター:国連ESCAP障害担当官 長田 こずえ

パネリスト:APCD人材開発プログラムアドバイザー ソムチャイ・ランシップ
難民を助ける会事務局次長 松山 恵子
世界ろう連盟アジア太平洋地域事務局長 小椋 武夫

高嶺/皆さん、こんにちは。琉球大学の高嶺と申します。先ほどの基調講演と活動報告を踏まえ、これからパネルディスカッションをはじめたいと思います。

国連エスキャップの長田さんがお話されたツイン・トラック・アプローチは、障害者問題に対してはメインストリームとエンパワーメントの両方から進めていく必要があると、いうことがわかりました。その面では、長田さんのプレゼンテーションは、これからメインストリームをどのように実施していくか、多くの提言がされていたというふうに私は理解しています。特に、メインストリームでは政府や政府機関の事業、あるいは国際NGOがやっているプロジェクトの中に障害者問題を盛り込んでいくということが多く、そういう面では公的な部門が大きな役割を果たして行くと思います。

今回はNGOの方が中心に活動発表を報告されました。その中身としては、障害者問題に特化したアプローチということでおそらくこれは、障害者のエンパワーメントを中心にした活動だろうと思っています。これからの議論は基本的には障害者のエンパワーメントの活動に関してこれからどうしていくかについて議論を深めながら、さらに、そのエンパワーメントの方から、メインストリームに対してどういうふうなアプローチをしていなかければいけないか議論していきたいと思います。

一つの問題点として、松山さんのほうから、障害者だけに特化されたプロジェクトの行き詰まりについてのお話がありました。それを打破するためには、メインストリームを巻き込んで、大きなプロジェクトを巻き込んでいくことを今からやらなければなかなか障害者の実際の生活が向上していかないのではないかということにつながると思います。

まず、今日発表された方に個別的な質問をさせていただき、その後、共通な問題に関してディスカッションしていこうと思います。

最初に「難民を助ける会」の松山さんに質問をしたいと思います。障害者の事業をされていて、おそらくこれからは障害者自身が事業の運営に取り組んでいく必要があると思います。そこで、これまで「難民を助ける会」では、障害者の方の参加をどのように推進してこられたのかということを少しお聞きしたいと思います。

松山/今のご質問ですが、先ほどのプレゼンの中でも触れましたが、実際の事業においては、例えば、ミャンマーではローカルスタッフのうち、15人中9人が障害者、カンボジアの車椅子工房でも10人中9人、ラオスでも10人中5人。ラオスは5人と申しましたが、あとの5人は、国立リハビリテーションセンターで事業をしているので、ラオス政府側の公務員の健常者が5人ということで、難民を助ける会のスタッフとしては、5人全員が障害当事者ということになっています。

今、先生から話をいただいた、「事業を立ち上げる際に」ということなのですが、この点に関しては、ご指摘どおり、私どもが事業を立ち上げる際には、それぞれの事業地で、許される範囲で、色々な調査を行えるところでは行って、どんな事業にしていくか、そういうことを考えてやっていくわけですが、そこに障害者の方の意見を取り入れる、あるいは障害者スタッフがそこに関与していくことに関しては今後私たちももっと努力をしなくてはいけない部分もあります。ただ前に述べたような障害者スタッフに発案してもらう、ミーティングで話し合う、決定するということは実際行われていることです。

東京のスタッフに関しましても、現在、障害者事業をやっているにも関わらず本部スタッフの中に障害者はいません。これは1NGOとしてのキャパシティのことなど様々な問題がありますが、ここ数年来の懸案になっていますので、前向きに取り組んでいこうと思っています。

当事者の方と事業をやっていくことがいかに大事かというのは、普段の事業から痛切に感じているので、その点はこれからの課題だと思います。

以上です。

高嶺/ありがとうございました。これから障害者の方を積極的に活用していくというお言葉でした。

次に、世界ろうあ連盟アジア太平洋地域事務局長の小椋さんにお聞きしたいと思いますが、今日の小椋さんの発表では、すごく地域レベルでの活動をされていて、最近は地域会議を開くときに政府も巻き込み、地元並びに地域でもかなりインパクトのある活動をされていると聞きました。それで、2つお聞きしたいのですが、1つはこれだけインパクトのある活動をされるのに、資金的な裏付けをどうしているかをお聞きしたいと思います。

2つ目に、アジア太平洋地域でも他の障害者団体、例えば世界盲人連合のアジア太平洋支部とか、あるいは、DPI(障害者インターナショナル)のアジア太平洋事務局もありますが、他の地域事務所、他の障害者グループとどのような協働活動をされているのか。あるいはまだそのような活動はなのか、その辺をお伺いしたいと思います。

小椋/1つ目の質問、資金の問題です。まずは、AP事務局も全日本ろうあ連盟もお金持ちではない。アジア太平洋地域事務局は基本的には非常に資金不足です。1年間の活動資金が50万円。これでは代表者会議も開けません。現在、アジアのろう者友好基金、全日本ろうあ連盟が設けてそこで集めた資金を借りて、活動費に当てています。現在アジアろう者友好基金は3,800万円になっています。目標額は1億円を掲げていますが、なかなか順調に進まないという現状にあります。実際に全国のろうあ協会に行って、そこで私がアジアの現状を説明し、説得してはじめてカンパがはじまるという現状ですから時間がかかる活動になっています。インドネシア、あるいは上海の代表者会議において、政府を巻き込んだ会議を開催できた事は、非常に大きな成果があったと考えます。全日本ろうあ連盟から資金を提供するのは少なくてすみました。今まで15回目の会議においては、1回100~150万円の資金提供をしてきました。政府とのかかわりを持ち始めてから、インドネシアの場合は50万円だけで済みました。上海の会議では資金援助しないで開催できたということで、 今後、政府の関わった会議が開催できる方向で、努力し、すすめていきたいと思います。

それで、よろしいでしょうか?

2つめの質問について。世界盲人連合、DPIとの接触経験が少ないので具体的に説明が出来ませんが、障害者の仲間として同じ目標が多くあります。地域社会に参加し、生活の質を高め、豊かにするために、バリアのない環境整備が必要であること。権利条約においても情報アクセスの障壁を解消していくための取り組みなどです具体的方法はそれぞれの障害によって違いますが、同じ目標に向けて力を合わせて活動しなければなりません。

アジア太平洋地域では、マレーシア、タイ、インドネシアだけが障害者の集いに参加して交流する程度のようです。他の国は専門の通訳・介助がいないことでまだ話し合えない状態です。しかし、政府とか障害者団体会議に参加するという情報がなく、参加していないみたいです。

私、山梨に住んでいますが、盲ろう者とかかわりを持っています。年何回か交流会を持っています。その中で盲ろう者から社会環境を改善するためには、何が必要かと申し入れがいくつかありました。ただ頑張れというのでなく、ろう協会がそれを受け止めて行政に要求しています。点字があれば、通訳者がいればいいのでなく、盲ろう者にとってきわめて重要なことは、外出が自由にできること・教育・社会で他者と生きていくことなどがあることを強く説明しています。地域においてもこのような連携が大切です。それを各国に説明していきたいと思います。

話は戻しますが、世界盲人連合とDPIとの関わりはこれからどうしていくかというと、まず意見交換の場を多く設けて、どう関係を作るか明確的に方向を決めたいと思っています。以上です。

高嶺/どうもありがとうございました。資金に関しては、本当に少ない資金で自分たちで基金をつくりながらやられているということですね。また、最近は政府を巻き込むことによって資金面も支援されていると。これからの方向づけが出てきているのではないかと思います。また、障害者種別間の協力に関しては、これからどうするか、おそらく今は緒に就いたばかりだということだと思います。

ここで一つ思ったのですが…。課題として提案したいと思いますが、実はスウェーデンではSHIA(スウェーデン障害者国際援助団体協会)という団体があります。これは障害種別をこえた、14~15団体が集まって、国際協力のための団体をつくっているわけです。この団体は、政府からODA(政府開発援助)の資金を9割もらって、それを原資にして後1割は自分たちの基金を集め、それを使って様々な国際協力を障害者分野でやっています。このようにスウェーデンでは、各障害者団体が国際協力を一生懸命やっています。日本でも、障害者関係団体を束ねて、SHIAのようなしっかりした組織をつくり、国のODA資金をきちんといただいて国際協力やるのも、将来視野に入れる必要があると思いました。是非考えていっていただきたいところです。

では、次にAPCDからいらしていますソムチャイさんにお聞きします。彼は私の古くからの友人ですが、今、APCDで研修の方で中心になって頑張っている方です。

APCDは地域の支援組織として、各国のメンバーの政府、あるいはNGO、障害者自身の団体、SHOなどを支援していますが、そのような活動の中で、どのようなことを学んで、それを実際の研修のプログラムの中に取り組んでいかしていかれたのか。その辺をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

ソムチャイ/皆さん、こんにちは。APCDのソムチャイと申します。人材開発のアドバイザーです。皆さんにお会いできて、嬉しいと思っています。高嶺さんから日本語で質問がありましたが、私の答えは英語でよろしいでしょうか?

質問にお答えする前に、APCDに関する情報を皆さんと共有させていただきたいと思っています。私達がどんなことを達成してきたのか。またどんな分野を改善しなければならないのか、お話したいと思っています。

今日参加されている皆さんは日本のNGOの方々だと思います。私たちが関わっているプロジェクトはタイと日本の両国政府が関わっていますので、日本の方にも重要な情報だと思っています。私達の活動、改善すべき分野についてお話したいと思います。

それから、先ほどAPCDの所長のカニッタさん、理事のスポンタムさんからも報告がありましたが、APCDの主な強みと貢献について話したいと思います。まず、地域の中で資源を流通できるという強みがあります。パキスタンの地震に関しては、被災者の支援の計画があります。障害者の支援も実施してきましたし、自立生活を支援したり、ピアカウンセリングなども行っています。

それから、研修コースも提供しています。研修コースを行うための人材というものも提供しています。これは高嶺さんの質問にも関連していると思いますが、発展途上国から人材を招き、研修を提供しています。なぜかというと、この地域ではそういう資源や知識が非常に限られているからです。

また、トレーニング、研修だけでなく、ネットワーク作り、あるいはコラボレーション、協業のための活動もしています。例えばそれぞれの発展途上国のセクターやレベルが協力できるよう促進しています。前に参加した人たちの組織をつくり、同窓会組織のようなものですが、政府の機関、障害者組織、NGOとあい、調整していくこともやっています。

長田さんから南-南協力のお話がありましたが、私どもは国連ESCAPと協力して、南-南セミナー2日間のものを発展途上国で開催しました。タイで行い、タイの副首相が議長を務め、開会式を行いました。

そのほかの実績としましては、それぞれの研修コースに関してAPCDのタスクフォースというものがあります。メンバーが障害者の方、各セクターの人材と色々協力していきます。NGOや政府、障害者自身も参加します。アジアの発展途上国でこのようなトレーニングやワークショップを実施しています。また、私たちの活動、特に研修の活動において、発展途上国のNGO、中でも特に障害者組織にどんどん参加してもらおうと促進しています。

次に、私達がさらに発展させていかねばならない分野についてお話したいと思います。これは言い換えれば私たちの弱点だとも言えると思います。まず最初は、人材開発をさらに進めていくということ。これはこの地域、それからタイにおきまして、リソースパーソンを増やしていくことです。さらにコンピテンシー、能力を伸ばして、より効率よく仕事ができるようにしていかなければなりません。

もう1つ改善しないといけない弱点分野としましては、PR、広報活動があります。

私たちは発展途上国、それから先進国との現在の関係をさらに強化し、APCDの活動を支援してもらう必要があります。これは南-南協力だけではなく南と北の南-北協力についても言えると思います。

もう一点、APCDの活動の実施において障害の種類を超えたさらなる参加を促進していくこともやっていく必要があります。高嶺さんの質問にお答えしますと、私達には先ほど話した4つの強みがあります。これをAPCDの様々な活動、任務の遂行にも応用していますし、また研修活動にも適用しています。

高嶺/ソムチャイさん、ありがとうございました。APCDの活動の中に様々な地域で得た教訓を含むというお話をしてくださいました。また、障害当事者が中心になって様々な活動をされている、そういうのがすごく大きな特色ではないかと思いました。

それと、これは私は今日小椋さんの話を聞いて思ったのですが、今小椋さんの方では手話の辞典の編纂や、手話通訳の養成などの活動をしているそうですが、そのような活動に関しても、APCDと連係すれば、さまざまな広がりがもっと出てくるのではないかと、感じました。今、おそらくAPCDの中でろう者に関する活動というのが、研修事業にも含まれていないということですので、その意味では、障害種別を越えた研修事業としてこういうものも、APCDの活動の中に入れていく可能性があるのではないかと思ったわけです。

では、先ほど長田さんからも話がありましたが、今日はスペシャル・ゲストがいます。

フロアの方にいらっしゃいますが、ケニー・フライスさんという障害当事者の方ですが、様々なメディアの研究をしている方です。ここで、今までの活動報告、あるいはパネルディスカッションを聞いてのコメントや何か提案があればお聞きしたいと思います。ケニーさん、お願いします。

ケニー/今、メディアに関するアイデアをうまく説明できないかと考えていますが、この問題、ジレンマのことを考えてみますと、メディアやマスコミの注目を集める方法は、どうしても現在は残念ですが障害というとあまりよくない、典型的なイメージになってしまうと思います。なぜかと言いますと、一般の人が障害について頭に描いているイメージというのは、傾向として悲劇であるということ。或いは、何かインスピレーション的なものである、そういう見方になってしまうからです。そして恐怖とか、かわいそうだと思ってしまいがちです。

ですから、そういう「いかにも」というようなありきたりの障害に対するイメージを持ってもらわず、マスコミ、メディアの注目をどのように集められるのか。そして障害者の生活を示せる方法がどうなのかということが大きな問題になっています。これはアメリカでも大きな問題です。そういう形でマスコミに、非常に前向きなイメージを持ってもらい、障害者に関するポジティブに示す方法を考えてもらわなければなりません。

非常に今、大きなトピックであり、なかなか簡単には申し上げられませんが、この会話の中に、ヘルプ、援助とか支援といったことだけでなく、カルチャーの問題もあると思います。様々な組織が世界で障害の活動を行っていますが、一緒に協力をしてどのように障害に対する典型的なイメージを変えて、マスコミの注目を集めていくかを考えていかなければなりません。

もう一点。発展途上国のほうが有利な状況にあるのではないかと思います。特に農村地域に多くの障害者が住んでいるのですが、マスカルチャーにあるような、ありきたりのイメージがまだ発展途上国の農村地帯にはできておりません。ですからローカルのレベルで新しいイメージをつくっていければ、より有益な形になります。そういう意味で世界の他の地域と比べると発展途上国や農村地帯は、もしかすると有利な立場にあるのかもしれません。ありがとうございました。

高嶺/ケニーさん、ありがとうございました。有益なコメントだと思います。途上国だと、そんなに施設がありませんから、障害者自身が地域の中で一般の家庭の中、地域の中で生活をしております。そう言う面では既に統合された形で生活をして、障害者問題も地域の中で考える土壌はあると思います。だけども、いわゆる先進国の考え方として、障害問題を別個の問題として取り扱う事により、障害者に対するネガティブなイメージが逆に、生まれてきつつあるという考え方も成り立つのかもしれません。そういう面では、地域の中での障害者のイメージ、ポジティブなイメージを大切にして、それを広げていく事も必要なのかなと思いました。

では、ここで各活動報告をされた方に個別の質問に答えてもらいました。今まで障害者に特化した活動をされていて、様々な制限・限度があるというご意見もありました。ではこれから障害者問題に取り組んでいるNGO、あるいは障害者団体が、メインストリーム、すなわち、政府とか大きなプロジェクトに対して障害者問題を組み込んでいくような動きをする必要があると思いますが、その辺の事例や、あるいはこれからこうやったらいいのではないかという提言を、自由にディスカッションしていただきたいと思います。

初めに長田さん、さきほど発表でいろいろなアイデアを出していただきましたが、その辺も含めて重要なポイントを少しお話していただけたらと思います。

長田/その前に、ケニーさんのことをキャプチャーしたいと思いますが。

1つめはそういうアメリカなどイメージができあがったときの途上国に関する影響を聞きたい。もう1つは、どうやってマスメディアの中に障害をメインストリーム化するかということです。

(英語で説明しています)

最初の質問は、開発途上国は何も障害者のイメージができてないって、そうかもしれない、悪いイメージもアメリカのようにストラクチャされていないからしっかりはできてないかもしれないけど、みんな米国のテレビとか見てしまうんです。アメリカのテレビを見るとそれをまねするということがある。それも国際協力なんですよ、障害の悪いイメージが開発途上国にいかないようにするかということ。

2つめは、開発途上国にあるマスメディアのプログラムは、先進国のものなんです。全部障害者対象にしたプログラムです。障害者のある人を自然な状態でテレビに入れているというのは見たことないです、日本もないのです。自然なものがアメリカでは進んでいるから、どうやってそういうことを日本も含めてシェアできるかどうか。自然な形で入るのが一番いいんだけど。テクニカルコーポレーションというか、そういうのはありますか?

ケニー/実際にはアメリカを批判しているような立場に有るのですが、長田さんがどういう例を考えているのか分かりませんが、メインストリームにしていく、そしてマスメディアの注目を集めるということでも、やはりそういったときに出てくる人は、障害を克服した人とか、障害が治ったとか、障害によって死を迎えようとしている人などです。テレビで出てくる障害のイメージも、公共のものではないかもしれないけど、コマーシャルなどでそういうイメージはよく見られます。

まず最初の質問についてです。私自身も今日本に滞在して、いろいろな経験をつみながら学んでいるところです。そしてアジアの人たちはどのように対応しているのか勉強しています。ですから、どうしても障害者というと、消極的でネガティブで、ありきたりのイメージになってしまうわけです。しかし地域のモデルを見てみると、アメリカよりもコミュニティの要素が強く、宗教的な要素も非常に強くなっています。宗教上のことから悪とか、聖人という考えも出ていますので、世界全体で理想的なものはどういうものかは語れません。コミュニティにより近い、その現地にあった形での方法を探していかなくてはならないと、私は思って先ほど発言しました。

今日本に滞在していまして、障害のイメージはどういうものかを見ているわけですが、日本の文化、特にポップカルチャー、大衆文化におけるイメージはどういうものなのか。非常に模索が難しいと思っています。ですからもし何かアイデアをお持ちの方がいれば、ぜひ共有させていただければと思っています。

高嶺/ケニーさん、ありがとうございました。障害とメディアはとても重要なポイントです。国連でもいろいろな活動をしていて、我々も出版物を出したこともあります。では、メインストリームの話に戻ります。

長田さんの質問でメインストリームにする場合、そのメリットはあるけれどもデメリットもある。それは誰がそのプロジェクトの中で障害者問題を導入していくときに責任の所在がわからなくなるというような指摘がありました。その辺でやっぱり責任所在をきちんとするための1つのアイデアですが、例えば、JICAの例をとりますが、女性の参加を促進する、というテーマがあるとします。女性問題を組織の中で促進する、そういう責任の部署をセッティングする。

それと同様に、障害者に対する組織の責任部署をきちんと置いて、そこが責任を持って障害者問題を導入するのをモニタリングする。そのように目に見えるような形を置くのが重要ではないかと思われます。

もう1つ重要なのは、先ほど長田さんもおっしゃいましたが、国際協力の中で、バリアフリーとかユニバーサルデザインのものをきちんと施策の中に入れていく時代が来ているのではと思います。世界銀行ではバリアフリーの基準を導入しようという動きは出ています。USAID(米国国際協力庁)ではもうアクセシビリティー基準ができていまして、アメリカの国際協力事業で造られる建物にはすべて導入しようとしています。これは国の国際支援の中にこのアクセシビリティー基準を入れたというのは世界初だと思っています。そういう面では、日本でもそのような指針を国際協力の中にいれていくことになると思います。

今後、このように、障害者問題が国際協力の活動に組み込まれていくのではと思います。メインストリームは、何か他にみなさん、ご意見ありますか?

松山/先ほど、長田さんのお話の中にあった障害者のメインストリームを忘れてはいけないが、同時にエンパワーメントも考えなくてはいけないということは私も同感です。

メインストリームでは、開発途上国の都市部の人々は恩恵が受けられても、農村部ではどうか。特に農村部においては、私どもの事業を紹介させていただければ、車椅子の支援でいうと農村部で走れる車椅子、たとえばラオスでは山間部になります。普通の車椅子では走れません。そこにあわせた車椅子を作る。

障害者の方は家の中にいる方も多いので、そこで乗れるものをつくる。例えば車椅子というか、台に車輪がついたものとか、移動の手段としての機能を持たせるものをつくる。そういった支援をしながら、農村部での障害者が少しでも移動手段を持つことに対する支援を行っています。

それとともに、車椅子の配布の後にモニタリングに入るのですが、そこでよく我々が言われることは、自分は障害者であるが、なんとかしてお金が稼ぎたい。その手段はないのかということを訴えられます。それに対してどういうことができるのか。小さな事ですが、例えばラオスの駐在員はこんなことを考えています。ラオスでは食用カエルを食べるのですが、それを養殖してみてはどうか。家でもできる。そんな小さなプロジェクトです。

バンコクのFAOに聞いた話では、マッシュルーム栽培を行っている。これらも障害の程度に応じて、できる方、できない方いろいろ出てくると思いますが、とにかく何でもよいので、インカムジェネレーションのプロジェクトをそこに紹介していって、プロジェクトを回す。このような草の根レベルの支援が農村地区では非常に大事ではないかと思っています。

高嶺/では、小椋さん。

小椋/メインストリームの中にある研修の充実についてお話します。

まず世界ろう連盟の考え方を説明します。世界ろう連盟の途上国支援のポリシーとして、先進国から支援を押し付けない。途上国から支援の要請があって初めて動きます。

途上国支援の種類はいろいろあるが、主としてJICAのアジア大洋州のろう者のための指導者研修、アジア太平洋障害者ダスキンリーダー研修養成事業、この2本の研修があり、非常に大きな成果が上がっています。この研修を受けた研修生が自国に戻って自助組織を立ち上げ、全国的に活動しています。 昨年は、フィジー、お名前、なんでしたでしょうか?トマシさんが帰国し、全国組織を立ち上げました。研修を受けたろう者が自国に帰り、ろう者の全国組織を設立し、その会長、副会長、事務局長等の要職に就いている例はたくさんあります。組織作り、機関紙の発行、手話通訳養成など多岐にわたって、研修が行われます。 研修を受けた修了生たちの感想が近々発行される、ろうあ連盟季刊誌MIMIに掲載されるので、是非読んでいただきたいのです。このMIMIの特集のために書いてくれたフィジーの元研修生は、帰国後フィジーろう協会の設立に取り組んだと書いています。ろう者の全国組織を作れば、世界中のろう者組織とネットワークできる。そして国内のろう者の権利を擁護できると考えたからだと書いています。 この研修を通じて、このような未来のリーダー達が育っていっていることは、大きく評価されるべきだと思います。

ろう者団体だけの力では限界がある。今後はAPCDに大きな期待を寄せている。APCDとWFD RSA/Pが連携し、もっとも必要としているろう者にもっとも効果的な研修を提供できたらと考えています。

高嶺/人材育成が大事だという話でした。ろう者の人材育成も将来APCDの枠内でできるような仕組みをということですよね。

では、ソムチャイさん、お願いします。

ソムチャイ/私の方からはツイン・トラック・アプローチについて発言します。

エンパワーメントとメインストリームというのがツイン・トラック・アプローチの中にあって、これを戦略として障害者の作業をしていく、そして、社会的な発展、開発を進めていくということです。障害者の方々の支援にもつながるわけです。

またその一方でメインストリームとエンパワーメントのバランスの問題も考えないといけません。高嶺さんの方から事例や経験の話がありました。

長田さんからはバングラデシュの話がありました。CDDというNGOの話で、ノーマン・カーン氏が国際的な開発をしていくということで、CAHD、開発における地域におけるコミュニティに根ざしたハンディキャップに関するアプローチがありました。

バングラデシュはNGOの活動が盛んです。障害者、社会的な発展のメカニズム支援ができます。

また、タイ政府、NGO、そして障害者組織が一緒に協力して、州のレベルとかサブディストリクトという小地区というのでしょうか、レベル当局にもアプローチしています。サブディストリクト オーガニゼーションという小地区行政機関にアプローチして、います。

この中には社会的な発展、QOL、生活の質という問題も含まれています。先ほども話がスポンタムさんよりありましたが、州当局レベルでの活動もしており、州とも話して活動をしています。

アクションプランでは障害者だけでなく、地域に住んでいる全員が含まれるわけです。QOLの問題も扱い、メインストリームにつながると思っています。

これには成功事例もあれば、失敗してしまったケースもあります。地域社会の人と協力して、アクションプランをつくっていくというアプローチです。地域によっては計画通りに実施できているところもあれば、計画は作ったけれどもきちんと実施できていない地域もあり、色々なのですが、このような状況になっています。

高嶺/ありがとうございました。メインストリームの件に関しては、先ほどもお話しましたが、障害者に特化するプログラムは、結構NGOを中心になっていて、メインストリームに対する働きかけが少ないんじゃないかということが、今のプレゼンからもあったのですが、将来は、国をまきこんで、あるいは地域を巻き込んでどうやっていくかが重要な課題になるのではないかと思っています。

先ほども、車椅子を製造し、それを障害者に配るということは、おそらく貧困対策の中にそれを組み込めば資金的には問題ありますので、政府でそれを買い上げて配ってもらう。それによってNGOの活動と政府の責任を同時に進めていく。そういうことで農村開発、あるいは貧困対策の中にきちんと障害者問題を位置づけるということは今後、大変重要な側面になっていくのではないかと思っています。

ちょっと時間が今日はつまっていますけれども、長田さん、1分ぐらいのコメントを。

長田/1分は厳しいと思いますけれども頑張ります。

まずAPCDの方から学んだこと。障害者自身が参加することが一番大事だと思います。障害者センター、ピアカウンセリングなどを見ても、やはり障害者自身がリーダーシップをとらない開発はないということです。そういう意味で障害者の訓練や研修、障害者の人材開発も大切です。

社会の態度を変えるために、障害者に参加させるという論点も大事です。障害と開発に関してはツイントラックしかないと思います。メインストリームとエンパワーメントが大事。

ESCAPも津波のプロジェクトをやっています。そのとき、復興が大事。津波でつぶれたインフラを立て直すときにすばやくバリアフリーのデザインを組み込んでいかないと、またバリアができるんです。それは、日本が国をあげてやっていなければいけない、バリアフリーを組み込んでいくこと。具体的なことです。開発は両方できます。

ろうあ連盟がやっていること、ウズベキスタンで障害のメインストリームをやったのです。日本がやっていること、そこに障害者の訓練をメインストリームした。障害者団体がメインストリームにしたんです。

逆も言えます。難民を助ける会は普通のNGOなんですが、障害者のエンパワーメントを主にやっている。通常のNGOと障害者のNGOとの両面からの協力です。終わります。

高嶺/ありがとうございました。時間が過ぎてしまいました。今日の議論の中で、様々なテーマが出てきました。日本でできることしては、私が思ったことは、障害者団体、ろうあ団体が熱心に支援の活動をしていますが、他の障害者関係グループを巻き込んで、国際協力のための組織をこれから作っていく必要があるのではないかと感じました。

また、APCDという、アジア地域に障害者支援組織が立ち上がっています。ここ、おそらく2、3年のうちにJICAあるいはタイから独立した組織になるということですが、APCDでは、様々なアイデアを実行しながら、障害種別のプロジェクトなどを組み込んで、やっていく必要があるんじゃないか。そのためには、資金的にも技術的にも今後、様々な方面から支援が必要になってくると思います。

さらに、国連のアジア太平洋地域の十年が現在進んでいますけれども、それと呼応して、日本の中でも障害者の国際支援を進めていくことが必要じゃないかというふうに思いました。今日は日本、アジア太平洋地域からAPCDの代表が来て、ディスカッションができて、すごく私自身、有意義だったと思っています。皆様長い時間、ありがとうございました。参加者の皆さん、ありがとうございました。