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セミナー「ディスレクシアへの支援 デンマークでの活動から」

意見交換

司会:
野村美佐子、(財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター次長
パネリスト:
ギッダ・スカット・ニールセン ヨーロピアン・ディスレクシア・アソーシエーション理事
加藤醇子 クリニック・かとう院長
河村宏 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所障害福祉研究部長

野村:本当に時間がなくなってしまいました。あと15分しかないのですが、そのなかで今までお話してきたことに関しての意見をいただきたいと思っています。最終的には、これからディスレクシアをどうやって支援していくのかについて、もちろん図書館という媒体を通してという方法も一つですし、今申し上げましたDAISYを一つの解決方法として使っていきたいというふうに思っているのですが、それを性急に結論まで持っていけないかもしれません。その前に皆さんにいろいろお聞きしたいということがあるかと思いますので、是非おっしゃっていただければと思いますので、よろしくお願いします。

会場:先ほどのニールセンさんの話で、やっぱり積極的じゃない図書館もあるということなのですが、地域格差とかそういう部分のことと、進んでいない地域がけっこうはっきりあるという場合、進んでいない地域に対しての働きかけの仕方とかそういうことに関してお願いします。

ニールセン氏:ご質問を正しく理解しているかどうかわからないのですが、読みに障害がある人にとって図書館がどのように興味深く、役に立つようにしたらいいかとうことですか。

会場:図書館のディスレクシアの人に関するサービスということですね。

野村:では、サービスについて地域格差があるというところからお答えをいただければと思います。

ニールセン氏:図書館員はディスレクシアの人に対して支援をしたいと思っていると思います。ですから、図書館員はDAISYシステムについて短期間に知識を得ることになると思います。今、この視覚障害者図書館でDAISYプログラムについて普及をはかっておりますので、デンマークの人たちは全ての人にサービスを提供しようという気があると思います。図書館の経営者のほうはハードウェアを買うためのお金がきちんとおりないとか、そういうような問題があると思います。DAISYのようなシステムを提供するのもお金が必要なのですけど、当局はきちんと理解してくれていないことが問題だと思います。図書館員は一生懸命やってくれると思います。

会場:その当局の人がお金を出したがらないということに対しての働きかけとかは?きっと私もうまく説明できていないのですが、お金を出したがらないことに関しての働きかけというのは?

ニールセン氏:確かにディスレクシア協会ががんばらないといけないと思います。図書館員と政治家を動かして一生懸命活動しなくてはいけない。例えば新聞に報道されて政治家の目に留まれば、社説があれば、お金を出さないとは言わないと思います。次の選挙で勝てませんから。

会場:ありがとうございました。

野村:わかりましたでしょうか。ディスレクシア協会も頑張らなければならないという点に関して、先ほど加藤さんがIDAの日本におけるディスレクシア研究会というのを設立したとおしゃっていましたが、頑張らなければならないというところで、何をしていますか。

加藤:私のほうは、研究会というのを立ち上げて、たぶん研究というのはすごくいろいろな考え方があると思います。今の音韻処理の考え方から、あるいはもっと別な情報処理の仕方が重要ではないかとか、たとえば視空間的な情報処理が重要ではないかとか、そういうことをやっていくことで、実際に子どもたちの指導をどうしたらいいかということにつながってくるというふうに思っております。
それから、もちろんLD学会は、保護者の方たちも入会しておりますし大変良い啓発の場になるというふうに思っております。教師の方たちが中心ですし。ただ、そちらの方は純粋に研究というふうにはまだなかなか進んでこない部分がありまして、ようやくここ2~3年ですか、ディスレクシアに関心が少しずつ持たれてきておりまして、今度10月にLD学会が北海道でありますけれども、そこにアメリカのサリー・シェヴィッツ博士、イエール大学の小児神経科の医師ですけれども、ディスレクシアについて講演すると聞いております。来年横浜で私が主催することになりますが、そこではLD学会はもうディスレクシアを中心にそういう大会を開く予定でおりますので、いろいろな部分、それからもう一つはNPO法人のEDGEの代表がこられておりますが、そういう保護者、研究者も含めた全体的な活動もしておりますし、それからJDDネットにNPO法人のEDGEの方たちも参加されておりますし、専門家を含んだ形ですごく広くこれから支援だとか開発の方法が研究されていくのではないかというふうに期待しております。

野村:これから頑張っていくというところですね。先ほどNPOのEDGEという団体の名前がでてきましたので、ここに会長さんがいらしていますから、お話を聞きたいと思います。
そちらではどういうふうに今頑張っていらっしゃるのでしょうか、あるいはどんな課題を抱えていらっしゃるのでしょうか。

会場:NPO法人EDGEの藤堂と申します。研究というよりも、啓発です。ディスレクシアというのが世の中にあるんだぞということが日本ではまだわかられていないというのが現状ですので、ずいぶんここのところ新聞にも出るようになって、雑誌とかにも出るということで講演などの声も入ってきまして活動しております。それからサポートということでは、いろいろな支援の方法というのは耳からの情報、目からの情報、いろいろな感覚を使っての情報を提供できるようにしております。
もう一つ、JDDネットというところでやっていることは、今ニールセンさんがおっしゃったような形で、ロビーイングをしております。文部科学省と厚生労働省、国土開発庁などに申し上げて、できるだけいろいろな方がわかりやすいようなサインを使ってくださいというようなことですとか、教科書のことも含めて教室のなかでの配慮ですとか、あとは障害ということで就労などにも結びつくようにということで、いろいろな形の働きかけをしております。以上です。

野村:ありがとうございました。先ほどニールセンさんがおっしゃったように、ロビー活動というのはとても重要です。それから啓発ですね。それがうまくいくために、皆さんに理解をしてもらって、それから何をするかということを一緒に考えてもらわなければいけないと思ってます。そのほかにご意見がありましたらおっしゃっていただければと思います。

会場:国立国語研究所の島村といいます。今、国立教育政策研究所で、日本語教育支援データベース、キャステルJという著作権フリーの著作物、本とか音声データとか、そういうのを提携して共同で活用しようという計画をしているのですが、それが提供できると思います。国立教育政策研究所の話では、教育に役立つことであれば日本語教育に限らず使っていいという話ですので。

野村:著作権フリーというのはとても素晴らしいことだなと思います。というのは、たとえばDAISYも作る際に一番バリアになるのは著作権です。会場に著作権に関連して活動していらっしゃる方々もいらっしゃいますが、そのなかに河村さんも入っておりますので、著作権の壁というところでお話を、戦略的なものがあればおっしゃっていただければと思います。

河村:著作権はおそらく最後の最後まで壁はずっとあるのだと思うのですが、著作権を考えるときに、著作物、あるいは情報というものにいくつかのカテゴリーがあるということをきちんと整理したほうがいいと思うんです。つまり、著作権があっても、特売の大売出しというビラはどんどんコピーして配ってもらったらみんな嬉しいわけですよね。それから自治体なんかの公報は、それこそどんどんコピーして配ってくれたら嬉しい。そういう情報というのもたくさんあるわけですね、世の中に。つまり、そういうものは最初からみんなの読める形のユニバーサルデザインで出していくということが基本なんだと思うんです。
もう一方で、作家の方たちが特徴なのですが、やはりその売上で次の作品の糧にしていく、あるいは映画なんかですと制作費がかかって、それを回収しないと次の作品が作れない。これは回収するというのが当然のことだと思うんですね。ですから、情報のなかにはいろいろな、著作権についてほとんどフリーでいいよというものと、そうではないものがある。
それから、フリーでいいよとは言っていないけれども、たとえばニュースの災害情報などというものは、危ないというときにどんどんそのニュースをみんなに広げる、そのときに著作権というものは、ちょっと待ってよ、人の命がかかっているんだからというのは誰もが納得できると思うんですね。つまり、著作権を無視するわけではないけれども、それは社会全体が「こういうときはしょうがないんじゃないの」というのはあると思うんです。
つまり、そこのところを一つ一つ、やはりきちんと吟味して、そして守るべきところを守る。そして教育用教材なんていうのはもう待ったなしで、教室で教材がない生徒は一人もいないというふうにするのは、やはり災害のときに人の命が問題なのと同じくらいの重要な問題だと思うんですね。つまりそこらへんが、文化の成熟度、著作権についての文化の成熟度がものを言ってくるのだと思うので、それこそ、前にこの同じ会場でスウェーデンのインガーさんが講演されました。著作権法に違反して、その著作権法にちゃんと書かれていない人に録音図書を貸し出したのに対して作家からクレームがついて裁判があった。裁判で負けました。だけど、世論でその文句をつけた作家は非常に不名誉なことになった。なんでそんなのに文句つけるんだ、と。その結果法律が変わりました。著作権法が変わって、そういうカテゴリーの障害の人たちも新しく堂々と貸し出せる範囲に入るように著作権法が変わりました、というお話を確かこの壇上でしてくれたと思います。やはり私たちはそういう取り組みというのが、法律はやはりみんなで守るに値する法律をちゃんと作っていくということを 念頭に起きながら調和点を見つけていくということではないのかな、と思います。

野村:そういうことを考えると、やはり社会システムを変化させていく、そのためのロビー活動を関係者が一緒になってやらなければと思うのです。私たち日本障害者リハビリテーション協会ではずっとマルチメディアDAISYの発展のために今まで普及活動をしてきました。詳細についての資料は皆さんへのプログラムと一緒に入っています。さてこれからどうやっていこうかというときに、私たちはやはり一団体ではやっていられないと思いますし、いろいろな関係団体だけでもやっていられないと思います。やはり国とかがいろいろな関係者と一緒になってこういった会を開き、あるいは世界の動向を学びやっていくというところが一番必要なのではないかというふうに思います。
もう時間もなくなってしまったのですが、どうしても言いたいということがある方は、もう一人お受けしたいと思います。お願いします。

会場:学校図書館員を今年の3月までやっていました。現在、筑波大学で学校図書館を選考しています松戸といいます。ギッダさんのお話のなかで、図書館員の態度を変えたい、意識を変えるというところがすごく印象に残ったのですが、そのなかには、館内や館外の案内を絵文字とかで表してわかりやすいように、また図書館に入りやすいような雰囲気を作るとかおっしゃっていたのですが、そのなかの意識、対応を変えたいというところで、具体的に司書として関わっていくときに、どういった形で、具体的な例があったら教えてください。私がやっていたときには、たとえばその方たちに、生徒に必要な、彼らの言ったことをもう一度聞き直す、確認するとか、とにかく励ますとか、役割を与えるとか、ボランティア的な形で役割を与えるとか、励ますような形で対応したと思うのですが、もう少しあれば、お願いします。

ニールセン氏:図書館の中の同僚の意識を高めるということをおっしゃっているんでしょうか。ひとつ私がやったことをお話したいと思います。私の図書館でも同僚にディスレクシアについての問題を理解してもらうということは大変難しいことでした。でも私は長い間この問題に直面してきました。たくさんのディスレクシアの人を知っています。図書館にディスレクシアの人に来ていただいて、はじめて来てどんな思いがしたかということを話してもらいました。そのときに私の図書館の同僚がはじめてディスレクシアはどういうものなのかわかったわけです。図書館におけるサービスについても図書館長を含めてこの人の話を聞いて何が問題かがわかってもらえました。ですから例えば視覚障害者もそうですし、他の障害を持った人もそうなんですけど、実際に障害を持った人に図書館に来てもらい話を聞く、それをやりますと図書館員も図書館の中の人もよくその障害についてわかってもらえると思います。

野村:これでよろしいでしょうか。

会場:学校の図書館員、あるいは公共の図書館員としてどのようにディスレクシアの人に支援をしたらよいのかということについて何か具体的なお話をいただけますか。

ニールセン氏:先ほど申し上げましたけど、ディスレクシアの人に実際に図書館に来てもらって、どういうことがその人たちにとって必要なのか話してもらう、そして図書館の中で働く人が全てディスレクシアについて知識を持つということが大切だと思います。はじめてディスレクシアの人が図書館に来て嫌な経験をしてしまえば二度と来てもらえなくなると思います。ディスレクシアであっても他の障害の方であってもその人たちについて特別な注意が必要だということを図書館で働く人が認識するということが大切だと思います。

野村:よろしいですか。図書館員の人たちがもっと認識を持ってそういった方々の対応にあたる、それを楽しくやるみたいなところがあるのではないかと思います。今回、図書館員の方をターゲットにして私の方はこの会を開いたわけなのですが、蓋を開けてみますとなんと、研究者がかなり多いんですね。それから教育関係者も多かったわけです。、図書館員の方々は本当に少なくて、ちょっと私たちの意図が変わってしまいましたが、やはりDAISYというのが単に図書館でのDAISY図書というわけではなくて、情報アクセスをするという一つの情報技術としていろいろな分野で使われていくのではないかと思います。そういった意味での情報共有の場としてお考えいただき、この会を終わらせていただきたいと思います。既に時間がすぎてしまいました。お忙しいところを、私どもの図書館に関わる動きとDAISYの動きについて、最初にディスレクシアというのは何かというところから始まったこの会に来ていただきまして、ありがとうございました。
これをもって閉会にさせていただきます。