音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

CBR公開研究会in名古屋「CBRマトリックスを使って考える」報告書

◆来賓のご挨拶

国際連合地域開発センター
高瀬 千賀子所長

上野 それではここでご来賓の方々よりご挨拶をいただきます。まずはじめに国際連合地域開発センター所長の高瀬千賀子様にご登壇いただきます。

高瀬 皆様こんにちは。名古屋に本部をもつ国際連合地域開発センター所長の高瀬と申します。公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会をはじめ、本日の公開研究会開催にあたってご協力なさっている諸団体の皆様、本日はお招きいただきありがとうございます。

私ども国際連合地域開発センターは、その名の通り途上国の国内地域開発計画を通じて、持続可能な開発を促進しています。地域のスケールは扱う対象、または事情により異なります。例えば防災などではコミュニティ・ベースの防災計画・管理を促進しています。現在ではCBRはCBID(Community Based Inclusive Development)を指すということで、今回の研究会のテーマはその意味で我々の活動にも反映されるべきものだと考えています。

今回は国連の取り組みをお話しするということで、私どものセンターを管轄しております国連経済社会局(Department of Economic and Social Affairs、DESA)より挨拶を預かってきました。ここからはDESAのステートメントを代読させていただきます。

(DESAの英語のステートメントを代読)

上野 高瀬さん、ありがとうございました。それでは高瀬さんのお許しをいただきまして、今のお話をかいつまんで日本語にさせていただきます。

*****

国連経済社会局(DESA)のステートメントの内容(抜粋)

-国連ではDESA(経済社会局)が障害をもつ人々の権利向上や、社会や開発問題の中に取り入れるよう働き掛けて来ました。国連ではこれまで大変重要な文書が数多く採択されてきました。1982年には障害者に関する世界行動計画、1993年には障害者の機会均等に関する標準規則、そして、2001年から障害者権利条約の交渉が始まり、2006年に採択されました。障害者権利条約にも障害の問題を開発に入れることが重要だということが明記されています。ところが、障害者条約で示されたコミットメントは国際的に合意された開発目標にはまだ反映されておらず、そこがネックになっていました。

世界には10億人以上の障害者がいると言われており、これは全世界人口の15%占めますが、その多くが途上国に住んでいます。現在世界ではミレニアム開発目標(MDGs)という、2015年までに世界の貧困を半減させるという目標を始め、計8の開発目標の到達向かって取り組みがなされています。しかし、この開発目標や、それらを実施する為のターゲットや指標に障害は入っていませんでした。障害者は世界の開発の議論から排除されてきてしまったのです。

そこを何とかしようということで、国連をはじめ、いろいろな動きが出てきています。国連総会では障害者を組み込まなければ、国際的に合意された開発目標を真に達成することはできないと何度もいってきました。そうした努力の結果、国連総会は今年9月23日に、障害と開発をテーマとしたハイレベル会合が開かれることになりました。そこでは2015年以降の開発のアジェンダにどのように障害を組み込んでいくのかなどのアクションプランが議論されます。

また障害者権利条約の第6回締約国会議が7月17日から19日まで開かれ、18日にはCBRをテーマとするパネルも予定されているようです。DESAとしても引き続き障害者の権利が開発の中に含まれるように取り組んでいきます。本日の会議は国連の動きに沿うもので非常に期待しています。会議の成果として出てきたことは、提言のような形で国連をはじめとする国際社会に発信できたらと思います。

*****

今回大きな励ましを国連からいただきました。大変嬉しく、また身の引き締まる思いでおります。高瀬様、本当にありがとうございました。

◆来賓のご挨拶

独立行政法人国際協力機構(JICA)中部国際センター
鈴木 康次郎所長

上野 続きまして、独立行政法人国際協力機構(JICA)中部国際センター所長の鈴木康次郎様よりご挨拶いただきます。

鈴木 皆様おはようございます。独立行政法人国際協力機構(JICA)中部国際センター所長の鈴木でございます。公開研究会in名古屋「CBRマトリックスを使って考える」の開催、おめでとうございます。本日はこのような研究会にご招待いただき、ご挨拶の機会を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。

本日の研究会で議論される予定の地域に根差したリハビリテーション(CBR)と地域におけるインクルーシブ開発(CBID)は途上国の障害者の社会参加を実現する上で大変重要なアプローチであると考えています。せっかくの機会でございますので、JICAのこれまでの取り組みについて簡単にご紹介させていただきたいと思います。

JICAは、全ての人々が恩恵を受けるダイナミックな開発、Inclusive and Dynamic Developmentというビジョンの下、CBIDと同様に障害者を含む全ての人々がコミュニティで生活し、経済社会活動に参加・貢献し、経済成長の恩恵を受けるような開発を目指しています。そのために不可欠な障害者の完全参加と平等を実現するため、2つのアプローチからなるツイン・トラック・アプローチを行っています。2つのアプローチとはJICAが実施する事業に障害の視点を取り入れるメインストリーム、さらに障害当事者のエンパワメントであります。

例えば建築物や公共施設におけるバリアフリー化はメインストリーミングの一つでありますし、障害当事者団体の評価や市民への啓発活動を通じてエンパワメントを進めているプロジェクトもあります。また障害者であるからこその専門性を重視し、障害当事者である日本人の専門家やボランティアの途上国への派遣に加え、途上国の障害当事者の方々を日本に研修招待したりもしております。

このようなJICAの活動は多くの方々に支えられています。本研究会の主催者でもあります公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会様とは25年以上に渡り、障害分野の研修の企画・実施をしています。その一つである障害者リーダーシップ育成とネットワーキングでは、途上国の障害当事者が自分の国でリーダーとして活躍できる人材となるよう、日本の障害当事者リーダーを講師に迎え、ピア・カウンセリングや公共交通機関の乗車体験等を行い、自らの力で周囲を変えていこうという意識の強化を図ってきております。

またバングラデシュでは、本日の講演者でもありますナズムル・バリ氏が所長を務めていらっしゃる開発における障害センター(CDD)の協力を得まして、バングラデシュに派遣される全てのJICAボランティアを対象とした研修を実施しております。これは障害とインクルーシブ開発に関する理解を深め、JICAボランティアが実施する様々なセクターの活動に障害者が参加できるように配慮することを目的としたものであります。障害のメインストリーミングを進めたいと考えておりましたJICAバングラデシュ事務所がCDDに相談をし、実現に至りました。JICAボランティアが活動する行政機関やコミュニティにおいて障害者の声が反映されることが期待されております。

近年、経済成長が進む途上国の中におきましても経済格差の拡大、都市化による家族や地域社会のつながりの希薄化という問題が顕在化してきております。そのような中で、CBIDのアプローチがますます重要性を増していると考えております。障害者やその家族が他の住民と同様に地域の活動に参加し、彼ら彼女らがもつ能力が評価され、豊かなコミュニティづくりに貢献できるような開発を進めていくことが大切であると考え、そのためにJICAとしても協力を続けていきたいと考えております。

最後となりますが、本日の研究会における素晴らしい経験の共有と有意義な議論を願いまして、私の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。