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JANNET研究会
ポストMDGsと障害で話題の「障害インクルーシブな開発とは?」報告書

◆まとめ【ワークショップの発表】

NPO法人起業支援ネット副代表理事
鈴木 直也

鈴木 そろそろワークショップの発表に移りたいと思います。少なくとも3つを発表してください。2分を目安に、3つを優先的に発表いただいて、時間があれば他のものも読み上げても構いません。ただ時間は計りませんので、皆さんを信じて進行していきたいと思います。ご協力のほうよろしくお願いします。では最初のトップバッター、よろしくお願いします。

《グループ1》

うちの班ではいくつか出たのですけど、3つ挙げるとすると、まず1つ目は教育の一番下のところに障害についての教育というものを貼りました。障害をもっていない方もいる方も、障害そのものについての知識や支援技術というものをあまりにも知らな過ぎる。一般の方に車いすの押し方など、ほんのちょっとした知識があればもっと住みやすくなるのではないかということで、本来であれば幼児期、小学校教育の中に含まれるべきものでもあると思うのですが、その中に含めずにあえて障害についての教育というものを一つ挙げました。2つ目としては、人権がらみのところでいくつかの意見が出てきたのですけれども、その中で安心して生まれる権利というのがありました。障害の有無、ジェンダーなどに関係なく、安心してこの世に生まれてくる、そして、安心して育つ権利というものが必要だろうということです。3つ目はその逆で安心して死ねることです。誰かが看取ってくれるだとか、ここで死ねるだとか、死んだ後の居場所がちゃんとあるということの安心感が豊かで心地よい生活につながるのではないかということです。全部で3つ挙げさせていただきました。以上です。

《グループ2》

私たちのグループでは、1点目が持続可能性ということなんですが、CBRを行う際に海外ではドネーションというのが最初に入ってきます。ドネーションに依存するということは、当事者の意識が欠如するきっかけになったり、ドネーションをしている段階からの施行の依存であったりということがありますので、ドネーションがなくなった後も独立して持続していくというのを挙げさせていただきました。2点目が評価です。実際にCBRを行っていく際に、CBRマトリックスの枠を埋めることに必死になってしまい、それがどういった質でやられているのかということを計る必要性があるのではないかということです。3点目が組織運営です。朝の質問の時にもあったのですが、トップダウン、ボトムアップという議題が私たちのグループでも出ました。トップダウンにも、ボトムアップにも偏り過ぎないバランスの良い組織運営、組織管理をしていくことが必要ではないかということで挙げさせていただきました。以上です。

《グループ3》

私どもの班は、「CBRマトリックス」というタイトルについて話し合いしました。「C」について、つまりコミュニティについてしっかりまずは定義すべきであろうと。地縁的なコミュニティもあれば、血縁的なもの、障害の機能的なコミュニティもあります。そうしたコミュニティについての性格付け、あるいは定義付けというのは語られることが割と少なかったのではないか。全てにコミュニティの有り方がかかわっている、コミュニティ固有の問題としてある以上、コミュニティがまず定義付けられるべきではないかということで、一段上の上位概念としてコミュニティを入れさせていただきました。

「R」は、今現在、保健の中のリハビリテーションという非常に狭義なものとして収まってしまっていますので、こういうものを統括してリハビリテーションというもの、つまり、公正、公平、歪みがあるものを治すというというような意味をまとめるような形でリハビリテーションというものを入れさせていただきました。

3点目はスピリチュアリティーということです。先ほど渡辺先生のほうから出ましたけれども、社会というまとまりが個々の問題から文化、芸術、司法と、非常にバラバラという感じもしましたので、それをちょっと分けまして、宗教、慣習、規範というものに整理したらどうかという意見が出ました。4点目は横軸からの矢印を入れてみました。全てにおいて人材育成、ジェンダー配慮というものが串刺しで入るように、横からの矢印も入れてみました。以上です。

《グループ4》

ここのグループでは保健のカテゴリーにロングタームケアという意見がありました。日本でいうと介護保険の介護福祉制度です。高齢化がこれから障害者を含めてどんどん進んでいきます。日本のシステムを考える以上はどうしてもこの部分は外せない。なおかつ、保健の分野でいくとほとんど全ての要素を含んでいる、含まなければいけないという意味でロングタームケアというものを加えました。あとは前のグループでもありましたけど、心の平安、安心感というような部分です。それともう一つは、障害当事者団体、自助グループ等が出ていますけれども、障害者支援をする団体というのが大きな役割を果しているのは事実だと思いますので、障害者支援団体というものを項目として付けてみました。以上です。

《グループ5》

手短にポイントだけ言います。既に示された項目の中では、教育のカテゴリーの中で新たに出たのは人材育成です。というのはこのグループでは海外でCBRの活動に携わっていた方もいましたので、技術者教育が必要であるということが出ました。新しいカテゴリーの中では、海外での実践ということでいくと非常に大げさな話なんですが、社会変革というのが必要だろうということでした。これは共生社会のための社会変革という意味合いです。言葉が適切かどうかはわかりません。なぜかというとエンパワメントの中に、アドボカシーとコミュニケーションというのは出ているのですが、これはどちらかというと個人や家族など身近な地域社会をイメージしているので、もう少し大きなカテゴリーとして社会というものを変えていくということです。リンクしながらも新しいラインに置いたらいいのではないか。

先ほど申しましたように海外のことも含めると、例えばバングラデシュは非常に階層社会がきつく、女性に対する暴力など様々なことを考えた時に、身近な所ではどうにもならない社会の構造的な壁というのがあります。アプローチは必要としてはいるのですが、マジョリティ、マイノリティ、カースト、宗教、民族など、違いを起因とする暴力を克服していくこと。ちょっと単語にはならなかったのですが、共生社会に向けていく変革ということです。ソーシャルアウェアネスも含んでのことだと思います。2つ、項目としては出ました。人権というところまでは話し合えなかったのですが、それも含まれているのかもしれません。

最後に付け足しをすると、社会への参加のカテゴリーのラインに司法というものが出てきますが、これは他の項目とちょっとなじまないような気がするねということで、司法、法制度ということであったら参加というよりも社会ということなのかもしれないと。ちょっと蛇足ですけど。ありがとうございました。

《グループ6》

私たちのグループは大きく3つほど項目を挙げました。私たちが着目したのは、私たちを取り巻く外側の環境、私たちの心の中にある内側の環境で、これをひとくくりに考えています。1つ目に挙げたのがスピリチュアルです。先ほど渡辺さんからもありましたけれど、宗教、生きがいといったことも出ました。2つ目は、私たちが住んでいる地域社会の環境の一つとして、防災というのも大きな項目として挙げたいという議論がありました。3つ目としては環境です。生態環境、物理的な環境、バリアフリーといったようなこともあるのではないかということです。

それ以外のところで、私たちは挙げていただいた項目をいろいろと議論しました。特に争点になったところとしては、アドボカシーとコミュニケーション、自助グループ、当事者団体の活動をしていく中で政治への参加というのは一体どこまで踏み込めるのかというような議論がありました。特に途上国地域では政治的な活動がかなり制限されているところもある中で、メンバーの中から単にアピールをするということだけではなく、対話をしていくことによって社会が変わるのではないかという話がありました。あとは金融サービスというのがありましたけれども、これは私たちの活動の中でどこまで踏み込めるのか、ちょっとよくわからないという話も出ました。以上です。

《グループ7》

私たちのグループは手帳の有無にかかわらず障害当事者であったり、あるいは障害をもつ家族がいるというような立場で話し合いをしました。私のグループから出てきたものとしては、社会のところにはいろいろな場があるのですが、こういったところに入らなくても安心していられる居場所が必要なのではないかということが一つ挙がりました。またアドボカシーとコミュニケーションが一つにまとめられていますが、いろいろな意味で深い内容を含んでいますので、アドボカシーとコミュニケーションを2つの項目に分けたほうがいいのではないかというような意見もありました。

他のグループでも出ていましたが、それぞれの項目を包括するような形で障害理解ということもとても重要なのではないか。これは社会に対する障害理解もそうですし、本人が自分の障害を認識し、そのために必要な支援を求める力、社会で生活するための力も必要なのではないかと話し合いました。また、書いてありませんが、人材育成、担い手というものも必要ですし、名古屋の実践ではボランティアで支えているというお話がありましたが、こういう人たちについても項目として挙げていくのもいいのではないかというような話し合いもありました。以上です。

《グループ8》

3つ出させてもらいました。1つ目はコーディネーションというところを挙げさせてもらいました。個人的なことが入ってしまうのですが、障害をもっている方々は幼児期、小学校教育、中・高等教育の各ライフステージごとに、大人になるためにどんな目標を立てていったらいいのか。子どもは子どもらしく生きていき、最終的に社会に出ていくためには何が必要なのかということを取りまとめたり、決めていくような人が必要なのではないかということでコーディネーション、コーディネーターの育成ということが出ました。それがどんな人になるのかはわからないのですけれども、例えば学校や保育園の先生、医療機関の人なのかもしれないですが、そういう方の研修が必要なのではないかということで挙げさせてもらいました。

2つ目は、これは全体のことなのですが、支援される側の人にかかわっている人、その人自体や家族を全部含めた意識の向上が必要なのではないかということで、意識向上というところを挙げさせてもらいました。3つ目は、CBRマトリックス全体の図でのことですが、今は保健、教育、生計、社会、エンパワメントというコンポーネントで分かれていますけど、先ほどもいいましたように幼児期、小学校教育、中・高等教育といった教育というところで一貫したアクセス、例えば文化・芸術、レクリエーション・余暇・スポーツのところにつながることも自分たちの生活を考えるとたぶんあると思うんです。こういったところにいろいろと本線以外でリンクしていくのが、パーソナル・アシスタントになります。つながりということでリンクというところを挙げさせてもらいました。以上です。

鈴木 素晴らしい。本当に2分で収めていただきまして、これでアルビナさんにコメントいただける時間が確保できました。最後にアルビナさんのほうからこのワークショップに関するコメントをいただきたいと思います。アルビナさん、よろしくお願いします。

◆アルビナさんのコメント

アルビナ 今、いろいろなテーブルを回らせていただきました。いろいろな違いが見られて本当にとても面白かったですし、興味深かったです。多くのチームがエンパワメントと社会というところから始められたのを見て、大変興味深く思いました。日本では保健や教育システムが進んでいるので、多くのチームがエンパワメントと社会、つまり、逆向きに進んでいったのではないかと思いました。一方インドの場合は保健のところから取り組んでいきます。というのは、これは基本的なことであり、保健サービスへのアクセスが制限されているからです。教育に関してもそうです。私たちがCBRマトリックスのことを考えた時も最初に保健、教育、生計、その次に社会、エンパワメントと進んでいきました。今回の日本の皆さんの考えといいますのはまずエンパワメント、社会と、逆向きにいっているのは良かったと思いました。

CBRマトリックスの議論が始まったのは2005年から2006年だったと思います。WHOが何か枠組みを作ろうということで5つのコンポーネントと、その下にエレメントを考え、世界中で会議が開催されて様々な議論が行われ、2010年に発表されました。CBRマトリックス、つまりこの枠組みが異なる人々、異なるレベルで使われるようになったということはとても嬉しく思います。結局はこれは人間のことであり、一人一人の人権にかかわることなのです。障害のあるなしにかかわらず、一人一人が尊厳をもって、敬意をはらわれて、コミュニティの中で生きるためなのです。この枠組み全体はそのための様々な活動がどのようにリンクしているかを示していますが、CBRマトリックスは究極的には人権および人の尊厳ある生き方に基づいているのです。

CBRマトリックスが国が違っても、人々の暮らしの背景が違っても、地理的に違ってもこのように拡大し、受け入れられていくということは素晴らしいことです。それぞれの社会や文化や宗教が違っても取り入れられて発展していっていることは本当に素晴らしいと思いますし、今日ここに集まった皆様方がまたいろいろと違った観点から考えてくださることは本当に素晴らしいと思います。

日本は2015年にCBR国際会議を開催することになっていますので、今日この場で皆さんが学んだこと、経験されたことが2015年にも共有されることを希望します。どうもありがとうございました。

鈴木 アルビナさん、ありがとうございました。もう時間も迫って参りました。10時から長い時間お付き合いくださいましてありがとうございます。マトリックスを使ってみようということで、今日はずっとマトリックスを眺めている一日だったのではないかと思います。特に最後の90分はマトリックスを眺めながら、私から見ても非常に有意義なお話合いをされているように感じられました。今日はこれで終わってしまうのですけれども、今後もマトリックスを使ったり、どこかで皆さんが出会った時にこの話の続きをぜひ展開していただければと思っております。これにて私の担当するワークショップは終わらせていただきたいと思います。皆さん、どうもありがとうございました。

◆閉会の挨拶

今西 鈴木さん、本当にありがとうございました。またワークショップに積極的に参加いただきました皆さんにお礼を申し上げます。

今日は朝の10時から長きにわたってこの研究会に参加いただきましたけれども、そろそろ終わりの時になりました。皆さんにお願いしたいと思います。朝申しましたように、アンケート用紙がございます。これに記入いただいて出口の辺りに回収する者がいますので、お渡しいただければと思います。今回の反省、振り返り、それからJANNETとしては研修・研究会を毎年2~3回ずつもたせていただいておりますので、こちらを参考にしつつ、また次の新しい研究会をより良いものにしていくために役立てたいと思っております。

先ほどアルビナさんから今日の研究会の講評のようなことをおっしゃっていただきましたので多くは語りませんけれども、アルビナさんが言われましたように2015年のアジア・太平洋CBR会議は東京で行われる予定になっています。2015年9月1日から3日まで、新宿の京王プラザホテルで行います。JANNETが中心に準備をして参ります。今日ご出席いただいた皆様方、あるいはもっと多くの皆さんに参加いただきたいと思います。アジア・太平洋地域からも多くの参加者に来ていただきます。JANNETでは日本でのCBRの事例も集めておりますし、また海外へ発信できるものとして取りまとめていきたいと思っていますので、引き続き皆様にもご協力いただきながら、この2015年の会議に向けてもしJANNETの会員でない方、団体の方がおられましたらぜひ会員になっていただきたいです。特に国際開発関係の団体がまだまだJANNETの会員になっておられませんので、ぜひそういった団体の方々にもお声かけいただけましたら幸いです。

今日のアルビナさんのお話しにもありましたようにCBRは障害をもった方だけではなく、全ての人たちの権利と尊厳のために共通であるということがありましたので、ぜひそれに向かってメインストリーミングしていき、多くの皆さんにご参加いただければと思います。

JANNETの研修・研究委員会の委員長としてもう一度、今日長い時間参加いただきました皆様にお礼をしながら、今日のご挨拶にかえさせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。