音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

報告書 英国ソーシャルファームの実地調査報告会

はじめに

炭谷 茂
日本障害者リハビリテーション協会会長
恩賜財団済生会理事長

近年日本では家族・親族や地域の絆の弱体化、貧困層の増大、情報化社会の進展など経済・社会構造は、大きく変動しています。この影響を受けて、障害者、高齢者、難病患者、引きこもりの若者、DVの被害者、ホームレス、元受刑者、外国人など異質だと見られる人たちが社会から排除されたり、孤立化する現象が広く見られるようになりました。この結果、これらの人たちは、仕事、教育、余暇活動などの機会に恵まれず、個人の尊厳が損なわれ、人権上大きな問題を抱えるように至っています。

グローバル化した今日、これは先進国共通に見られる現象です。1990年代からヨーロッパ諸国では、強い危機感を持ってこの問題に正面から向き合い、解決に全力を尽くしています。中心にソーシャルインクルージョン(社会的包摂)という理念を掲げ、福祉、医療、労働、教育、経済等に関するあらゆる政策を総動員して取り組んでいます。

中でも就労機会を提供することが重視されています。その手法の一つがソーシャルファームであります。我々が、これを知ったのは10年ほど前であります。英国、ドイツ、イタリア、フィンランド等から専門家を招いて研究を重ねてきました。次第に日本にも有益な方法であると認識され、全国各地でソーシャルファームが設立されるようになりました。

しかし、ソーシャルファームの現実の経営は、容易ではありません。商品の開発、販路、資金、税制・法人格等公的制度など多くの課題に直面しています。そこでこれらの解決策を考える一助として、この度日本から英国に出向き、実際のソーシャルファームの現場を視察し、関係者と意見交換することにしました。

調査期間は、6日間と短かったですが、英国側が周到に用意していただいたプログラムによって充実した成果を上げることができました。この報告書は、調査に当たった4名が分担して、11月8日に実施した調査報告会の内容を基本にしてまとめたものです。これから日本においてソーシャルファームを設立する人や現在経営をしている人にとって極めて有益であると考えています。

日本においてソーシャルファームの必要性は、一段と高まっています。私たちは、志を同じくする人たちと一緒に、日本各地に設立されるよう、さらに努力していきたいと思います。

最後にこの調査に当たって資金を支援していただいた東京都民共済生活協同組合に感謝申し上げます。