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報告書 フィンランドソーシャルファーム実態調査報告会

報告2
「フィンランドのソーシャルファーム訪問調査報告」

NPO法人 ぬくもり福祉会 たんぽぽ 会長 桑山 和子

スライド1
桑山和子氏 スライド1(スライド1の内容)

皆様、はじめまして。ご紹介いただきましたNPO法人 ぬくもり福祉会たんぽぽ会長の桑山和子と申します。よろしくお願い致します。実は、寺島先生がフィンランド視察にいらっしゃる予定だったのですが、先生は大事な公務を抱えていらっしゃって、どうしても都合がつかず、私が代役・・・代役にならないので申し訳ないのですが、炭谷先生、野村さんとご一緒に行かせていただきましたので、発表させていただきます。そんなわけで、身も細る思いで、寺島先生と対峙しておりますが、炭谷先生からフィンランドの特色などだいたいの概略はお話いただきましたので、フィンランドの情勢や制度設計などはお分かりいただけたと思います。フィンランドは日本と違って公的資金を組み込みながら、いろいろな団体と一緒に立ち上げていく事例が多かったと思います。その中で、炭谷先生が最後のまとめで、今後の課題は、日本型ソーシャルファームを育成していく、とおっしゃておりましので、私どもの団体、ぬくもり福祉会たんぽぽの例を簡単にお話させていただきます。

たんぽぽは、1986年、公民館の婦人講座から、(30年前は婦人だったのです)困った時はお互いさま、の理念で住民参加型の会を立ち上げました。市民活動のはしりでした。立ち上げ時から公的資金は全くありませんが創意工夫しながら、今では、高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉などの分野で、職員数240名、事業規模が7億~8億までの法人に育って参りました。特に介護保険分野を強化させて、その収益の一部をソーシャルファームの財源に充てることで、平成21年に農業分野のソーシャルファームを立ち上げました。たんぽぽの事業そのものがソーシャルインクルージョンですので理事や、職員にも、自然体で受け入れられました。ただ経営的には残念ながら、農業はこの時代ですから、…ちょっと小さい声で言いますが、600万位の赤字を計上しております。その殆どが人件費ですが、ソーシャルファームで働いている高齢者や障害者、精神、知的障害者をはじめ、引きこもっていた若い男性たちが、しっかりと仕事をしている姿を見ると一方では、心が癒される面もあります。お給料は最低賃金をクリアし職員契約しておりますので、10月からは最低賃金も上がりましたので、その分ベースアップいたしました。また、「ソーシャルファームはまちづくりにある」と炭谷先生がまとめてくださいましたが、まさにその通りで、飯能市の障害者福祉計画には、「障害者の多様な働き方」の項目の中に、たんぽぽのソーシャルファームが位置づけられております。しかし文言だけではお金がついて来ないので、フィンランドで学んだことを、埼玉県や飯能市にどのようにしかけていくべきか、思案しているところです。また、ソーシャルインクルージョンの理念を通して飯能市や埼玉県から、生活困窮者や刑与者などの働く訓練の場としても契約しています。フィンランドのように公的資金が入ってくるとジョブコーチをつけて訓練できるのですが、残念ながらジョブコーチをたんぽぽで雇用するゆとりはなく、農業や介護現場の職員が指導しているので、力及ばずその辺がネックでなかなか定着しない事実もございます。

また、炭谷先生のご協力もあり、飯能市にある駿河台大学で平成26年から、大学の講座にソーシャルファーム理論が取り上げられ、たんぽぽの研修室を使って座学や農業実習、また雨の日には介護現場の実習等、学問的にもソーシャルファームが浸透してきていることは、まちづくりの要素にもなりうると期待しているところです。

さて、私は今回の視察の中からそれぞれタイプの異なった3箇所の事業所を取り上げて、何故印象に残ったのか、そこから日本型ソーシャルファームを導き出せるか等をパワーポイントと、報告書を使って皆様にお伝えし、皆様と一緒に考えたいと思います。

スライド2
桑山和子氏 スライド2(スライド2の内容)

スライド3
桑山和子氏 スライド3(スライド3の内容)

最初にヘルシンキ市内にあるポシヴィレ株式会社について、報告いたします。ヘルシンキは人口61万人。治安も良く、地域暖房も整備され、建物の高さ制限もあり、環境に優しい首都のように感じました。ポシヴィレは、トラムの停留所の近くの住宅地の中に、事務所というより半ば個人の住宅のような建物で、就労移行事業を行っておりました。責任者の女性から事業内容の説明を受けましたが、訓練現場を見たわけでなくこの写真しかお見せできないのですが、皆様にもイメージできるように、リハビリテーション協会からいただいた資料も引用しながら、説明をさせていただきます。

ここを選んだ理由は、ヘルシンキ市の関与が大きいこと、次に失業者や障害者などが口コミでここにやってくること、また企業としてもソーシャルファームに位置づけ、さらに2010年にISO 9001を取得していること、では実際に品質のマーネージメントや顧客満足度はどうか、などに焦点を当てて掘り下げてみました。

プログラムにも書かせていただきましたが、経営母体は、ヘルシンキ市とヘルシンキウーシマ病院地区、それに不動産会社です。そこではジョブコーチの指導の下で一般労働市場へ直接移行支援を行っていました。そして就労移行場所もヘルシンキ市が公営の病院や医療の現場などを提供し、介護や看護補助、清掃や食堂など様々な現場で、ポシヴィレと障害者や失業者などとで立てた訓練計画に従って、ジョブコーチと共に訓練をし、昨年は100名程度就労させたそうです。

不動産会社も経営に参加していますが、訪問先の他の団体でも、訓練場所や就労場所に、不動産管理業務の名が多数ありました。確かに環境整備や、管理、メンテナンス部門で働く場が多数あると思います。ここで学んだことは、プログラムの20ページに「一般労働市場へのアプローチ」という図式がありますが、最初の入り口のところで目標を持たせてしっかりとしたジョブコーチをつけて一般労働市場へ送り出すシステムが、顧客満足度にもつながっているのだと理解いたしました。

最終的に各従業員が十分な管理下で、ポシヴィレから一般労働市場あるいは教育機関に行った方も多いそうです。自分の適正をしっかりと見極めて、もう一度学校に行き直すきっかけに、また自分の人生の目標が得られたという人も多いそうです。コーチングの目的は、就労先を見つけるのが困難な人に、能力やスキルを開発し、提案し続けること。その方の適性を見て支援していくことに尽きると思いました。教えるというのは座学ではなくて、ここがフィンランドの特色なのですが、現場でジョブコーチも一緒に仕事をしながら教え込んで行く、と説明されました。日本はどちらかというと、座学で教え込むことが多いですが、そうではなくて、本人と色々なやりとりをしながら、適性に合ったところを見て、どの現場へ回すか。その現場がダメなら次の現場はどうか。きちんとケアプランを立てて、日常の生活も含めて指導しているようです。

本部は、スライド3にあるここですが、正規雇用への橋渡し的事業。これは派遣なのかなという気がしたのですが、職業訓練場への派遣手続き等、それにはソーシャルワーカーとして高い能力があるのだと思いました。

ポシヴィレの正規職員は、全部で8人。現場職員はここにはやって来ません。ここは口コミでいろんな方が相談に来て、特に年金や制度を説明して、すぐに現場のジョブコーチに受け渡すそうです。訓練場所として市がお金を出しているので、訓練指導士がしっかりとしたサポート体制をとり、従業員には課題を与えながらルーチンワークを徹底し、特に日常生活にまで目を向けながら、周囲との環境やコミュニケーションを徹底させていくとのことでした。訓練期間がどのくらいかを聞きましたら、1年半くらいで一般就労出来るか、新たな人生を見つけて再出発していかれれば一番良いのだが、中には、7年かけて就労した人もいるそうです。

資料の中に従業員の声が掲載されていましたので、参考までに載せておきました。「私はチャンスを与えられ、今や仕事を手に入れました。そして人生を手に入れました。」炭谷先生も述べておられる様に、ソーシャルファームがその人の生き甲斐になっているかが問われる、と盛んにおっしゃっていましたが、まさにその通りです。また、ポシヴィレの従業員は、病欠がわずか2%。これも少ないそうです。その結果、自尊心と生活管理能力が高まり、勉強する場などを探す勇気が生まれたという言葉も記されていました。

参考までに皆さんにお話ししたいのが、アールライト大学の報告書の中に、すべての従業員が一般労働市場に移行して、平均5年とどまっていたら、投資した額の115%以上帰ってくる。同様に障害者を含めて5年とどまってくれたら内部利益が57%になる、障害者も道筋さえつけば貴重な労働力である。フィンランドもこれから高齢社会がやってくるので、就労人口を増やしていかないといけない状況のようです。次の訪問先に移ります。ここが一番良かったかなと思います。

PosiVire(ポシヴィレ)株式会社の要旨へ

スライド4
桑山和子氏 スライド4(スライド4の内容)

ティトリュ協会です。ここをなぜ選んだのかというと、1つには、ボランティアや地域の人や特に障害者の団体が関って出来た歴史に注目しました。2番目に生産性の高い高品質なものを企業感覚でつくっている。3番目が70%以上の障害者を雇用している。この3点に目を向けて私はティトリュを選びました。玄関を入ると、100mも奥に伸びた作業所、約900坪くらいの建物の中に、パッキング部門、縫製部門、機械部門があります。大きく仕切られていて、それぞれ作業していました。

スライド5
桑山和子氏 スライド5(スライド5の内容)

これが最初のパッキング工場のところです。工場といっても独立しているのではなく、広い場所の中が部門ごとに区切られています。真ん中に通路があって右左に区切られていました。このスライドに書いてあるように、数人の女性、少し知的障害のような方でしたが、製品を梱包して各地に発送するパッキング作業を一生懸命やっていました。いただいた会社案内の資料には、「機械のような集団と自負しています」と書いてございました。スピードはゆっくりですが正確さと持続性が彼女たちの特性に合っているのだなと思いました。こういったものを作っています。

スライド6
桑山和子氏 スライド6(スライド6の内容)

スライド7
桑山和子氏 スライド7(スライド7の内容)

洋服やレストランの作業着もつくっています。これが、縫製工場です。ここも広くて感覚的にはプロの作業工場の雰囲気です。ワークマンの作業着や、レストランのユニフォームが意外とカラフルな色使いでつくられていました。生地もたくさんあって、工場と言う名にふさわしいものでした。デザイナーもいて、障害者であっても適正な指導の下に技量を磨いていくと、きちんと出来るということです。機械化できるところは機械化しながら自分たちができるものを提供していくことに尽きるのでしょう。

スライド8
桑山和子氏 スライド8(スライド8の内容)

スライド9
桑山和子氏 スライド9(スライド9の内容)

スライド10
桑山和子氏 スライド10(スライド10の内容)

スライド11
桑山和子氏 スライド11(スライド11の内容)

次は、機械作業工場です。スライド11に写っているニコニコ笑っている方は、本人に許可をもらって撮ったのですが、この機械工場の従業員です。案内していただいた統括責任者に誰がどうやって動かすのですかと尋ねたところ、プログラマーがきちんとプログラミングすれば、数人で処理できるのだとおっしゃっていました。素晴らしいと思いました。ここにはもちろん障害者の方が70%以上雇用されていて、職業訓練の人たちも来て、エストリア辺りから移民の方もいらっしゃるという話でした。まだ商標登録はしていませんが、ソーシャルファームなのです。

各部門のキャッチフレーズは、金属部品のところは「精密かつ正確に製作します」縫製作業では、「フィットする作業服をオーダーメイドでいたします」。パッキン工場は、「出荷、仕上げ、梱包、環境にやさしい資材で納品いたします。」実に適材適所で障害の適性、個性を見つけて技能の向上を目指した製品作りは評価が高く、スライド13の写真に見る認定証も、スウェーデンの一流メーカーから金属部品の製品に関していただいたものです。アメリカやスウェーデンなどにも輸出もしているとありました。信頼性の高い製品として認証を受けているのも納得いたしました。小さな縫製や出荷・梱包などここにあった製品作りをしていることも注目に値します。

スライド12
桑山和子氏 スライド12(スライド12の内容)

スライド13
桑山和子氏 スライド13(スライド13の内容)

作業服などはファッション性の高いオーダーメイドとして、現場のデザイナーが、注文主のところに行って、例えばポケットの位置はどうするかなど、採寸して作っているとのことでした。この辺が、顧客満足度が高いのだと思います。それから機械工場なども、自分たちの手で持ち上げられるサイズ、あまり大きなものは作らないで、自分たちで搬入・搬出ができる製品作りをしている、従業員の特質に合わせて工夫がなされていることがわかりました。統括的な人が、きちんと市場調査をしながら、適性に合ったものを作っていることは素晴らしいと思いました。

以前は地元で織られた生地を使っていましたが、今では輸入ものの生地だそうです。すばらしいものを作っていまして、いくつかお見せします。テーブルクロス、真ん中に敷くといいですね。縫製もよくできていますね。ティトリュのマークもついています。こんな袋、トートバックもありますね。それから、まだあります。小さく三角形にたためるトートバックも。いろいろなアイデアを出しながらやっていて、素晴らしいと思いました。

スライド14 経営規模
桑山和子氏 スライド14(スライド14の内容)

では、どのくらいの規模でやっているのか。ご説明いたします。従業員の数、賃金等ですが、作業工程は、ベルトコンベア方式ではなく例えば機械作業工場では、1人が機械を扱えるように訓練して、部品などの作業は自動化されていて、コンピューター制御で指導者がプログラミングすれば、あとは少人数でも出来るようにと、適材適所の働き方が徹底されているようです。そのため職員は正職員が10名でした。企業統括の方、先ほど写真に出ていた方1名と、会計が1名、秘書1名、梱包が1名、縫製が2名、金属が2名、セールスマンが1名、食堂1名の10名。作業員として契約社員の70%以上が障害者、あるいは訓練生で、40名。実習生が年間40名。今後の事業展開として、もっと増やしたい、100名の規模にしてやりたいとおっしゃっていました。年間の予算が約2億4,000万円。収入の70%が製品の売上(梱包15%、縫製が25%、金属加工が60%)で、残り30%はタンペレ市から援助を受けているということでした。契約に伴う賃金体制は、ほぼ健常者と同じですが、能力に合った契約の仕方もしているとおっしゃっていました。もう1つ、ここを選んだ理由は、日本で言う運営協議会があり、市が関わってできたので、今でも運営委員の中にタンペレ市の職員さんか議員かわかりませんが、運営委員のメンバーになって、助言をいただいたり方向性を検討しているとのことでした。内容的にはソーシャルファームだと思います。ただ、フィンランドのソーシャルファームは特に特化されたものがないので、今のままの形態でいいということでした。けれど、タンペレ市の援助がないとやっていけないということはおっしゃっていました。見習うところはあったと思いました。

Titry(ティトリュ)協会の要旨へ

スライド15
桑山和子氏 スライド15(スライド15の内容)

次が3つ目のところです。ラフティという市にあるテュオホンヴァルメンヌス・バルマ・リミテッド(以下、バルマ)。ここが気に入った理由は3つあります。一番気にいったのが、1つは、意識改革をしたということです。何の意識改革をしたかと言えば、企業マインドをもっていこうということで、市の財政に陰りが出てくると、当然補助率が下がる。では、その前にそこから抜け出して、自分たちが企業感覚を持ってやっていく。そのためには、株式会社になって商品開発などもしていく。その意識改革が4年ぐらいかかったと言っていました。結果的には成功して売り上げを伸ばしている、そこに魅力を感じて取り上げました。そこから生まれたのが、ブランド商品化。モルックです。これはミニチュアなのですが、実は、実物のモルックをどうぞお持ち帰りくださいと言われたのですが、さすがに大きすぎて持ち帰れませんでした。意識改革から商品開発へ、それも地場産業の木を使っているところが気に入ってこのバルマの会社を発表したいと思ったのです。

バルマの組織は大きく、ラフティ市を中心に広域にわたって、8カ所も拠点があり、食品加工、木工製品、金属加工、リサイクルなどの部門と、7つの事務所があるということでした。その部門ごとに各種の職業訓練が行われています。当然どこの事業所にも訓練生が来ています。バルマも最初は学習や訓練機関として市の色が濃かったのですが、バルマになってから意識改革をしてパテントもとっていくという企業努力が成長させているのだと思います。なんだかその過程が、私どものたんぽぽに似ているように感じました。理念が「生涯、人として成長し続けるために」 いいじゃないですかね。人として成長し続ける。そのために色んな訓練をしながら自分の人生を自分で切り開いていく。そういう意識がないと、ただ公的資金の中だけで人生設計をというのはどうかと思い、取り上げてみました。バルマの案内書の中に、「専門家の助けを借りて、熱意を持って訓練を受け成功を手に入れたい」、そのような思いが書かれていました。経営規模は、常勤従業員が53名。毎日220名が働いています。2012年には580名が職業訓練サービスを利用しました。全員が就労に結びつかないことも現実です。訓練を受けた人が全部どこかに当てはまって自分の人生を手に入れたかというと、そうではなくてもう一度ハローワークに行ったり自分探しを始めたりしながら、自分の人生を歩んでいくというのも見えました。プログラムには、パーセンテージで表しておきました。ただ、売上高はすごいです。日本円で約8億9千万円。自社製品および販売が60%で約5億3千万円もある。訓練生たちが大きな力になっているのも事実です。就労し、働く喜びを手に入れるサクセスストーリーを築くための意識改革が大変であったと繰り返し言っておられました。ですので、バロマは障害者よりではなく、失業者や訓練生が多かったのかなと思います。ティトリュ協会は70%以上が障害者と言っていましたが、ここの企業感覚でやっていくということの意味は納得できます。けれども、最初の出発点がラフティ市からの委託訓練や、職業訓練学校などを立ち上げたという経緯もあって、当時から社会貢献してきているが、今でもその気持ちでやっているとのことでした。

スライド16
桑山和子氏 スライド16(スライド16の内容)

これが、バルマのリサイクルセンターです。炭谷先生がお話ししてくださったヘルシンキ市のリサイクルセンターとはグレードが違うというか、集まってくる製品も程度も良く、修理したり磨いたりしながら商品化していくということでした。ここで面白かったのは、大きな家具は場所をとるからでしょうか、値段は売れなくなるとだんだん安くなっていくというシステムだそうです。これもいいのかな、と思いました。場所はそれほど大きくないのですが、きれいなバルマのリサイクルセンターでした。CDも本も、百科事典もあれば、それこそ何でもありました。従業員数は現場の職員が13名。失業者の研修生などが50名。ここは研修期間が最高で6ヶ月。研修生の一部は職業学校等へ進学。学校は無料ですので安心して訓練を受けられます。どうも日本の感覚で分からなかったので質問させていただいたのですが、例えば日本では4月入学、9月入学というのがありますが、フィンランドではいつでも入学できると話していました。そこが日本とは違う訓練の仕方であって自分を磨ける場所がいくらでもあるのかなと思いました。

訓練期間中にまたもとの失業状態になっても学校と連携しながらどうしてここが向かなかったのか、もっと高度な職業訓練を受けてこようとか、ジョブコーチとかいろんな方たちと話し合いながら一歩一歩進んでいくのだと思います。経営状態は収益が約6,000万円。バルマの中では規模も小さいです。

スライド17
桑山和子氏 スライド17(スライド17の内容)

スライド18
桑山和子氏 スライド18(スライド18の内容)

その次が、さっきお話したモルックです。これが商品登録したブランド商品です。良ければミニチュアをお回ししますが。日本のボウリングみたいなもので、ただ玉をころころと転がすのではなく、投げるのだそうです。競うのですが、その方法が難しい。何本当てて何点以上取ればいいということではないのです。

インターネットでモルックを引くと出ています。びっくりしたのは、日本でも大会があって、フィンランドの団体が日本に来て、競技に参加したとおっしゃっていました。それまでモルックいうことばも知りませんでした。皆さん、知ってらっしゃる人、おりますか? インターネットには出ています。フィンランドでは人気があるのだそうです。

フランス人などは特に木の香りが好きで、フランスには多く輸出しているそうです。日本でも愛好団体があって各地で開催されているようです。ブランド商品として、モルック。今日、覚えていただけたらと思います。環境に優しくフィンランドの白樺の木で作られていて、地域の中で育てられた、これからのソーシャルファームの行き方なのかなと思います。特にご案内いただいた方が開発して、プロジェクトリーダーとしてやったということでした。木製のゲーム機器として、専門家が開発したそうです。インダストリアルデザイナーも含めて開発し、国際的なパテントも取得しているモルック。フランス、ドイツ、スペイン、オランダなどの各地で販売され、年間約2億7,000万円、売れ行きも良く、今後の経営方針もこのようなやり方を目標に行っていくとのことでした。

バロマには、7カ所の事業所があり、訓練生も来ています。内容的にはソーシャルファームです。多分、失業者の中には発達障害者といった障害者などもいらっしゃるかもしれない。でもそこの中で、みんな自然体で訓練を受けにいくというのが1つの特色なのだと思いました。

スライド19
桑山和子氏 スライド19(スライド19の内容)

これは、バロマの本の装丁・グラフィックという事業部門のスライドです。大学や大学院の修士論文、博士論文の表紙の装丁として注文がくるそうです。手作りで重厚な素晴らしい表紙。その一部のこういったメモ帳をいただいてまいりました。本当に手作りでした。皆さんにお見せします。研修最終日の金曜日の午後に伺ったのですが、従業員は帰ってしまったという話でした。自分の生活リズムをつかみながら仕事をしている感じもしました。

Työhönvalmennus Valma Ltd(テュオホンヴァルメンヌス・バルマ・リミテッド)の要旨へ

スライド20
桑山和子氏 スライド20(スライド20の内容)

いろんなことを見てきた中で、今後のソーシャルファームの新しい生き方として、フィンランドでは教育費が無料なので、文化、芸術などの面でも何か開拓できないのか、例えば音楽が好き、美術が好きな人には、職業訓練の中に芸術分野の訓練メニューがあってもいいのかもしれないと思いました。それには多職種が連携していく必要があると思います。また、北欧の家具やフィンランドの有名な服飾デザイナーのマリメッコなどの作品には、北欧の独特な素晴らしい感覚を持っています。何が言いたいかというと、個性のあるもの作りは、それこそとソーシャルファームの得意分野かもしれないと思いました。

私は村上春樹が好きで、先生もおっしゃっていましたが、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読みました。ハメリーナという町が最後の舞台になっています。車窓からの風景を見て、なるほど、フィンランドには、精神の穏やかさを取り戻す自然の癒しがあるのかなと思いました。

長くなって申し訳ありません。以上でございます。