自立生活 国際フォーラム 日本語版
第4分科会資料:アジアの視覚障害における自立生活運動の支援とこれから求められるもの
東京都視覚障害者生活支援センター 山口和彦
I.視覚障害者に対する支援の現状
1.資金、物資の提供
(1)南太平洋諸国に対する援助
1995年にフィジーで開催された世界盲人連合東アジア太平洋地域会議の席上、南太平洋諸国から援助の申込みを受け、日本盲人会連合が総額300万円にのぼる物資を贈呈した。白杖、プラスチック製点字器、テープレコーダーなどを送付した。
(2)フィリピンに対する援助
東京にある「アジア障害者援助グループ」が数年間にわたって、フィリピンの障害者授産所に中古ミシンを贈っている。そのミシンで視覚障害者が縫製をしており、これまでに寄贈ミシンは千数百台にのぼっている。
2.海外でのセミナー、講習会の開催
(1)アジア太平洋マッサージ・セミナー
世界盲人連合東アジア太平洋地域協議会の活動の一貫として、日本盲人会連合がアジア各地で2年に1回実施している。これまでに中国、日本、フィリピンで4回開催しており、アジア各国のマッサージの技術交換を行っている。
(2)あん摩術指導講習会
国際視覚障害者援護協会が毎年実施しているもので、これまでにインドネシア3回、タイ1回の4回実施している。日本から盲学校の理療科教員等が出向き、現地のマッサージ師に日本式あん摩術の指導を行う。現地に滞在する日本人や日本人観光客にあん摩ができるようにし、高収入に結びつけようという意図がある。
(3)コンピュータ点字製作技術指導講習会
日本点字図書館がマレーシアで毎年実施している講習会で、パソコンによる点訳技術を、盲学校や図書館職員に1週間指導する。講習会が終わったあと、訓練で使ったパソコンを寄贈し、それぞれの施設に持ち帰って、実際の点訳に活用している。拠点には点字プリンターも寄贈し、マレーシア国外ではインドネシア、バングラデシュ、タイ、ベトナム、フィリピン、ブルネイで実用化している。
(4)フロアバレーボール・卓球指導講習会
不定期だが、アジアの障害者文化交流協会がこれまでマレーシア、中国、ベトナムで実施している。日本から視覚障害選手が渡航し、交流試合を行っている。
3.海外での技術援助、教育の現状
(1)ネパールでの援助
東京ヘレン・ケラー協会が1985年に点字出版所を設置し、現在では高校までの全教科書が点字化されており、統合教育も含め、全国の就学する視覚障害児すべてに点字教科書が供給されている。そのほか、農村地帯で実施しているCBR(コミュニティ・ベイスト・リハビリテーション)も順調に進んでいる。
(2)天津視覚障害者日本語学校
日本の視覚障害女性が1995年に開校した通信教育の学校である。すでに卒業した女性2人が、東京と金沢の盲学校に留学し、理療を学んでおり、優秀な視覚障害者が日本語の学習に情熱を燃やしている。
4.海外での眼科巡回診療
(1)ネパールでの活動
アジア眼科医療協力会が1974年からネパール各地で続けている巡回眼科治療で、これまでに5万人近い患者を診療している。手術数も2万件近くにのぼっている。又、各地に眼科病院開設の協力として機材、人材の提供、ネパール医師、看護婦、技師の養成を実施している。
(2)南太平洋諸国での活動
読売光と愛の事業団、日本テレビ系列愛の小鳩事業団が、1982年から南太平洋諸国で行っている巡回眼科診療で、これまで2万人近い患者を診療し、多数の手術を行っている。
5.国内での留学、研修
(1)JICAによる研修会
日本盲人職能開発センターが、1995年からJICA(国際協力事業団)の委託を受け、アジア、南太平洋諸国から研修員を招聘し、東京を中心にコンピュータ技術や視覚障害者訓練の一般について指導している。訓練期間は8週間、定員は8人である。
(2)盲学校への留学
国際視覚障害者援護協会が、アジア、アフリカから視覚障害者を日本の盲学校に留学させている。日本の盲学校などで3~4年教育を受け、帰国後わが国のマッサージ技術で自活する一方、それぞれの国で視覚障害者のリーダーとして活動してもらおうというもの。これまでにインドネシア、タイ、ネパール、ケニア、韓国、中国など9か国から32人を招いている。
Ⅱ.今後の課題
1.医療面でのケア
アジア諸国においては病気や災害、戦争などによって視覚障害になるケースが多く、医療面からの支援が必要である。
2.物質面からの支援
単独歩行に必要な城杖、学習に必要な点字器、点字タイプライター、教科書が不足している。児童が勉強できる環境を整備していかなくてはならない。
3.職業的自立
今日のような経済的不況のなかで視覚障害者が経済的に自立することは大変難しいことである。しかし、視覚障害者の自立を考えるとき、視覚障害者にとってはマッサージが適職であり、この面での技術的交流や教育が必要である。
≪参考文献≫ 日本の視覚障害者