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自立生活 国際フォーラム 日本語版

第5分科会資料:障害当事者主体の権利擁護活動の課題

DPI障害者権利擁護センター  金 政玉 (キム ヂョンオク)

A.DPI権利擁護センターの概要

  1. DPI障害者権利擁護センター(以下、センター)は、DPI(障害者インターナショナル)日本会議が1995年に設置した権利擁護機関で、あらゆる障害者(身体・知的・精神・難病等)、家族等を対象に相談活動を中心とした権利擁護にかかわる課題に取り組んでいる。窓口の相談員から代表まで障害当事者が主体となって運営している。
  2. 1993年の障害者基本法の成立によって障害の範囲が広がるとともに、ノーマライゼーション理念とともに、自己決定の権利など人間としての尊厳がようやく問題として取り上げられつつある中で、今後ますます差別や人権侵害事件が多発し社会問題化することが予想される。当センターは障害者、家族などが直面しているさまざまな悩み、不満、不当なあつかいに対して、障害当事者自身が相談にのることにより問題を当事者の側から明かのするとともに、自らの経験を生かして当事者と共に具体的な問題解決を図ることをめざしている。

B.個別相談の対応の経験から

  1. 主な相談内容は、直接法律問題にからんだり、相手側からの直接的な差別や権利侵害を受けたという事例よりも、相手が意図しなくても、結果として相手から何らかの不利益をこうむり、どうしていいのかわからなくて困っているという「苦情」の相談が多い。
  2. 「苦情」相談に対応する場合、「苦情」の背景や原因がどこにあるのかを明らかにし、その「苦情」が相手側の意図的な差別や偏見によるものでなくても、障害を理由とした権利侵害であるかどうかを判断していくために意識的なアンテナを常にはりながら相談内容に対応していくことが求められる。
  3. 不当な扱いや納得できない状況におかれている本人(障害当事者)や家族等が実際に相手側との話し合いにのぞむことになったときに、臆することなく自己主張ができるようになるためには、当事者自身が権利意識を積極的に身につけていくことができる人権教育プログラムの作成と研修が必要。
  4. 具体的ケアが伴わない電話だけの対応ですませているのであれば、現状の改善には向かっていかないし、実効性のある権利擁護の役割をはたせないことが明らかになっている。
  5. できるだけ本人との電話や面談の機会を多くして相談内容の事実関係を整理し、どの点で障害を理由とした不当な扱いであり権利侵害なのかを明確にしていくために、場合によっては相手側との間に入って話し合いを行い、当事者が少しでも納得できる解決をはかっていこうとする姿勢を示していくことが大切であること。
  6. こうした一件ごとに当事者のニーズと意思に合わせた適切な援助活動を積み重ねといくことによって、障害当事者の共通の"経験"をベースにした当事者主体の権利擁護活動の必要性が社会的に高まっていくことになると考えられる。