バリアフリーへの新たな道
(財)日本障害者リハビリテーション協会
項目 | 内容 |
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備考 | Webマガジン ディスアビリティー・ワールド 2001年12月号掲載 |
「大江戸線」の開通で"鉄道不便地域"改善
2000年12月、着工以来20年近くかかって都営12号線こと大江戸線が全線開通した。都によれば、同線の開通により、鉄道駅から徒歩5分以内の地域が60%強に、 10分以内の地域はほぼ100%に広がり、"鉄道不便地域"が改善された。
また、リニアモーター方式の車両を採用するなど最新技術を導入している。
さらに、大江戸線の駅は、阪神淡路大震災クラスの地震にも耐えられる強固な構造となっている。地震や火災が発生した際には、利用者を素早く安全に避難・誘導できるとともに、火災、浸水の検地や消火・排煙装置の制御、非常放送などを行う防災監視盤を備えた駅防災室を各駅に設置している。まさに、最先端の地下鉄ということができる。東京都は誰もが利用しやすい快適な地下鉄にするために、様々なハードを用意した。とりわけ高齢者や障害者に配慮したバリアフリー化を重点的に推進してきた。すべての利用者にとって、大江戸線の開通は朗報なのか。
障害者にやさしい地下鉄をめざして
都は大江戸線を利用しやすい"都民の足"にするために様々な工夫を凝らした。中でも、障害者、高齢者対策には目を見張るものがある。全駅にエレベーターやエスカレーター、触知案内板、2段手すり、視覚障害者用ブロックなどを設置している。さらに、多くの駅で、車椅子の人が利用できるよう、今までより通路の幅が広い自動改札機を導入している。視覚障害者のための音声ガイダンスの設置位置や案内も各駅で統一されている。このような「規格化」は今まで見落とされがちだった。出口案内、音声ガイダンス付構内図、バス乗り場案内が一塊になって設置されており、ここに来れば全てがわかる
ジャズ評論家、ライターで車椅子ユーザーの工藤由美さんは、1年前千葉の親元を離れ、大江戸線沿線の西新宿で1人暮らしを始めた。「大江戸線の開通で生活は一変した。安心できるハードを整備している。駅に着いたら地上からエレベーターで改札口階に。操作ボタンは車椅子対応で、自動販売機で切符も一人で買える。自力で楽に乗り込み、車椅子スペースに落ち着いた後は、気兼ねなくのんびりと目的地に行ける。」と大江戸線をまさに「都民の足」として楽しんでいる。車椅子仲間の間では、「住むなら大江戸線」が合言葉になりつつあるという。
しかし、障害の種類や個人によってはまだまだ完璧なバリアフリーとは言い切れない。 視覚障害者からは電車内に車掌がいなくて不安といった声や、転落防止のためホームにゲートを着けて欲しいという要望もある。今まで外出もままならなかった身障者が何の不安もなく気軽に外出できるようになるためには、1人1人の声を吸い上げ、よりいっそう社会環境を整備する必要がある。
障害者へ道の声
国土交通省は、目の不自由な人や車椅子の人に音声で道案内をする道路を開発中であると発表した。路面に埋め込んだ電波発信機などを利用、イヤホンで段差などの危険を知らせるほか、バリアフリーの経路を教えてくれる。特殊な白いつえや、携帯電話をアンテンナ代わりにして、歩きながら路面の電波発信機から電波を受信すると、イヤホンを通して「段差があります」「ホームの端に近づきました」「ここから横断歩道です」などと声で知らせてくれる。PDAやパソコンにあらかじめ周辺の地図を覚えさせ、行きたい場所を入力しておけば、交差点に近づいたとき、「ここを右に曲がってください」などと自動的に段差などがないルートを判断して、道案内してくれる。
来春、東京と大阪で実験的に登場する。
同省は実用化に際し、昨年11月に施行された交通バリアフリー法に基づき、1日5000人以上が利用する鉄道駅のある重点整備地区に「しゃべる道路」を整備する考えだ。
日本ではバリアフリー時代は到来したばかりだ。私たちのまわり100メートル四方を見渡しただけでも、改良の余地はいくらでもある。社会参加は行きたいところに自由に行けて、初めて可能となる。そして初めて「バリアフリーな社会」と言えるのだ。