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日本での介助犬事情

(財)日本障害者リハビリテーション協会

項目 内容
備考 Webマガジン ディスアビリティー・ワールド 2001年9月号掲載

 障害者の自立を助ける介助犬と一緒にキャンパスで学ぶ大学生が、全国で初めて同志社大学に誕生した。
入学をしたのは、館林千賀子さん。高校二年生の時に自動車事故で頸椎を損傷し、両足と両腕が思うように動かなくなった。その後、家に閉じこもりがちになってしまったが、インターネットにより介助犬の存在を知り、介助犬「アトム」を出会うこととなり、今年4月より「アトム」とともに大学に通っている。

介助犬がドアを開けている画像
介助犬が窓を開けている画像

 障害者が日常生活を独立したかたちで行うためには、その障害を補う優れた自助具、生活用具の存在が不可欠である。介助犬は、「生きている自助具・生活用具」なのである。介助犬の介助内容としては、

  1. 手の届かないものをもってくる、落としたものを拾って渡す、ドアの開け閉めを行うなど使用者の上肢機能を代償する介助
  2. 車いすを引く、エレベーターや電気のスイッチを押す、歩行や立位の支持をする等使用者の状態に応じて作業を補完する介助
  3. 緊急時に電話の受話器をもってくる、人を呼んでくる等、他の人との連絡手段を確保する介助

等が挙げられる。
 こういった介助犬とともに生活をすることにより障害者が自立生活を送り、社会参加が促進され、生活の質の向上が図られ、エンパワメントにつながっている。しかし一方では、介助犬同伴では、飲食店では入店を断られ、鉄道や施設を利用する時はそのたびに交渉しなければならず、介助犬と暮らすことで逆に生活範囲が狭まってしまう、という矛盾も発生している。「同伴を断られるかもしれないと、いつも不安。法律として社会参加が保障されればこんなに心強いことはない」と使用者の声がある。

 日本での介助犬の存在は、まだまだペットと同一扱いされている。1995年に介助犬第1号が誕生し、2001年4月現在、国内における育成団体は15団体、実働犬は19頭である。 介助犬が社会に受け入れられるためには、まず、使用者が犬の行動を十分管理できる能力をもつ必要があり、公共交通機関を利用する場合には、

  1. 各交通機関の安全性に支障をきたさないこと
  2. 他の乗客や乗務員に迷惑をかけないこと

が前提になる。
また、ホテル、飲食店、スーパー、百貨店等を利用する場合には、行動管理に加え、特に公衆衛生上の十分な管理が使用者に求められる。また、社会全体の認知度を上げるための啓発活動も求められる。当面の課題としては、介助犬は、統一的な訓練規準等のもとに育成される必要があることから、訓練規準のあり方等について、育成団体関係者、障害当事者、学識経験者等により具体的な検討を行う必要がある。そのためには、育成団体による協議会の組織化など、育成団体間の連絡協調体制の確立が望まれている。国会でも「介助犬法案」の法令化の動きがある。法制化については、

  1. 交通機関での同伴など、介助犬の社会的アクセスを保障する新たな法律をつくる。
  2. 社会福祉法、身体障害者福祉法など既存の法律に介助犬の項目を加える
  3. アメリカのADAのような盲導犬や聴導犬も含めた包括的な福祉法をつくる

といったさまざまな案がある。今後、厚生労働省や介助犬支援に先行して取り組んでいる自治体、研究者なども交え検討していく。今度国会に提案される「介助犬法案」は、2002年10月には施行を予定しており、それまでの策定を目指している。介助犬同伴者の社会参加が認められる日が一層早く来てほしいものである。