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障害があっても、旅行に行きたい。

(財)日本障害者リハビリテーション協会

項目 内容
備考 Webマガジン ディスアビリティー・ワールド 2003年9月号掲載

「旅行に行きたい」という願いは、障害の有無に関係なく、誰もが持っている。しかし、現状は、多くの障害者が旅行に行きたくても行けない状態にある。旅行に行きたいという強いニーズを持つ障害者の旅事情について考えてみる。

旅行会社の最大手であるJTBバリアフリープラザと、個人で取り組むベルテンポ・トラベル・アンド・コンサルタンツにお話を伺った。

バリの人々と上山さんの写真

JTBバリアフリープラザでは知名度を活かした幅広いサービスが自慢。個人旅行をはじめ、経験豊かな添乗員と介助ボランティアが旅をサポートする主催旅行など、年間国内約4回、海外約4回のツアーを実施し、年間約1,000人が参加している。また、電話のできない聴覚障害者のために専門の窓口を設け、手話や筆談で対応。ツアー参加者は、車椅子使用者が大半を占める。

「旅は、元気の源です」と語るのは、ツアーに参加した上山のり子さん。旅が好きで好きでたまらない上山さんだが、現地でのリフト付きタクシーの確保やトイレの問題など、個人での手配は限界があり、計画しても何度も諦めてきた。そんな時、偶然新聞でJTBのツアーに出会った。選択肢が少なく、値段が高いとの悩みもあるが、安心して旅ができる喜びは大きい。

「現地の人の笑顔や暖かさに触れると元気をもらえるし、様々な所に旅行することによって、自分にも行けたという自信がつきます」

行く先々の人々との出会いが、忘れらない旅の思い出を作るのだ。

「障害があるからと諦めないで。旅は勇気と希望を与えてくれる、本当に素晴らしいもの。とにかく一歩外に出てみましょうよ、きっと新しい自分に出会えますよ!」

一方、ベルテンポ・トラベル・アンド・コンサルタンツの高萩さんが手掛けるのは、一人一人の要望に合わせたオーダーメイドの旅作り。一件、一件、親身になって相談に乗る。要望があれば全国の相談者の元に出張もする。あらかじめ飛行機の座席の好き嫌い、食べ物の好みや刻み方、どの程度までの介護が必要かなどの詳細をまとめた個人カルテを作成し、出発前に不安や不満をすべて解消しておく。初回は手間がかかる大変な作業だが、二回目以降はこのカルテのお陰で年間約1,000人をスムーズに案内することができる。既に信頼関係の築けている高萩さん自ら添乗するとあって安心感も抜群だ。

「お客様が旅に出るチャンスを増やしてさしあげることが私の役割。一番の問題は、お客様側に選択肢がないこと。最終的に行くか行かないかを決めるのは旅行に行かれるご本人です」

障害者が旅をするための受け皿が整っていない。個人で旅をするのはやはり不安、それならばツアーに参加しようと旅行会社に相談しても、断られるケースは後を絶たない。結果として、旅を諦めた障害者は驚くほど多い。

「障害が重くても、どうやったら行けるかを一緒に考えなければいけないと思います。旅行に行きたいと思う人が行ける環境を作りたい。我々が一人でも旅に出ることによって、社会全体の意識が変わってくれるといいなと思います。そのためには、旅行業で働く人自身も、もっと障害を持つ人を理解することが大切だと思います」

カナダのコロンビア大氷原での写真

高萩さんがお手伝いした参加者の中には、一度旅に出て自信がつき、次は自分で行ってみると意気込む人もいる。旅は最良のリハビリでもあるのだ。

一人でも多くの障害を持つ方に、旅の楽しさを知ってほしいという高萩さんの思いは、着実に伝わっている。

日本の社会にまだ障害者に対しての偏見があるのは事実だが、一人一人が自立し、積極的に町に出て、その存在をアピールすることも必要だ。障害者が何を必要としているのか、「気づく」ことがハード面だけを改善するのではなく、心のバリアを取り除くことにも繋がるだろう。

「知らない人に知らせること、伝えることが私の役割です」と高萩さんは言う。

カナダのモノレールの写真

障害の有無に関係なく、普通に接することができる社会を目指すために、一人一人が障害者の存在を知り、理解することから始めよう。

障害を持つ外国人が日本を旅する時のために、障害者が必要な情報を集めたガイドブックを作成しているボランティア団体がある。その一つである赤十字語学奉仕団は、日本を訪れる障害を持つ外国人のために、障害者が必要な情報を集めたガイドブックを発行し、ホームページ上で様々な情報を提供している。ホームページ上には、東京、京都、鎌倉などのアクセシブルな観光情報が掲載されている。http://accessible.jp.org