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バングラデッシュ
テクノロジーが障害者にもたらす希望

ヴァシコル・バッタキャリア、バングラデッシュ
vashkar79@hotmail.com
http://www.vashkar.tk

項目 内容
転載元 webマガジン ディスアビリティ・ワールドNo.23(2004年5月)
(英語)http://www.disabilityworld.org/index.htm

文明のはじまり・・・それは人間の想像をはるかに超えたものです。
(a)夢(b)機会(c)情報(d)知識
文明の歯車はこの4つの要素が同レベルになってはじめて動き始めます。テクノロジーが発展してからというもの、人間の苦悩や無力感は減少しつつあります。

文明がどのくらい進化したかということについてはよく耳にします。石器時代、動力時代、自動化時代を経て21世紀の文明は「情報技術時代」と呼ぶことができます。

障害者がどのように無力を乗り越えつつあるのか、特にバングラデッシュの情報技術についてくまなくお話したいと思います。まずチッタゴンで始めてこのようなセミナーを開いてくださったUTSA(Unite Theatre for Social Action)の皆様に感謝いたします。

情報を持っている人はパワフルだとよく言います。ここで鍵となるのはパワフルな情報は、だれにでも親しみがあるということです。コンピューター、これは単なる箱ではありません。障害者がコンピューターを使えるのだろうか、特に視覚障害者が・・・、皆さんはこのように思われるかもしれません。

皆さんの疑問を払拭するために私自身の日本での経験をお話ししたいと思います。視覚障害者である私は、読んだり、書いたり、情報を得るためにいつも他の人の協力が必要でした。

私の考え方を表現するためには点字に頼らなければなりませんでした。誰かに手伝ってもらい書いたり、読んだりする時、点字を手放すことはできませんでした。しかし、自立するためには、自分自身で読んだり情報を集めたりという冒険をする必要がありました。

大胆に、かつ自信を持ってこう申し上げます。私は障害者であるという困難をコンピューターベースの情報技術を用い克服したと。コンピューターを活用し、コミュニケーションを広げることができました。情報技術(IT)を使い、現在は外国の友人と日常的にコミュニケーションし、意見を交換しています。このことに関してお話したいと思います。

日本に滞在中のある日、メアリーというフィリピン人の友人が夜中の12時30分に突然病気になりました。その時マレーシア人のジェシカという友人もいました。メアリーが病気になったのでジェシカとどうしたらいいか話し合う必要がありました。それはうまくいきましたが、問題は別のところにありました。病気の友人は身体障害者で、ジェシカは聴覚障害者、そして私は皆さんご存知のように視覚障害者です。問題は深刻でした。何故なら私たちは別々の様々な障害があったからです。従って、メアリーの病気についてこの緊迫した時、問題を解決することができませんでした。その時私たちを大いに助けたのは、パソコンのスクリーンリーダーでした。まさに、このような緊急の場合のなくてはならない友です。小さなラップトップがメアリーの病気の際にとても役に立ちました。

このような例からおわかりのように、コンピューターのソフトウェアを使えば全ての問題を解決することができます。結論を言うと、(ITを使わずに)いろいろな違う障害を持つ私たちがどのようにコミュニーケーションすることができたでしょうか?

視覚障害者はスクリーンリーダーを用いてコンピューターを使うことができます。ボタンを押してコマンドすると、大きな音声で読み上げてくれます。視覚障害者はマウスを使わず、キイボードでコンピューターを操作します。

スクリーンをご覧下さい。コンピューターを起動したいと思います。コントロールキーとエスケープキーを同時にをクリックすると起動し、それと同時に音声を読み上げます。メニューを開きたいので、下の矢印キーかPを押します。スピーチシンセサイザーがコマンドも読み上げてくれます。

様々なタイプのスクリーンリーダーがいろいろな言語で入手可能です。ベンガル語のソフトがあるかどうかはわかりませんが、この国では手に入らないことは知っています。そういう場合は英語のソフトを使います。

私はJAWSと呼ばれる英語のスクリーン・リーダーを使っています。日本語のJAWSも使うことができます。一般的には、3つのソフトを使っています。1)2000リーダー 2)IBMのホームページリーダー 3)ALTAIR(アルテア)です。このようなソフトを使って日本語と英語で学習をすることができます。現在も外国に住んでいる友人と日本語と英語でコミュニケーションしています。

ベンガル語のスクリーン・リーダーを開発することは可能だと思います。この件に関しては政治家と政府が協力して必要な措置を講じるべきです。

スクリーン・リーダーについて述べましたが、次に音声のでない点字についてお話します。点字ディスプレイと呼ばれるデバイスからソフトを使って点字が表示されます。

簡単にどんな情報でも点字にすることができます。

日本にいるときは、インターネット上の英語で書かれたバングラデッシュの新聞を毎日点字で読んでいました。目の見える人は新聞を目で読み、私はその同じ情報を点字で読むことができたということは事実です。それはコンピューターの特別なソフトを使うことによって可能なのです。

点字ディスプレイをお見せできれば良いのですが、そのデバイスは想像がつかないくらい高価なのです。

日本では、点字図書館を視察する機会がありました。点字に関する様々なソフトを知りました。点字のソフトがあり、それを使えば非常に早く点字を作成することができます。必要なのは印刷物を点字に変換する点字プリンターです。全盲の友人に手紙を送りたいが、点字の書き方を知らない、という場合があります。ただ文字をコンピューターに打ち込んで、点字に変換するために特別なデバイスのボタンを押してコマンドを送ると、正確な点字ができます。点字のシステムを知る必要は全くありません。

別のソフトですが、単に点字の6つのキーしかついていないものもあります。

私は長年、バングラデッシュで最新のコンピューターベースの視聴覚点字図書館を設立したいという願望を持ち続けています。

点字ディスプレイ、点字ソフト、点字プリンターについてできる限りお話しいたしました。さて次に、最新のデジタルシステムであるDAISYについてお話いたします。これは「印刷字が読めない」障害の方にとってはとてもポピュラーで有名な視聴覚システムです。

私は幸運にもバングラデッシュ人としてははじめてDAISYの研修を受けることができました。DAISYにはいろいろな機能があります。一枚のCDに50時間も録音することができます。動画も入れることができます。結果としてだれもがいろいろな目的を持って使うことができます。学習障害を持つ人にもとても役に立ちます。

また別の機能もあります。好きなページや文章に飛んだり、単語にも飛ぶ事ができます。単語のスペルを調べることにも使えます。障害者のみならず、文字を読むことができない人たちにも役に立ちます。

DAISYコンソーシアムのDAISY for ALL(デイジー・フォー・オール)プロジェクトは多くの先進国、発展途上国でそのサービスを展開しています。バングラデッシュもその対象となることを期待しています。

それでは次にスキャナーについてお話したいと思います。スキャナーがあれば視覚障害者は印刷された手紙、雑誌、刊行物、本などを簡単に手軽に読むことができます。他の人の手を煩わせる必要もありません。

スクリーン・リーダー、点字ディスプレイ、点字ソフト、点字プリンター、DAISY、スキャナー、これらの最新のテクノロジーを使うことにより、いろいろな障害を持つ人が障壁を乗り越え幸せな人生を送ることができます。

障害者として有名なスティーブン・ホーキング氏や視覚障害者の英国内務大臣のデイビット・ブランケット氏らだけがテクノロジーの恩恵を受けているわけではありません。全ての人にとってテクノロジーは身近なものになってきているのです。

私の先生である世界的に有名なソニーのプロダクト・デザイナーの鈴木淳也氏、プログラマーの切明政憲氏、タイのウェブデザイナーのサンクラン氏などからたくさんのことを教えていただき深く感謝しております。この3人の方々は視覚障害者ですが、最新の情報技術を利用して他の成功したたくさんの人たちのように自信に満ちた人生を送ることができるということを学びました。

情報技術を通してたくさんの事例を見ることができました。視覚障害者がコンピューターを操作し、話すことに障害を持つ人が話すことができ、聴覚障害者が支援技術を使って聞くことができ、知的障害者がI.Q.を高めることができる、などなどです。

バングラデッシュの障害者にできることはたくさんあると思います。国連の統計によれば、世界の人口の10%は何らかの障害があるということです。私たちの国では、1400万人(バングラデッシュ全人口の10%)が何らかの障害をかかえています。このように多勢の障害者が開発から取り残されるということは国にとって望ましいことではありません。

いつも誇らしげに言う事なのですが、国費の10%は教育のために使われています。しかし、障害者の教育活動は社会サービス局に頼っています。この特別で重要なセクターは教育省に設置され、非常に早いスピードで開発と改善が行なわれつつありますが、障害者は最初から教育、雇用、開発から取り残されているのです。

バングラデッシュでは教育のセクターに大きな予算を使っていると満足していますが、障害者の教育を普及させるためにはほんのわずかなお金しか使われていないということはほとんど知られていません。このことをもう一度考え直す必要があります。言うまでもありませんが、バングラデッシュの教育機関ではコンピューターが障害者のためには活用されていません。

インターネットは世界で一番大きな図書館です。この実りある成果を活用することによってどのくらいの恩恵を受けているでしょう?インターネットは様々な情報源から情報を集める媒体になりえます。障害者は適切な教育とトレーニングを受けることができれば人的資源になりえます。そうなれば、仕事とリハビリを求めてこの国で叫んでいる障害者を目にすることはないでしょう。

バングラデッシュの困窮した10%の人たちの全体的な発展のため障害者局が緊急に設立されるという夢を心の中で持ちつつ、私はUTSAで働いています。