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地域ささえあいネットワ-ク作りに向けて
-CBRセミナー・ワ-クショップ-報告書

◆CBRセミナー、ワークショップ
感想およびまとめ

渡辺 それではここでワークショップセミナーを終了したいと思います。全員の方から一言ずついただきたいと思うのですが、時間が足りませんので、1グループ2人から発表頂く時間ならありそうなので、いただこうかなと思っております。発表ですが、今日の感想でもいいですし、お手紙(各グループの事例の当事者からのお手紙)をもらった時に思ったことでもいいですし、自分で宣言して書いて下さったことを皆さんとシェアすることをお嫌でない方は、宣言でも結構です。今日1日の中で皆さんとシェアしたいことをお話していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

参加者1 今回一人でアイディアを出すのと、皆でというか、グループではなくこの会場全体で意見を出し合うことで、かなりいろんなことが出来ることが、前も分かってはいたんですが、実際にここまで出来るとはすごいなと感じました。あと、まず最初のきっかけは、やはり悩んでいる人達に関わることが一番大切なことかなと思いました。ありがとうございました。

参加者2 感想なんですけども、各事業所でできることは限られていまして、その中でできないところをどうやって補うのかというと、やはりチームの連携が一番重要だということを、このワークを通して感じることができました。地域でのいろんな繋がりを作る中で、画期的なアイディアがその人の未来やより良い生活に繋がったりすることを、このワークを通して理解できたかなと、私自身は思いました。ありがとうございました。

参加者3 昨年の10月から医療福祉情報センターを立ち上げ、医療福祉の相談事業を行っています。障害者の方の相談があまりないので、いれば、そういった人達の相談に乗って基幹相談支援センターと連携してやっていきたいと思っています。今日は国際的な交流の場の機会を設けていただき、ありがとうございました。

参加者4 今日は刺激的なワークで本当に勉強になりました。私自身は高齢者福祉という限られた領域での福祉なので、実際にこのようなさまざまな障害を抱えた方が街の中で生きていくためにどういった関わりができるのかというところで話しあったのですが、意外とインフォーマルな部分について「いいね!」が付いているのですね。ひょっとすると、本来、日本に結(ゆい)というものがあった頃は自然と見守りを含めてあったこととか、いま希薄になっている人間関係のことに「いいね!」が多かったので、その辺、うちの街はどうなのかと自分の街を振り返る点でもいい勉強になりました。ありがとうございました。

参加者5 こういう時は先に発表した方が得というか有利ですよね。すいません、案の定、同じような意見になってしまいますが、簡単にまとめました。支援機関が単独で動くことはせずに、各機関が連携して繋がって支援していきましょうということです。一人だけであれば1つのアイディア、10人いれば10のアイディア、100人いれば100のアイディアが誕生します。以上です。

参加者6 宣言を言おうかなと思ったのですが、ちょっと違うことを言おうと思います。渡辺さんが最初にお話していた、真ん中に当事者をおいて、その周りの多様性がすごく重要だと言われたことがすごく実感できて、行政の方達とか専門の方とか私のように全く関係ないものも、はやり皆が役割を持っているのだな、とあらためて気付きました。ありがとうございました。

マヤ 私はファシリテーターやトレーナーとしていろんなワークショップに参加していますが、今回のワークショップのように一参加者として参加するのは非常に稀です。このワークショップでどれだけ私が楽しんだかという事をお伝えしたいと思います。渡辺さんのワークショップのスタイルは私にとってもすごく勉強になりました。最初私はこのグループで始めたのですが、最初に貼ってあった付箋が、各テーブルを回って帰って来ると、何といろいろと増えていて、それに感銘しました。このワークショップを通じて、他の人の意見や考え方を聞くことが、いかに価値のあるものかをあらためて確認しました。

参加者7 話をするきっかけとか気が付くポイントは皆それぞれスタートが違うのだなということと、まとまってくるまでの過程を許可して編集しているということで、着地点に行くまでのプロセスの勉強をするという意味では、汗かきながら大変でしたが、皆さんにご意見頂いて、何とかこのマップができました。ありがとうございました。

参加者8 今日はありがとうございました。最初、この形態で出て来たときに、どういう風に解決していったらいいのか自分自身で悩むところがありましたが、これだけ多くの立場の人がいろいろな視点で意見を出すことで、最後にはこれだけたくさんの付箋でいっぱいになるというので、すごいなと感じるところがありました。本当に困っている人達が、必要な支援を欲しいのだけれどなかなか出てこない、という時に提供できる人達の繋がりなど、我々も大切にしていかなければならないと、今回のケースを通して感じました。ありがとうございました。

参加者9 ワークショップを通しての感想ですが、自分が仕事をしているフィールドとか関わっている領域での見立てになりがちなんですが、いろんな方が関わることによって、こういう発想もあるんだなということがすごく勉強になりました。これを繰り返すと想像力が豊かになっていきそうだと思いました。先ほどご意見が出ましたが、シールが付いているのはインフォーマルのところが多かったです。「米と野菜が余っているから自由に配れます」とか、「今回、1万円で貸せます」というのや「スポーツバーに一緒に行けます」というのがあったりするのを考えると、福祉の職種だけではなく、もっと違う一般的職種の方も入ると、もっといろんな付箋が出るのだろうなと、楽しみに感じました。ありがとうございました。

二ノ宮 タイ国のバンコクにあるアジア太平洋障害者センター(APCD)で障害と開発の仕事をしています。40カ国ほどの国が対象です。今回は日本のケースワークの発表を拝聴しました。ケースワークと地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)に関して事例を聞かせて頂きました。それらの発表は個を中心にコミュニティとの関係を見ている視点でした。これは日本の発信だなと思いました。私たちは開発途上国で仕事をしていると、地域住民の貧困をどうやって削減するかとか、地域住民の安全な飲み水の課題、地域市場のアクセスをどのように推進するか、というコミュニティの切り口からCBRに入っていきます。そういう意味では先進国というのは個から入っていくやり方があるということを学びました。

2つ目は、日本は公的扶助がたくさんあります。APCDが障害と開発の事業をしているところでは公的扶助が殆どないです。だから地域の資源(リソース)をどうやって探して、利用し、最大の効果を出すかが課題でした。例えば、隣近所にあるお寺などのリソースをどうやって利用するか、地域の住民団体を調査して、地域住民との連携を形成しながらプロジェクトを作り上げてきました。それらの地域にはソーシャルワーカーやOT、PTもいないです。そういう中で障害を持った仲間を中心に、障害者や高齢者の人々が住みよいインクルーシブな地域開発をしてきました。

3番目に、APCDが国際的に特徴があるのは、障害当事者が、他の障害者をエンパワメントして、障害者が地域開発の主役になるというアプローチです。そのような障害者リーダーを養成して、12年間で、2,000人以上をアジアへ送り出してきました。障害者が障害者をエンパワーして、バリアーのない、そしてインクルーシブな、また人権を促進するコミュニティづくりをしてきました。この視点が、まだ。日本にはないようです。この点で日本がまだ開発途上国から学ぶところがあると思います。そういう意味では今度の第3回のアジア太平洋CBR総会では日本が開発途上国から学ぶことがあるし、開発途上国の人も日本から学ぶ相互啓発の場になると思います。本日はいい学びの時をもちました。ありがとうございました。

参加者10 たくさんのご意見を聞くことができ、自分にはできないことでも、多くの人はこんなにも出来るということをいっぱい知ることができました。私は病院で働いていますが、退院した患者さんとかをそういった機関の人とかサービスに繋げていけるよう、自分の地域でそういうことの出来る人がどこにいるのか調べたり、ネットワークを作っていこうと思いました。ありがとうございました。

渡辺 できることもちよりの文化がここからスタートすると本当にうれしいと思います。皆さんのたくさんの付箋のアイディアやコメントから、私もたくさんの学びをいただきましたので、これを名古屋へ持ち帰り、今後も名古屋と福島の皆さんとの交流が続くといいなと心から願っています。本当に今日はありがとうございました。

上野 今日は、ひと言、このことを言って帰りたいという方がいらっしゃったら、ぜひ発言していただき、その後でマヤさんと渡辺さんから、それに対するレスポンスをいただけたならと思います。どなたか、さっき発言をされなかった方で、今日の感想を言ってみたいという方はいらっしゃいませんか。

鈴木 専門家の方々といつもチームを組んで仕事をしている中で、どうしてもできないのが途上国の皆さんとは逆で、インフォーマルな支援に、どう市民の方々を巻き込んでいくかということです。やはり皆さんの環境の中のインフォーマルな支援はすごくいいな、と私自身も思っていますし、皆さんも思っているんだなと思いました。今後何とか、市民の方々を巻き込んでいけるような活動、仕組みづくりをやっていきたいと思いました。ありがとうございました。

熊田 先ほど二ノ宮さんがおっしゃられたように、今日は専門職の人達のネットワークづくりということもありましたが、もっと地域視点といいますか一般の市民の視点がすごく大事だなと感じました。うちのグループでは、そういうところに「いいね!」がいっぱい付いていたので、私たちのグループの中でも、そういった視点が大切だという意見が多くありました。

それから当事者の方のお手紙を読んで、私たちがこんなに悩んでいるのに、本人達は前向きで夢もあって、ああしたい、こうしたいということがたくさんあることが分かりました。そういう本人の力を使ったエンパワメントを育てることにもっと力を入れていく必要があるのではないかということを強く感じました。

上野 それではもうおひと方、バンコクからいらしたAPCDの佐野さん、いかがでしょうか。

佐野 途上国で仕事をしていることと違う視点がありました。その中で特に勉強になったことがあります。当機関には8カ国から40人くらいの職員がいますが、半分以上は障害を持った方です。今までは忙しさを言い訳にし、時間の感じ方が甘かったと思わざるを得ません。これからは1日を25時間と想定して、そのうち少なくても1時間はスタッフの皆さんの声に耳を傾けるというような、具体的な自分になりたいと思いました。

参加者11 富山から参りました渡辺と申します。私は富山医療福祉専門学校という作業療法士の養成校で教員をしています。そのかたわら、発達障害の子ども達の学習支援、就労支援、余暇支援の3つを柱として支援をさせていただいています。親ごさんとか子どもさんから相談があったとき、自分たちだけでは対応のできないことがたくさんあります。今回のワークショップに参加させていただいて、全体の皆さんから見た視点がこの紙の中にどんどん広がっていって、自分が今まで気付かなかった視点がたくさんありました。すごく勉強になりましたし、また、地元で、先ほどもお話が出ましたが、インフォーマルな視点も大事にしながら、人との繋がり、連携を地域の中でどう作っていくのかを考えながら今後にいかしていきたいと感じました。本当に、毎日でもしたいワークショップで、非常に充実した1日を過ごすことができました。ありがとうございました。

参加者12 教員なものですから、どうしてもつい、自分が口を出してしまうのですが、こういった参加者の中で、お互い気が付いたところを言いあったり、足りないところを補ってもらうというワークショップは経験がなかったので、とても勉強になりました。普段は教員をしていますが、教室へ入ると、学生がサボって授業を聞いていないなということがすぐ分かってしまいます。できないところを見てしまって、学生が抱えている生活とか家族のことまで考えが及ばなかったものですから、これからはひと呼吸を置いて、学生が何か問題を抱えているのではないかと感じることが大切だということに気が付いたワークショップでした。ありがとうございました。

参加者13 とても楽しくワークショップに参加させてもらいました。特にこのグループはノー天気な人達が多かったので、面白かったです。今日やり終えて思うのは、いろんなアイディアが出たのですが、実際に自分が仕事や活動の中でどう実現していけるのかなというと、そこにまだ自分の中に少しギャップがあり、自分でやるのなら出来ると思うのですが、他の人を動員しながらインフォーマルなところを埋めていくにはどうやったらいいのかということは考えていかなければいけないと思います。ありがとうございます。

参加者14 可能性から話をさせていただきました。本日は事業所の方とか、関係者の方とかたくさんご意見をいただき、助成となるとどうしても制度ありきというところがあり、制度から支援の方法を考えていくということがありますが、今日のお話でインフォーマルな部分がすごく大事だと感じました。社会資源がまだまだ少ない地域ですが、インフォーマルな機関との連携を密に図って支援に繋げていきたいと思います。ありがとうございました。

参加者15 特別支援学校で働いています。とにかく楽しかったですね。自分ができる、できないとか、この地区にある、ないとかはあまり考えずに、こんなことができたらいいのにな、とか、こういう支援はただの夢や理想かも知れませんが、そういうのを話して、絶対無理だろうなと思って言ったのに、誰かが、あっ、それできる、というふうに緑の付箋が貼ってあったりして、びっくりしたことがありました。こういうのが積み重なって、できることが増えていくのかなと感じました。ありがとうございました。

上野 それではここでいまのところの感想と、後でマヤさんに質問があるそうなので、渡辺さんにマイクをお渡しします。

渡辺 すごく共感して興味深く聞きました。私から最後にマヤさんへ質問をさせていただきたいと思います。私がマヤさんの講演で一番感動したのは、アフリカの諺です。資料の一番上に載っています。「早く行きたいなら、一人で行きなさい。遠くへ行きたいなら、仲間と歩きなさい」。

この資料がマヤさんから送られて来たとき、すごい偶然かと思いますが、発達障害で20年くらい引きこもっていた人が働きたいということで、受け入れてもらえる企業を探し、ある社長さんのところへ行きました。そこで彼のことを説明したら、分かりました、彼をうちの会社の仲間にしましょうと言われ、その時にこの諺を言われたのです。その偶然にびっくりしました。そして彼を仲間にして、自分の会社で遠くまで行きましょうと言って下さいました。すごく素敵だなと思ったら、マヤさんも同じ資料を持ってきて下さり、すごく感動しました。ただこれを実行するのはすごく難しいなと思いますので、マヤさんにお聞きしたいのが、仲間にする、誰かを巻き込んでいく、インフォーマルな人と繋がり、困っている人を皆で応援する、巻き込むために、仲間になってもらうために、一番大切にしていることは何かを教えていただければと思います。

マヤ 途上国での経験を通し、いくつかお話しできることがあると思います。まず最初に、コミュニティの中でキーとなり中心となってプログラムや問題解決を支援してくれそうなグループを見つけることです。モビリティ・インディアのケースをプレゼンテーションで紹介しましたが、そのコミュニティの中で、誰が関係当事者なのかを特定することが大事です。そういったパートナーになり得る人たちはプログラムや問題解決に対してどんな貢献をしてくれるのか、どういった活動や役割を果たしてくれるのか。その人達を巻き込む時、どういった方法、どういったアプローチを通じて、その人達が私達の仲間になってくれるのかを考えて見ることです。グループが違えば方法も違うからです。そして本人に話してもらうことです。その人達の課題を一番知っているのは当事者なので、例えば障害のある人達の課題を知るには、障害のある人自身にその人の言葉で課題を話してもらうことがポイントです。障害のある人が何らかの複雑な障害などの状況下にあって話すことが出来ない場合は、その人の家族に話してもらいます。そして本人とも家族と話せない場合は、障害者団体などのような組織にアプローチしましょう。つまり、皆さんが活動の中にさまざまなグループを巻き込みたいなら、当事者の声が一番反映される人たちを活用することです。

渡辺 ありがとうございました。

上野 いま、マヤさんから渡辺さんの質問に対しお答え頂いたのですが、全体の感想か何かあれば、マヤさんから語っていただきたいと思います。

マヤ 一つだけ申し上げたいと思います。今日のワークショップで、私が特に感銘を受けたのが、私が紹介したアフリカの諺の実践を、この場で行うことができたことです。そういった意味で、私がアフリカの諺を紹介したことに意味があったことを確認でき、本当にうれしかったです。今日、皆さんと一緒にこの作業をしたことは、私達が一緒になって遠くへ向って歩いていくことを実践したということで、本当に良かったと思っています。

上野 最後に素敵なコメントをいただきました。このアフリカの諺はとても印象に残っています。

私と草の根ささえあいプロジェクトの出逢いを少しだけ紹介させていただきます。2年前に、他の団体が主催したところで、草の根ささえあいプロジェクトがまだ発足する前に、このできること持ち寄りワークショップをやって下さったのです。そこへ私は参加者として参加していました。本当に、こんなワークショップがあったのだろうかという位、相当インパクトを受け、東京へ帰ってからあらゆる人に話しまくり、皆で参加型でやっているワークショップが日本にあるということを紹介し続けました。

2年前に私が参加した時と、今日のやり方では変化があります。それは最後に本人からの手紙というのがあって、それを皆で見るというのは私が参加した2年前にはありませんでした。それが、本当に本人の気持ちはどうなのかというのを、その手紙が語ってくれてその本人の気持ちから離れてはいけないとか、本人の気持ちに沿ったところで考えていかなければいけないということを気付かされたのですが、草の根ささえあいプロジェクトさんはこのように常に動いています。2年前と今とを比べ、常に振り返りをして変えていくことをやっていらっしゃるということが、今日も分かり、こういう団体の皆さんと渡辺さんをはじめとして知り合いになれたことをうれしく思います。今日、福島の皆さんのところでできることを、持ち寄りワークショップの最新バージョンをやっていただけたということを本当にうれしく思いました。皆様の感想そのものが今日の成果を物語っているのではないかと思いました。

長い時間お付き合い頂き、ありがとうございました。これをもって、セミナーとワークショップを終らせていただきます。